オグさんです。今回は、コブラ「エアロジェット LS ドライバー」の試打レポートをお届けします。
コブラ「エアロジェットLS ドライバー」
コブラというメーカーは独創的なクラブ作りが特徴で、他社とはちょっと違う個性あふれるクラブを数多く開発しています。たとえば「ワンレングスアイアン」。アイアンの各番手の長さを同じにしつつ、飛距離の差を生み出すという、現代のスタンダードモデルとは大きく異なる考え方で設計されたアイアンです。
このように、一般の概念にあまりとらわれないコブラが作った最新のドライバーが「エアロジェット」シリーズ。投影面積が大きい、いかにもデカヘッドといった出で立ちですが、空力性能に注力して開発されています。
「エアロジェット」のメインとなるテクノロジーは、主に3つ。まず、ボディ全体を滑らかなシェイプにすることで空力性能を高めた「エアロダイナミックシェイピング」。次に、フェースすぐ裏の内部下側にフェースに密着させることなく配置されたウェイトによって、ヘッド剛性に干渉せず低重心化を実現させた「パワーブリッジ・ウェイティング」。そして、フェースを15分割し、それぞれのエリアの反発やミスへの寛容性を、AIによるシミュレーションを用いて設計された「パワーシェル・H.O.T フェース」の3つです。
まとめると、高い空力性能によりヘッドスピードを高めやすく、低重心化によって低スピンの強弾道を生みだしやすく、打点がズレてもフェースがミスを軽減してくれる、やさしさと飛距離性能を詰め込んだシリーズです。
「エアロジェット」シリーズのドライバーは合計3モデルがラインアップされています。今回取り上げるのはスタンダード仕様の「エアロジェット ドライバー」。そのほかに、つかまり性能を高めた「エアロジェット MAX」と、低スピンでつかまり性能を抑えた「エアロジェット LS」があります。
●エアロジェットMAX:つかまり性能を高めた仕様。ソールウェイトは後方とヒール側に1個ずつ、計2個。高弾道でドロー傾向
●エアロジェット::シリーズの標準的仕様。ソールウェイトは後方に1個のみ。中弾道でストレート傾向
●エアロジェットLS:低スピン性能を磨いた仕様。ソールウェイトはフェース側に上下1個ずつ、計2個。低弾道でフェード傾向
モノトーンを基調としたデザインですが、カーボン模様とフェースすぐ後ろに搭載された2つの青いウェイトが目を引きますね。なかなかパンチがあります
<カタログ記載のスペック>
ボディ:811チタン鋳造+カーボンファイバークラウン&ソール
フェース:611チタン鍛造H.O.Tフェース
体積:460cc
ロフト:9度、10.5度
「エアロジェット」シリーズのドライバーはモデルによってヘッドシェイプがそれぞれ異なり、「エアロジェット LS ドライバー」はトゥ側にボリュームがある、いわゆる「洋ナシ型」です
ディープフェースと空力を追求して丸みを帯びたボディはシリーズ3モデルに共通。この「LS」はヘッド後方が最も高い位置に収まるハイバック形状にデザインされています
シャフトは、約60gのグラファイトデザイン製「TOUR AD for cobra」と、50g台前半のフジクラ製「SPEEDER NX for cobra」の2モデルを“純正”として用意しています。
「TOUR AD for cobra」は適度なしなりを持つ中調子。シャフトが余計なことをしないため、当てやすいのが魅力です。「SPEEDER NX for cobra」はしなりがやや大きく、加速感のある振り味が魅力です。
シャフトによって長さの設定が異なり、「TOUR AD」は45.25インチ、「SPEEDER」は45.75インチに設定されています。そのほか、カスタムモデルとして「SPEEDER NX 5」「TOUR AD CQ5」「Diamana GT 50」などが用意されています。
適度な重量とミートしやすさが魅力の「TOUR AD for cobra」
加速感のあるしなり戻りが魅力の「SPEEDER for cobra」
構えてみると、上級者が好むよい顔! という印象。投影面積はまずまず大きいのですが、きれいな洋ナシ形をしており、左への弾道を連想させません。
お借りしたスペックは純正「TOUR AD」のフレックスSでロフト角は10.5度。まずは軽くヘッドスピード38m/s程度で打ってみましたが、さすがに「LS」の名が付くだけあり、歯が立ちませんでした……。初速の高い弾道は打てるのですが高さが足りず、キャリーが足りません。つかまりもかなり抑えられているので、自分でつかまえる意識を強く持たないと、狙ったところに打ち出すのが難しい。
この「LS」は、あまり低いヘッドスピードで使ってもメリットは少なそうですね。球の高さが出すぎて困っていたり、左へのミスを絶対にしたくないといった悩みがあったりしなければ、スタンダードモデル「エアロジェット」か「MAX」を選んだほうが安定したティーショットが期待できると思います。
少々芯を外しても非常に低スピンで強い弾道が打てる「LS」。性能をある程度引き出すには、最低でもヘッドスピード42m/sは欲しいですね。はじき感の中にソフトな感触がある、気持ちよい打感です!
ヘッドスピードを高めていくと徐々にボールが上がり出しますが、それでも中弾道。スピン量が少ないため、飛距離を出すには高さが必須です。コブラの弾道調整機能はロフト調整がメインなので、これを大いに活用したいところ。
筆者のマックスのヘッドスピード43m/sで振っても、ボールは上がりきりませんでした。ロフト12度ぐらいで打つとちょうどよさそうです。また、ヘッドスピードを高めてもつかまり性能は変わりませんでした。ミスへの寛容性はかなり高めなので、少々芯を外してもつかまりを抑えた低スピンボールが安定して打てます。ひと言で言うならば、左のミスを心配せずに、ガンガン振っていける低スピンドライバーです。
2つ搭載された「LS」のウェイトは、主につかまり性能を調整するためのもの。標準はヒール側に重いウェイトが搭載されているので、入れ替えることによってつかまりを“さらに”抑えることができます。ただでさえつかまらないのに、さらにつかまらないセッティングがあるのは驚きでした。一応、入れ替えて打ってみましたが、案の定、まったくつかまりませんでした……
通常のウェイト位置でのデータです。フェースを戻しきれず、やや開いたインパクトになりましたが、それでもスピンは大きく増えずに中弾道です。距離は申し分ないですね! 直進性が高いため大きなスライスにはなりませんでしたが、このクラブでフックを打つのは至難の技です
「エアロジェット LS ドライバー」は、ハードヒッターのためのたたけるクラブに仕上がっていました。昨今のクラブの中では、トップクラスの低スピンとつかまりを抑えた性能を持ち、少々芯を外しても安定した低スピンの弾道を打たせてくれます。ハードヒッターほど左へのミスに悩む傾向がありますが、ターゲットはそういったゴルファーのみと言える仕様です。
ライバルモデルは、テーラーメイド「ステルス2 プラス」、キャロウェイ「パラダイム トリプルダイヤモンド」、ピン「G430 LST」などがあげられます。どれも重心距離が長めで、ヘッドターンを穏やかな挙動にしてつかまりを抑える傾向のあるモデルです。
ヘッドの性能を最低限引き出すには、ヘッドスピード42m/sぐらい、十分に引き出すには44m/s以上は欲しいところ。いざというときのフックに悩む、たたけるゴルファーにはぜひとも試してもらいたいですね!
写真:野村知也
ゴルフショップ店長、クラフトマン、クラブフィッターそして雑誌の編集・執筆業も行う、歌って踊れるゴルフライター。好きなクラブはパター、左利き/右打ち。愛称は「オグさん」。