オグさんです。今回は、スリクソン「Z-FORGED II アイアン」の試打インプレッションをお送りいたします。
「Z-FORGED II アイアン」
「Z-FORGED II アイアン」は、スリクソンブランドのアスリート向けアイアンにおけるフラッグシップモデル。前作「Z-FORGED アイアン」は、マッスルバック形状ながら過敏な操作性を抑えてボールコントロールを容易にするという、現代のツアープロやアスリートのニーズに合わせたモデルでした。
そんな前作に、松山英樹選手を始めとするダンロップ契約プロの意見を取り入れ、さらに進化させたのが「Z-FORGED II アイアン」です。
フェース中央部分の裏側を厚めにしたマッスルバック形状。ミラーとサテンの仕上げを使い分ける凝ったメッキを採用しています
「Z-FORGED II アイアン」#5
「Z-FORGED II アイアン」#7
「Z-FORGED II アイアン」#9
長い番手から短い番手まで、ヒール側とトゥ側のフェースの高さに差を付けた、伝統のダンロップ顔。全番手同じイメージで構えやすい形状は、番手感の繋がりもきわめて良好です。トップブレードはやや薄めで、全体的にシャープな印象を受けますね。
トゥ側から見るとフェース中央がくぼんで見えますが、ヒール側にも同じくぼみがあります。このくぼんだ部分の重量をバックフェース中央部とヘッド下部に持っていくことで打感や操作性を調整し、重心を深く低く設定しています
V字形状に削られたソールは、よりシビアなボールへのコンタクトを可能にし、ヌケをよくする工夫のひとつ。ヒール側とトゥ側も肉抜きされており、ヌケのよさを追求したソールに仕上がっています
ロフト角設定は7番で33度と、マッスルバックモデルとしては少しだけ立っている設定。ツアープロの要望なのか、メーカー側の思惑なのかわかりませんが、少しだけ飛距離を追求し、余分なスピン量を抑えたいのかなと想像させる設定数値ですね。
シャフトは、ダンロップが「ダイナミックゴールド」をベースに開発した「ダイナミックゴールド DST」を採用。通常の「ダイナミックゴールド」と違い、110g台の軽やかに触れるシャフトです。そのほか、カチッとした振り味の「KBS TOUR」も用意されています
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構えてみると、シャープさを感じさせながら、過度なプレッシャーを与えないバランスのよい形状という印象を受けました。トップブレードは薄いのですが、ブレード長が長めで、小ぶりではあるのですがあまり小さくは見えません。
お借りしたのは「ダイナミックゴールドDST」のS200が装着されたモデル。軽く素振りをしてみると通常の「ダイナミックゴールド」より軽く、軽やかに振り抜けます。
ドライバーでのヘッドスピード40m/sぐらいを意識して試打開始。何球か打ってみると、ロフトなりの高さで飛び出し、しっかりとしたスピン量をともなって飛んでいきます。飛距離もロフトなりで、飛距離が出やすいわけではありませんが、多少芯を外しても高さが出てくれるので、難しい印象は受けませんでした。飛距離を求めなければ、これくらいのヘッドスピードでも十分使えると思います。
操作性に関しては、前作同様さほど高くなく、ボールは思ったよりも曲がらない印象でした。意識してボールを曲げるように打てば曲がってくれますが、かなり大げさにやらないと大きくは曲がりません。言い換えれば、かなり大きくミスしない限り、極端な曲がりにはならないということです。
前作と大きく変わったと感じたのは、縦のコントロール性。低く抑えたり、高さを出したりといった上下の操作に加え、入射角やボール位置でスピン量もコントロールできる印象。こういった点が、ツアープロからの要望だったのかもしれません。
マッスルバックらしく、ヘッドの動かしやすさは強く感じます。それでいてミスショット時の左右の曲がりは小さめ。現代のニーズに合わせたクラブに仕上がっています
バックフェース左右の肉厚を薄めた形状が、オフセンターヒット時の曲がりすぎを抑えているのでしょう
ヘッドスピードを43m/sぐらいまで高めてみると、よりスピン量が増し、コントロール性も高まる印象でした。飛距離もヘッドスピードに合わせて伸びますが、多少フック目に打ってもあまり飛びすぎない、まさに上級者が好むアイアンに仕上がっています。上達思考の強いゴルファーには、腕前に関係なくこういうアイアンを使ってほしいと強く思いましたね。スコアメイクだけでなく、ボールをコントロールする技術が、使っているだけで自然と身に付く。そんなクラブだと思います。
打感は前作と比べてややソリッドに変化しました。これはカチッとした打感を好む松山選手の影響でしょうか? それでも、ほかのアベレージモデルと比べると十分にソフトな感触ではあります
7番アイアンのデータです。スピンはちょっと多すぎるぐらい入っていますが、33度のロフトとしては、十分な飛距離が出ています。右に打ち出して戻ってくるドロー系のボールは、ミスへの寛容性の高いモデルではなかなか打てない弾道。左右の曲がりが少なくなったとはいえ、こういう操作性の高さはさすがマッスルバックアイアンです
「Z-FORGED II アイアン」は、前作の“現代のニーズに合わせたマッスルバック”に、ツアープロからのフィードバックを追加した、最新のマッスルバックアイアンに仕上がっていました。ツアーで戦うために必要な操作性を持ちつつ、結果を重視するとこういうモデルができあがるのでしょう。
個人的には、前作の非常にソフトな打感が好みでしたが、ややソリッドな打感のほうが曲がりにくそうな印象を受けます。そういった感覚的な部分も、現代のアイアンにおける性能のひとつなのでしょう。
ライバルモデルは、ミズノ「JPX923ツアー」、ブリヂストン「220MB」、タイトリスト「620CB」といったところでしょうか。
プロでもミスに強いモデルを使う時代に開発された最新のマッスルバックアイアンは、皆さんが想像しているよりも難しくありません。スコアを減らすだけでなく、技術的なものをさらに学び身に付けたいと思うゴルファーには、ぜひこういうアイアンを手にしてもらいたいと思います。
写真:野村知也
ゴルフショップ店長、クラフトマン、クラブフィッターそして雑誌の編集・執筆業も行う、歌って踊れるゴルフライター。好きなクラブはパター、左利き/右打ち。愛称は「オグさん」。