オグさんです。今回は、タイトリストのアイアン「T100」(2023年モデル)の試打レビューをお届けします。
「T100」(2023年モデル)
タイトリストの「Tシリーズ」は、「常に最高の品質を持って、プレイヤーのパフォーマンスを最大限に引き出す」という理念に基づいて開発、設計されているシリーズです。
タイトリストのクラブは、ツアープロからのフィードバックを色濃く反映して作られています。「ツアーで戦うプロたちが認めるクラブこそ最高の製品だ」という理念があるからです。だからといって、アマチュアにとって難しいクラブかと言えば、決してそんなことはありません。
どんなシビアなコンディションでも、よい結果を出さねばならないツアープロは、クラブにコントロール性やフィーリング、ミスに対する寛容性などを求めます。最近ではコースが長くなり、さらなる飛距離をクラブに求める選手も増えてきています。これらのニーズは、実はアマチュアと何も変わらないのです。
タイトリストは、こういったゴルファーのニーズに対し、各人の好みや技量、クラブに求めるもの、そしてゴルフに対する考え方によってモデルが選べるように、今回の「Tシリーズ」では5つのヘッドで応えているのです。どのモデルにも共通して言えるのは、ミスヒット時にはミスの幅を軽減し、よいショットをよりよい弾道にしてくれること。それが、タイトリストのクラブなのです。
「Tシリーズ」の製品は、求める性能に合わせて、キャビティや中空など複数のヘッド構造が使い分けられています。どのモデルにも採用されているのが、内蔵のタングステンウェイト。重心をコントロールし、それぞれのモデルに求められる性能に仕上げられています。
またモデルごとはもちろん、番手ごとにも求められる性能を追求し、フェース素材を使い分けるという工夫も施されています。そういう性能面を追求する技術を搭載しつつ、フィーリング面に違和感が出ないように細かい部分まで各モデルは作り込まれているのです。
先述のとおり、2023年モデルの「Tシリーズ」には5モデルあります。前作から名前を変えずにモデルチェンジしたのが「T100」と「T200」、前作「T100S」の後継モデル「T150」、そして前作「T300」の後継モデル「T350」です。今回モデルチェンジしなかった「T400」は継続販売されています。
今回取り上げる「T100」以外のモデルの特徴は以下のとおりです。「T400」は「Tシリーズ」の一員ではありますが、極端に飛距離を追求したモデルなので想定ユーザーが異なるため、一般的なアマチュアゴルファーは実質4モデルから選ぶことになると思います。
●T150
上級者が好む操作性を維持しながら、適度な飛距離とミスへの寛容性を高めたモデル。
●T200
ミスへの寛容性を高めながら、さらなる飛距離を追求。打ち出しの高さにもこだわったモデル。
●T350
アイアンとして狙うための性能を残し、最大限の飛距離とミスへの寛容性を追求したモデル。
今回は、「Tシリーズ」の中で、ツアープロに好まれる「T100」を詳しく見ていきたいと思います。
バックフェース上部がくり抜かれたキャビティ構造を採用。バックフェース下部には、タングステンウェイトが内蔵されています。シンプルなデザインでカッコイイですね
T100・#5
T100・#7
T100・#9
ブレードは比較的薄めでシャープな印象ですが、ヘッドサイズはちょっと小さめといったサイズ感で、強いプレッシャーを感じるような顔ではありません。長い番手はグースがほんの少し強めに、そして短い番手はグースが控えめに見えます。グースが付けられてはいますが、ブレードにわずかな丸みをつけ、包み込むような印象を与えてくれるところなど、随所にツアープロのフィードバックと思われる部分が見え隠れしています。
ロフト角は7番で34度と、アスリートモデルらしいコントロール性を重視した設定。飛距離性能については、ほぼ考えられていないと言ってよいでしょう。
フェース素材は、3番から7番までは、SUP10と呼ばれるバネ鋼を、8番からPWまでは軟鉄を採用しています。これは、番手ごとの性能を追求するための工夫です
ソール幅には適度な厚さがありますが、リーディングエッジ側、トレーリングエッジ側それぞれに適度な丸みがつけられており、刺さりづらく抜けやすい形状に仕上げられています
「T100」に採用されているデュアルキャビティ構造の解説図。青いのは内蔵されているタングステンウェイト。トゥ側のウェイトが大きいことから、重心をフェースのセンターへ位置させる意図が見えます。芯付近は、ヘッド後方とフェース裏をつなぐ、キャビティバックバー構造を採用。フィーリングと安定性の両立に大きな効果を発揮します。※タイトリストHPより
「MODUS」シリーズの中では、比較的ゆったりとしなる「TOUR 115」。タイミングが取りやすく、コントロールしやすい特性を持っています
構えた印象は、う〜ん絶妙! といったところ。ヘッドサイズは、適度に小振りですがプレッシャーは感じません。ですが、ブレードが細めでシャープさを感じる部分はしっかりあり、上級者が好む顔に仕上げられています。
お借りしたスペックは「MODUS3 TOUR 115」のフレックスS。ドライバー換算でヘッドスピード38m/sぐらいをイメージして試打を開始しました。
ロフト角が7番で34度ということもあり、高さは申し分なし。ボールはしっかりと上がり、スピン量も文句なし。ミスへの強さも必要十分。トゥやヒールに外しても極端に飛距離ロスが起きることもなく、一定のエリアに安定してボールを運ぶことができました。
操作性に関しては、必要十分といったところ。マッスルバックと比べると曲がり幅は少ないですが、十分満足できるレベルです。フェース素材の異なる7番と9番を打ち比べたのですが、打感を含め、フィーリングの違いはほとんどわからないレベル。このあたりの作り込みはさすがだなと感じます。番手間で打感に違和感があるアイアンを、トッププレイヤーはよしとしませんから。
飛距離に関しては、もともと飛ばすことを考えていないモデルだけあり、必要最低限といったところ。飛距離よりも、操作性や安定性を重視するゴルファーのためのモデルです。
前作と比べて、より軽やかでクリアな打感になった印象。好みはあれど、この打感を嫌がるゴルファーはいないでしょう
ヘッドスピードを高めていくと、スピン量と打ち出し角がさらに上がり、飛距離が少しずつ伸びていきます。極端に強振しても飛距離が大幅に伸びることはなく、非常に高い安定感があります。「アスリートが求めるやさしいアイアンとは?」という問いに、タイトリストが出した答えがこの「T100」なのでしょう。
トゥとヒールに内蔵されたタングステンが、ミスへの寛容性を高めています。見た目以上にミスに強い!
スピン量がかなり多くなってしまいましたが、高さと飛距離は十分確保されています。狙ったところにも打ち出しやすく、いろいろとテクニックを使いたいゴルファーでもやさしく使える仕上がりです
「T100」アイアンは今回のモデルで3代目となりますが、より熟成した「アスリートのためのやさしいアイアン」に進化しています。余計な補正能力を与えず、ミスへの寛容性と操作性のバランスがとてもすばらしく、扱いやすいモデルです。
個人的に前作と比べて最も進化を感じたのは、洗練された打感ですかね。性能ももちろん進化していますが、どちらかと言えば洗練された印象。前作の「T100」も、十分完成されたアイアンでしたから。
ライバルモデルは、ブリヂストンの「221CB」、スリクソン「ZX7」、キャロウェイ「APEX MB」、テーラーメイド「P770」といったところ。
「T100」は、アスリートや上級者はもちろんですが、上達志向の強い初心者にもおすすめしたいアイアンです。余計な補正能力が付与されていないので、使い込むことでクセの少ないスイングが身に付くことでしょう。
写真:野村知也
ゴルフショップ店長、クラフトマン、クラブフィッターそして雑誌の編集・執筆業も行う、歌って踊れるゴルフライター。好きなクラブはパター、左利き/右打ち。愛称は「オグさん」。