オグさんです。今回は、ミズノのアイアン「Mizuno Pro 243」の試打レビューをお届けします。
「Mizuno Pro 243」
ミズノのアイアンには、「Mizuno Pro」と「JPX」という2つのブランドがあり、前者は日本を中心に、後者はワールドワイドに展開されています。「Mizuno Pro」はその名のとおり、ツアープロやアスリートに向けた仕様を3モデル、「JPX」はエンジョイゴルファーからツアープロまで幅広いゴルファーに向けた仕様を5モデルラインアップしています。
「Mizuno Pro」の前作は「Mizuno Pro 22」シリーズで、「221」「223」「225」がラインアップされていました。今作も同様に3モデルが用意されます。マッスルバックの「241」、キャビティバックの「243」、そして中空の「245」。これらのヘッド構造は前作と変わっておらず、熟成および正常進化のモデルチェンジと言えます。
ミズノは鍛造技術に独自のノウハウを持っており、鍛造アイアンの打感について大きなこだわりと自信をアピールしてきました。昔から、その打感はプロアマ問わず非常に高い評価を得ています。そんなミズノのアイアンを象徴する技術が「グレインフローフォージド」製法。これは、1本の丸棒をフェースからネックまで一体成型することで、打感に影響する鍛流線(たんりゅうせん)を途切れさせず、クリアな打感を得るための技術です。
鉄の丸棒。これがアイアンになります
丸棒を鍛造してアイアンの形に成型。フェースからネックまでひとつの素材から作るので、素材の繊維が途切れずクリアな打感が得られるとミズノは胸を張ります
また「ハーモニックインパクトテクノロジー」という技術も打感に関する技術のひとつ。打感に影響する打音を数十ヘルツの単位でチューニングすることで、さらに心地よい打感を追求しています。
今回ご紹介するのは「Mizuno Pro 24」シリーズの「243」。キャビティ構造を採用したモデルで、前作はプロや上級者の求める性能を有したちょっと飛ぶモデルとして高い評価を得ていました。今作ではどのように進化したのか非常に楽しみです。
ちなみに「Mizuno Pro 24」シリーズのほかの2種類の特徴は以下のとおりです。
●Mizuno Pro 241
「241」は、いわゆる軟鉄鍛造1枚もののマッスルバックモデル。軟鉄だけを使用し、「グレインフローフォージド」製法で仕上げた本格派のアイアンです。前作と比較すると、ヘッドがコンパクトになり、バックフェースの肉厚を見直すことで操作性を高め、さらにソリッドな打感を追求しています。
●Mizuno Pro 245
「245」は、アスリートのためのやさしいモデルとして設計された中空構造のモデル。ロフトの立っている番手のタングステン内蔵量を増やし、よりボールが上がりやすく、ミスにも強くした設計。薄肉化されたクロムモリブデン鋼のフェースによって、飛距離も追求しています。
余計な装飾のないシンプルなデザインを採用。彫刻されたランバードマークが存在感を放っていますね
Mizuno Pro 243・#5
Mizuno Pro 243・#7
Mizuno Pro 243・#9
アスリートモデルらしい、シャープでスリムなヘッド形状です。最近のモデルの中ではブレードが細めで、より鋭さを感じますね。どの番手も適度なグースネックになっており、構えたときのプレッシャーをちょっと緩和してくれます。
コンパクトなヘッドサイズで良好な操作性を持ちながら、キャビティバック構造によるやさしさをプラス。前作と比べてさらに薄肉化したフェースにより反発係と飛距離性能を高めた、欲張りなモデルです ※画像はミズノHPより
ヘッド内部にスロット(溝)を掘ることで、ミスへの寛容性を高める「新フローマイクロスロット」を採用。ロングアイアンは幅を広くして重心深度を深めることで高弾道を打てる性能に、ミドルアイアンでは反対に幅を狭めることで、打点ミスによるヘッドのブレを抑制しています ※画像はミズノHPより
ロフト構成は7番で32度と、アスリートモデルとしては少しだけ立っている設定。キャビティ構造やスロットの効果で、高さとスピンを維持しつつ飛距離を追求しています。
4〜7番までは鍛造したクロムモリブデン鋼をフェースに採用。8番から下の番手は軟鉄鍛造フェースです
ソール幅は、一見すると幅広く見えますが、トレーリングエッジが大きく落とされています。普段のショット時はじゃまをせず、やや厚めに入ったときに抜けがよくなるような設計です
シャフトのラインアップは、日本シャフトの100g台スチール「MODUS3 TOUR 105」と110g台後半のスチール「ダイナミックゴールド120」。軽く張りのある「MODUS」と、適度な重さと粘るしなり感のある「ダイナミックゴールド」という、キャラクターがまったく異なる2モデルから好みによって選べます。
130g台の「ダイナミックゴールド」の挙動を残しつつ、軽量化した「ダイナミックゴールド120」。自然とダウンブロー軌道になりやすい特性のシャフトです
構えてみると、しっかりとしたアスリート顔をしています。細めでシャープなブレード、コンパクトなヘッドサイズ、適度なグースと、下手なスイングはできないな、と身が引き締まります。
お借りしたスペックは、「ダイナミックゴールド120」のフレックスS200。ドライバーでのヘッドスピードで38m/s程度を意識して試打を開始しました。適度な高さとスピン量をしっかりともなった打球が飛び出し、落ち際がゆっくりと飛んでいくように見えます。スピンが最後までほどけず持続している証拠ですね。ツアープロやアスリートが好むアイアンに顕著なのですが、本機も弾道のコントロールが容易です。
ミスへの寛容性は、コンパクトなヘッドのキャビティとしてはごくごく一般的ですが、スピンが持続する、いわゆる“重い弾道”が打てるモデルとしてはかなりミスに強いと言えます。この部分はトレードオフ的な要素が強いのですが、そこをうまく両立させている印象です。
操作性は必要十分。ドロー・フェードの打ち分けはもちろん、ボールの弾道を意図的に作りたいプレイヤーの操作にしっかり応えてくれます。
飛距離性能は、あまり感じませんでした。このぐらいのヘッドスピードだと、普段私が使っているロフト34度のアイアンと、飛距離はほとんど変わりませんでした。飛距離を少しでも求めるなら「245」がおすすめです。
7番までクロムモリブデン鋼、8番からは軟鉄をフェースに使用していますが、違和感もなく、セットで一貫したフィーリングを実現させています。ソリッドでクリアな今までのミズノの打感を継承しつつ、ちょっとフェースへののり感がアップした印象。ちょっとやわらかさが追加され、ますます心地よい打感に進化しました
ヘッドスピードを高めていくと、打ち出し角が一段階高くなり、よりグリーンで止まりそうな弾道になりました。操作性やミスへの寛容性などは変化なし。
ヘッドスピードが控えめなときには感じなかった飛距離性能ですが、ヘッドスピードが高まると約5ヤード、半番手分飛ぶかなといったぐらいです。この5ヤードをどう見るかですね。
ヘッド内部に溝が彫られているのですが、フタがされていてスッキリした見た目に仕上げてあります。こういう部分は、購買意欲に地味に関わってくるんですよね。美しいヘッドは所有感を高めてくれます
7番のデータです。スピン量、高さは文句なし! 普段よりほんの少しだけ飛んでいます。操作性もよく、試合などに出るならこういったアイアンを使いたいなと思いました
「Mizuno pro 243」アイアンは、中級以上のテクニックを持つゴルファーが、スコアを追求するために必要な要素をしっかり詰め込んだモデルでした。操作性やフィーリング面は、好みはあれどツアープロや上級者が求める水準まで届かせ、ミスへの許容性をただ高めるのではなく、操作性やフィーリング面をじゃましないところを狙ってバランスを取ってきたなというのがこのクラブの印象です。
前作と比較すると、打感が向上し、ミスへの寛容性がアップしています。ライバルモデルは、ダンロップの「スリクソンZX7」、ブリヂストン「B221CB」、タイトリスト「T150」、キャロウェイ「APEX CB」あたりです。
「Mizuno pro」シリーズは、どれもアスリートや上級者がターゲットですが、「243」は、ややテクニックを求められるというか、テクニックを駆使してプレーしたいゴルファー向けだと感じました。
やさしさを求めるなら「245」がよいでしょう。マッスルバックの「241」と比較すると、違いはやはりミスへの寛容性ですね。「241」は操作性とフィーリングに“全振り”していますから。
「243」は、扱いやすさをあまり持ち合わせてはいませんが、テクニックのあるゴルファーが使うと、結果につながりやすい。実に玄人受けするモデルだと思います。
写真:野村知也