オグさんです。今回は、タイトリストのアイアン「T200」の試打レビューをお届けします。
「T200」アイアン
タイトリストの「Tシリーズ」は、「常に最高の品質を持って、プレイヤーのパフォーマンスを最大限に引き出す」という理念に基づいて開発、設計されているシリーズです。
そもそもタイトリストのクラブは、ツアープロからのフィードバックを色濃く反映して作られています。「ツアーで戦うプロたちが認めるクラブこそ最高の製品だ」という理念があるからです。だからといって、アマチュアにとって難しいクラブかと言えば、決してそんなことはありません。
どんなシビアなコンディションでも、よい結果を出さねばならないツアープロは、クラブにコントロール性やフィーリング、ミスに対する寛容性などを求めます。最近ではコースが長くなり、さらなる飛距離をクラブに求める選手も増えてきています。これらのニーズは、実はアマチュアが抱えるものと同じなのです。
タイトリストは、こういったゴルファーのニーズに対し、各人の好みや技量、クラブに求めるもの、そしてゴルフに対する考え方によってモデルが選べるように、今回の「Tシリーズ」では5つのヘッドで応えているのです。どのモデルにも共通して言えるのは、ミスヒット時にはミスの幅を軽減し、よいショットをよりよい弾道にしてくれること。それが、タイトリストのクラブなのです。
「Tシリーズ」の製品は、求める性能に合わせて、キャビティや中空など複数のヘッド構造が使い分けられています。どのモデルにも採用されているのが、内蔵のタングステンウェイト。重心をコントロールし、それぞれのモデルに求められる性能に仕上げられています。
また、モデルごとはもちろん、番手ごとにも求められる性能を追求し、フェース素材を使い分けるという工夫も施されています。そういう性能面を追求する技術を搭載しつつ、フィーリング面に違和感が出ないように細かい部分まで各モデルは作り込まれているのです。
先述のとおり、2023年モデルの「Tシリーズ」には5モデルがラインアップされています。前作から名前を変えずにモデルチェンジしたのが「T100」と「T200」、前作「T100S」の後継モデル「T150」、そして前作「T300」の後継モデル「T350」です。今回モデルチェンジしなかった「T400」は継続販売されています。
今回取り上げる「T200」以外のモデルの特徴は以下のとおりです。「T400」は「Tシリーズ」の一員ではありますが、極端に飛距離を追求したモデルなので想定ユーザーが異なるため、一般的なアマチュアゴルファーは実質4モデルから選ぶことになると思います。
●「T100」
ツアープロが求める“狙う”性能を重視し、それをじゃましないだけの寛容性を持たせたモデル。
●「T150」
「T100」とほぼ同じコンセプトとデザインだが、ロフトを2度立たせ、それにともなった専用設計が採用されたモデル
●「T350」
アイアンとして狙うための性能を残し、最大限の飛距離とミスへの寛容性を追求したモデル。
今回は、アマチュアが求める性能が詰まった「T200」を詳しく見ていきたいと思います。
中空構造を採用したボディは、マッスルバックのようなシンプルで美しいフォルム
T200・#5
T200・#7
T200・#9
ロングアイアンからショートアイアンまで流れがよく、美しい形状。「T100」や「T150」と同じブレード長とオフセットを採用しており、見た目はシャープです。
ロフト角は7番で30.5度と、アスリートモデルとしてはやや立った設定で、アベレージモデルのアイアンと同程度。「T100」とは、約1番手の差があり、やや飛距離性能を高めた仕様と言えます。
フェースには、飛距離の欲しい5番から7番までSUP-10というバネ鋼を、8番以下は軟鉄を使用しています。どちらの素材も鍛造で成形されており、打感も追求も怠っていません
比較的幅広いソールを持ちますが、リーディングエッジ、トレーリングエッジともに丸みを持たせており、刺さりにくく、抜けやすい形状
ヘッド内部の分解図です。青いパーツが低重心化を追求するためのタングステンウェイトで、赤いパーツが「マックスインパクトテクノロジー」と呼ばれるタイトリスト独自の技術。これで打感を向上させています ※画像はタイトリストHPより
シャフトは、すべてオリジナルのモデルを3種類ラインアップ。約110gで先中調子のスチール「N.S.PRO 105T」。94gから106gまで重さがフローする中元調子のスチール「N.S.PRO 880 AMC」。そして70gから88gまで重さがフローする中調子のカーボン「TENSEI AV BLUE AM」です。
どれも非常に凝ったシャフトですが、全体的に軽めの仕上がりなので、一般的な男性であれば「105T」から試すのがおすすめです。パワーに自信がない人や、もっと楽にプレーしたいという人には「TENSEI AV」がよいでしょう。
スチールでは珍しい先中調子の「105T」。非常にミートしやすく、重すぎず軽すぎずといった重量設定がちょうどよいでしょう
構えた印象は、美しい! のひと言。それもそのはず、基本的な形状は、ツアープロやアスリートを意識した「T100」や「T150」とほぼ同じだから。中空構造を採用した結果なのか、トゥ側の丸みや微妙に厚いブレードなどに違いは見られますが、美しい形状は変わりません。
お借りしたスペックは「105T」を装着したモデル。ドライバーでのヘッドスピード38m/s程度をイメージして打ってみると、ポンとボールがロフト以上に高く打ち上がり、直進性の高い弾道がオートマチックに打てます。先立ってレビューしている「T150」よりもロフト角は立っているのですが、それよりも楽にボールが上がりました。
感心したのが打感です。中空構造を採用しているので本来打感は作りづらいのですが、ややはじく感触はあるものの、「T100」や「T150」と非常によく似た、ソリッドで澄んだ感触を味わえます。
ミスへの強さはしっかりと感じられました。トゥとヒールの左右はもちろん、上下に芯を外しても弾道が変わりにくい特性です。
操作性は、ヘッドサイズが小ぶりなだけあり、ボールを適度に曲げられます。必要十分といった感じで、さすがに大きく曲げるのは難しいのですが、左右どちらにも操作できました。
中空構造にありがちな、打った瞬間ボールが飛んで行ってしまうような感触ではなく、フェースにある程度のっているようなフィーリングを持つ「T200」。このへんに、タイトリストの技術力やこだわりを感じます
ヘッドスピードを高めていくと、高い打ち出し角はそのままに、飛距離が伸びていきます。ミスへの強さ、操作性はヘッドスピードを控えめにして打っていたときと変化はありませんでした。アスリートモデルとしてはミスに強いのですが、つかまりがニュートラルに仕上げられているせいか、補正方法と言いますか、余計な補正をかけないところがよいですね。
いわゆるアベレージモデルのアイアンは、ミスすると狙いとは違う方向に強い球が飛び出し、思わぬ打球になってしまうことがありますが、「T200」はそれが少ない印象があります。ミスはミスなんですが、狙いとあまりかけ離れないところに留めてくれるというか……、結果につながりやすいアイアンだなというのが率直な感想です。
やや厚みのあるソールが、厚く入った(ダフり気味の)インパクトをほとんどなかったことにしてくれます。それでいてクラブとして美しいのはさすがタイトリスト!
7番の打球データ。筆者が普段使用しているマッスルバックと比較すると、高めの打ち出し角、申し分ないスピン量を発揮。グリーンをしっかり狙える球質ですが、飛距離は約1番手分飛んでいます。アイアンに飛距離を求めるアスリートには、重宝されそうな仕上がりです
「T200」アイアンは、最近多くなってきた“アスリートのためのやさしいアイアン”の、ど真ん中に位置するモデルに仕上がっていました。ニュートラルなつかまり、高い打ち出し角、余計なことをしないミスへの寛容性の高さ、適度な飛距離や操作性と、ある程度のテクニックと再現性の高いスイングを持っているゴルファーの理想と言えるモデルだと思います。前作比で最も進化を感じられた点は、打感です。ほかのTシリーズとのコンボセッティングを重視しているのか、混ぜて打っても違和感のないフィーリングは、今作の大きな特徴と言ってよいでしょう。
ライバルモデルは、ミズノ「Mizuno Pro 245」、ブリヂストン「222CB+」、キャロウェイ「APEX PRO」、グローブライド「オノフ KURO」といったところ。ロフト構成や構造が異なるモデルもありますが、どれもツアープロやアスリートが使えるやさしいアイアンです。
操作性が高く、打感などのフィーリングを最重要視したマッスルバックが好きな私としては、こういったモデルが流行るとちょっと困ってしまうのですが……打ってみると、結果を求めるゴルファーにこういったモデルが好まれる理由を改めて実感してしまいます。腕前に関係なく、スコアを追求するゴルファーにはおすすめです!