オグさんです。今回はミズノのアイアン「Mizuno Pro 241」の試打レビューをお届けします。
「Mizuno Pro 241」
ミズノのアイアンには、「Mizuno Pro」と「JPX」という2つのブランドがあり、前者は日本を中心に、後者はワールドワイドに展開されています。「Mizuno Pro」はその名のとおり、ツアープロやアスリートに向けた仕様を3モデル、「JPX」はエンジョイゴルファーからツアープロまで幅広いゴルファーに向けた仕様を5モデルラインアップしています。
「Mizuno Pro」の前作は「Mizuno Pro 22」シリーズで、「221」「223」「225」がラインアップされていました。今作も同様に3モデル用意されています。マッスルバックの「241」、キャビティバックの「243」、そして中空の「245」。これらのヘッド構造は前作と変わっておらず、熟成および正常進化のモデルチェンジと言えます。
ミズノは鍛造技術に独自のノウハウを持っており、鍛造アイアンの打感について大きなこだわりと自信をアピールしてきました。昔から、その打感はプロアマ問わず非常に高い評価を得ています。そんなミズノのアイアンを象徴する技術が「グレインフローフォージド」製法。1本の丸棒をフェースからネックまで一体成型することで、打感に影響する鍛流線(たんりゅうせん)を途切れさせず、クリアな打感を得るための技術です。
鉄の丸棒。これがアイアンになります
丸棒を鍛造してアイアンの形に成型。フェースからネックまでひとつの素材から作るので、素材の繊維が途切れずクリアな打感が得られるとミズノは胸を張ります
また「ハーモニックインパクトテクノロジー」という技術も打感に関する技術のひとつ。打感に影響する打音を数十ヘルツの単位でチューニングすることで、さらに心地よい打感を追求しています。
今回ご紹介するのは「Mizuno Pro 24」シリーズの「241」。軟鉄のみを使用したいわゆる“1枚もの”のマッスルバックモデル。軟鉄の素材からこだわり、ミズノ独自の鍛造技術によって作られています。最新のマッスルバックがどのような仕上がりなのか、非常に興味があります。
ちなみに、「Mizuno Pro 24」シリーズのほかの2種類の特徴は以下のとおりです。
●「Mizuno Pro 243」
「243」は、適度な飛距離とフィーリング、そしてミスへの強さをバランスよく配合したキャビティバックモデル。4番から7番は高い初速を得やすいクロムモリブデン鋼を、8番からPWまでは軟鉄を使い、それぞれ鍛造製法で仕上げています。番手ごとのつながりもよく、素材による打感の違いは言われないとわからないレベルです。
●「Mizuno Pro 245」
「245」は、アスリートのためのやさしいモデルとして設計された中空構造のモデル。ロフトの立っている番手のタングステン内蔵量を増やし、よりボールが上がりやすく、ミスにも強くした設計。薄肉化されたクロムモリブデン鋼のフェースによって、飛距離も追求しています。
マッスルバックならではのツルンとしたシンプルなデザインは、まるで日本刀のような美しさ
Mizuno Pro 241・#5
Mizuno Pro 241・#7
Mizuno Pro 241・#9
長い番手から短い番手まで、薄いブレードとスリムなネックで統一。ナイフのような鋭い見た目でやさしさを排除することで、いかにも操作しやすそうな顔に仕上げています。
前作「221」とヘッド形状を比較した図です。前作と比べ、かなり肉厚になったのがわかります(画像はミズノHPより)
現在市販されているモデルの中で、1〜2を争う大きなロフト設定。飛距離性能はほぼ考えられておらず、ターゲットを狙うために必要な高さとスピン量を重視しています。
フェース素材はボディと同じ軟鉄です。ミズノのこだわりであるネックからボディ、フェースまで一体で成形したヘッドは、クリアな打感を生み出します
ソールは意外と広く見えますが、前後に丸みを帯びています。見た目以上に抜けがよい仕様です
標準シャフトは、昔からアスリートに愛用されている「ダイナミックゴールド」のみ。もちろんカスタムでほかのシャフトと組み合わせることもできます
構えた印象は、ほっそ! でした(笑)。ブレード、ネックともに華奢とも言えるスリム形状に仕上げられており、細かな操作も受け付けてくれそうな印象。その半面、芯を外したら手がしびれそうな怖さもあります。形状は非常に美しく、古きよきアイアンの趣を持っています。
お借りしたスペックは標準の「ダイナミックゴールド」装着のモデル。ドライバーでのヘッドスピード38m/s程度をイメージして打ってみると、ロフトどおりの高い打ち出し角で飛び出し、しっかりスピンの入った弾道が飛んでいきます。
7番で飛距離は130ヤードぐらい。このロフト設定なら、妥当でしょう。操作性は、これくらいのヘッドスピードでもしっかりと感じられ、ドロー、フェード、上下への打ち分けが問題なくできました。
ミスへの寛容性はさすがに高いとは言えません。トゥ、ヒールに芯を外すと飛距離もそれなりに落ちますし、ボールも曲がります。ですが、この鋭い反応が操作性の高さの証明なので、しょうがないでしょう。そもそも、こういったモデルを使うゴルファーはミスへの寛容性を求めてはいないと思うので、これで問題はないと断言できます(笑)。
個人的に感じた進化は打感です。今回の「24」シリーズ全般に言えるのですが、打感がやや重くなったというか、フェースへの“のり感”がアップしました。前作はソリッドでクリアな打感だったのに対し、今作には少しやわらかさを感じるようになりました
ヘッドスピードを上げていくと、打ち出し角がさらに高くなり、それに伴ってスピンも増えていきます。飛距離も伸びていくのですが、急激にではなく、ヘッドスピードに合わせて徐々に伸びていく印象。飛距離の調整がしやすく、縦の距離のばらつきが少ない。
操作性は、もちろん変わらず。任意の方向にボールをしっかり曲げることができました。ヘッドスピードが高くなるほど曲げられる幅も広くなるので、パワーがあるゴルファーのほうが本機の性能をより引き出せると言えます。
ネック一体で鍛造する「グレインフローフォージド」。ネックにその刻印がされており、ミズノの熱意とプライドを感じます
7番でフェードを意識したデータです。ややフェースが開いたのでスピン過多でしたが、高さと最低限の飛距離は出ています。弾道を1球1球作っていくゴルファーにとっては、たまらないアイアンだと思います
「241」アイアンは、マッスルバックならではの操作性と打感のよさをぎゅっと詰め込んだモデルでした。何も足さない、何も引かないピュアなマッスルバックで、見た目、フィーリング、操作性において非常に高い完成度でした。
アイアンに飛距離やミスへの寛容性を求めるゴルファーには、見ただけで難しそうな先入観が湧きそうですが、正直その見た目どおりで、性能までシャープなアイアンに仕上がっています。前作も完成度が高いモデルでしたが、今作は個人的にフィーリング面が大きく進化したと感じましたね。前作の打感が好きな人もいると思いますので、ぜひ打ち比べてみてもらいたいです。
ライバルモデルは、ブリヂストン「220MB」、タイトリスト「718MB」です。今や軟鉄素材のみのマッスルバックは少なくなっていますが、こういったアイアンはスイングがそのまま弾道に表れるので、使っているとスイングスキルが最も身に付くモデルだと個人的には思っています。
高い技術を身に付けたいと考えるなら、まずは一度打ってみてほしいですね。そして、曲げる弾道に挑戦してみてください。思いどおりに曲げられたときの感動は、ミスに強いアイアンには決してないものですから。
写真:野村知也