オグさんです。今回はダンロップの「ゼクシオ13 ドライバー」について、前作「ゼクシオ12」と比較しながら試打解説します。
「ゼクシオ13」(左)と「ゼクシオ12」(右)のドライバー
「ゼクシオ(XXIO)」とは、日本のゴルフブランドでは、最も有名であると言っても過言ではないほど広く認知され、長く売れ続けているブランドです。
初代が2000年に登場して以来、ほぼ2年ごとのモデルチェンジを繰り返し、最新のモデルは何と13代目。ゴルフ業界にて、ひとつのブランドがこれほど長く愛されていることは非常にまれなことです。そして、2023年までに累計で1660万本を売り上げているという、ゴルフ業界史上最も成功したブランドといってもよいでしょう。
「ゼクシオ」は常に進化し続けており、現在では日本市場だけでなく海外でも注目されていて、2023年現在の販売比率は海外が57%と、グローバルで愛されるブランドへと成長しています。
そんな「ゼクシオ」の最新モデルである「ゼクシオ13」は、代々受け継がれている「ゼクシオ」らしさを継承しつつ、さらに進化してきました。「ゼクシオ」らしさとは、安定感の高い打ちやすさや性能だけでなく、打音や打感に至るまで細やかに計算されたクラブとしての完成度の高さです。「ゼクシオ13」はそこに、さらなる飛距離性能を追求したクラブとして登場しました。
今回のカギとなるテクノロジーは「BiFLEX FACE(バイフレックス フェース)」。フェース外周部の剛性を高めることでフェースのたわみを最適化し、高反発エリアを広げることに成功しています。さらに前作に搭載されていた、ダウンスイングでの空気抵抗を減らしてヘッドスピードを高める「ActivWing」をさらに進化させた「New ActivWing」を搭載。その効果をさらに高めているそうです。
ダンロップのアスリート向けブランド「スリクソン」に搭載されている「リバウンドフレーム」の技術をさらにブラッシュアップさせ、フェース周りにその技術を集中させた「BiFLEX FACE」。「リバウンドフレーム」も「ゼクシオ13」には搭載されているので、相乗効果が期待できます
前作は1枚羽だったのが今回2枚羽になったことで、より大きな効果が期待できる「New ActivWing」。切り返しからダウンスイングの前半までの空気の流れをコントロールすることで、ヘッドのブレを抑制する技術です
テクノロジー面で大きく進化した「ゼクシオ13」は、前作と比べてどのような進化をしているのかを意識しながら、今回はドライバーをじっくり試打していきたいと思います。
ヘッド形状は、代々引き継がれる「ゼクシオ」らしい丸形を採用。投影面積は適度なサイズに収め、見た目から振りやすそうな印象を与えてくれます
フェースにはスコアラインとレーザーで彫刻されたミーリングが施されていますが、構えてみるとあまり見えず、気になりません。トゥ側から見るとシャローバックになっていて、いかにもボールが上がりそうな印象を受けます
シャフトは、専用に設計された「MP1300」を装着。裏面に記載されている4桁の数字は「インターナショナルフレックスコード」と呼ばれるもので、シャフトの部位のしなる部分を表すもの。位が大きいほうがグリップ側、小さいほうがヘッド側の数値で、数値が大きいほどしなり量が少ない、つまり硬いことを示しています
構えた印象は「ちゃんとゼクシオ!」といった感じ。前作と比較しても大きく変わったところはほとんどなく、スッと構えられますね。大きくもなく小さくもないサイズ感が、どんなゴルファーも構えやすいと感じる絶妙な大きさと形状だと思います。
新作のドライバーは、前作と比較して、0.25インチ短くなったのですが、これは長さのローカルルールに適応するため。前作でもルール違反ではないものの、エリートクラスの試合では使用がほとんど認められない“60度法での計測による46インチ”を超えてしまうため、そのルールに適応させるために短くなりました。
お借りしたスペックはフレックスSの10.5度で、ヘッドスピードを35m/sぐらいから試打スタート。素振りをした時点で感じるのが、ヘッドの重さです。バランス的には極端ではないものの、クラブ総重量が軽いため、振ってみるとヘッドの存在感をしっかり感じられますね。前作でも同様の感覚はありましたが、新作のほうがより強く感じました。
実際にボールを打ってみると、この重さが自然とヘッドを走らせてくれて、スムーズに振り切れます。シャフトが負荷をかけただけしっかりとしなり、しなやかにしなり戻ってくれるので、頑張って振らなくても振り切れる。代々受け継がれる「ゼクシオ」のよい部分ですが、新作はそれをさらに強く感じられるようになりました。
実際の弾道はというと、前作よりややスピンが減った印象を受けます。ボールの上がりやすさは前作でもすばらしく、ほぼ同等といった感じですが、ややスピンが減り、前に飛ぶようになりました。打点ズレによるミスへの寛容性の高まりも感じます。前作も十分ミスに強かったですが、芯を外しても初速が落ちにくく、そしてスピンが増えにくくなりました。
つかまり具合はほどよい味付けで、前作と同じぐらいですね。ボールの直進性も同じくらいだと感じました。
打感、打音はまごうことなき「ゼクシオ」のもの! 澄んだ高めの金属音と軽やかな打感は、打っていて非常に気持ちよい!
2枚羽になった「New ActivWing」。切り返し時のヘッドのブレを抑制し、正しいプレーンにヘッドをのせてくれます
ヘッドスピードを高めていくと、40m/sぐらいまでは、順当に飛距離が伸びていくのですが、そこを超えると、芯を外したときにスピン量がやや増えていきます。13代目には今回紹介している「ゼクシオ13」のほかに「ゼクシオX」というラインがあり、そちらは、ややアスリートに向けた設計です。「ゼクシオ13」はヘッドスピードが控えめなゴルファーをターゲットにしっかりと作り込まれているため、ヘッドスピードが速めのゴルファーが使うアンダースペックになってしまうでしょう。
芯でとらえれば振ったら振っただけ飛距離が出るのですが、打点がズレたときに、曲がり自体は少ないですが飛距離ロスが大きくなりますね。前作は速いヘッドスピードで打つと全体的に飛距離ロスがあった印象なので、全体的には飛ばせるクラブに仕上がっていますが、ヘッドスピード42m/sぐらい出せるゴルファーなら「ゼクシオX」のほうが安定した距離が期待できると思います。
自分自身のパワーでしっかり振ったときのデータです。軽量なクラブのためヘッドスピードは出ていますが、スピン量が増えてしまい思ったより飛距離につながっていません。もう少し抑えめのヘッドスピードで振ったほうが効率よい弾道が期待できるクラブです。これだけのスピン量でもサイドスピンがほぼ入らないストレートの弾道は、「ゼクシオ13」のミスへの強さ、直進性の高さを表していますね
「ゼクシオ13」ドライバーは、前作と比べて、ボールの上がりやさや振りやすさをそのままに、飛距離性能と曲がりにくさを上乗せしたクラブに仕上がっていました。前作や過去のモデルから持ち替えたときに違和感が出ないあたりは、さすがだなぁと感じます。
前作との違いをまとめると以下のとおり。
●「BiFLEX FACE」による反発エリアの拡大(前作よりミスに強くなり、芯を外しても初速が落ちにくくなった)
●「New ActivWingによる切り返し後のヘッドのブレの抑制効果が拡大(空気抵抗軽減効果によってオンプレーンに振りやすくなった)
●クラブ長が45.75インチに(前作は46インチ)
●ミスへの強さはそのままに1発の飛び性能が高まった(個人的感想)
個人的に、1発の飛びは新作が最もすぐれていると感じましたね。安定感は欲しいけど、いざというときは、しっかりと飛ばしたい。そんなゴルファーには、ピッタリなクラブだと思います。
写真:野村知也