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テーラーメイドが極めたのは“やさしさ”だった! 新モデル「Qi10」発表会速報

オグさんです。今回は2024年1月10日に行われたテーラーメイド新製品発表会の速報レポートをお送りします。

発表されたプロダクトは「Qi10」(キューアイテン)シリーズです!
これが何を意味するかは後述しますが、前作、前々作と使われていた「ステルス」の名前は、いったん終了という形になりました。テーラーメイドのことですから、またしばらくしたら復活するかもしれませんが……。

今回の開発テーマは慣性モーメント

今回のテーマは「やさしさ」。現代のドライバーでミスへの強さ、寛容性を語るうえで、重要なのが、「慣性モーメント」です。慣性モーメントとは、ゴルフで言うと「ヘッドのブレなさ度合い」です。芯を外したときにヘッドのブレが小さいほど、余計なスピンや方向のブレを抑えることにつながります。テーラーメイドも10年ほど前から慣性モーメントを漸次増大させており、ミスへの寛容性の高さを高めてきています。

過去のクラブの慣性モーメントの数値の変化を表した図。徐々に大きくなっているのが見て取れます

過去のクラブの慣性モーメントの数値の変化を表した図。徐々に大きくなっているのが見て取れます

クラブの慣性モーメントを高めるには

慣性モーメントを高めるには、いくつか方法があります。

まずヘッドの重心を深くする。これは、余剰重量をヘッドの後方に配置するのが一般的で、割りと簡単にできますが、重心位置を深くするとフェース面上の重心点が高くなります。弾道で言えば、スピンが増えやすいのです。

また、重心をより深くするにはヘッド自体を後方へ大きくする必要があります。これもルールの範囲を逸脱しなければさほど難しいことでありません。しかしヘッドが大きくなればスイング中の空気抵抗も増大し、ヘッドスピードが高めにくくなります。

もうひとつ、ヘッドの重量を重くするという方法もあります。こちらもウェイトを増やせばよいので、難しいことではありません。しかし、ヘッドが重くなれば振り心地も低下しやすくなりますし、何より速く振りにくいため、ヘッドスピードの低下につながります。

曲がりにくくミスに強い、慣性モーメントの高いドライバーは、作ろうと思えば簡単に作れるのですが、何も対策を練らずに設計してしまうと、振りづらく飛ばしにくいドライバーができあがってしまうのです。テーラーメイドは飛距離性能と慣性モーメントのバランスを取りながら年月をかけ、それらのベストなバランスを探り、発生する問題点の解決方法を探っていたのでしょう。

単に慣性モーメントを高めるだけなら簡単にできますし、ミスに強くなるクラブができることも、テーラーメイドに限らずすべてのギアメーカーはわかっています。それを極端にやらなかったのは、慣性モーメントを大きく高めると、振りにくさやスピン量の増大など、別の問題が発生するということも十二分に理解しているからです

単に慣性モーメントを高めるだけなら簡単にできますし、ミスに強くなるクラブができることも、テーラーメイドに限らずすべてのギアメーカーはわかっています。それを極端にやらなかったのは、慣性モーメントを大きく高めると、振りにくさやスピン量の増大など、別の問題が発生するということも十二分に理解しているからです

大慣性モーメントの”弊害”を取り除け!

慣性モーメントを高めることで発生するこれらの問題を解決するために、テーラーメイドはさらなる余剰重量を生み出すため、最適素材の探求に着手。テーラーメイドには、他メーカーにはないカーボンフェースのノウハウがあります。カーボンフェースには、ヘッドで最も重さの集中しやすいフェース周りを軽くできるという非常に大きなメリットがあります。このフェース周りの軽さを生かしつつ、ヘッド形状から見直し、さらに各パーツをも見直すことでこの問題に立ち向かったのです。

各パーツの見直しは、細部にわたります。たとえばクラウン。前作は7割程度だったカーボンの割合を今作では97パーセントまで拡大し、さらなる余剰重量と低重心化を図っています。また、カーボンフェースを支えるフェース周りのチタン部分も肉薄化によって軽量化。こういった作業の積み重ねによって、多くの余剰重量を生み出すことに成功しました。

ヘッドの各パーツの主な重量を示した図です。黄色い文字で示されているのがカーボンを使用したパーツ。それ以外が金属など他素材のパーツです

ヘッドの各パーツの主な重量を示した図です。黄色い文字で示されているのがカーボンを使用したパーツ。それ以外が金属など他素材のパーツです

前述のとおり、慣性モーメントを高めるには、重心を深くすることが有効であり、より深く設定するには、ヘッドを後方に伸長する必要があります。「Qi10」シリーズでは、しっかりそこも見直しています。今回最もミスに強い「Qi10 MAX」というモデルは、前作の「ステルス2 HD」の後継に当たるものですが、前作と比べてヘッド後方が8mmもストレッチされているのだそう。

投影面積も大きくなり、視覚的にも安心感のある、ミスに強そうな印象になりました。もちろん見た目だけではなく、より深く低い重心を達成することによって、余計なスピンの入りづらい性能面も追求しています。

どのモデルも構えた瞬間に、ミスに強そうな顔つきになったと感じます。これはドライバーが安定しないアマチュアにとって、非常によい変化点だと思います

どのモデルも構えた瞬間に、ミスに強そうな顔つきになったと感じます。これはドライバーが安定しないアマチュアにとって、非常によい変化点だと思います

細かいパーツの見直しによって生み出した多くの余剰重量を、慣性モーメントを高めるために見直したヘッド形状に組み込むことで、慣性モーメントを高めつつ、そのデメリットを極限まで抑え込んでいます。他社にはないカーボンフェースの恩恵が大きく、「Qi10」シリーズの進化の秘密はそこにあると思います。

慣性モーメントを高めるためにヘッド後方に30gものウェイトを搭載。しかしそれだけでは高慣性モーメントのデメリットが色濃く残ってしまいます。そこで、ヘッド全体に重量を分散させることでデメリットを軽減させ、ミスへの強さと飛距離性能を両立させているのです

慣性モーメントを高めるためにヘッド後方に30gものウェイトを搭載。しかしそれだけでは高慣性モーメントのデメリットが色濃く残ってしまいます。そこで、ヘッド全体に重量を分散させることでデメリットを軽減させ、ミスへの強さと飛距離性能を両立させているのです

ということで完成した「Qi10」シリーズ。ネーミングの由来は、QUEST(探求)とINERTIA(慣性)のそれぞれの頭文字と、10(慣性モーメントで達成した値。10,000=10K)を組み合わせたもの。テーラーメイドらしい、チャレンジングなシリーズに仕上がっています。

注目のドライバーは3種類

「Qi10」シリーズのドライバーは3種類ラインアップ。それぞれを簡単にご説明しましょう。

「Qi10 MAX ドライバー」

前作の特徴のひとつであったツートンのクラウンがなくなり、つるっとした見た目になりました。投影面積もかなり大きくなり、非常にやさしそうな印象を受けます。ソールデザインもテーラーメイドとしてはかなりシンプルな仕上がりです

前作の特徴のひとつであったツートンのクラウンがなくなり、つるっとした見た目になりました。投影面積もかなり大きくなり、非常にやさしそうな印象を受けます。ソールデザインもテーラーメイドとしてはかなりシンプルな仕上がりです

「Qi10 MAX」は前作の「ステルス2 HD」の後継に当たるモデル。3モデルの中では、最もミスに強くボールが上がりやすく、そして直進性にすぐれています。

ネーミングの由来のひとつである「10」の数値は、このMAXが達成しているヘッドの左右慣性モーメントと上下慣性モーメントの合計値が10,000を超えているところから取られています。「Qi10」シリーズの特性を最も表しているのがこの「MAX」と言ってよいでしょう。

カーボンフェースは第3世代に突入。「60層カーボンツイストフェース」となり、偏肉構造によって広い範囲での高反発エリアを実現しています

カーボンフェースは第3世代に突入。「60層カーボンツイストフェース」となり、偏肉構造によって広い範囲での高反発エリアを実現しています

「Qi10 ドライバー」

「MAX」ほどではないにしろ、こちらも投影面積が大きく、かなりやさしい印象を受けます

「MAX」ほどではないにしろ、こちらも投影面積が大きく、かなりやさしい印象を受けます

「Qi10」シリーズのスタンダードなポジションに当たるモデルで、「ステルス2」ドライバーの後継に当たります。「MAX」よりは、慣性モーメントを低く抑え、ミスへの寛容性、高弾道、直進性を高めながら、適度な操作性を持たせた特性です。

「Qi10 LS ドライバー」

前作の「ステルス2 プラス」と同等の洋ナシ形状を採用していますが、ひと回り大きくなった印象があります

前作の「ステルス2 プラス」と同等の洋ナシ形状を採用していますが、ひと回り大きくなった印象があります

「Qi10 LS」は、前作の「ステルス2プラス」の後継に当たるモデル。つかまりを抑えた、ツアープロや上級者に向けた仕様です。シリーズで唯一、可変ウェイトによる弾道調整機能を有しています。このモデルはテーラーメイドセレクトフィットストア限定の販売です。

FWとUTも3種類ずつ

FWとレスキュー(UT)も3モデルずつラインアップ。この構成は「ステルス2」シリーズと変わっていません。前作との相違点は、「LS」はドライバーのみに使われ、FWとレスキューではそれぞれ「TOUR」のネーミングが与えられるところ。

スタンダードなラインの「Qi10 FW」。投影面積もわずかながら大きくなった印象があり、かなりミスに強くなっているのではないでしょうか

スタンダードなラインの「Qi10 FW」。投影面積もわずかながら大きくなった印象があり、かなりミスに強くなっているのではないでしょうか

「Qi10 MAX レスキュー」は、つかまりやすそうなアップライトな設定で、右へのミスをかなり軽減してくれそう

「Qi10 MAX レスキュー」は、つかまりやすそうなアップライトな設定で、右へのミスをかなり軽減してくれそう

1種類のアイアンをラインアップ

Qi10 アイアン

「ステルス アイアン」に比べると、いくぶん丸みを帯びた印象

「ステルス アイアン」に比べると、いくぶん丸みを帯びた印象

「Qiアイアン」は、大ヒットした「ステルス アイアン」のリプレイスモデル。中空構造など、基本構造は大きく変わっていませんが、番手別の専用設計を採用し、さらに全体性能が底上げされています。

「ステルスアイアン」は、前々作の「ステルス」シリーズと同時に発売されたモデルでしたが、モデル末期の2023年後半でもずっと売れ続けていました。それだけアマチュアに愛されたモデルの正常進化版が、この「Qi10 アイアン」です。

テーラーメイド独自のさまざまなテクノロジーが使われているハイテクアイアンと言えるでしょう

テーラーメイド独自のさまざまなテクノロジーが使われているハイテクアイアンと言えるでしょう

「Qi10」シリーズは、2024年2月2日発売予定です。追って詳しい試打レビューをお届けしますので、楽しみにしていてください!

小倉勇人
Writer
小倉勇人
ゴルフショップ店長、クラフトマン、クラブフィッターそして雑誌の編集・執筆業も行う、歌って踊れるゴルフライター。好きなクラブはパター、左利き/右打ち。愛称は「オグさん」。
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芝崎 瞬(編集部)
Editor
芝崎 瞬(編集部)
自動車専門媒体からゴルフ専門メディアを経由し、価格.comマガジンへ。クルマは左ハンドルMTに限る! と思って乗り継いでいたが翻意して今は右AT。得意クラブは、強いて言えばミドルアイアン。
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