オグさんです。今回は、コブラの「ダークスピード(DARKSPEED)」ドライバー3モデルの試打インプレッションをお届けします。
「ダークスピード」のドライバー3モデル
コブラは、他メーカーの開発陣にも一目置かれるクラブメーカー。独創的で、個性豊かなクラブを作ることで知られています。一般論にとらわれない目線で開発されるクラブは、高性能かつ明確な個性を持つモデルばかり。今回の「ダークスピード」シリーズも明確な個性を持っており、その個性がハマるゴルファーには、びっくりするほどの結果をもたらしてくれるはずです。
「ダークスピード」シリーズのドライバーに搭載されるテクノロジーは主に3つ。まずは、ボディ全体を滑らかなシェイプにすることで空力性能を高めた「エアロダイナミックシェイピング」。次に、フェースすぐ裏の下側内部に、フェースに密着させることなくウェイトを配置することによって、ヘッド剛性に干渉せず低重心化を実現させた「パワーブリッジ・ウェイティング」。最後に、フェースを15分割し、それぞれのエリアの反発やミスへの寛容性を、AIによってシミュレーションして設計された「パワーシェル AI H.O.T フェース」です。
これら3つのテクノロジーは前作からのキャリーオーバーですが、今回の新作にはウェイトを入れ替えることで弾道のチューニングができる「ウェイトシステム」が新たに搭載されています。特性の異なる3モデルがラインアップされており、それぞれのアジャスト能力を高めることで、個々のゴルファーによりフィットするドライバーに仕上げられています。
フェースを15分割し、AIによって設計されている「パワーシェル AI H.O.T フェース」のイメージ図 ※コブラHPより
「ダークスピード」のドライバーは、「X」「MAX」「LS」の3種類。シリーズの標準的なモデルが「X」、ボールが上がりやすく、つかまり性能が高い「MAX」、そして、低スピンで強弾道モデルの「LS」です。
ほかのメーカーでは、「MAX」のネーミングがシリーズのスタンダードモデルに使われることもあるので、混同しそうですね(ピン「G430 MAX」やキャロウェイ「パラダイム Ai スモーク MAX」はそれぞれ属するシリーズの標準モデル)。
余計なスピン量を軽減し、適度なつかまりと上がりやすさを持つモデル。コブラ史上最大級の慣性モーメントを実現し、ミスへの寛容性も高いです。
低スピンで強い弾道を打ちやすく、幅広いゴルファーに対応したモデル。慣性モーメントやミスへの寛容性が高いが、つかまりはやや抑えてあります。
ツアープロや上級者に向けた、非常に低スピンでつかまりを抑えたモデルです。ある程度のヘッドスピードがないと、ボールがドロップしてしまうほどの強弾道バイアス。
慣性モーメントがシリーズ中で最も高く、直進性も高いドライバー。打点のミスにも強く、適度なつかまりと上がりやすさを持っています。こういうモデルはスピン量が多めになることが多いものですが、本品のスピン量は適度で、飛距離も期待できます。
全体をブラックでまとめた精かんなデザイン。ウェイトが、ヒール側とソール後方に2か所搭載されています
投影面積は大きいのですが、マット仕上げにより、それほど鈍重なイメージはありません。クラウンの後方はカーボン模様がデザインされており、ハイテクな印象を受けます。ヘッドシェイプは角のある丸形といった感じ。カラーの印象もあって、当たり負けしなそうな強さを感じます
厚みのあるディープフェースで、上下のミスにも強そうですね。トゥ側から見ると丸みを帯びており、いかにも空力性能がよさそう
シャフトは2モデルをラインアップ。どちらもオリジナルで、50g台前半の重量設定で先中調子の「SPEEDER NX for COBRA」と、50g台後半の重量設定で中調子の「TOUR AD for COBRA」。
適度に走る「SPEEDER」に対し、ややゆったりとしなる「TOUR AD」といった感じです。
純正シャフトらしく、クセがなくて扱いやすい「SPEEDER NX for COBRA」
多少強振しても潰れすぎない強さを持つ「TOUR AD for COBRA」
構えた印象は、やさしそうなのに精かん! 投影面積は大きめで、見た目から感じるやさしさの中に、締まって見えるカラーリング効果でいかにもといった雰囲気がなく、なかなかうまくまとまっています。
試打した個体は「SPEEDER」装着の10.5度。ヘッドスピード38m/s程度を意識して打ってみると、打ち出し角高めで低スピンの弾道が飛んでいきます。つかまりも適度で、非常に扱いやすく感じました。
芯を外しても弾道が変わりにくく、飛ばせる弾道が安定してオートマチックに打てます。操作性はわずかにあるかな、といった程度で、基本的には直線的に狙うためのドライバーでしょう。
ヘッドスピードを速めても印象はさほど変わらず、飛距離だけが伸びていく印象。一般的なアマチュアゴルファーには、この「MAX」がおすすめです。
打感はややソリッドですが、不快な感じはありません。安定感が「MAX」最大の魅力ですね
2か所に搭載されているウェイトを入れ替えると、つかまりを抑えることもできます
トゥ側で打ったデータです。スピン量は増えてしまいましたが、軽いドローで収まっています。高さも出ていますし、非常に安定したティーショットが期待できます
打点のミスに強く、強弾道が打てるのは「MAX」と共通ですが、スピンがより少なく、つかまりもニュートラルから少しだけ逃げる方向に味付けされています。左を気にせず、しっかりと振っていけるドライバーと言えるでしょう。
差し色が赤の「MAX」に対し、青を使っている「X」。ウェイト位置は、ソール後方と中央です
基本的なヘッドシェイプは「MAX」と似ていますが、この「X」はボリュームがトゥ側に移動し、洋ナシ型に寄っています
ディープフェースで流線形のヘッドはシリーズ共通。ヘッド後方の高さが、「X」のほうがわずかに高いですね
構えた印象は、ちょっと手強そう……。基本は「MAX」と変わらないのですが、ヘッドシェイプが洋ナシ型っぽいため、ちょっとつかまらなそうに見えます。これは逆に、しっかり振っていけそうな安心感とも言えますね。
試打クラブは「SPEEDER」装着の10.5度。ヘッドスピード38m/s程度で打ってみると、「MAX」比で一段階弾道が低くなり、ライナー性の球が飛び出します。つかまりがかなり抑えられており、ストレートを意識して打ってみるとわずかにフェードしていきます。
また、「MAX」に比べて重心距離が長くなっているのか、同じイメージで振るとわずかに右に飛び出します。左へのミスをなくしたいゴルファーには非常によいのですが、右へのミスをなくしたいゴルファーにとっては結構ハードに感じるかもしれません。
ミスへの寛容性は高く、打点が多少ズレても安定したショットは打てますが、ボールをつかまえる技術がある程度ないと、右へのミスが増えてしまうかもしれません。
ヘッドスピードを高めていくと、「MAX」よりもスピンが抑えられ、飛距離につながります。よほどのことがない限りは左に飛ばないので、フック傾向のゴルファーは安心して振っていけますね。
フェースローテーションを抑えて打つイメージを持つと非常に安定したショットが打てました。最新のデカヘッドらしい挙動です
ストレート弾道を意識して打ったデータです。インパクトで少しフェースが開いてしまい、スピン量が少し増えていますが、そのまま曲がらずまっすぐ飛んでいきました。スピン軸が傾きにくいのが特徴です
シリーズ唯一ウェイトを3つ搭載することで、すぐれたアジャスト能力を持つアスリートモデル。シリーズの中で最もつかまりを抑えて低スピンに設計されており、生半可なヘッドスピードでは性能を引き出せない強さがあります。
完全モノトーンでデザインされ、佇まいからもハードさが伝わってきますね。ウェイトはソール後方に1つ、ソール前方に縦に並ぶように2つ、計3つ搭載され、ヘッド特性が3パターンから選べます
ほかのモデルよりもひと回り小さく、より精かんに感じます
フェースの厚みはシリーズの中で最大で、ヘッド後方の高さも最も高い位置に設計されている、まさに強弾道仕様
構えてみると、果たしてボールの高さは出るかな……という印象を受けました。ただでさえ黒一色で締まった外装なのに、ほかよりひと回り小振りのサイズが、いかにも手強いオーラを放っています。
試打したのは、10.5度の「TOUR AD」装着個体。ヘッドスピード38m/s程度で打ってみると、高さは出ず右に滑っていく弾道で、38m/sでは、このクラブの性能を生かしきれませんでした。
ヘッドスピードを徐々に高め、42m/sぐらいでようやくドライバーらしい弾道になりました。それでもギリギリ中弾道と呼べるぐらいのライナーで、スピンも非常に少ないです。こういったモデルにしては打点のミスに強いのですが、「MAX」や「X」と比較すると飛距離ロスはやや大きいですね。つかまりもかなり抑えられていて、結構強めのドローボールを意識して打たないと、フェード系になってしまいます。
操作しようと思えばほかの2モデルよりはできますが、「操作性がよい」のとはちょっと違う感じを受けました。「LS」の性能を十分に引き出すには、ヘッドスピード45m/s以上は必要でしょう。
気持ちよく振り切れますが、ちょっと気を抜くとすぐ右へ滑っていく弾道に。それでもスピンが極端に多くならないのが「LS」のよいところです
3gが2つ、12gが1つの計3つのウェイトを搭載。ヒール側に12gを据える初期設定が最もつかまる仕様。12gをソール後方に据えると高さが出しやすく、トゥ側にすればつかまりを抑えた特性になります
強いフックをイメージして打ったのですが、普通のドローにしかなりません。パワーヒッターでフックに悩むゴルファーにはぴったりです。ヘッドスピードが45m/sに届かないなら、「X」のほうが安定するでしょう。「LS」は完全にハードヒッター用ですね
「ダークスピード」シリーズは打点のミスに強く、低スピンで直進性にすぐれており、モデルごとにつかまりや上がりやすさ、スピンの入り具合に差が付けられています。各々アジャスト機能を有していますが、すべてつかまらない方向への調整なので、まずは標準仕様で打ってみて、ストレートかややドローになるぐらいのモデルを選ぶとよいでしょう。
改めて3つのモデルをまとめると、
「MAX」
最も上がりやすく、つかまり性能も高いモデル。それでも、一般的な基準では“ちょっとつかまる”程度なので、中級者までなら「MAX」がおすすめです。ライバルモデルは、ブリヂストン「B2HT」、キャロウェイ「パラダイム Aiスモーク MAX D」、ピン「G430 MAX」など
「X」
ニュートラルからちょっとだけ逃げるつかまり特性で、安心して振っていけます。フックに悩む中・上級者向けのドライバー。ライバルモデルは、テーラーメイド「Qi10」、ピン「G430 MAX 10K」など
「LS」
ハードヒッター向けの極低スピン性能で、生半可なパワーでは性能が引き出せません。ボールをつかまえる技術は必要ですが、ヘッドスピードが速いゴルファーほど飛距離につながる可能性の高いドライバー。ライバルモデルは、テーラーメイド「Qi10 LS」、ピン「G430 LST」など
試打を終え、相変わらずコブラのクラブは個性が強いなあと感じました。クラブの個性とマッチしたゴルファーには、驚くほどの結果をもたらすはずなので、ぜひ1度手に取ってもらいたいですね。特に「LS」は、ヘッドスピードの速いゴルファーほど飛距離につながりそうな特性を持っています。パワーに自信のあるゴルファーは、ぜひ打ってみてください!
写真:野村知也