オグさんです。今回はスコッティ キャメロンの「ファントム」シリーズの試打レビューをお届けします。
多彩なラインアップを揃える「ファントム」シリーズ
スコッティキャメロンは、パター職人であるスコッティ・キャメロン氏によって設立されたブランドです。設立当初はごく小規模で展開していましたが、ツアー会場にみずから足を運び、ツアープロがパターに求めるありとあらゆる情報を調査。それを形にした結果、複数のプロが彼のパターを使用して活躍したことで、一気にメジャーブランドへと躍り出ました。
使用選手で有名なのが、タイガー・ウッズ。若かりし頃のタイガーが使用したパターは、当時世界的に大人気となり、びっくりするほどのプレミアム価格がついたこともありました。
現在、スコッティキャメロンの市販モデルは、「タイトリスト」を有するアクシネット社から販売されています。スコッティキャメロンのパターの特徴は、ツアープロからのフィードバックに基づいた機能はもちろん、仕上げの美しさもあげられます。性能だけでなく所有感も満たしてくれるパターが、スコッティキャメロンなのです。
現在は303ステンレススチールを使用した削り出しのモデルが主流であり、どれもソリッドでクリアな打感が味わえます。
303ステンレススチールを使用したフェース。ミルド加工が施されており、しっかりした感触と、澄んだ打感が魅力です
スコッティキャメロンの「ファントム」は、マレットパターのシリーズ。303ステンレススチールのボディと、フェースに比重の軽いアルミニウムのソールプレートを組み合わせたマルチマテリアル構造を採用しています。慣性モーメントが高く、ミスに強いモデルとしてツアーでも人気の高いパターです。ちなみに、トラディショナルなブレードタイプは「セレクト」シリーズとして展開されています。
ラインアップは4種類のヘッドをベースに、ネックの異なるパターを計10モデル展開。4つのヘッドは、それぞれ目標に向けて正確に構えられるようにさまざまな工夫が施されており、ヘッド自体の形状、段差などで生まれるライン、配色、そして複数のアライメントラインを駆使した、非常に凝った設計です。
また人間工学に基づいて設計された「フルコンタクト パドルスタイルグリップ」は、手のひらとの密着性を高めつつ、スクエアなセットアップがしやすい形状に仕上がっています。
今回は「ファントム」シリーズの中から、2024年4月の取材時にお借りできた7モデルを試打解説していきます。
スクエアな形状のツノ型マレットモデル。直線的で角を持たせたボディは、目標に構えやすい形状で安心感がありますね。ネックはシングルベントネックで、少しだけトゥハングを持つ設計。マレットらしいオートマチックさと操作性を両立したモデルです。
マレットモデルながら、重心をあまり深く設計せず、ある程度の操作性を持たせています
「ファントム 5」のヘッドに、ショートスラントネックを装着したモデル。これによりトゥハングが大きくなり、ヘッドが弧を描くアーク式のストロークにマッチしやすいです。また操作性も向上しており、テクニックが使いやすい一本と言えるでしょう。
ネック形状以外は「ファントム5」とほぼ同じ。ですが振り比べてみると結構ヘッドの挙動は異なります
「ファントム5」のセンターシャフトモデルです。重心が浅めなので、マレットならではの構えやすさと、センターシャフト特有の芯で直感的にとらえやすい操作性がマッチするモデルです。
シャフトの装着位置がフェース面より後方なので、シャフトを垂直にするとフェース面を隠さずセットアップが可能
この「ファントム7」は、上記「ファントム5」よりも後方が絞り込まれたシャープな角型。ボディにはボールサイズと同じ幅に合わせた2本のサイトラインを搭載しています。シングルベントシャフトで、どんなストロークのプレイヤーでも扱いやすい仕上がりです。
マレットモデルでも投影面積が比較的小さく、シャープな印象がありますね
「ファントム7」にショートスラントネックを搭載したモデル。「ファントム5.5」同様にトゥハングが大きく、操作性が高い仕様ですが、ヘッド形状が異なるので、自分にとってより構えやすいほうを選ぶとよいでしょう。
見た目のシャープさと操作性の高さがリンクするのがこの「ファントム7.5」
「ファントム5」や「ファントム7」よりも慣性モーメントが大きく、よりミスに強いのがこの「ファントム9」。長いサイトラインと角張った形状で構えやすさを演出した、マレットらしいモデルです。
カクカクした輪郭がサイトラインを強調させ、セットアップしやすいです
「ファントム9」のショートスラントネック搭載モデルです。重心が深いことで打点のミスに強く、高めの慣性モーメントを持つヘッドが特徴で、これにトゥハングが大きめのネックを組み合わせたパターは意外と稀少です。
ゆったりとしたテンポで打つと、最も安定したストロークができたモデルがこの「ファントム9.5」でした
スコッティキャメロンのマレットパターの最新シリーズ「ファントム」2024年モデルですが、まず感じたのは、やはりヘッドの美しい佇まい。太陽光の下で見ていると、303ステンレススチールの鈍い光の反射がとてもきれいで、思わずにやけてしまいます。
打ってみるとどのモデルも、ソリッドかつクリアな打感、そしてコン! としっかりした音量の打音が響きます。打った距離に応じて音量が変わり、耳から入ってくる情報でもどのくらい打ったか把握できますね。
インサートなしのパターにこだわるゴルファーは一定数いますが、キャメロンを打っていると、その重要さが理解できます。
「ファントム」はマレットモデルだけに、ミスへの強さが気になるところ。モデルによって違いはありますが、極端なミスに強いといった感じではなく、投影面積やヘッド形状による構えやすさと、ある程度の操作性にばらつきの少なさを持たせたバランスのよいモデルといった仕上がりです。どこで打っても転がりの変わらないフルオートマチックといった感じではまったくありません。重さもしっかりとあるので、特に速いグリーンでは武器になってくれそうです。
マレットで高級感を出すのはなかなか難しいのですが、高級そうな佇まいはさすが(笑)。所有感もバッチリです
「ファントム」シリーズの特徴として、ひとつのヘッドに複数のネックを用意している点があげられます。同じヘッドですが、打ち比べてみると、振り味や性能にけっこうな差があります。
その違いは、ヘッドを空中に浮かした状態にし、シャフトでクラブを支えたときにヘッドがどのくらい傾くかの角度、つまりトゥハングによって表れます。シングルベントシャフトの「ファントム5」は、トゥハングは小さくストローク中にヘッドはあまりターンしようとしません。ヘッド軌道をストレートに動かしたいゴルファーにマッチしやすく、挙動はオートマチックな感じになります。
それに対して「ファントム5.5」は、ショートスラントネックでトゥハングが大きく、ストローク中にヘッドがターンしようとする力も大きくなります。ヘッドが弧を描くアークタイプのストロークをしたいゴルファーにマッチしやすく、操作性が高まるといった違いがありますね。
好みをヘッド形状だけで済まさず、ストロークしやすいタイプを複数用意する。このあたりにもキャメロンならではのゴルファーへの姿勢がきめ細やかに表れています。
インサートフェースが全盛の今、インサートはほとんど使わず、素材から生まれるソリッドな感触にこだわり続けるキャメロン。このあたりは、ツアープロからのフィードバックも影響しているのでしょう
「ファントム」2024シリーズは、キャメロンが積み上げてきた実績とノウハウが詰まった、誰にでも進められるマレットパターでした。ただやさしくするのではなく、操作性とのバランスを取った完成度の高いモデルばかりです。
シリーズの中に複数の形状が用意されていて、さらにその中に、操作性重視のモデルや、ミスへの寛容性重視のモデルが用意されているので、まずは構えやすい形状を選び、そこから好みの性能に合わせてネック形状を選べばよいでしょう。
自分で使うなら「ファントム7.5」ですね。シャープで構えやすく、操作性も敏感すぎずでとても扱いやすかったです。
写真:野村知也