世界70か国以上で愛され続けている日本のウォッチブランド、オリエントの人気シリーズ「オリエントバンビーノ」(以下、「バンビーノ」)にシリーズ初の光充電式クォーツモデル「オリエントバンビーノ 38 ソーラーパワード」が登場しました。これまですべてのモデルが機械式だった同シリーズですが、新作ではオーセンティックなデザインはそのままに、誰もがデイリーで気軽に使える高い実用性を持つ時計に結実しています。
光充電式クォーツモジュール「VS213」を搭載する「オリエントバンビーノ 38 ソーラーパワード オリエント75周年限定モデル(RN-WK0006S)」は、国内限定300本。公式サイト価格は44,000円(税込)
「オリエントバンビーノ 38 ソーラーパワード」は現在、計4モデルが展開中。このうちの3モデルはレギュラー展開となっていますが、今回は「オリエント」誕生75周年を記念する限定モデル「RN-WK0006S」を取り上げて、「バンビーノ」初クォーツモデルの魅力や“買い”のポイントなどについて検証していきます。
では、本作のフェイスを見てみましょう。第一印象は、ほかの「バンビーノ」と同様、機械式腕時計の発展期である20世紀前半の製品を想起させるレトロな姿であるということ。“ドーフィン針×ローマンインデックス”は伝統的な組み合わせですし、文字板外周の2レーン(分刻みと20秒刻み)の目盛りやオニオン型リューズもクラシカルなディテールです。
12時位置にある筆記体の「Orient」は1950年代に使用されていた旧ロゴで、これに合わせて「solar-powered」「Water Resistant」の文言も同じ書体で表されて、全体をいっそうレトロ感ある印象に引き上げています。いっぽう、時分針と秒針に彩色された鮮やかなブルーと、ローマンインデックスにめっきされたピンクゴールドのコンビがとてもエレガントで、控えめな華やぎが小粋です。
実用性の高いソーラーパワードモデルながら、ルックスはまるで古きよき時代のヴィンテージウォッチのようです
ところで、「バンビーノ」全モデルに共通するディテールとして、以下の3点があげられます。
・細身のラグなどを持つ繊細なケース形状
・ボンベ文字板
・ボックス型風防
これは古い時代の腕時計に多く見られる特徴で、本作にも例外なく備わっているのです。次の項では、そのうちボンベ文字板とボックス型風防について簡単に触れていきます。
フランス語で「膨らんでいる」を意味する「bombé(ボンベイ)」が由来のボンベ文字板。その名のとおり、平面ではなく、周辺部が落ち込んだ曲面形状を成しています。真正面からではややわかりにくいですが、角度をつけて撮影された以下の写真を見ればご理解いただけるはず。また、分針と秒針の先端は、周辺部に沿うように針先を曲げて成型されています。
ベゼルからせり出しているかのように見えるボックス型風防。素材は無機ガラスです
では、「ボックス型風防は?」と言えば、これはガラス面の縁が立ち上がり、トップ(中心面)が平面、あるいは比高差の少ない膨らみを帯びた形状の風防のこと。
この“ボンベ文字板×ボックス型風防”の組み合わせが、表情にやわらかさを添加し、いっそう味わいあるヴィンテージ風にも見せているのです。
筆記体の古ブランドロゴは文字板のみならず、裏ブタにも記されています。また、同じ書体で「Orient Since 1950 75th Anniversary」の記念ロゴ文字も刻印。ケースバックにおいても、スペシャルなモデルを所有している喜びをユーザーに実感させることでしょう。
旧オリエンタルロゴや75周年記念ロゴ、シリアルナンバーなどが刻印されたケースバック。その裏ブタにもボンベ文字板やボックス型風防にならうかのように、周囲に傾斜がつけられています
本作には文字板&ケースバックの旧ロゴ以外にも、75周年記念モデルだからこその特典があります。それは、時計用バンドとしてはあまり使われることのないヌバック素材のバンドです。
いわゆる起毛革には、繊維が粗い床面(革の裏面)を利用したスエードやベロアもありますが、ヌバックは繊維が緻密な銀面(革の表面)を毛羽立たせています。スエードなどと比べて毛足は短いですが、その表情はきわめて繊細で、まるでビロードのような上品な風合いが特徴。ちなみに本作のバンドは、希少で高価なカーフスキン(生後半年以内の仔牛革)を採用しています。
穏やかなベージュ色とカーフヌバックの繊細な質感が、本作のたたずまいに洗練さと若々しさを添加します
さらに交換用としてダークブラウンカラーのワニ革調型押しカーフ製バンドも付属。このバンドに付け替えるとよりドレッシーに、よりクラシカルに変貌します。まるで別の時計であるかのような変わり様に、ちょっと驚いてしまうくらい。
なお、ヌバック、型押しの両バンドは「イージーエクスチェンジストラップ」仕様です。バンド内に仕込まれたバネ棒のレバーを操作するだけで、誰でも簡単にバンド交換ができます。その時々の服装やシーンなどに合わせて、自在に付け替えて楽しめます。
付属のワニ革調型押しカーフ製バンド
バンドを付け替えると、スーツに直球でハマるドレッシーな表情に!
では、ここで試着です。本作はオン/オフのどちらにも自然とマッチする時計ですが、今回は新年度を迎えて心機一転を図りたい春のビジネスシーンを意識して、濃紺のスーツ×ライトベージュのシャツというコーディネートに合わせてみました。
清潔感あるホワイト文字板に清涼感と若々しさを添えるブルー針の存在が秀逸。ベージュヌバックも好感度大!
キリッとシャープに引き締まった濃紺スーツですが、本作のシンプルなフェイスやベージュのヌバックバンドなどにより、調和を保ちつつも手元がほどよくソフィスティケートされ、それがとても新鮮な印象です。
そのうえでホワイト文字板にブルー針が清々しく映えて、とりわけこれからの季節にふさわしい手元ができあがりました。しかも、視認性も申し分なし。
ケース幅38.4mmは腕の太さによらず違和感なく合う、大きすぎず&小さすぎずの絶妙な塩梅です。ちなみに、ケースバックにほどよく丸みがつけられているので、手首への当たりはやさしく、ストレスなし。そのうえ、ヌバック製バンドはサラッとしたタッチ感が心地よく、無意識に指先で撫でるクセがついてしまいそうです。
「オリエントバンビーノ 38 ソーラーパワード」には75周年限定「RN-WK0006S」のほかに、同日に発売されたレギュラー展開3モデルがあります。もちろん、それらは「RN-WK0006S」と同サイズで、ほぼ同スペック。ただし、バンドの生地はイタリア・マベル社のアップル合成皮革です。同社がイタリア・フルマット社と共同開発し、本来は廃棄されるリンゴの芯や搾りかすをアップリサイクルしたもの。「オリエント」では今回が初採用です。なお、レギュラーモデルでは付け替え用ベゼルは付属していないので、あしからず。
「RN-WK0003G」は、経年変化でくすみを帯びたホワイト文字板のようなアイボリー文字板が特徴。アップル合成皮革バンドのカラーはブラウン
ブラック文字板モデル「RN-WK0004L」はクラシック、かつラギッドな表情が魅力です。アップル合成皮革バンドのカラーは、あえてブラウンに
文字板のペールグリーン×アップル合成皮革バンドのアイボリーのコンビが涼しげな「RN-WK0002E」は、これからの季節にピッタリ!
「オリエントバンビーノ」といえば、「ボンベ文字板やボックス型風防などが特徴の機械式モデルのシリーズ」との認識があっただけに、今回の「オリエントバンビーノ 38 ソーラーパワード」の登場は予想外のことであり、衝撃的でした。が、驚きを過ぎて考えてみると、レトロなデザインでありながらハイテクな光充電式クォーツという、まったく相反する要素を持つ時計なのだと気づき、そのユニークさが魅力的に思えました。
もちろん、単に個性的であることのみならず、手間いらずの光充電式の高い実用性も推挙したい理由です。機械式も魅力的だけれど、デイリーで手軽に使いたい向きには「オリエントバンビーノ 38 ソーラーパワード」という選択肢もありでしょう。しかも、75周年限定の本作ならヌバックと型押しの2種類のバンドをユーザー自身が自在に付け替えて、コーディネートに生かせるのもうれしいところ。気後れなく使えて、おしゃれ心にも応えてくれる、そんなアンティーク顔の時計をお探しなら、この「RN-WK0006S」はいかがでしょうか?
75周年限定モデル「RN-WK0006S」は、旧オリエントロゴなどがプリントされた特製ボックス入りで販売
【SPEC】
「オリエント クラシックコレクション オリエントバンビーノ 38 ソーラーパワード オリエント75周年限定モデル RN-WK0006S」
●駆動方式:クォーツ(ソーラーパワード)
●キャリバー:VS213
●精度:月差+20秒〜-20秒
●駆動時間:約6か月
●防水性能:日常生活用強化防水(3気圧)
●耐磁性能:なし
●ルミナスライト:なし
●ガラス材質:無機ガラス
●ケース材質:ステンレススチール
●ケース縦寸:43.5mm
●ケース幅:38.4mm
●ケース厚:10.5mm
●バンド材質:皮革
●バンド幅:20 mm
●腕周り長:150〜190mm
●中留:美錠(ピンバックル)
●重量:40g
写真/坂下丈洋(BYTHEWAY)