はじめまして、クラウドファンディング総合研究所を運営している板越と申します。
最近クラウドファンディングという言葉を耳にすることが多いのではないでしょうか。とあるベンチャー企業がクラウドファンディングで1億円を超える金額を調達するなど新たな資金調達の方法として注目されています。「少額でリターンの大きい不動産などに投資できる」「珍しいお礼の品がもらえる」として毎年多くの投資家や一般の人がクラウドファンディングに参加しています。
しかしクラウドファンディングの認知度はまだまだ低く、よくわからない方も多いのではないでしょうか。
クラウドファンディングとは、インターネットを通して不特定多数の人からお金を集める仕組みです。今までは、企業や個人が新しい事業を始めるときに自己資金が足りない場合、銀行から借りるのが主流でしたがクラウドファンディングを活用することによって銀行に頼ることなく資金を集められるようになりました。
クラウドファンディングは、大きく以下の5つの種類に分けられます。
購入型:支援すると、物品などの返礼品がもらえる
寄付型:支援しても見返りはない。
投資型:支援すると、配当金をもらえる
融資型:支援すると、元本に加えて利子をもらえる
株式型:支援すると、株式を持つことができる
今回は5つの種類の中で最も支援金額が多い融資型と、最も支援者数が多い購入型をくわしく解説していきます。
融資型クラウドファンディングは、国内のクラウドファンディング市場のうちおよそ90.6%の市場規模がある市場規模NO.1のクラウドファンディングです。銀行などの金融仲介機関に頼らずにインターネット上で個人間でのお金の貸し借りを可能にしており、別名「ソーシャルレンディング」とも呼ばれています。
出典:(株)矢野経済研究所 国内クラウドファンディング市場の調査を実施(2017年)
ソーシャルレンディングはインターネット上で「お金を借りたい人」と「お金を貸したい人」をつなぐサービスです。
たとえば、不動産を購入したいA株式会社にソーシャルレンディングでお金を貸し付ける場合、投資家はインターネット上で募集ページを運営しているソーシャルレンディング会社にお金を貸し付けます。案件によって違いますが、一口1万円程度の少額から貸し付けられます。ソーシャルレンディング会社は、多くの投資家から集めた資金をA株式会社にお金を貸し付けます。
投資家がお金を直接貸しているのは、ソーシャルレンディング会社ですが、実質的な投資先はA株式会社になります。
このようにインターネットを活用することで、金融機関を介さずにお金の貸し借りができます。借り手からすると、設立直後で信用力がなく銀行などから十分な融資を受けられない場合であっても融資を受けられます。貸し手としては、リスクの度合いやプロジェクトの内容によってさまざまですが、年率約3.0〜15.0%(価格.com調べ)の高い利回りが期待できます。このような特徴から、ソーシャルレーディングは近年大変注目されています。
元本が保証されていない
ソーシャルレンディングは元本の保証はありません。先の例の場合、A株式会社やソーシャルレンディング会社の倒産などによって元本割れするかもしれません。
不動産に投資する場合は担保を取っているケースが多いので、仮にA株式会社が倒産したとしても担保を売却すれば、元本の一部または全部が戻ってくるでしょう。また、ソーシャルレンディング会社が倒産した場合は、破産管財人などにより貸し付けていたお金が投資家に分配されます。
解約できないケースが多い
急にお金が必要になってやっぱり解約したいと思っても、原則、約束の期限まで返金されません。ソーシャルレンディングに投資する場合は、すぐに使う予定のないお金を使いましょう。
ソーシャルレンディングの分配金は課税される
ソーシャルレンディングで受け取った分配金は雑所得に当たり、給与などの本業の所得に合算して、税金の計算をします。ソーシャルレンディングで利益を出すと所得税の税率が上がってしまうかもしれません。
購入型クラウドファンディングとは、ユニークな企画や面白いプロジェクトの起案者に対してお金を渡すとその金額に応じた商品やサービスを受け取れる仕組みです。投資よりも買い物に近いといえるでしょう。
支援金額ベースではクラウドファンディング全体の約7%ですが、参入者数が最も多く日本国内では年間で約50万人が支援しています。
プロジェクトによってもらえる商品はさまざまです。一例を挙げると2014年に実施されたプロジェクトの1つ、「世界で話題の組み立て式ロボット『RAPIRO (ラピロ)』のさらなる世界展開プロジェクト!」では1,000円支援すると「RAPIROオリジナルステッカー」、5,000円支援すると「RAPIOオリジナルTシャツ」、38,000円支援すると「RAPIROの組み立てキット」が返礼品としてもらえました。
組み立て式ロボット『RAPIRO (ラピロ)』の組み立て後
プロジェクトに失敗する可能性がある
ヨーロッパで4億円以上を集めた手のひらサイズの小型ドローン「ZANO」では、資金が集まったのにもかかわらず、開発が上手くいかずに多くの機能が実現されず、まともに飛ばすことすら危うく、郵送期限を過ぎても返礼品として送られてこないということで大きなトラブルになりました。
購入型クラウドファンディングは、このようにプロジェクトが失敗することもあります。それも納得の上で支援するとよいでしょう
目標金額に達しない場合は返金される
クラウドファンディングには必ず目標金額が設定されていますが、多くの場合目標達成しなければ全額返金されます。たとえば、100万円の目標金額を設定している案件で50万円しか集まらなければ、支援した人全員に支援金が返金されます。プロジェクトの魅力や活動報告を参考にしながら、目標達成するかどうかも考慮して支援するかどうかを判断しましょう。
返礼品の送付期限・送料を確認する
返礼品が商品の場合は、商品の送付期限や送料を確認するとよいでしょう。
クラウドファンディング募集ページの備考欄などを確認していつ、何がどのような方法で送られてくるのか確認しましょう。送料は支援者側の負担であったり、返礼品の送付期限が1年以上後であったりすることもあります。
詐欺まがいのプロジェクトに注意する
クラウドファンディングの本場アメリカでは、詐欺まがいのプロジェクトが問題になっています。
たとえば2012年にAltius(アルティウス)社が募集した限定デザインのトランプカード『レトロ・ホラー』の制作プロジェクトでは、800人以上から約300万円を集めて目標金額を達成しましたが、返礼品の発送予定日を過ぎても商品が送られてきませんでした。その後Altius社との連絡が途絶えたため、ワシントン州の裁判所は「きわめて悪質な詐欺」として認定し、払い戻し命令をだしました。
さて、次回は実際にクラウドファンディングに参加するために、どんなクラウドファンディング会社があり、どんな点に注意してプロジェクトを選ぶべきかを解説します。次回もお楽しみに。
クラウドファンディング総合研究所所長 ニューヨーク在住戦略コンサルタント博士。サウスカロライナ大学国際政治学部卒業。中央大学大学院戦略経営研究科修了(MBA)、 同大学院総合政策研究科博士後期課程修了(博士:学術)。 クラウドファンディングの第一人者として、アメリカに進出する企業や起業家へ会社設立や資金調達などの支援を行う。著書に「クラウドファンディングで夢をかなえる本」等