スマホの専用アプリで事前に商品を注文する新しい注文スタイル「モバイルオーダー」をご存じでしょうか? 注文だけでなく、クレジットカードなどで決済も事前に済ませる仕組みのため(一部例外あり)、リアル店舗で行うのは「商品を受け取る」だけ。「店内の混雑緩和」や「現金のやり取りを避ける」など、あらゆる場面で非接触が求められる「ニューノーマル(新生活様式)」のニーズに合致しているとあって、ここ数か月で急速に注目度を上げています。
とは言え、まだまだなじみは薄く、どんなものかよくわからないという読者も多いと思います。そこで、「マクドナルド」「スターバックスコーヒー」、そしてPayPayのシステムを利用している「ウェンディーズ・ファーストキッチン」の3店でモバイルオーダーを体験したマネー記者が、その模様をレポートします。
入店前に注文から決済までを済ます「モバイルオーダー」。実際に体験して感じた特徴やメリットをお伝えします
2019年からモバイルオーダーを導入しているのが「マクドナルド」です。筆者が訪れたのはショッピングモールにある店舗。週末ということもあって家族連れで混み合っていて、オーダー待ちの行列は15人程度といったところ。それを見て入店をあきらめる人もいるような状態でした。
店舗外の目立つ位置にモバイルオーダーのディスプレイが設置されていました。最近はテレビCMもよく目にします
マクドナルドのモバイルオーダーにはマクドナルド公式アプリを使います。以前はモバイルオーダー専用のアプリが存在していましたが、現在は公式アプリと統合し、公式アプリ上でモバイルオーダーが可能です(要アカウント作成)。以下、公式アプリの画像を元に手順を見ていきます。
まずは商品を受け取りたい店舗を選びます。
左:公式アプリのトップ画面。右上のモバイルオーダーからサービスに入ります。右:最初に利用したい店舗を選びます。スマホの位置情報をONにしておけば、店舗が近い順に表示される仕組みです
続いて商品選びです。期間限定のおすすめ商品やバリューセット、レギュラーメニュー、サイドメニューなどのカテゴリーから好きな商品を選びます。筆者はここでマクドナルドのメニューの豊富さをあらためて実感しました。店頭だと後ろで待っている人の存在が気になってじっくりメニューを選べないことも多いのですが、モバイルオーダーでは心置きなく吟味することができます。これはモバイルオーダーの意外な利点かもしれません。
左:好きな商品を選んでカートへ。右:今回は「マックフルーリー」をチョイス。「単品、しかもスイーツ」という店頭では少々抵抗を感じる注文も、オンライン上ならまったく気になりません(アラフォー男性記者の個人的な感想です)
商品の受け取りは「テイクアウト」か「ドライブスルー」を選択できます。ただしモバイルオーダーが使えるドライブスルーは対応店舗がまだ少なく、記事執筆時点で250店舗とのこと。筆者が利用した店舗は記事執筆時点で未対応だったため選択できない状態でした。テイクアウトではなく店内で食事をする場合は、商品を「カウンターで受け取る」か、食事をする「テーブルで受け取る」から選ぶことができます(テイクアウト利用の場合は自動的に「カウンターで受け取る」になります)。
決済は、「LINE Pay」か「クレジットカード」が利用可能。クレジットカードはVISA、Mastercard、JCB、Dinersに対応していて、3枚までアプリに登録することができます。決済を確定させればオーダー終了となり、注文番号が発行されます。
左:商品の受け取りは「テイクアウト」か、対応店であれば「ドライブスルー」も選べます。店内で食事する場合は「テーブルでの受け取り」も選択可能。右:今回は手持ちのVisaカードでの決済を選択。後日、カード側のポイント還元が確認できました
左:「決済を確定する」ボタンを押すと注文完了。右:商品の受け取りに必要な「ご注文番号」が表示されます
店舗に入ると、すでにカウンター上の画面に筆者の注文番号が表示されていました。冒頭に書いたようにレジ待ちで十数人が並んでいましたが、レジのあるカウンターとは別の、「モバイルオーダー 受け取りはこちら」と掲示されたカウンター上に筆者が頼んだ「マックフルーリー」がすでに用意されていました。念のため店舗スタッフに注文番号を確認し、無事、受け取り完了です。
レジ待ちの行列を横目に商品を受け取ります。普通に行列に並ぶのと比べて10分程度短縮できたように感じます
なお、店内で食事する場合に選べる「テーブルでの受け取り」は、あらかじめ入店して席を確保したうえでモバイルオーダーで注文します。その際に、確保した席の番号をアプリ上で入力することで、店舗スタッフが商品を席まで運んでくれる仕組みです。
「テーブルでの受け取り」を利用する場合は、確保した席の番号をモバイルオーダー時に入力します
続いて、スターバックスコーヒー(以下、スタバ)のモバイルオーダーです。正式名称は「Mobile Order & Pay」で、2019年6月にサービスがスタート。現在は、都内の大型店で導入されていて、対象店舗は順次拡大予定とのこと。
訪問日は30℃を超える夏日ということもあって、店頭には冷たい飲み物を求める7〜8人の行列ができている状態でした。こんなときにもモバイルオーダーが力を発揮します
スタバのモバイルオーダーもマクドナルドと同じく公式アプリを使います。アカウント作成が必要なのも同じです。ただし、決済には公式プリペイドカードである「スターバックスカード」が必要です。店頭などでリアルカードを発行してアプリに登録して使うこともできますし、アプリ上でデジタルカードを発行して利用することも可能です。今回はデジタルカードを発行し、手持ちのクレジットカードでチャージして使いました。
以降の手順はマクドナルドとほぼ同じです。各店までの距離(スマホの位置情報が有効な場合)や商品が受け取れる目安時間が表示されるので、それらを参考に利用する店舗を決めます。この日は、どの店舗も5〜10分程度の待ち時間となっていました。店舗を決めた後は、「持ち帰り」か「店内利用」も選びます。
左:スタバ公式アプリのトップ画面。「Mobile Order & Pay」をタップするとオーダーができます。右:利用したい店舗を選択
スタバといえば豊富なメニュー、そして細かいカスタマイズが有名ですよね。マクドナルドと同じく、スタバのモバイルオーダーでもじっくりとこれらのメニューを選べます。筆者はスタバの店頭ではいつも決まったメニューしか頼まない(頼めない?)タイプなので、これはうれしいポイントでした。
商品が決まればオーダー完了となり、注文番号が発行されます。なお、決済前にニックネームを設定しておくと、注文番号の代わりにニックネームを商品に書いてくれるそうです(ラベルの場合もあり)。せっかくなので試してみます。
左:普段はなかなか凝ったドリンクを頼めない筆者のような人でも、モバイルオーダーなら腰を落ち着けて選べるかもしれません。右:細かいカスタマイズも選べます
左:画面は決済前のもの。右下のリンクから「ニックネーム」を設定できます。右:ニックネームは恒久的なものではなく今回の注文時のみ有効。友人同士などでコミュニケーションツールとして楽しんだりもできそうです
今回利用した店舗では「これから注文する人」と「モバイルオーダーおよびUber Eats」で異なる導線が用意されていて、迷うことなく受け取りカウンターを目指すことができました(利用する店舗によってレイアウトは異なるかもしれません)。
筆者が訪問した際は「Uber Eats」の配達パートナーの方が同じレーンを利用していました
商品を受け取る際は、受け取りカウンターのスタッフに注文番号(ないしは注文時に設定したニックネーム)を伝えて商品を受け取ります。昨年2019年8月に筆者がスタバのモバイルオーダーを使った際は、モバイルオーダー受け取りカウンターの専用トレイに注文商品が自動的に置かれ、商品に書かれた注文番号を見て客が持って行く仕組みでしたが、変更されたようです。
写真は2019年8月に利用したときのもの。来店すると、モバイルオーダーペイの専用トレイに注文した商品がすでに置かれており、商品に印字された注文番号を客が自分でチェックして持って行くスタイルでした。店舗スタッフとからむ機会がまったくなく、本当に商品を持って行っていいかとまどった記憶があります。
こちらは今回の訪問時のもの。カウンターのスタッフに注文番号を伝えて受け取る仕組みに変わり、以前の”尖ったサービス”感は薄れたもの、「待ち時間ほぼゼロ」で商品を受け取れました
注文時に設定したニックネームもご覧のとおり
最後は「ウェンディーズ・ファーストキッチン」(以下、ウェンディーズ)のモバイルオーダーを試します。マクドナルドとスタバがいずれも公式アプリを利用する仕組みだったのと違い、ウェンディーズはQRコード決済「PayPay」の機能のひとつである「PayPayピックアップ」の対象店という位置付けです。したがって、ウェンディーズでモバイルオーダーしたい場合はPayPayが必要になります。
ウェンディーズのモバイルオーダーはPayPayの「PayPayピックアップ」を利用しています
PayPayピックアップは、2020年5月1日に始まった新しいサービスです。PayPay上から加盟店に事前に注文を送り、決済もPayPay上で済ませます。つまり、マクドナルド、スタバの公式アプリで行っていた作業をPayPay上で行うイメージです。記事執筆時点で加盟店数は限られているものの、サービス開始からひと月で加盟申し込みが2,000件を超えているとの報道もあり、今後使えるお店は増えていきそうです。
基本的な流れは、「使いたい店舗を選択」→「商品を注文」というオーソドックスなもの。注文した品によってはトッピングなどにも対応しています。
左:PayPayのトップ画面にある「ピックアップ」からサービスに入ります。右:「PayPayピックアップ」のトップ画面。スマホの位置情報から近隣店舗が表示されます
PayPayピックアップはPayPay残高での支払いのみに対応しており、「Yahoo! JAPANカード」を含めて、ひも付けしたクレジットカードでの支払いはできません。利用する際はあらかじめチャージしておきましょう。決済金額に応じてPayPayのポイント還元(0.5〜1.5%)の対象となります。
左:注文商品をカートに入れると、受け取りまでの目安時間が表示されます。右:決済はPayPay残高のみに対応
注文が終わると、商品が準備される目安の時間が表示され、商品の準備状況に応じて画面上のステータスが変化していきます。このときは注文から5分ほどで準備が完了。店頭で受け取り番号を伝えてスムーズに商品を受け取ることができました。
使うアプリはPayPayですが、注文の流れはマクドナルド、スタバとほぼ変わりません
店頭に付くとすでに商品が準備されていて、対応は実にスムーズ
3つのサービスを実際に体験してみて、モバイルオーダーにはニューノーマルに合致した魅力があることはもちろん、「これまでの買い物より満足感が高い面もある」とも感じました。その要因は2つあります。
ひとつが「待ち時間の短縮」。ニューノーマルのニーズである「接触を減らす」にも通じますが、自分の時間に合わせて商品を用意してもらえるのはそれだけで大きな魅力です。たとえば出勤前や昼休みで外出して戻る際など、時間が限られるうえに多くの人が集中する時間帯などでは、その価値はさらに大きく感じられるはずです。
もうひとつが「余裕を持って選べる」ことです。記事の中でも何度か触れましたが、店頭で商品を選ぶファストフードやカフェの場合、じっくりと商品を選ぶ時間的、心理的余裕を持ちにくいケース場合があります。今回、アプリ上でじっくり各社のメニューを見てみて、意外とその全貌を知らないことや選ぶ楽しさがあることを認識しました。少々意外なメリットでしたが、これもモバイルオーダーの魅力と言えそうです。
今回紹介した3つのサービス以外にも、「モバイルオーダー導入」のニュースが連日伝えられています。たとえば、「吉野家」(リアル店舗で決済する仕組み)や「すき家」(店内利用のみ)などの牛丼チェーンや、「かっぱ寿司」「くら寿司」などの寿司店、持ち帰り総菜でおなじみの「RF1」(一部店舗)などで導入されているほか、「PayPayピックアップ」と似たようなプラットフォームとして、楽天の「楽天リアルタイムテイクアウト」というサービスもあります。
また、デリバリーの印象が強い「Uber Eats」にもテイクアウト機能があり、アプリ上で注文から決済まで済ませたうえで、自分で商品を取りに行くという使い方もできます。今後、この機能にも光が当たる可能性があるのではないでしょうか。
まさに、現在進行形で普及しているモバイルオーダー。消費者にとってのメリット以外にも、「人件費削減」や「業務フローの効率化」など、店舗側のメリットもあるようです。数か月後には、多くの人が当たり前のように使うサービスになっている可能性も感じます。