今、新型コロナウイルスの影響により、収入が減ってしまったという方は少なくありません。厚生労働省の発表によると、2020年5月の残業代などを示す所定外給与は、過去最大の下げ幅となる前年同月比25.8%減、現金給与総額も同2.1%減となりました。こうした状況を反映してか、支給が進む1人10万円の特別定額給付金の使い道について、ニッセイ基礎研究所が全国の男女約2,000人に調査したところ、1位は「生活費の補てん」(53.7%)、2位は「貯蓄」(26.1%)という結果になりました。
こうした状況の中、「少しでも収入を増やしたい」というときに思い浮かべることのひとつに、「副業」があります(副業については、勤務先の企業の就業規則でどういうルールを定めているか確認が必要です)。しかし、いきなり本業とは別に、多くの収入を得られる副業を見つけるのは簡単ではありません。そこで今回は、使っていない駐車場や自宅の空きスペースなどを他人とシェアすることで、副収入を得られるサービスをピックアップ。登録料や年会費、初期投資が不要で、始める際のハードルが低い副業を紹介します。
自宅の使っていない駐車場も、副収入を得るひとつの手段になる
最初に紹介するのは「駐車場シェアリング」。
駐車場を貸したい人(オーナー)と、借りたい人(ユーザー)をマッチングさせるサービスに登録し、ユーザーが利用するとオーナーに一定の収入が入る仕組みです。いくつかのサービスがありますが、代表的なサービスとして、2014年にスタートし、現在約190万人のユーザーが登録している「akippa(アキッパ)」(運営会社:akippa)を紹介します。
akippaで駐車場の貸し出しを始めるには、公式サイトで、氏名や住所のほか、貸し出す駐車場のサイズや写真を登録します。登録内容をもとにakippaが駐車場としての利用が可能かどうかを審査し、これに通れば掲載・貸し出しがスタートします。登録料は無料で、車止めなどの設備投資も不要です。
なお、貸し出す際は対応できる車種やサイズ、駐車場として貸し出し可能な曜日や時間も細かく設定できるので、「平日のみ」「土日祝日のみ」などど、ライフスタイルに合わせて貸し出すことができます。ただ、ユーザーからの予約が入った後に、オーナーの都合でキャンセルする場合、akippaに2,200円のキャンセル料を支払う必要があるので、この点は注意が必要です。
駐車料金については「15分単位」と「1日単位」の2種類を決めますが、この料金は自分で設定することもできますし、周辺の駐車料金の相場などをもとにakippaに設定してもらうこともできます。最終的に、ユーザーが支払った駐車料金の46.3%(53.7%はakippaの手数料)がオーナーに支払われる仕組みです。予約時にクレジットカードなどで決済するため、ユーザーとオーナーが直接お金をやり取りすることはありません。
気になる収入額ですが、これはもちろん立地によって変わってきます。周囲のコインパーキングの駐車料金よりは割安に設定することが多いようで、たとえば、筆者の職場がある「恵比寿駅」(東京都渋谷区)で検索すると、駐車料金はおおむね1日1,500〜2,000円前後。2,000円の駐車場を15日貸し出した場合、
2,000円×15日×46.3%=13,890円
がその月の収入になります。
東京の郊外、清瀬市(池袋から私鉄で30分程度)で検索すると、駐車料金はおおむね1日500円程度で、同様に15日貸し出した場合
500円×15日×46.3%=3,472円
となります。気になる方は、自分が住む場所のakippaの駐車料金の相場を調べてみるとよいでしょう。
都心部やイベント会場が近くの駐車場のほうが、高い料金を設定しやすく、利用回数も多くなるでしょう。ただ、akippaで貸し出しを行っているオーナーの声をネット上で見ると、住宅街の中にあっても、スーパーや病院が近くにある場合などは一定の需要があるようです。
駐車場を貸し出す際の懸念材料のひとつが、トラブルの発生でしょう。ユーザーは会員登録にあたって、自動車保険(任意保険)に加入していることが条件となっており、たとえばオーナーの設備を破損してしまった場合、原則としてユーザーの任意保険で対応することになります。なお、ユーザーの自動車保険が適用されない状況が発生した場合、一定の条件を満たせば、akippa側で用意した「駐車場シェア専用保険」が適用されることになります(ユーザー、オーナーに保険料の負担なし)。このほか、akippa側でも緊急時に相談に応じてくれる電話窓口を設けています。
参考:akippa公式サイト
ネットを通じて、マイカーを共同使用する個人間のカーシェア
続いて紹介するのは、マイカーを使わない日に他人とカーシェアすることで収入を得られるサービスです。このタイプのサービスでは、ディー・エヌ・エーとSOMPOホールディングスが設立したDeNA SOMPO Mobilityが運営する「Anyca(エニカ)」がよく知られています。2015年にサービスを開始したAnycaには、現在約30万人が登録しています。
「オーナー」としてマイカーを登録するには、公式サイトで、氏名や住所、車種や年式、車の紹介文などを記入し、車の写真もアップロードします。この際、喫煙やペット同乗の可否など、細かい条件も設定できます。
登録後24時間程度で、登録したマイカーがサイトに掲載されます。「この車を使いたい」と希望するドライバーから予約リクエストが届き、利用日時などの条件に合致すればリクエストを承認します。アプリ内のチャットで、車の受け渡しの日時と場所を決め、受け渡しの際には、互いの免許証や車体についているキズの確認作業を行います。そして、あらかじめ決めていた終了時刻・場所で車を返してもらえば完了です。
Anycaでは、複数人で自家用車の維持費用をシェアする共同使用契約を結ぶ形になります。このため、オーナー登録時に、購入時の車の金額や走行距離、年間維持費を入力すると、使用料の上限金額が出されるので、使用料金はその範囲内でオーナーが自由に設定できます。公式サイトで登録車を検索すると、1日(24時間)あたり5,000〜10,000円程度の価格帯がメインで、通常のレンタカーより割安な価格設定になっている印象です。レクサスやベンツなどの高級車でも1万円を切るものもありました。このほか、祝休日の料金を平日より1,000円高くしたり、シェア2日目の料金を割り引いたりするケースも。
Anycaに支払う手数料は10%で、オーナーは使用料の90%を受け取れます。公式サイトによると、東京23区を受け渡し場所に設定している1台あたりのひと月の平均受取額は25,000円(1回以上シェア経験がある車が対象、2018年実績)とのことです。ちなみに公式サイトには、メーカー、車種、居住地などを入力することで、月々に得られる受取金額がわかるシミュレーターも用意されています。筆者の自家用車(ホンダ・フリード、2009年式)と居住地を入力してみると、1か月1回のカーシェアの利用があると想定して、8,496円の収入が得られるという結果が出ました。
ドライバーは予約時にクレジットカードで決済するので、ドライバーとお金についてのやり取りはありません。ガソリン代をどちらの負担とするかは、オーナーの裁量で決められますが、多くの場合、「ドライバーが利用した分を補給」となっています。
なお、Anycaではドライバーが予約したときに、1日自動車保険に加入する仕組みになっており、万が一の事故の際は基本的に、それで補償することになっています。なお、新型コロナウイルスの現在の状況を踏まえ、公式サイトでもハンドルや操作レバーなどひんぱんに触る場所は貸す側も借りる側もよく消毒することを推奨しています。
参考:Anyca公式サイト
自宅に使っていない部屋があれば、それも活用できる
自宅に空き部屋や使っていない物置があり、収納代わりに貸し出すことで、収入を得られるサービスもあります。そんな、空いているスペースを活用し荷物を保管したい人(ホスト)と、荷物を預けたい人(ゲスト)を結びつけるサービスが「モノオク」(運営:モノオク株式会社)です。
ホストとして登録したい場合、空き部屋(スペース)の写真や広さ、預かれる荷物(預かれない荷物があれば、それも明記)などを記載すれば登録完了。登録情報をモノオクが確認後、サイトに空き部屋の情報が掲載されます。
その情報を見たゲストから預かってほしい荷物の内容や分量、預けたい期間が記載されたリクエストが届くと、ホストは預かりの可否を判断。預かることを了承し、ゲストがクレジットカードで決済すると、スペースの詳細な住所がゲストに伝えられます。荷物の受け取り方法は、ゲストとの対面で行うか、配送サービスで受け取るかを、ホストが決められます(どちらでも対応可能とすることもできます)。なお、荷物の搬入・搬出にかかる費用はゲストの負担となります。
こちらのサービスも登録料は不要で、初期費用は発生しません。ユーザーの支払代金の30%がモノオクの手数料となり、残額の70%がホスト側に振り込まれる形になります。利用料金はホストが自由に設定できますが、民間業者のトランクルームよりも割安な料金設定にしていることが一般的で、1畳あたり月5,000〜7,000円が相場となっています。ただし、1畳あたりの下限料金が決められており、東京都内の場合は月6,000円、それ以外の地域では月3,000円以下の料金に設定することはできません。
公式サイトを検索してみると、空き部屋はもちろん、0.3畳分のベランダ、クローゼット、押し入れなど、さまざまな場所が収納スペースとして掲載されていました。なお、預かり期間中の破損や盗難などに備え、預かった荷物には10万円を上限とする保険がかけられます。また、危険物や生き物、美術品などは規約上、預かることはできません。
参考:モノオク公式サイト
購入したものの、今は使っていないバッグをシェアすることでお小遣いに
最後に紹介するのは、クローゼットの中に眠ったままのブランドバッグをシェアして、収入が得られるサービス。アパレル大手ワールドのグループ会社、ラクサス・テクノロジーズが運営する「ラクサスX」です。
こちらは会員が私物のバッグを預け、別の会員に利用してもらうサービスを展開しており、自分が預けたバッグに借り手が付くと収入が入る仕組みになっています。ちなみに、借り手側は、月額7,480円で登録されたバッグが使い放題です。
バッグを預けるときは、ラクサスのアプリをダウンロード後、宅配キットを申し込み、届いた箱にバッグを入れてラクサスに配送すればOK(送料無料)。ラクサスでクリーニングした後、アプリに掲載されます。この際、基準に満たないために掲載が見送られても、無料で返送してくれます。
自分が預けたバッグがユーザーから利用されるたびに、バッグ1個につき1日あたり66円の収入が発生。最大で月2,000円程度の収入になります。1か月単位で見れば収入は大きなものではありませんが、長期間利用者がいれば、中古品として売却するよりも、大きな金額になるケースもあるようです。筆者がアプリで見たところ、「LOEWE」「FENDI」「LOUIS VUITTON」「HERMES」などの人気バッグには20人以上がレンタル待ちの状態。どのアイテムが人気なのかが(利用してもらえる可能性が高いのか)すぐにわかるようになっています。
ラクサスでは、預け入れの際にクリーニングを行ってくれるので、たとえ借り手が付かなくても、無償でメンテナンスをしてくれるのがうれしいところ。また、預け入れの際にバッグの補償額が決められ、万が一レンタルしたユーザーがキズを付けた場合でも、これを上限に補償されます。ただ、預け入れてから最低6か月間は返却の申請ができないので、その期間中に利用する予定がある場合は、注意しましょう。
参考:ラクサスX公式サイト
個人間のシェアリングサービスを利用する際は、利用規約を確認することが大切になる
以上、自分が使っていない資産を有効活用することで、副収入が得られる4つのサービスを紹介してきました。それぞれの特徴は下表のとおりです。
紹介したサービスは、初期投資がかからず、一度登録すれば、後は自分の手を動かすことなく、副収入が入ってくるのが利点になります(マイカーのシェアは、車の受け渡し作業あり)。大きな収入を期待することは難しいかもしれませんが、継続することでちょっとした家計の足しにはなるでしょう。
いっぽうで、副業による所得が年間20万円を超えると、確定申告が必要になる点は注意が必要です。また、今回紹介したサービスは、いずれも自分の所有物を知らない人とシェアする仕組みです。トラブル時の補償や、運営会社のサポート体制がどうなっているのかについて、事前に利用規約をしっかり確認しておくことが大事になります。