歩数や距離によってポイントが貯まり、歩くきっかけとなる「ウォーキングアプリ」。コロナ禍の運動不足解消や健康意識の高まりから、ますます人気となっています。なかでも昨年2021年に登場した「Miles」と「ANA Pocket」は、徒歩だけでなく全ての移動でポイントが貯まることから、今、注目されているアプリです。
そんな2つのアプリを、筆者はサービス開始当初から使っています。いったいどのようなアプリでどうトクなのか。それぞれのアプリの概要と、日々、使うことでわかったメリットや注意点などについて、この記事でご紹介したいと思います。
「ANA Pocket」(左)と「Miles」(右)。移動するとポイントが貯まる人気アプリ2種
アメリカ・シリコンバレー発の「Miles(マイルズ)」は昨年2021年10月に日本上陸。世界中どこにいても1マイル(約1.6km)移動することで、1マイル(独自ポイント)を貯めることができます。
CO2排出量が少ない、環境にやさしい移動手段ほどボーナスマイルの付与率が上がる仕組みで、徒歩・ランニングは10倍、自転車は5倍、電車・バス・船・スキーは3倍、車の相乗りは2倍、車は1倍、飛行機は0.1倍という付与率になっています。
「Miles」アプリ。「ホーム」で1か月の移動データを俯瞰できます。「トレンド」はほかのユーザーの情報(左)。「ホーム」の「移動データ」から1か月の移動データの総括も見ることができます(右)
「移動履歴」には移動手段や貯まったマイル数を表示(左)。「移動履歴」の右上のメニューをタップすることで地図表示に切り替えられます(右)
アプリのインストール時に、位置情報の取得を「常に許可」にしておくことで、移動時にアプリを起動しなくても、スマホを持ち歩くだけでマイルが自動的に付与されます。移動手段はAIが自動判定。「移動履歴」ページで移動時間や移動手段、距離、得られたマイルなどを確認でき、詳細データでは移動場所を地図上で確認することもできます。ただ移動データを表示するのはリアルタイムではなく、少し時間がかかります。
もし移動データを確認した時に実際と異なる移動手段だった場合には、変更リクエストを出すことで、正しい移動手段とマイル数に修正可能。変更リクエストはMiles側のデータに基づいて正しいと判断されれば、即座に承認されます。
アプリ上で正しい移動手段の変更リクエストが出せます(左)。この画面は車をバスに変更するリクエストを申請中のもの。承認されると正しい表示になります(右)
Milesでは移動のほかに、ステータスによっても、ボーナスマイルを得ることができます。ステータスには「SILVER」、「GOLD」、「PLATINUM」の3段階があり、1か月間に貯めたマイル数などに応じて、翌月のステータスが決まります。
基本は750マイル以下の「SILVER」で、毎月100ボーナスマイルがもらえます。750マイル以上、2,000マイル未満になると「GOLD」になり、毎月200ボーナスマイルに。2,000マイル以上になると「PLATINUM」で、毎月400ボーナスマイルをもらうことができます。そして全てのステータスに共通して、1周年記念と誕生日には2,500マイルがプレゼントされます。
画面は「SILVER」ステータスの条件や特典。達成条件が厳しくなる「GOLD」や「PLATINUM」では、もらえる特典が増えます(本文参照)
このほかにもステータスによってマイルと特典の交換率がアップするメリットなどがあります。この特典に関しては、後述のポイントの使い方のところで詳しく説明します。
いっぽう、ANAグループの「ANA X株式会社」が手がける「ANA Pocket(エイエヌエーポケット)」は、2021年末に登場。国内を1km移動するごとに、徒歩は50ポイント、自転車は20ポイント、電車は8ポイント、車は6ポイント、飛行機は0.8ポイントを得ることができます。このほかの乗り物に関しては25ポイント。アプリが判別できない「移動手段不明」の移動に対しては、1分あたり2ポイント(1区間あたり2時間、240ポイントまで)が付与されます。
現在(2022年3月1日時点)はiOSのみの対応ですが、Androidアプリも今春にはリリース予定。有料部分もありますが(後述)、基本、無料で利用することができます。
ANA Pocketもアプリのインストール時に、「位置情報」の使用を常に許可するよう、「オン」に設定しておきます。「モーションとフィットネス」も「オン」にしておくことで、アプリが移動距離や歩数などのデータにアクセス可能。iOS14以上の場合は、「正確な位置情報」も「オン」に設定する必要があります。これらの設定をすることで、スマホを持ち歩くだけでポイントが自動的に付与されるようになります。
移動データは「ログ」ページで確認。マップ画面では移動経路をマップで見ることができ、判定された移動手段とそれに応じたポイント数を確認することができます。グラフ画面では移動手段ごとのポイントの割合がグラフ表示されます。
「ANA Pocket」アプリ。「ホーム」で合計ポイントや本日失効するポイントなどがわかります(左)。「ログ」のマップ画面では移動手段や貯まったポイント、マップ上で移動経路も確認可能(右)
「ログ」のグラフ画面では移動手段ごとのポイントの割合がわかります
もしログに記載された移動手段が実際とは異なる場合、「Miles」と同様、変更申請したい移動手段の行をタップすると、「変更」ボタンが表示されます。正しい移動手段を申請し、運営サイドで承認されると、移動手段やポイントが変更されます。
「ログ」の移動手段の行をタップすることで「変更」ボタンが表示されます(左)。「変更」ボタンから正しい移動手段に申請することができます(右)
ANA Pocketにはさまざまな「チャレンジ」が用意されていて、移動手段や移動距離など、指定された条件をクリアすることでもポイントを貯めることができます。たとえば、「人混みを避けて、家の近くをお散歩しよう!」というチャレンジでは、指定された期限内に、徒歩で2kmを移動することで、300ポイントが獲得できます。もちろん、この2kmの移動にも通常のポイントが付くので、1回の移動でポイントがダブルで貯まっておトクです。
「チャレンジ」には、東京メトロや東急、はとバスなど、パートナー企業のサービスを利用し、指定されたスポットでチェックインすることでポイントがもらえるものもあります。いずれも各チャレンジの「はじめる」ボタンをタップして参加します。「おすすめ」ページで達成できそうなチャレンジを見つけたら、移動する前に「はじめる」ボタンを忘れずに押してください。
「おすすめ」にさまざまなチャレンジが用意されています(左)。右の画像は「渋谷のランドマークを巡る街歩きをしよう!」のチャレンジメニュー
チャレンジに挑戦する時は、「はじめる」ボタンを押してスタートします
達成できたチャレンジには、「COMPLETED」の言葉とともにチェックマークが付き、報酬を受け取ることができます。ただ、移動データを表示するのに少し時間がかかってしまうので、達成できたと思いきや、後で少しだけ距離が足りないことがわかって、追加で歩きに行ったことも。そんなことも考慮して、やや多めに歩いておくと安心です。なお報酬には受取期限があるので、「受け取る」ボタンをタップして、早めに受け取っておくようにしましょう。これまでのチャレンジは、「履歴」ページで見ることができます。
チャレンジをクリアすると、チェックマークが付いて報酬がもらえます(左)。報酬には受取期限があるので、それまでに「受け取る」をタップするのをお忘れなく(右)
さて、ここまで2つのアプリのポイントの貯め方を見てきましたが、皆さんが気になるのは、「貯めたポイントが何に使えるか」という点ではないでしょうか? ここではそれぞれのアプリのポイントの使い道を解説します。
Milesで貯めたマイルは、JR東日本やJAL、ファミリーマートなど、パートナー企業の商品やサービスがおトクに使える特典やギフトカードなどに交換できます。フード・ドリンク、健康・美容、旅行・体験など、さまざまなアイテムが用意されていて、その数は実に100以上。国内航空券と宿泊が2,000円割引になったり、レトルト食品が15%割引になったりとおトクです。気になる特典は紹介写真のハートマークをタップすることで、お気に入りに登録できます。
「特典」でマイルを割引券やギフトカードなどに交換できます(左)。カテゴリーごとに特典を紹介。さまざまなアイテムが揃います(右)
特典の写真のハートマークをタップすることでお気に入りに登録することもできます
なかでも人気なのは、ドリンクの無料引き換えクーポンなど、無料で商品がもらえるもの。アプリのリリース当初にはこのような無料特典が定期的に登場していたのですが、残念ながら最近ではあまり見かけなくなってしまいました。ただ、特典は不定期で更新されるので、マメに内容をチェックしておくことが大切です。
獲得した特典は買い物バッグ型の「My Purchases」で確認することができます
さきほど、Milesにステータスがあることを説明しましたが、ステータスによってマイルの交換率がおトクになるのもMilesの特徴です。たとえば「PLATINUM」であれば、仮に1,200マイルのところが800マイルになったり、「GOLD」なら1,200マイルが1,000マイルになったりと、必要なマイルが少なくて済みます。なお、特典を1つ交換することでステータスが「GOLD」に、2つ以上交換することで「PLATINUM」にアップさせることができます。
Milesの特典は欲しいアイテムがある場合は非常におトクになるものの、特に欲しいアイテムがない場合は、どのようにポイントを使えばいいのか悩ましいところ。そんな時は、抽選にチャレンジしたり、寄付するのもおすすめです。
いずれも10マイルから交換できるので手軽ですし、抽選には「DAZN」の6か月無料券、サンリオのキャラクターのオンライングリーティングなどがあり、当たればラッキーです。日本赤十字やセーブ・ザ・チルドレンなどへの寄付はユーザーから集めた1万マイルごとに100円が各団体に寄付されます。なお抽選や寄付は、ステータスをアップする特典には換算されないのでご注意ください。
抽選では10マイルを1〜100口まで応募できます(左)。寄付では1万マイルごとに100円が寄付される仕組み(右)
ANA Pocketで貯めたポイントは、「ガチャ」(抽選のこと)で使用します。ガチャには「Pocketガチャ」、「SKYコインガチャ」、「マイルガチャ」の3種類あり、いずれも1回につき500ポイントが必要となります。
ひとつめの「Pocketガチャ」は誰でも参加でき、ポイントをクーポンに交換することができます。筆者は「アソビュー!」のアドベンチャー体験の割引券や、「ANAトラベラーズ」の夏の星空を楽しむオンラインツアー特別視聴券が当たりました。
「ポイント」の「ポイントを使う」からガチャに参加(左)。筆者は「Pocketガチャ」で「夏の星空を楽しむオンラインツアー特別視聴券」が当たりました(右)
「SKYコインガチャ」では、ポイントをANA SKYコインに交換できます。ANA SKYコインは10コイン=10円相当として、ANAの航空券や旅行商品の支払いに利用可能。筆者は10回分5,000ポイントを使ってガチャに挑戦し、合計10コインを獲得しました。同様に10回分のガチャに挑戦した友人は合計19コインを獲得していたので、運がよければもっと多くのコインを得ることができるかもしれません。
2つめの「SKYコインガチャ」に参加するには、アプリの設定時やアカウント情報で、「ANAマイレージクラブ」との連携が必要です。会員ではない人でも、「ANAマイレージクラブ」アプリのデジタルカードならすぐに発行できるので便利です。入会金・年会費無料で会員になることができます。
「SKYコインガチャ」で10コインをゲット!
3つめの「マイルガチャ」に参加するには、月額550円の「ANA Pocket Pro」の会員になる必要があり、申し込みは公式サイトで行えます。マイルガチャは「ハズレなし」で、1回で最低3マイルを獲得。最大1万マイルが当たるチャンスもあるのだとか。公式情報によると、1か月平均で250〜300マイルが貯まるそうです。なお、2022年3月1日より、「ANA Pocket Pro」の継続利用者には、毎月5,000ポイントがプレゼントされるようになっています。
現在、「ANAカード」会員なら初回の支払い時にプロモーションコードを入力することで、「ANA Pocket Pro」が初月(入会月)無料になるキャンペーンが実施中です(終了日未定)。「ANAカード」会員の人ならこのキャンペーンを利用して、おトクに「マイルガチャ」に挑戦してみるのがおすすめです。
「Miles」と「ANA Pocket」のポイントの貯まり方、ポイントの使い方などについて説明してきました。ここまでの情報をまとめたものが、次の表です。
2022年3月1日時点の情報
表を見ながら、いったいどちらを使えばいいのか、悩んでいませんか? いずれのアプリも移動でポイントが貯まるという基本的な仕組みは同じ。違いは、Milesが全世界の移動に対してポイントが貯まるのに対し、ANA Pocketが国内の移動を対象にしている点と「ポイントの使い道」ということになります。
両方のアプリに興味があれば、悩む必要はありません。両方、使えばいいのです。ANA PocketのAndroidアプリは今春リリース予定なので、Androidユーザーは現時点ではMilesしか利用できませんが、iPhoneユーザーなら現時点でもMilesとANA Pocketの両方を使うことができます。毎日、スマホを持ち歩くだけで、両方のアプリのポイントが貯まるのはおトクです。
なお移動データは個人が特定できない形で、第三者に提供されることがあります。たとえば、沖縄に行った人が必ず立ち寄る観光スポットなどの統計が、「Miles」や「ANA Pocket」の移動データを分析することでわかるわけです。筆者は個人が特定されないなら移動データを開示されてもあまり気になりませんが、抵抗のある人はそのことも含めて、これらのアプリの利用を検討するようにしてください。
筆者は、MilesやANA Pocketを使い始めたことで、積極的に歩くようになりました。「電車の乗り換えをするくらいなら、少し遠いけどこの駅から歩こう」とか、「少し足を伸ばしてあの店に行ってみよう」とか、歩くことへのハードルが下がったように感じます。この意識の変化はまさにポイントの力。ポイントが貯まることで、フットワークが軽くなりました。
気を付けたいのは、ANA Pocketのポイントの有効期限です。ポイントは30日を過ぎると失効してしまい、所有できるのも最大7万ポイントまで。筆者はテレワークで外出しなかった週にうっかり1,500ポイントを失効してしまい、次にアプリを立ち上げた時に愕然としました。このような悲しいことが起こらないように、定期的にアプリを立ち上げて、ガチャでポイントを消費しておくことが大切です。
Milesのマイルには有効期限はありませんが、ただマイルを貯めているだけでは意味がありません。マイルを特典に交換してこそ、このアプリを利用する意味があるというもの。交換したい特典が登場していないか、定期的に確認するようにしましょう。魅力的な特典はあっという間に予定数に達してなくなってしまいます。
両アプリは勝手にポイントが貯まるものの、おトクに使いこなすには定期的にアプリの中身を管理しなくてはいけません。その点はやや面倒ですが、筆者は外出時、信号待ちの時などに、ササッとチェックしています。ANA Pocketは「ホーム」のポイント表記部分に「本日失効ポイント」が書かれていないかどうかを確認。書かれていたら、その日中にガチャでポイントを使います。そしてMiles、は定期的におすすめの特典がメールされるので、目を通すようにしています。利用される際は、この点を参考にして頂ければと思います。
ウォーキングアプリは、最初こそ頑張るものの、次第に怠けてやらなくなりがちです。しかしMilesとANA Pocketは全ての移動でポイントが貯まるので、これまでと同じように過ごしながら、勝手にポイントが貯まっていきます。頑張ればより多くのポイントがもらえるし、怠けてもそれなりにポイントが貯まります。そんな継続のしやすさがこれら2つのアプリがメリット・面白さなのだと思います。
※本記事は、筆者の見解に基づくものです。
わたたにさちこ。キャッシュレス決済やポイントなどについて、小学館発行のビジネス情報誌「DIME」を中心に、企業のオウンドメディアや情報サイトなどで幅広く執筆。生活情報サイト「All About」のガイドも務める。