めまぐるしく変化するキャッシュレス決済の動向を伝える本連載。今月のキャッシュレス関連のニュースの中から、マネー担当の編集部員やライターが気になったものをピックアップしてお伝えします。記事の最後では、現在開催中のキャッシュレス決済関連キャンペーン情報も掲載していますので、こちらもぜひチェックを!
2023年7月のトップニュースは、フリマアプリ「メルカリ」上でビットコインが買える「ビットコイン取引」の話題から。サービス開始から約3か月が経過しましたが、国内の暗号資産取引口座の増加数を大きく上回るペースで利用者が増えているようです。実際に「ビットコイン取引」を始めた筆者の体験とともにお伝えます。
このほか、「三井住友カード」が対象店でのポイント還元率を最大7%にアップした話題や、京王電鉄が今秋から導入する鉄道乗車ポイントについてもご紹介します。
筆者も実際に利用してみたメルカリの「ビットコイン取引」が順調に利用者数を伸ばしているようです
このニュースのサマリー
〇2023年3月から始まったメルカリ「ビットコイン取引」の利用者が50万人を突破
〇「3か月で50万人」は国内の暗号資産取引口座の増加数を大きく上回るペース
〇実際に試した筆者も「不要品がビットコインに変わる」魅力を実感
2023年3月に始まった、フリマアプリ「メルカリ」上で、ビットコインを取引できるサービス「ビットコイン取引」が人気を呼んでいるようです。「メルカリ」を運営する株式メルカリの子会社で、「ビットコイン取引」を手がける株式会社メルコインは、2023年6月末、「ビットコイン取引」の利用者数が50万人を突破したことを発表しました。
画像は「メルコイン」のニュースリリースより
この、「3か月で50万人」という数字ですが、国内の暗号資産取引口座の増加数と比べてみると、なかなかのインパクトがあることがわかります。
暗号資産交換業者などで構成されている「日本暗号資産取引業協会(JVCEA)」の統計資料によると、2022年6月から2023年5月までの1年間の暗号資産取引口座の増加数は、月平均で約7.4万口座です。いっぽう、メルカリの「ビットコイン取引」の利用者数は3か月で50万人(口座)なので、月にならすと約17万口座となりこれを大きく上回っています。
また、メルコインの発表によると、「ビットコイン取引」の利用者の約8割が、口座開設時のアンケートで、「これまで暗号資産の取引経験がない」と回答しているとのこと。これらのことから「ビットコイン取引」は、暗号資産取引の初心者層に非常に早いペースで浸透していることがうかがえます。
「ビットコイン取引」の口座開設アンケートでは、約8割の人が「暗号資産未経験者」と回答(画像は「メルコイン」のニュースリリースより)
実は、本ニュースを執筆している筆者(マネー担当N)も、「ビットコイン取引」で初めて暗号資産取引を体験しているひとりです。実際に始めてみて感じたのですが、「ビットコイン取引」の魅力は、なんといっても「家の不要品がビットコインに変わる」ことではないかと思います。
「メルカリ」ユーザーの人には説明するまでもありませんが、「メルカリ」ではありとあらゆるものが取引されています。筆者は主に、読まなくなった本、着なくなった衣服、古いガジェット類(デジカメ、充電器、ケーブル類など)などを出品していますが、どのような状態のものでも、ある程度売値に妥協すれば、ほとんどのケースで買い手が付いています。まさに、月間利用者数が2,000万人以上とも言われている「メルカリ」ユーザーの層の厚さを感じる所以(ゆえん)でもあるわけですが、このおかげもあり、コロナ禍で在宅期間が長かった時には家の不要品をかなり処分でき、「メルカリ」の売上金を増やすことができました。
さて、その「メルカリ」の売上金の使い道ですが、「ビットコイン取引」登場前は、
・「メルカリ」に出品されている商品を買う時に使う。
・「メルカリ」の決済機能である「メルペイ」を通じて、電子マネー「iD」加盟店での支払いに使う。
・手数料を払って銀行口座に現金として振り込む。
などがありました。2023年3月の「ビットコイン取引」の登場により、ここに「ビットコインに変える」という選択肢が加わりました。
筆者は元々、スマホ決済の「PayPay」や「楽天ペイ」で、貯めたポイントの運用(ポイント運用)を楽しんでいました。調子のよい時にはかなりポイントを増やせた“成功体験”もあったので、「メルカリ」の売上金にも、何かしらの「増やせる可能性のある使い道」が欲しいと感じていました。
そんな折に登場したのが「ビットコイン取引」でした。ビットコインであれば当然価格は変動します。つまり、しかるべきタイミングで売買できれば、メルカリの売上金を増やせる可能性もあるわけです。あいにく売上金はそこまで多く残っていなかったので、チャージも併用しつつ(※)、2023年5月末あたりから少しずつ「ビットコイン取引」を利用してみることにしたというわけです。
※「ビットコイン取引」では、「メルカリ」の売上金以外に、残高にチャージしてビットコインを購入することも可能です。最初は、操作などに慣れる目的で、1日100円ずつ恐る恐る買っていました(「ビットコイン取引」は1円から1円単位でビットコインが買えます)。しかし、操作画面は極めてシンプルですぐに慣れることができ、また、6月中旬頃からビットコインの価格が上がり、筆者の「ビットコイン取引」もプラスで推移していたこともあり、6月下旬に思い切って残額の10,200円を投入し、合計11,000円分を「ビットコイン取引」で運用することにしました。
最初は100円ずつ。慣れたところで残額の10,200円を投入
その後、7月に入ってもビットコイン価格は好調で、7月4日には年初来高値(当時)を付けます。当然、筆者の「ビットコイン取引」にもそれは反映され、この時点では536円ほどのプラスになっていました。
2023年7月4日時点の「ビットコイン取引」の画面キャプチャー。「ビットコイン取引」は10秒ごとに価格が反映されるので、厳密にはこの価格からちょこちょこ変動します。これはあくまでもキャプチャーを取った10時56分時点の価格です
しかし、そうそううまくはいかないもので、7月4日を境にビットコイン価格は下落し始め、2023年7月26日の記事執筆時点で、筆者の「ビットコイン取引」は478円のマイナスとなっています。タイミングをあまりよく考えずに1万円超を投じた筆者の責任ではありますが、今のところ見事に“高値づかみ”をしたような状態となっています。
2023年7月26日10時27分時点の「ビットコイン取引」の画面キャプチャー
わずか20日間あまりで、500円超のプラスから約500円のマイナスに転じるのは、少々痛みをともなう体験です。もちろん、元手のうちいくばくかは「メルカリ」で不要品を売った売上金なので、その痛みは「元手すべてが普通のお金」よりは軽い気はしますが……。
筆者は今後、基本的に「メルカリ」の売上金がある時に限り「ビットコイン取引」を利用していくつもりですが、いつビットコインに変えるか、そしていつ売上金に戻すかなど(※)、もう少しビットコインや暗号資産そのものを勉強したほうが「ビットコイン取引」を本格的に楽しめる(そして、増やす可能性を高められる?)のではないかと感じています。
※「ビットコイン取引」の残高は、いつでも「メルカリ」の売上金に戻すこともできます。逆に言うと、現状、「メルカリ」の売上金に戻す以外の用途はありません。
ここで「ビットコイン取引」の注意点にも触れておきます。一般的な暗号資産取引と同様に、「ビットコイン取引」でも売買に関する手数料は無料です。しかし、メルカリアプリ上で表示されるビットコインの売買価格には、スプレッド(購入価格と売却価格の差)があらかじめ含まれています。
また、「ビットコイン取引」でビットコインを保有しているだけでは税金は発生しませんが、売却して利益が生じた場合は、原則として「雑所得」となり、20万円を超える場合は所得税の確定申告が必要となることも頭に入れておきましょう。20万円以下の場合であっても、医療費控除やふるさと納税などの確定申告を行う場合、暗号資産の取引などの「雑所得」の金額について申告が必要となります。これら損益の計算は、アプリ内からダウンロードできる「取引履歴報告書」で確認ができるようです。
現状、取引できる暗号資産はビットコインのみだったり、取引画面が限りなくシンプルで機能が限定的だったりと、あくまでも暗号資産取引の初心者向けサービスとの印象が強いメルカリの「ビットコイン取引」。その分、始める敷居もかなり低くなっており(下記ボックス参照)、暗号資産取引の入り口としてうまく機能している印象を受けます。
もっとも、筆者も始めてまだ2か月弱といったところで、「ビットコイン取引」や暗号資産取引そのものの面白さを感じるところまでは行っていません。ビットコインの価格推移なども定期的にチェックしつつ、しばらく取引を続けて、その経過を当メディアでご報告したいと思います。
■メルカリ「ビットコイン取引」の始め方の流れ
メルカリで「ビットコイン取引」を始めるまでの流れは下記のとおりです。
【STEP1】メルカリアプリのダウンロード
【STEP2】本人確認や生体認証の登録を行う
メルカリアプリ内のマイページを開き、「ビットコインを買う」を選択。案内ページの内容を確認し「はじめる」をタップ。申込みの手順に沿って、本人確認や生体認証の登録を行います。すでにメルカリユーザーでどちらも登録済みの場合、ステップ2は省略できます。
【STEP3】申込み情報を入力
各種重要項目を確認し、同意したのち申込み情報を入力して申込めばOK。これで「ビットコイン取引」の利用が可能となります。
このニュースのサマリー
〇2023年7月より、「三井住友カード」での対象店でのポイント還元率が最大7%にアップ
〇対象店は大手コンビニや飲食など全15チェーン
〇ポイントアップ対象は「タッチ決済」のみで、7%還元となるのは「スマホのタッチ決済」
「三井住友カード」は、2023年7月以降、対象のコンビニ・飲食店にて、同カードで支払うと(スマホのタッチ決済)、従来の最大5%還元から2%還元率を上げ、最大7%のポイント還元を始めました。
対象店でのポイント還元率が最大7%に!(画像は三井住友カード公式サイトより)
このポイント還元の対象店舗は、セブン-イレブンやローソン、ポプラ、セイコーマートといったコンビニや、マクドナルド、サイゼリヤ、すき家、はま寿司、ドトールコーヒーショップなどの飲食店の全15チェーンです。また、対象となるカードは、提携カードや一部の法人カードをのぞく「三井住友カード」で、一般カードだけではなくゴールド、プラチナプリファード、プラチナといった上位カードも含まれます。
ひとつ注意したいのは、「最大7%還元」の仕組みです。下記のように、支払方法ごとに、基本のポイント還元である「0.5%」にポイントが加算される仕組みです。
■「三井住友カード」「対象店で最大7%還元」の内訳
・「三井住友カード」の基本のポイント還元 0.5%
ここに、下記の還元率が加算される。
・タッチ決済(Visaのタッチ決済またはMastercardコンタクトレス)での支払いの場合
スマートフォン(Apple Pay/Google Pay):+6.5%で、合計7%
リアルカード:+4.5%で、合計5%
・タッチ決済以外での支払いの場合
カードの差し込みや磁気取引:ポイントアップの対象外(基本の0.5%還元のみ)
iD:ポイントアップの対象外(基本の0.5%還元のみ)
上記を見てもわかるとおり、ポイントアップ対象となるのはタッチ決済のみ。とりわけ、スマホのタッチ決済が優遇されており、リアルカードでのタッチ決済よりも2%も還元率が上がります。
このように、支払方法にやや制限はあるものの、比較的身近な店舗での最大7%還元は、ほかのクレジットカードではなかなか見られない水準です。「Oliveフレキシブルペイ」や「三井住友カード(NL)」など、近年人気を呼んでいる年会費無料のカードも対象なので、対象店舗をよく利用する人は、利用を検討してみてもよいかもしれません。
このニュースのサマリー
〇2023年10月より、京王電鉄が京王線・井の頭線の鉄道乗車ポイントを開始
〇大人は月内の同一運賃区間の利用回数でポイント付与率が1~14%に変動
〇子どもは小児運賃の50%のポイントを付与
昨今のポイント人気の高まりを受け、最近は、公共交通機関にもポイント導入の動きが目立っています。そんな中、2023年10月より、京王電鉄が「鉄道乗車ポイントサービス」を始めると発表しました。
京王電鉄が、乗るほど貯まる鉄道乗車ポイントを10月から始めます
京王電鉄の「鉄道乗車ポイントサービス」は、京王線・井の頭線に乗車すると、「京王アプリ」内に「京王トレインポイント」が貯まるサービスです。同アプリ内の鉄道乗車ポイントサービスに会員登録(無料)したPASMOで乗車することで、乗車回数・乗車運賃に応じて「京王トレインポイント」が付与されます。
「京王トレインポイント」は、京王グループの百貨店やホテルなどで貯めたり使ったりできる「京王ポイント」に交換できるほか、セブン銀行ATMを通じて、原則24時間365日いつでもPASMOへチャージできます。交換レートは「1,000京王トレインポイント=1,100京王ポイント」、「1,000京王トレインポイント=912円分のPASMOチャージ」で、「京王ポイント」への交換のほうにおトク感があります。
同サービスでユニークなのは、「大人運賃(PASMO)で乗車」と「小児運賃(小児用PASMO)で乗車」で、「京王トレインポイント」の付与率の仕組みが異なる点です。
大人運賃の場合、同一月内に同一運賃区間を複数回乗車すると、「乗車運賃の累計」と「同一運賃区間の乗車回数」に応じて変動する付与率をもとに、「京王トレインポイント」が付与されます。詳細は以下のとおりです。
「京王トレインポイント」の乗車回数に対する付与率(大人運賃)
・ 5回〜 8回/月 …… 同一月内での同一運賃区間の乗車運賃累計の1%分
・ 9回〜16回/月 …… 同一月内での同一運賃区間の乗車運賃累計の4%分
・17回〜24回/月 …… 同一月内での同一運賃区間の乗車運賃累計の8%分
・25回〜32回/月 …… 同一月内での同一運賃区間の乗車運賃累計の12%分
・33回以上 /月 …… 同一月内での同一運賃区間の乗車運賃累計の14%分
※1ポイント未満の端数切り捨て。同一運賃区間ごとに計算した結果を合算して、総付与ポイント数を決定
たとえば、千歳烏山駅からIC運賃209円区間を同一月内に複数回乗車したとします。新宿駅に週2回、渋谷駅に週1回往復した場合に付与されるポイントは下記のとおりとなります。
・新宿駅に週2回利用×往復×4週=16回乗車
・渋谷駅に週1回利用×往復×4週=8回乗車
※新宿駅も渋谷駅も千歳烏山駅からIC運賃209円区間
↓
合計24回利用=付与率8%
209円×24回×8%=401ポイント付与
いっぽう、小児運賃の場合は1回の乗車ごとに運賃の50%分の京王トレインポイントが付与されます。京王電鉄によると、子育て世代の外出を応援する目的から、大人運賃より高い付与率を採用しているそうです。たとえば、調布駅から京王よみうりランド駅までのIC小児運賃は70円なので、毎回その半分となる35ポイントが獲得できます。
最後に、現在実施されているキャッシュレス関連のキャンペーンの中から、編集部がチョイスした2つのキャンペーンをご紹介します。
神奈川県内の店舗での買い物で最大20%還元(「かながわPay」第3弾)など、おトクなキャンペーン情報をチェック!
神奈川県内の対象店舗で最大20%の還元を受けられる、神奈川県独自のキャッシュレス・消費喚起事業の「かながわPay」。第1弾(2021年)、第2弾(2022年)に続き、2023年7月27日10時より第3弾がスタートしました。
本事業に参加するには専用アプリの「かながわPay」と、対象のスマホ決済サービス「au PAY」「d払い」「はまPay」「LINE Pay」「楽天ペイ」「AEON Pay」のいずれかひとつ以上が必要です(「AEON Pay」は「iAEON」での利用限定)。支払い前にキャンペーン対象店舗に設置されたQRコードを「かながわPay」アプリで読み取り、対象のスマホ決済で支払うことで支払金額の最大20%分の「かながわポイント」が還元されます。
還元上限はひとりあたり3万円までで、付与された「かながわポイント」は神奈川県内の対象店での支払いに利用できます。「かながわPay」は神奈川県在住の人のみならず誰でも参加できますが、「かながわポイント」が付与されるまでには買い物後8日ほどかかるため、「買い物」と「ポイント利用」で、少なくとも2回は神奈川県を訪れる必要がある点には注意しましょう。
実施期間
ポイント付与期間:2023年7月27日〜予算上限に達するまで(公式サイトに予算上限額の記載はなし)
「かながわポイント」の利用期間:2023年8月3日〜11月30日
https://kanagawapay.pref.kanagawa.jp/
「楽天ペイ」は、2023年8月1日〜17日まで、セブン-イレブンで最大10%還元となるキャンペーンを実施します。期間中、エントリーのうえ、全国のセブン-イレブン店頭で「楽天ペイ」のコード払いで700円以上利用すると、初めて「楽天ペイ」を利用する場合は最大10%、すでに「楽天ペイ」を利用したことがある場合は最大2%還元の楽天ポイントが還元されます。
「楽天カードから楽天キャッシュにチャージする際に0.5%、楽天ペイでの決済で1%の楽天ポイントを獲得でき、初めて楽天ペイを利用する場合は別途8.5%が期間限定ポイントとして付与される。すでに楽天ペイを利用したことがある場合は別途0.5%が期間限定ポイントとして付与される。キャンペーン分のポイント上限はひとり1,000ポイントまでです。
エントリー期間:開始中〜2023年8月17日
キャンペーン期間:2023年8月1日〜17日
https://pay.rakuten.co.jp/campaign/2023/0801-sej/
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