スポーツの秋、到来――。
そんな中、会社の健康診断で運動不足という結果を突きつけられ、「今年こそランニングを始めたい!」と思っている人は少なくないはず。そこで本稿では、ランニング専門Webメディア「ランナーズパルス」編集長の南井正弘さんが、初心者にオススメのランニングシューズ7モデルをセレクト。各モデルの特徴をわかりやすく紹介する。
2017年に発売された、7つの主要ブランドからそれぞれ新作を選出
――目次――
MODEL 01. アシックス「ゲルカヤノ24」
MODEL 02. アディダス「アルファバウンスEM」
MODEL 03. ナイキ「エアズームペガサス34」
MODEL 04. ニューバランス「M1040」
MODEL 05. ミズノ「ウエーブライダー21」
MODEL 06. アンダーアーマー「UA チャージドバンディット3」
MODEL 07. ブルックス「ゴースト10」
【まとめ】
[セレクトした人]
「ランナーズパルス」編集長
南井正弘さん
Profile/スポーツシューズブランドのプロダクト担当として10年勤務後、ライターに転身。「Number Do」「モノマガジン」「日経トレンディネット」を始めとした雑誌やウェブ媒体において、スポーツ製品に関する記事を執筆している。
[6項目評価]
南井さんが各モデルを下記の6項目でチェック。各項目最高10点の計60点満点で評価する。
・軽量性……シューズの重量感
・反発性……蹴り出しがしやすい
・フィット感……特にアッパーの性能による
・安定性……ケガをしにくい
・衝撃吸収性……膝への衝撃を緩和する
・通気性……走行時の快適さに寄与する
アシックス「ゲルカヤノ24」。カラバリは写真の「ブラック×フラッシュグリーン」を含む全3色で展開。片足の重量の実測値は、約329g(28.0cm)
日本のみならず世界中のランナーの注目を集めるアシックス「ゲルカヤノ」シリーズの最新バージョン。ミッドソールには、反発性にすぐれた「スピーバ」と、軽量性にすぐれた「フライトフォーム」を組み合わせ、流れるような滑らかな走り心地を実現した。
メーカー希望価格は、16,740円(税込)。
つま先からかかとまで搭載されている「フライトフォーム」は、軽量なうえにすぐれたクッション性を発揮
新搭載の「メタクラッチ」が、かかとを包み込むようなホールド感を生む
使用イメージ。シームレスな2層構造のメッシュアッパーにより、やわらかな履き心地とフィット感を体感できる。かかと部には再帰反射材を搭載し、ナイトランも安心だ。横幅のサイズ「ウィズ」はスリム/レギュラー(写真)/スーパーワイドの3種類で展開
「クッション性、サポート性、安定性など、そのトータルバランスにすぐれた機能性により、欧米でも高い人気を誇るのがアシックス『ゲルカヤノ』。24弾モデルでは「フライトフォーム」をミッドソールに使用することで、ひと昔前のカヤノからは想像できないレベルの軽量性も確保しています。今回走ってみて感じたのは、その保護性能の高さ。自分のようにほぼ毎日走るランナーはもちろん、時々しか走らない人の脚力でも履きこなすことができると思います」
衝撃吸収性と安定性が「9」をつける高評価。走り始めたばかりの初心者でも、ケガの不安なく走れそうだ
アディダス「アルファバウンスEM」。カラバリは写真の「コアブラック/グレーフォアF17/ランニングホワイト」を含む全2色で展開。片足の重量の実測値は、約337g(27.0cm)
都市型のスポーティーな流線型デザインを備える1足。アッパーには、動きに合わせてフィットし、通気性も確保する「エンジニアードメッシュ」を採用。さらに、ソールには柔軟性の高い「バウンスクッション」を搭載し、長距離ランでもストレスレスで走れる。
メーカー希望価格は、12,960円(税込)。
ソールの厚めの「バウンスクッション」が、すぐれた快適性と柔軟性を提供
履き口は、ライニングとタンが一体化したソックス構造を採用し、フィット感抜群
使用イメージ。ウィズは、日本人向けとされる「2E」相当
「軽量性とクッション性にすぐれており、特に蹴り出し時の反発性を強く感じることができます。『アルファバウンス』の近未来を感じさせるデザインは、他のブランドの追随を許さないほどのスタイリッシュさが光ります。昔ながらの三本線が好きなアディダス好きには賛否両論のデザインですが、ランニングシューズをカジュアルシーンでも履きたいというユーザーにもピッタリな1足です」
軽量性とフィット感が高く、反発力も評価が高め。安定性が低いのが残念で、少し走り慣れた初心者向けと言えそうだ
ナイキ「エア ズーム ペガサス 34」。カラバリは写真の「ブラック/ブライトクリムゾン/コンコルド/メタリックシルバー」を含む全5色で展開。片足の重量の実測値は、約295g(28.0cm)
初心者からベテランのランナーまで対応する1足。改良されて軽くなったアッパーの「フライメッシュ」素材が、ランニング中に熱がこもるのを軽減する。また、頑丈なケーブル「フライワイヤー」がシューレースと連動して土踏まず部分を包み込み、快適な走行をサポートする。
メーカー希望価格は、12,960円(税込)。
クッションが前足部とかかと部分に内蔵された「ズーム エア」ユニットと連動し、ランナーに前に押し出すような感覚を提供
ソールに沿って配置されたラバーのストリップが、かかとからつま先にかけての動きをサポート
「フライメッシュ」素材のアッパーは、継ぎ目のないシームレスに仕上げている
「1981年に初代モデルが誕生したナイキ屈指のロングセラーシリーズ。一時期は同社の他モデルの陰に隠れていた時期もありましたが、ここ数シーズンは同社ランニングシューズの中価格帯をリードするキーアイテムになっています。本モデルでは、前作から継承する幅広いスピードレンジへの対応が目立ちます。初心者ランナーのフルマラソンから、トップ選手のトレーニングまで、活躍してくれそうです」
反発性を「9」と高評価。フルマラソン4時間切りを目指すサブ4の中級ランナーにも対応可能だ
ニューバランス「M1040」(品番は「M1040B8」)。カラバリは写真の「ブルー」を含む全3色で展開。片足の重量の実測値は、約291g(27.0cm)
ニューバランスが日本人の足のために開発した長距離用ランニングシューズ「1040」シリーズの最新モデル。ミッドソールのかかと部内側に硬度を高めた「メディアルポスト」を搭載し、内側への過度な倒れ込み「オーバープロネーション」を未然に防ぐ。安定性やフィット感も高い。
メーカー希望価格は、14,040円(税込)。
かかとのホールド性と着地時の安定性を高めるため、アッパーのかかと部には適度な柔軟性を持つ TPU 素材で成形したヒールカウンターを装備
縫い目を極力排除したシームレスアッパーが、抜群のフィット感をもたらす
甲周りのサイズを選べるウィズサイジング展開を採用。メンズは D(写真)/2E/4E の 3 種類から選べる
「『M1040』といえば、ビギナーランナーのフルマラソンデビューからウルトラマラソンのような超長距離レースにまで対応する、日本人規格の人気シリーズ。クッション性、安定性、サポート性を高次元で融合していましたが、少し重いのが玉にキズでした。そんなロングセラーシリーズも2017年に登場した8代目モデルでは、目を見張るような軽量化に成功。『M1040のクッション性や安定性は魅力だけど、ちょっと重いのが……』と感じていたランナーならマストバイ!」
安定性とフィット感は抜群の「9」と評価。従来モデルでは気になっていた重量も、291gと軽量モデルの仲間入りをした
ミズノ「ウエーブライダー21」。標準タイプのカラバリは写真の「レッド/ホワイト/ブラック」を含む全5色で展開。そのほか、スーパーワイドタイプ1色と、トレイルランニングに最適な防水性・透湿性を備えた素材「ゴアテックス」を搭載したタイプを1色そろえる。片足の重量の実測値は、約287g(27.0cm)
世界累計販売数1000万足を超えるシリーズの進化モデル。従来モデルで評価の高かったTPU素材のヒールカウンターはそのままに、履き口部にやわらかい素材を採用。かかとが安定することで走り心地がよく、シューズを履く瞬間や、走っている最中に硬さを感じない。
メーカー希望価格は、13,932円(税込)。
ソールに波形プレート「ミズノウエーブ」を挿入。縦方向の衝撃を吸収し、横方向のズレには安定性を発揮することで、クッション性と安定性を両立させている。また、先代モデルより「ミズノウエーブ」は中央部を凹ませた新形状を採用。接地時のやわらかさや前方向へのスムーズな体重移動を実現している
かかと部分とつま先部分のソールの厚みの差を「ドロップ」と言う。一般的にドロップが少ないほど地面の着地時間が短い上級者用で、これが多いほど、着地した際の衝撃をシューズの踵部で吸収する。足への負担が少ないため、初級者向きだと言われている。同モデルでは、ターゲットとしている1kmあたり5〜7分のタイムで走る人に適したドロップ12mmを採用
アッパー部にメッシュ材「エンジニアードメッシュ」を採用し、シンプルなデザインと高級感を両立
「『ミズノウエーブ』が提供する比類なき安定性、衝撃吸収性、反発性により、ビギナーランナーのスタンダードモデルとして君臨してきた『ウエーブライダー』に21代目モデルが登場。着地時に、ほとんどグラつかない抜群の安定性と足裏を押し返すような独特な反発性能は健在です。最近は1足のシューズでオン/オフを兼用することも多いですが、今回『ウエーブライダー 21』にラインアップされたブラック/ゴールドのようなカラーリングは、そんな用途にもピッタリ!」
全体的に高評価をつけたオールマイティーな1足
アンダーアーマー「UA チャージドバンディット3」。カラバリは写真のカラーを含む全3色で展開。片足の重量の実測値は、約273g(28.0cm)
日本人の足形状特性を考慮した「2E」フィットモデル。構造的に編み込まれた軽量で柔軟性に富んだニットアッパー「UAニットアッパー」が、ソックスのように足を快適に包み込む。ソールには、柔軟性と反発性を両立したフルレングスの「チャージドクッショニング」を搭載し、前モデルよりもアグレッシブでスムーズな走行感覚を実現した。
メーカー希望価格は、14,580円(税込)。
1歩ごとに刻々と変化する衝撃に応じて、適切にその衝撃を吸収、反発効果をもらたす「チャージドクッショニング」を搭載。また、かかとには立体成型ヒールカップの「スピードフィット」構造を採用し、かかとに吸い付くようなフィット感を実現している
少し幅広で日本人の足に合いやすいウィズ「2E」を採用
「前作が日本市場でも良好なセールスを記録することに成功した『バンディット』の第3弾。ウィズ(足幅)は3種類から選べますが、今回は2Eという日本人の標準といわれるウィズモデルをセレクト。弾むような反発性を提供してくれるミッドソールに、ゆとりのあるアッパーを組み合わせることで、長時間のランでも快適性を失いません。私は6kmランを日課にしていますが、このシューズを初めて履いた日は、あまりに走りやすくて10kmまで距離を伸ばしたほど!」
フィット感が「9」と優秀。通気性も今回の7モデルの中で唯一「8」をつける高評価
ブルックス「ゴースト 10」。カラバリは写真のカラーを含む全5色で展開。ほかに「ゴアテックス」モデル1色がそろう。片足の重量の実測値は、約287g(27.0cm)
シリーズ10周年目の軽量クッショニングシューズ。ミッドソールには、衝撃吸収力と反発力を自動的に調整する「バイオモゴDNA」を採用。路面からの衝撃の強さに最適なクッション性を発揮する。かかと部には独立型「ヒール セグメント クラッシュパッド」を搭載し、着地時にかかる衝撃を加速へと変化させ、力のロスを減らす。
メーカー希望価格は、12,960円(税込)。
クッション材には「バイオモゴDNA」を採用。スピードや体重、フォーム、路面状況によって常に変化する衝撃に合わせ、最適な衝撃吸収力と反発力に自動で変化する。その下の青いパーツが、独立した「ヒール セグメント クラッシュパッド」。力のロスを減らし、スピードを逃がさない
かかと部分とつま先部分のソールの厚みの差であるドロップは、初心者向きの12mm。アッパーは、シンプルなシームレス設計を採用する
「『ゴースト10』は、クッション性を特に重視するランナーにレベルを問わず対応する1足です。フワフワした感触が印象的な『ヒール セグメント クラッシュパッド』を踵部に配したミッドソールは、効果的に着地時の衝撃を吸収。そのエネルギーを反発力に変換し、徐々にスピードを上げていくと、自然に足が前方へと運ばれるような強い反発性が感じられるようになります。ちなみにこのシューズは、着地時に脚が過度に内側に倒れこむオーバープロネーション対策が万全ではないので、これに悩むランナーには向いていないのが少し残念です」
全体的に評価は高い。特に衝撃吸収性は、「9」をつけた
まず言いたいのは、どのモデルも初心者が練習やマラソンで使用できる機能性を持ち合わせるということ。その中でも特に、南井さんが高い総合得点をつけたのが、ミズノの「ウエーブライダー21」だ。これからもビギナーのスタンダードモデルとして君臨し続けるであろう。
アシックス「ゲルカヤノ24」、ニューバランス「M1040」、ブルックス「ゴースト10」も、衝撃吸収性と安定性が高いため、最初に買うランニングシューズとして最適と言えそうだ。
いっぽうで、アディダス「アルファバウンスEM」やナイキ「エアズームペガサス34」、アンダーアーマー「UA チャージドバンディット3」は、反発性と軽量性が高いため、走り慣れてきて少しスピードを上げたいビギナーにピッタリと言えるだろう。