裸足感覚を追求する「ナイキ フリー ラン 5.0」の2019年モデル
「ナイキ フリー」は、従来のスポーツシューズよりも足を自由に屈曲させ、広げ、動かすことができるシリーズ。2019年春に発表された同シリーズのランニングコレクションは、従来モデルよりも足の構造に近いラスト(木型)を使用するなど、より一層の裸足感覚を提供する新しい要素が含まれていた。
そこで今回は、その新作「ナイキ フリー ラン 5.0」の機能性を検証する。
2004年、ナイキはまったく新しいコンセプトのスポーツシューズを発表。それが「ナイキ フリー」だった。従来のスポーツシューズよりも裸足状態に近づけた着用感を提供する同プロダクトは、ランナーに自然な足の動きを提供し、“人間本来の足の力”を取り戻すことを目標としていた。
シーズンごとに進化を続けてきた「ナイキ フリー」は、ビギナーからトップレベルのアスリートまで、幅広い層のユーザーを獲得し、スポーツシューズ業界において確固たるポジションを築くことに成功している。
そして2019年春、「ナイキ フリー」が待望のフルモデルチェンジ。アッパー構造とともに同モデルの根幹を成すミッドソールの素材は、硬めのものを採用した。これは、裸足のような感覚をより一層実現するために2004 年のオリジナルモデルに近づけているという。
また、2018 年モデルと比較してソールの屈曲性が26%向上。2mm ほど足が地面に近づいていることから、裸足感覚も増している。
実際に「ナイキ フリー ラン 5.0」を履いてみた
アッパーデザインは、ベーシックな印象だった2018年モデルから一転、ストレッチ素材を多用し、シューレースを斜めに配するなど、かなり斬新な印象に。また、ミッドソールが独特の曲線を描いていることから、前作よりもボリューム感がある。
伸縮性にすぐれた薄いメッシュのアッパーに、ミニマルなレーシングシステムを採用。シューレースは足の形状を考慮して斜めに配されている
独自の曲線を描くソールユニットは、より裸足のような感覚を実現するために2004 年のオリジナルモデルに近い硬めの素材を使用。なお、かかととつま先の高低差(ドロップ)は6mmとなっている
足を入れてみると、同社が発表しているように、ソールユニットは硬く感じ、足裏と地面との距離が近づいたことも理解できた。
実際に走ってみてまず感じたのは、アッパーの独特な履き心地だ。2017年と2018年の「ナイキ フリー ラン 5.0」のアッパーデザインが一般的なスポーツシューズに近かったのに対し、今回のモデルは前述の通り大胆な意匠を採用しているので、ソールユニットだけでなく、アッパーのほうも裸足感覚が強化されていた。
かといって脱げそうになるようなこともないので、この独自の着用感は走り始めこそ若干の違和感をおぼえたが、しばらくすると快適に感じられるようになった。
ペースとしては6分45秒/kmからスタートして、最後は5分30秒/kmまで上げて日課の6kmランを終えた。自分の足でしっかりと着地して、シューズに頼らずにみずからの脚力で進むという感覚は従来通り。新たなソール形状と切り込みの採用による屈曲性のアップも感じられた。
新たなソールユニットは独自の切り込みを入れることで、2018年モデルよりも屈曲性が26%向上。2mm 足が地面に近づいていることから、裸足感覚もアップした
裸足感覚を損なわせないために、ソリッドラバー(黄色)は耐摩耗性が特に必要とされる前足部とかかと部分の2か所のみに配される
翌日、試しに他ブランドの一般的なランニングシューズで走ってみると、「走っているときは、こんなにシューズに助けられているんだ……」と、心のなかでつぶやくくらいに楽に進んだ。つまり、裸足感覚の「ナイキ フリー ラン 5.0」を履いて走る場合は、自分の脚力や走力を使って走らなければならないということ。そのため適度に使用すれば、脚力や走力が向上することは間違いないだろう。
またその翌日には、再び「ナイキ フリー ラン 5.0」で6kmの距離を走行。初回のランよりも同シューズの特徴を踏まえて走行することで、脚力を強化できる仕組みを理解できた。
そして何より2019年版「ナイキ フリー ラン 5.0」のうれしいポイントは、そのデザインとカラーリング。筆者が選んだ「サミットホワイト/ブラック/ブルーヒーロー/ボルトグロー」のカラーコンビネーションは、1990年代のランニングシューズの名作「ナイキ エアズーム LWP」を思い出させた。また、「ナイキ ACG」やパタゴニアのショーツあたりとコーディネートすれば、カジュアルシーンでもカッコよく履きこなせるだろう。もともとそのスペックを考えると10,800円(税込)という価格は安いと思っていたが、街でも履ける汎用性とファッション性を考えると、2019年版はさらにお買い得な1足になったと言えよう。