皆さんこんにちは!ゴルフ大好きクラブフィッターのオグさんです。今回は今年発表されたばかりのテーラーメイド「SIMドライバー」「SIM MAXドライバー」を試打させていただきましたのでレポートしたいと思います。
テーラーメイド「SIM」シリーズのドライバー(写真はSIM MAX)
「SIM」(シム)とは「Shape in Motion」の略で、ヘッドシェイプにテーラーメイド社のテクノロジーが盛り込まれているところから名付けられました。特にクローズアップされているのは空力。空気抵抗を減少させ、ヘッドの加速させやすさを重視して設計されています。その設計思想をよく表しているのが、ソールに搭載された「イナーシャ ジェネレーター」と同社が呼ぶ突起。フェースに対して垂直ではなく、トゥ側に向かってやや斜めに設置されています。こうすることでトップからインパクトまでのヘッドの向き、つまりフェースが開いた状態での空気抵抗を軽減させ、ヘッドスピードを高めることに成功したといいます。
前作のMシリーズで好評だった、打点のミスを軽減させる「ツイストフェース」、ルールギリギリの反発係数を実現する「スピードインジェクション」などのテクノロジーは引き続き搭載。期待しかない仕上がりです。
ドライバーのラインアップは2モデル。前作「M5」の実質的後継機種となる「SIM」と、同「M6」の後継「SIM MAX」。それぞれ、どんな弾道が打てるのか、どんな違いがあるのかを中心に試打してみました。
詳しいテクノロジーは発表会での記事で触れていますので、よろしければご覧ください。
▶M5・M6の次は「SIM(シム)」。2020年のテーラーは“空力”で勝負する
では製品を見ていきましょう。SIMドライバーは、フェース側の縦にスライド式のウェートを搭載し、使い手のスイングや弾道の傾向に合わせて重心距離を調整できるように設計されています。SIM MAXのヘッドには搭載されていません。
従来からの、シャフト脱着によるロフト・ライ角調整機能はどちらのモデルにも引き続き採用されています。デザインで特徴的なのが、やはり空力を考えて設置された斜めの突起、「イナーシャ ジェネレーター」。ヘッド後方に向かってすぼめられた形状は、いかにも空気がスムーズに流れそうな印象を与えてくれます。
今作の2モデルのヘッドサイズはどちらも460ccで、サイズに差はありません。構えたときも微妙に違いはありますが、ぱっと見はほとんど変わりませんね。前作のM5/6シリーズはシルバーとレッドをアクセントカラーとして用いていましたが、SIMシリーズはホワイトとブルーを使用しています。
SIM ドライバー
SIM MAX ドライバー
スライド式ウェートはSIMのみに搭載。メカニカルなデザインと、白と青をアクセントに使用したカラーで仕上げられたヘッドはカッコいいです!
SIM ドライバー
SIM MAX ドライバー
SIM、SIM MAXともサイズはどちらも460ccと差はなく、構えた印象はほぼ同じ。比べてみると微妙にMAXのほうが大きいかな?と感じる程度です
SIM ドライバー
SIM MAX ドライバー
トゥ側から見るとMAXのほうが後方下部への張り出しが大きいのがわかります。またSIMはトゥ側にロゴマークがプリントされるのに対しMAXには入っていません
SIM ドライバー
SIM MAX ドライバー
ほぼ印象は変わりませんが、MAXのほうが、わずかにフェース長が長い印象。白い部分のマスキングに工夫を施し、フェース面の見え方を調整しています
純正シャフトは三菱ケミカルと共同開発した「TENSEI」ブランドのモデルを採用。SIMは「TENSEIシルバー」(下)、SIM MAXは「TENSEIブルー」(上)と、それぞれ専用のシャフトが装着されています
まずはSIMから試打してみました。ヘッド形状は前作と比べてトゥ側のボリュームが増しており、いわゆる“洋ナシ型”になっています。トゥ側にボリュームがあると、急激なヘッドターンがしにくく見えますので、しっかりたたいても大丈夫そうな印象がありますね。
何球か打ってみると、狙った目標よりわずかに右に飛び出し、ややフェード気味に逃げていく球が出ました。私は結構フェースローテ―ションをするほうなので、普段のイメージどおりに打つとインパクトまでにフェースが戻しきれませんでした。しかしその弾道は、普段見る逃げる弾道とは一線を画すもの。レフティーの方のドローボールと同じような弾道なんです。つかまえきれていない弾道でも初速が速く、低スピンで飛んでいく弾道にかなりびっくりしました。
次にドロー系のボールを打つべく頑張ってつかまえるように打ってみたのですが、なかなかドローにならず、フック気味に打って下記の計測画面の弾道になるくらい。左に打ち出さずに左に曲げるのはかなり難しいです。安心して強振できる仕様ですね。
ちなみにスライド式ウェートも試しましたが、ヒール寄りにセットして使うと気持ちよく振れ、フックもかけやすくなりました。弾道の高さは、意外と上がるなという印象。試打クラブのロフトは10.5°でしたが、ロフトなりの高さがちゃんと出ます。それでいて初速が速く、スピンも増えすぎないのですから、素直にすごいなと感心してしまいました。
イナーシャ ジェネレータ−(写真はSIM)。空力を考えて斜めに配置されている突起ですが、この先端はウェートになっていて、重心を深く低くすることにも寄与しています
ダウンスイング時にヘッドは開いた状態、つまりヒール側から空気の抵抗を受けるので、そのヒール側の空気を効率よく流すために、イナーシャ ジェネレーターはトゥ側に傾いた設計になっています
かなり頑張ってつかまえた弾道の数値です。真冬でのこの数値はかなり飛んでいます。高さも出ていますし、よほどのことがない限り、左のミスにならないのはスイングスピードの速いプレイヤーにとってかなりの安心材料になると思います
MAXはというと、SIMよりさらに直進性が高く、打点のミスに強いといった印象です。SIM同様、少しだけ振り遅れやすい印象があるのですが、曲がりはSIMより少なく、狙った目標よりわずかに右に出てそのまま強い弾道でまっすぐ飛んでいく、そんな弾道がほとんどでした。
多少芯を外そうが、この球質からほとんど変わりませんでしたね。この打ち出し方向の問題は慣れで解消しますし、スライス系の弾道でもかなり飛ぶ弾道が打てますので、問題にはならないと思います。MAXの試打ヘッドは9°だったのですが、ロフトなりよりも少しだけ高く飛び出す印象。10.5°だとかなりの高弾道が期待できますね。つかまりももう少しよくなるでしょうから。10.5°のほうがバランスにすぐれると思います。
総評するなら、つかまえきらなくても飛ぶ弾道が打て、左のミスを怖がらずにぶったたいていけるSIM。多少のミスは許容し、飛び出した方向に直進性の高い弾道で飛ばしてくれるSIM MAXといった感じ。う〜ん、これだけ飛ぶと、狭いホールなどは3Wでのティーショットが増えそうな気がしますね。それくらいの飛びの可能性を秘めた仕上がりになっています。
前作は「ガキッ」といった、やや硬めではじき感のある打感でしたが、SIMシリーズは軽やかになり、やわらかくなった印象を受けました。「パキッ」といった感じで、爽快感が増しました!
30球ぐらい打ったのですが、少々芯を外しても芯で打ってもほとんどがこんな感じの弾道でした。少し右に飛び出て、まっすぐ。ミスの許容性が高いので、ロフトやシャフトで打ち出し方向さえ調整できれば、安定感抜群のティーショットが手に入りそう
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SIMシリーズのドライバーは、どちらもアスリートが使いやすく、そして飛距離を追求しやすい仕上がりになっていると感じました。たたけるSIM、直進性を重視したSIM MAXといった性能差がありますので、自分が何を求めるかでヘッドを選ぶとよいと思います。
アベレージゴルファーにはMAXがおすすめですね。やはり打点のミスに強いのは大きいです。もし試打する機会があるのであれば、ロフト角を気にしてください。前作よりも上がりやすくなっている印象がありますので、9°、10.5°の両方を試し、より自分のイメージに沿ったほうを選ぶとよいでしょう。上がりやすくなってはいますが、スピンがそれほど増えないので、やや高めかなと感じる弾道のほうが飛ぶ可能性が高いですよ。
SIMシリーズのドライバーにはカタログ記載のカスタムシャフトがいくつか用意されていますので、それぞれの特徴などを軽くご紹介します。
純正のTENSEIより張りが強く、シャキッとした振り味になります。弾道もより強くなりますが、つかまりも抑えられるため、よりたたけるハードヒッター向けと言えます。
こちらもシャキッとした振り味のシャフトですが、つかまり具合は純正に近く、ニュートラルな印象。弾道はやや上がりやすくなります。
粘るようにしなり、“間”が作りやすいシャフトで、より強い弾道が打ちやすい組み合わせ。つかまりは純正よりは抑えられるため、強いフェード系の弾道を好むならおすすめの組み合わせです。
少々の打点のミスを気にせず強振していく方におすすめの組み合わせ。つかまりは抑え気味になりますが、多少打点がズレても強い弾道が安定して打てます。
強振に耐える直進性の高い組み合わせといった印象です。シャフトの先端の硬さがヘッドのミスへの強さをさらに強調してくれる感じがしました。
安定してフェード系の弾道を打つにはおすすめの組み合わせ。逆球になりづらいのが好印象でした。
写真:野村知也
ゴルフショップ店長、クラフトマン、クラブフィッターそして雑誌の編集・執筆業も行う、歌って踊れるゴルフライター。好きなクラブはパター、左利き/右打ち。愛称は「オグさん」。