オグさんです。
今回はスリクソンのアイアン型ユーティリティー(以下、UT)、「Z U85」の試打レビューをお送りいたします。
ボディ素材/フェース素材:軟鉄(S25C)/クロムバナジウム鋼
ロフト:#2 18°/#3 20°/#4 23°/#5 26°/#6 29°
スリクソンブランドは、ダンロップがワールドワイドで展開するアスリートブランド。ゴルフだけでなくテニスも展開していて、世界的に認知されています。ゴルフクラブでは「Z」シリーズと称し、ドライバー、フェアウェイウッド、ウッド型UT、アイアン型UT、アイアンをラインアップ。どれもトップアスリートが結果を出すために設計されています。
今回試打させていただいた「Z U85」はアイアン型UT。アイアンの操作性を残しながら、ミスへの強さ、球の高さを追求したクラブで、主に狭いホールのティーショットや、ピンポイントで狙うシビアなショットなどで威力を発揮します。
UTと言われなければわからない、アイアンとほぼ同等の形状。バックフェース下部を厚めにすることでアイアンの形状を保ちながら重心を最適な位置に配置しています
トップブレードが厚めに設計されていますが、きれいなアスリート好みのきれいな顔。ロフトの立った番手はバックフェースの張り出しがトップブレードの右から目に入りますが、ミラー仕上げにすることで気にならないような工夫がなされています
フェース側から見ると普通のアイアンです。フェース面には「クロムバナジウム鋼」という特殊鋼を使用。ボディは軟鉄を使用しているのでロフトとライ角の調整ができるのがうれしいですね
トゥ側から見ると、アイアン形状を保ちながら重心を低く深く設計しているのがわかります。ソールが幅広いのでダフリのミスもある程度は助けてくれます
アドレスすると、フェース部分はアスリート向けのアイアンのようなきれいな顔で構えやすいです。ヘッドサイズは一般的なアスリートアイアンと比べるとひと回り大きいのですが、厚めのトップブレードやバックフェース側の張り出しをミラー仕上げにするなどして、大きさの違和感が出ないようになっています。見た目のプレッシャーもなく、かといってボテっとしたイメージもない、絶妙な形状に仕上がっていると思います。
試打したのは20°の3番。ドライバーでのヘッドスピード42m/sぐらいを意識して、地面から直接何球か打ってみましたが、アイアン型としては思ったより球が上がる印象を受けました。ロフト20°は今のアスリートアイアンでいうと3番アイアンぐらいに相当するのですが、それより1.5番手分ぐらい高さが出ました。スピンも適度に入るので、グリーンに直接落としても多少転がるにせよ、十分止まってくれそうです。
操作性は、今でいう飛び系アイアンをイメージしてもらえばわかりやすいでしょうか。無理やり曲げようと思えば曲がってくれますが、直進性の高さが優勢です。ボールのつかまりはニュートラルで狙った方向にドンと飛んでいきます。曲がりが少なく、スイング傾向に沿った弾道が出やすいので、狙った弾道と逆の球が出にくいクラブとも言えますね。
ボールの打ち出し方向をコントロールしやすいので、狭いホールなどでのティーショットでは武器になるでしょう
打感は、軽やかでありながらしっかり感もある印象。さすがに軟鉄鍛造のアイアンと比べると劣りますが、フェースに乗っている感触は感じられる、アイアンらしい打感と言えます
この“出っ張り”が、アイアンの形状を維持しながら深く低い重心を実現させるカギ。ここをいかにきれいに処理するかで形状がかなり変わってくるのですが、このZ U85は非常にカッコよく仕上がっていると思います
性能と形状を両立している部分で注目したいのが、バックフェース下部の仕上げ。あえてミラー仕上げにすることで、ブラスト仕上げのトップブレードの右から視界に入っても背景に溶け込み、気にならないようになっています
標準のシャフトバリエーションは3種類。自社設計のシャフトブランド「Miyazaki」のカーボンが2種類とスチールが1種類です。今回はいわゆる純正の「Miyazaki Mahanaカーボン」と「N.S.PRO 950GH DSTスチール」をお借りしました。
Miyazaki MahanaカーボンはZシリーズに共通で用意されている、純正のカーボンシャフト。しなりが比較的大きめでタイミングが取りやすく仕上がっています。打点のミスもある程度は助けてくれるので、シビアなショットの高い精度よりも安定感を求めたいならこれですね。
N.S.PRO 950GH DSTスチールはMiyazaki Mahanaよりも重く、その分長さも半インチ短くなっています。スチールとはいえ適度にしなり、打点のミスにもそれなりに対応してくれます。パワーのある人はこちらのほうが適正な弾道が打ちやすく、目標も定まりやすいでしょう。
上が「Miyazaki Mahanaカーボン」、下が「N.S.PRO 950GH DSTスチール」
N.S.PRO 950GH DST:ほぼストレートの弾道。スチールらしくねじれが少なく、打つ出し方向が制御しやすい組み合わせです。高さも十分でピンポイントで狙っていけます
Miyazaki Mahana:シャフトのしなりがボールをつかまえてくれ、やや左に飛び出した分高さが出ませんでした。それでもほとんど曲がらない、直進性の高い弾道で距離も出ています。安定した飛距離でまとめたいならこちらの組み合わせがいいですね
Z U85はアイアン型UTとして現代のアスリートのニーズに合わせた直進性が高く、高弾道のモデルに仕上がっていました。同シリーズのUTには、ほかにウッド型の「Z H85」があります。これらの違いは、ウッド型Z H85はボールが上がりやすく、多少のラフなどからのショットに強い。対するアイアン型Z U85はボールの打ち出し方向のコントロールがしやすく、弾道も強い、といったところでしょうか。
現在市販されているアイアン型UTには、お助け性能が高いタイプもありますが、このZ U85は、ある程度ボールをコントロールできるゴルファーが使うとやさしさを感じる仕上がりだと思います。アイアンが得意な方が使うとよりその性能の高さを実感できるでしょう。
写真:野村知也