こんにちは! オグさんです。
今回はタイトリストの「TS2」「TS3」シリーズからユーティリティーメタルを試打させていただきましたのでレポートしたいと思います。
「TS3 ユーティリティーメタル」(左)、「TS2 ユーティリティーメタル」
TSとは「タイトリスト・スピード」の略。ボールスピード、クラブスピードなどのスピードに着目したシリーズで、同シリーズのドライバーやウッド類は、それぞれの特性を持ちながらどれも飛距離性能を高く評価されています。
そんなTSシリーズのいわゆるユーティリティー(以下、UT)にあたるモデルがこのユーティリティーメタルです(タイトリストではUTをユーティリティーメタルと呼称しています)。ヘッドタイプは2種類用意されていて、それぞれ味付けが異なる様子。ツアープロなど、アスリートに人気が高いタイトリストのUTはどんな仕上がりなのか、さっそく見ていきたいと思います。
TS2は、フェアウェイウッドとのつながりを重視した、オーソドックスなウッド型UT。やや小ぶりでありながら奥行きのあるヘッドのおかげで、打点のミスをある程度カバーしてくれます。キャリーが出しやすく、高い安定感を持つモデルです。
フェアウェイウッドをそのまま小型化したようなやわらかな丸みを持つフォルムが特徴のTS2。ウッド好きの方は違和感なく構えられる形状ですね。ソールには、別売りになりますが、脱着・交換可能なウェイトを装着し、シャフトやクラブ長によって最適なバランスに調整できるようになっています。ネックには同社オリジナルの弾道調整機能を搭載。ロフト角を-1〜+2°、ライ角1°フラット〜2°アップライトを、1°刻みで調整できます
「タイトリストスピードシャーシ」と呼ばれる、培ってきた技術を集結して作られたボディは高いボール初速を生み出すそうです。シャローバックにはなっていますが、極端に後方を下げてはいませんね。やさしさだけを追求するのではなく、適度な操作性との両立を図っているのだと思います
TS3、はウッド型でありながらアイアンの特徴をあわせ持つUT。アイアンとのつながりを重視しており、目標に正確に打ち出しやすく、ラインの出しやすさとライナー性の強い弾道が打ちやすいモデルです。
FP値(フェースプログレッション、フェースの出っ歯具合)をできるだけ小さくし、ややトゥ側にボリュームを持たせることで、ウッド型でありながらアイアンとのつながりがいい形状。TS2と違い、ソールにウェイトはありませんが、代わりにトゥ側に重心距離を調整できる機構を備えています。ネックの弾道調整機能はTS2と同様のものを搭載しています
TS2と比べるとやや短いフェース長ですが、その分厚め。トゥ側に搭載されたウェイトの向きを入れ替えることで重心距離を変えてボールのつかまり具合を調整することができます。このモデルもシャローバックではありますが、後方の先端がTS2より高い位置にあることから、TS2よりは弾道は低めになりそうな印象があります。その分弾道は強そうです
標準で装着されるシャフトは60g台からのカーボンから90g台後半のスチールまで幅広く用意されています。このへんはタイトリストらしい、ユーザーのことをしっかり考えてのことでしょう。
いわゆる“純正シャフト”は、一番軽量である60g台の「Titleist TOUR-AD T-60」(グラファイトデザイン社製)と、70g台の「Titleist MCI Matte Black 70」(フジクラ製) の2タイプ。フレックスのバリエーションがあるのはT-60(R/SR/Sの3タイプ)だけで、その他のシャフトはすべてSフレックスのみ。より細かいスペックにこだわりたい方にはカスタムクラブで対応しています。
「Titleist MCI Matte Black 70」(上)、「Titleist TOUR-AD T-60」(下)。どちらもアフターマーケット用のシャフトにそっくりなカラーリングの2本ですが、いずれも本機専用に設計されているモデル。幅広いゴルファーに合うようにチューニングされています
TS2は、アスリートが好むツボを押さえたウッド型と言えばわかりやすいでしょうか。ポンとヘッドを置いたときにほんの少しだけ右を向く座りのよさ、ややトゥ側にボリュームを持たせてつかまり過ぎないイメージを持たせるヘッド形状、そしてその形状どおりの弾道。この、形と性能の一致が、テクニックのあるゴルファーほど安心感として受け入れられると思います。
驚いたのが打感です。ネックに弾道調整機能が付いているモデルは打感を作るのがえてして難しいのですが、これは余計な振動が少なく、適度にやわらかで気持ちいい打感が味わえます。
基本性能はニュートラルから少しだけつかまりを抑えた仕様になっており、ネックの弾道調整機能である程度つかまりは調整可能になっています。
コントロール性能は高く、左右の曲げはもちろん、上下のコントロールもある程度できました。打点のミスはある程度許容してくれますが、弾道の補正能力はほとんど持っていないので、打点が安定しない方が使うと難しいと感じてしまうかもしれません。
弾道を操作する技術はなくても、打点が安定する方であれば逆球は出にくいので、安定した弾道を打つことはできると思います。技術を持っている方ほどやさしいと感じるクラブだなというのが私の感想です。
23°、純正の「TOUR-AD T-60フレックスS」の弾道です。目標に対してストレートな弾道をイメージして打ったのですが、軽く右に押し出し、そのままほぼまっすぐな弾道になりました。これなら少々力んでもフックにならなそう。安心して振っていける安心感がありますね。上がりやすさやつかまりやすいといったわかりやすい補正能力はほぼなし。だからこそ素直な弾道が出るので、上級者にはおすすめです
打感はUTとしてはとてもやわらかで、余計な振動のない心地よい感触です。狙ったところに打ち出しやすいのでティーショットでも活躍してくれそう
TS3は、オーソドックスなウッド型のTS2と比べると少し変わった形状をしています。フェースを後方に少し下げてトゥ側に大きくボリュームを持たせたシェイプは、アイアンに似たイメージを持たせてくれます。個人的には好きです。
打ってみると、アイアンのようにややダウンブロー気味にインパクトするとミートしやすい印象を持ちました。打感はTS2と同様、余計な振動のない心地よい感触。それでいて、フェースのどのへんで打ったかがわかる情報をちゃんと伝えてくれます。
ヘッド性能は、TS2と比べると少しだけつかまらない印象(ですので、市販UTの中ではかなりつかまらないモデルです!)。打ち出した方向に直進性の高いライナー性の弾道を打ちやすいのですが、ちょっと気を抜くと狙いより右に飛び出しやすかったです。
TS3には「Sure Fit CGウェイト」という機能が搭載されていて、トゥ側の脱着式ウェイトを前後入れ替えて装着することでヘッドのターンしやすさを調整できます。打った後に確認すると、ヘッドターンを穏やかにする、重心距離が長めの仕様になっていました。ヘッドターンをしやすい重心距離が短めの仕様にしたら操作性は向上し、さらにアイアンぽく打てるようになりました。たとえるなら、重心距離の長い仕様が直進性の高いデカヘッドのアイアン、短い仕様がマッスルバックや小ぶりなキャビティのような操作性のいいアイアンに近い感じですね。個人的には重心距離が短いほうが狙ったところに打ち出しやすかったです。しかし、それでもつかまりが大きく向上するわけではないので、決して“お助けUT”ではありません。
23°の「TOUR-AD T-60フレックスS」 重心距離が長めの仕様のデータです。多少つかまっているデータになっていますが、飛んでいた弾道はほぼ真っ直ぐでした。感触としてはこちらのほうが打ち出し角が低く、強いライナー性の弾道が打ちやすかったです。ラインを出していくイメージが強い方はTS3の方がお勧めですね
TS3はSure Fit CGウェイトという、重心距離を調整できる機能を搭載しています。棒状のウェイトの半分だけが重くなっていて、これを入れ替えることで重心距離を長くしたり短くしたりすることができます。個人的には重心距離短めが打ちやすかったです!
TSシリーズのユーティリティーメタルは、好みに応じて選べるアスリート向きのモデルでした。どちらがやさしいとか飛ぶといった作り分けではなく、形状はもちろん、理想とする弾道、ウッドが好きなのか、それともアイアンが好きなのかといった好みや傾向に合わせて選べるように設計されています。
こういった思想のクラブはなかなかないので、個人的にはとても好きです。補正能力が高くない分スイングの傾向どおりの弾道を安定して打ちやすいので、スイングが安定している人には補正能力が高いモデルよりも使いやすいUTになると思います。
いい球を打つクラブと言うよりは、「自分の想定外のミスを打たないためのクラブ」といった感じの仕上がりですね。
写真:野村知也