オグさんです。今回はテーラーメイドのユーティリティー、「SIM2 レスキュー」「SIM2 MAX レスキュー」の試打レポートをお届けします。
テーラーメイド「SIM2 レスキュー」(左)、「SIM2 MAX レスキュー」(右)
「SIM2」シリーズは、文字どおりSIMシリーズの第2弾。SIMシリーズは、スイング中のヘッドの空気抵抗を低減する工夫を含め、強い弾道が打ちやすくミスに強いことで大ヒットを記録しました。SIM2シリーズは、そのコンセプトを引き継ぎつつ、さらに進化させてきています。
テーラーメイドでは、一般的にユーティリティー(以下、UT)に当てはまるクラブのことを「レスキュー」と呼んでいます。前作まではレスキューは1モデルだけだったのですが、今作から2モデルになり、自分の好みに合わせて選べるようになりました。
ではモデルごとに細かく見ていきましょう。
ロングアイアンより、球が上がりやすくミスに強い。弾道を抑えることもできる上級者向けのモデルです。
黒を基調とした精かんなイメージのデザイン。接地面積を減らしヌケをよくする「Vスチールソール」がデザイン上のアクセントにもなっています
ウッド型UTとしては奥行きが狭く、サイズも小ぶり。フェースのバルジ(横方向の丸み)がかなり強めについていて、打点を外しても曲がりが少なそうな印象があります。特に、トゥ側が開いて見えるように設計されていて、アスリートが嫌うつかまり過ぎのイメージをなくしています
フェース素材には高強度のマレージング鋼を使用。ミスヒット時の曲がりを抑えるおなじみ「フォージドツイストフェース」や、フェース下部の高初速エリアを広げる「貫通型スピードポケット」を搭載しています
シャフトは「SIM2ドライバー」、「SIM2フェアウェイ」と同じ流れの三菱ケミカル「TENSEI シルバー TM70カーボン」を装着。そのほか純正ではスチールの「NS PRO 910GH」をラインアップしています
SIM2レスキューは、フェアウェイウッドとアイアンの中間に位置するUTですが、ややアイアン寄りに設計されたウッド型のUT。アイアンのトップブレードを思わせるクラウン上の仕上げや小ぶりなヘッドが、アイアンのようなイメージを演出。操作性や振り心地をアイアンに近付けつつ、それをじゃましない範囲でミスへの寛容性を高めた仕様になっています。
ネックには弾道調整機能も搭載しており、ロフト角やライ角を調整することが可能。自分のスイングの傾向や、欲しい飛距離に細かく合わせることができるようになっています。
ちなみに、このモデルはテーラーメイド セレクトフィット ストア限定です。
お借りしたのは#3の19.5°。シャフトはカーボンのSフレックスです。
フェースに対してやや開いて見えるブレード風のクラウンの仕上げや、少しだけトウ側の高いフェース形状のおかげで、アイアンのイメージで構えられますね。
ターゲットに対してヒール側を真っすぐ向けるイメージで構えると、フェースの丸みによってトゥ側が右を向いたようにセットできます。こうすることで、UTにありがちのつかまり過ぎのイメージを消すことができます
打ってみると、意外と言っては失礼ですが、やわらかな打感が好印象。ボールがフェースに乗っている感じがあり、アイアンに近いフィーリングが得られます。
最初はドライバーのヘッドスピード38m/sぐらいをイメージして打ってみましたが、これぐらいの速度だとボールがほとんど上がりません。シャフトはフレックスSのみなので40m/s前後は欲しいところです。それ以下の方は後述する「SIM2 MAXレスキュー」のほうがいいでしょう。
ヘッドスピードを43m/s相当にして打ってみましたが、それでもボールが上がりやすいとは言えません。元々は楽に高さを出すためのクラブではないので、パワーに自信があってもUTで高い弾道が打ちたいならSIM2 MAXレスキューのほうがいいですね。
弾道調整機能を搭載しているおかげで、細かい調整ができるのはうれしいところ
SIM2 レスキューの得意分野は、強い弾道で狙ったところに打ち出しやすいところ。弾道の操作はできますが、自由自在といった感じではなく、頑張れば曲がる程度。現代のクラブらしい、直進性を高めた仕様になっています。
打点のミスへの寛容性は、小ぶりなヘッドサイズの割にかなり高いと言えますが、SIM2 MAXレスキューやそのほかの大きめのUTにはかないません。ある程度ミートできるゴルファーが、強い弾道でピンポイントに狭いエリアを狙うためのクラブといった仕上がりです。
つかまりはニュートラルなので、ドロー、フェードどちらにも操作しやすいです。とは言え、見た目の印象よりも結構極端にやらないと曲がってくれません。飛距離性能は高いです!
アスリートが好むツボを押さえつつ、打点のミスに強く楽に上がって飛ばせるように設計したUTです。
クラウンのフェース側とボディの一部にホワイトを使い、同シリーズのウッド類と共通のデザインイメージ。テクノロジーはSIM2レスキューと同様で、「Vスチールソール」、「貫通型スピードポケット」などを搭載しています
クラウンのフェース側全面とトゥ・ヒール側にやや回り込んだホワイトパーツによって、ブレードのように見せるデザインは前作から踏襲しています。前作はカーボンクラウンの色がもう少し薄かったのですが、今作はかなり黒くなっていますね
フェースはSIM2レスキュー同様マレージング鋼を採用。もちろんこちらも「フォージドツイストフェース」になっています。SIM2レスキューよりも投影面積がかなり増え、重心も深くなっているのがわかります
純正シャフトは「SIM2 MAX ドライバー」「SIM2 MAX-D ドライバー」の純正シャフトの流れを汲む「TENSEI BLUE TM60カーボン」。スチールシャフトはSIM2レスキューとは異なる「KBS MAX MT85 JP」が用意されています
フェアウェイウッドを小型化したような典型的なウッド型UTに、テーラーメイド独自の技術を満載したミスに強いモデル。深低重心を追求し、さらに「フォージドツイストフェース」、「貫通型スピードポケット」、「Vスチールソール」など独自の技術によって、高弾道で直進性の高いボールが打てるように仕上がっています。
お借りしたスペックは、#4の22°。シャフトは純正カーボンのフレックスSです。おなじみとなったホワイトとカーボンを使ったクラウンの仕上げのヘッドは、前作と比べると少しシャープな印象になりましたね。白いブレード調の部分はSIM2レスキューと同じように、フェースに対してやや開いた向きに塗装されています。左に行くイメージを軽減させる工夫ですが、白い部分を目標に合わせるとフェースが左を向いてしまうので注意が必要です。それを逆手にとり、右へのミスが多い方は白い部分を目標に合わせるとボールをつかまえやすくなりますよ。
ソール形状がかなり丸みを帯びており、Vスチールソールと相まってヌケがとてもいいです。少々のラフでもしっかりボールを拾ってくれそう
こちらも、ドライバーのヘッドスピード38m/s相当から試打を開始。SIM2レスキューと比べて明らかにボールが上がります。多少芯を外してもボールの高さが変わりにくいので、安定して一定のエリアに運べますね。
ヘッドスピードを43m/s相当まで高めて打ってみましたが、印象はほとんど変わらず。楽に上がって芯を多少外してもしっかり高さが出てくれます。
打感はSIM2レスキューと少し異なり、はじき感があって適度にソリッドな感触。こちらのほうが爽快感がありますね
つかまり性能はニュートラルよりは少しつかまる方向に味付けされている印象があります。直進性は高いので、打ち出し方向だけ気を付ければ安定したショットが可能ですね。
高弾道で安定した距離が出しやすかったですね。SIM2と比べてしまうとスピンは多めですが、ほかのウッド型UTと比べると低スピン傾向で強い弾道だと思います
└#3・ロフト19°
└#4・ロフト22°
└#5・ロフト25°
└#6・ロフト28°
前作であるSIMシリーズのレスキューは「SIM MAXレスキュー」の1モデルしかなかったのですが、今作で2モデルになったことで選択肢がずいぶんと広がりました。
SIM2レスキューは、弾道をある程度自分でコントロールして狙っていく方に、SIM2 MAXレスキューは、多少のミスはクラブに助けてもらい、楽に飛ばしていきたいと考える方によいでしょう。
SIM2レスキューには、#2・17°、#3・19.5°、#4・22°の、3つの番手がラインアップされています。番手のチョイスは、アイアンを何番までバッグに入れているかによって変わってくると思います。よほど飛び系のアイアンを使い、長い番手をバッグに入れていないかぎり、#4でも飛距離は重複しないはず。現在のアイアンの一番長い番手のロフトと長さをチェックし、そこから想定される飛距離に合わせて選ぶとよいでしょう。
SIM2 MAXレスキューは、#3・19°、#4・22°、#5・25°、そして#6・28°をラインアップ。#6ぐらいは長いアイアンの番手と飛距離が重なってきます。長いアイアンが苦手な方はアイアンを減らし、#5や#6あたりを入れてもいいと思います。長い距離が楽になりますよ。
アイアンに90g前後のスチールシャフトを入れている方はスチールシャフト装着モデルを、それ以下の軽量カーボンを使っている方は、カーボン装着モデルを選ぶと重さと長さのバランスが揃いやすくなります。
「やさしいのが欲しいからカーボンで」と安易に選んでしまうと、かえってミートしにくくなってしまうので注意してくださいね。
写真:野村知也
ゴルフショップ店長、クラフトマン、クラブフィッターそして雑誌の編集・執筆業も行う、歌って踊れるゴルフライター。好きなクラブはパター、左利き/右打ち。愛称は「オグさん」。