オグさんです! 今回はピン「BLUEPRINT(ブループリント)アイアン」の試打レポートをお届けいたします!
ピン「BLUEPRINT アイアン」
ピンは「難しいクラブは作らない」というモットーのもと、クラブづくりをしているメーカーです。特にアイアンはミスに寛容なモデルが多く、安定したショットが得られることで高い人気を博しています。
そんなピンのアイアンの中で異色なモデルがこの「BLUEPRINT」。マッスルバックのフォージドモデルで、いかにも“難しそう”な形状をしていますよね。
でもこれが、めちゃめちゃ使いやすい! やさしい! という方が一定数いて、BLUEPRINTはそういった方々の要望で生まれたモデルとも言えます。
どんな性能なのか、どんなゴルファーにむけたクラブなのか、じっくり見ていきましょう。
デザインはとてもシンプル。ソール幅の狭い、シンプルなマッスルバックです。つや消しのメッキが落ち着いた雰囲気を出していて、とてもカッコイイです!
BLUEPRINT #5
BLUEPRINT #7
BLUEPRINT #9
非常に小さいヘッドサイズに加えて薄いトップブレードによって、カミソリのような鋭い顔をしていますね。微妙にグースネックになっていて、ちょっとだけやさしく見える要素があります
安定したスピン性能を発揮するため、溝を1本1本機械で削り出しているというこだわりよう
トゥ側のビスは、組み合わされるさまざまなシャフトに合わせて適正なヘッド重量にするためのもので、ユーザーが調整できるものではありません。ヘッドの材質は「8620カーボンスチール」という単一素材を使った、純粋な1枚物のマッスルバックです!
ロフト:#5 27°/#6 30.5°/#7 34°/#8 38°/#9 42°/PW 46°
ロフトは7番で34°と、いわゆるクラシカルロフトの設定。ちょっとでも飛距離が欲しいと考えるなら、このアイアンは選択肢に入れないほうがいいでしょう。
やさしいクラブをモットーとするピンがこれまで培ってきたデータを基に、上級者やツアープロのために開発したのがこのBLUEPRINT。シビアな環境から結果を出すために必要な性能を詰め込んだモデルになっています。
コンパクトなヘッドは、ラフなど悪いライからのヌケのよさを高めた結果ですし、幅の狭いソールもより緻密なボールコンタクトを可能にするための形です。
実際に構えてみると、素直に小さいな!(笑)と思います。ですが、普段から小ぶりなアイアンを使っていてラフからの抜けのよさを実感している私としては、少々悪いライからでも狙っていけそうだなという印象を受けます。正直なところ、これは実感したゴルファーにしかわからない感覚でしょう。
どの番手もソール幅が薄く、厳しいライでもボールをしっかり拾ってくれそう。ソールが薄いと刺さりそうなイメージを持つ方がいらっしゃいますが、このBLUEPRINTはそうならない工夫があります
これほど幅の狭いソールがなぜ刺さらないか、理由はかなりのハイバウンス仕様になっているからです。7番で9°とウェッジ並みのバウンスになっており、この効果により、幅の狭いソールでも刺さらずにスパッと抜けるようになっています
今回は5番、7番、9番とお借りできましたので、それぞれをじっくり試打させてもらいました。試打クラブに装着されていたシャフトは、NSプロ「モーダス3 TOUR105」のフレックスS。アスリートモデルのスチールとしては軽量ですが、かなりしっかりしたシャフトです。
5番アイアンからヘッドスピード40m/s前後(ドライバー換算)のイメージで打ってみました。最初はもうちょっとスピードがないとダメかなと思っていたのですが、ボールはちゃんと上がりますし、打てないことはありません。スピンも入るので、5番でこのくらいのヘッドスピードでもグリーンは狙えそうです。
ただ飛距離は出ませんね。キャリーで大体160ヤードぐらい。距離の長いコースでプレーする機会の多い方は、もう少し飛距離が出るモデルを使ったほうが楽に感じるでしょう。
芯でとらえられれば、マッスルバックならではの厚い打感が味わえます。芯を外すと、硬い打感と振動がきちんと伝わってくるので、ミスはミスと実感できる。上達しやすいと言われるゆえんのひとつですね
次に自分のヘッドスピード、ドライバーで43m/s前後のイメージで打ってみました。狙ったところに打ち出しやすく、しっかりとスピンをともなった弾道で気持ちよく打てました。ある程度ミートできる技術を持っているゴルファーほど芯でとらえやすく感じるでしょう。フェースコントロールがとてもしやすいです。
肝心のミスへの寛容性ですが、芯を外すと飛距離は落ちます。飛距離が落ちるんですが、自分がイメージした弾道から外れない、”ちゃんと飛ばない”、よい飛距離の落ち方をしてくれます。個人的にこれはとても重量な性能だと思っていて、ミスしても予想以上に飛んでしまったり、思わぬ方向に飛んでいってしまったりすると、思い切り振れなくなってしまいます。ミスはちゃんと想像どおりのミスになる。このへんは上級者やツアープロにとってかなりの安心材料になるのではないでしょうか。
7番では操作性を試してみました。ヘッドがコンパクトなのでとても操作しやすかったです。左右はもちろん上下の打ち分けも比較的簡単にできました。ボールを操る技術は最近ではあまり重要視されていない気がしますが、こういったモデルを使っていると自然と身に付くと思います。
5番のデータ。軽いドローで狙ったところに打ち出せて、スピンもしっかり。ロングアイアンでも気持ちよくグリーンを狙っていけます。昨今のアベレージ向けのアイアンでは7番の距離ですね……
7番でドロー
7番でフェード。7番では左右の打ち分けのデータを取ってみました。どちらの弾道もしっかり反対側に打ち出してから戻るような弾道が打てています。これ、直進性の高いクラブだととてもやりづらいんです。BLUEPRINTは最近のクラブにない高い操作性を持っていますね
BLUEPRINTは、ある意味で時代に逆行したモデルだと思います。プロでさえ、ミスに強く直進性の高いアイアンを好む時代ですから。ですが、すべての上級者やツアープロがそういったモデルを欲しているわけではなく、自分の技術を生かし、ボールを操って攻めていきたいと考える方もまだまだいるようです。そういったゴルファーのためにピンが作った”やさしい”モデルがBLUEPRINTなんだなと思いました。
ライバルモデルは、タイトリスト「620MB、ミズノ「ミズノプロ120」。どちらも使い手の技術を生かすためのクラブです。
こういったクラブは、自分で細かくボールをコントロールしたいと考える方には、ストレスがないやさしいモデルになるでしょう。また、今はまだできなくても操る技術を身に着けたいと考える方にもおすすめです。スイングの良し悪しがハッキリしますので、ひとりで練習していてもボールがやるべきことを教えてくれますからね。
写真:野村知也
ゴルフショップ店長、クラフトマン、クラブフィッターそして雑誌の編集・執筆業も行う、歌って踊れるゴルフライター。好きなクラブはパター、左利き/右打ち。愛称は「オグさん」。