オグさんです。今回はリニューアルされた、タイトリスト「T300」の試打レポートをお送りいたします。
タイトリスト「T300」
タイトリストのTシリーズは、「常に最高の品質を持ってプレイヤーのパフォーマンスを最大限に引き出す」という理念に基づいて開発されています。そのTシリーズがこの秋、「世界に最高のアイアンを提供する」という高いハードルをみずからに課し、モデルチェンジを行いました。
Tシリーズのアイアンのラインアップは、「T100」、「T100S」、「T200」、「T300」「T400」となっており、それぞれが想定されたゴルファーに対応した明確なコンセプトに基づいて設計されています。
各モデルの性能を簡単に説明すると、以下の通りになります。
T100…狙ったところに正確にボールを運ぶ、番手ごとのキャリー性能を重視したモデル
T100S…T100の基本性能はそのままに、バランスよく飛距離性能を高めたモデル
T200…左右のバラつきを抑えて安定性を高めたモデル
T300…飛距離性能とミスへの強さの両立を狙ったモデル
T400…シリーズ中最も飛距離を追求しつつ、安定性も高めたモデル
今回試打させてもらったT300は、ゴルファーの技術的な部分をカバーしながら、中上級者が求めるフィーリング面をある程度残した仕様となっています。あえて分類するならばT100、T00S、T200は技術を持ったゴルファーや上達志向のあるゴルファーに向けたモデル。対してT400はお助け機能をしっかりと搭載したオートマチックなモデルになっていて、T300はそれらの中間といった特性を持っています。
日本人の好むタイトリスト、そのいいとこ取りをしたモデルはどんな仕上がりでしょうか。実物を見ていきましょう!
Tシリーズのほかのモデル同様、比較的シンプルなデザイン。T300の技術的象徴でもある、バックフェースにある大きな突起「マックス インパクト2.0」がアクセントになっています
T300・#5
T300・#7
T300・#9
構えた見た目はタイトリストらしいアスリート然とした形状ですが、サイズをやや大型化。トップブレードに適度な厚さを持たせてセミグースネックを採用することで、ボールのつかまりと見た目のやさしさを演出しています
ロングアイアンとミドルアイアンには、センターからヒールに向かって薄くなるバリアブルフェースというデザインを採用。飛距離の落ちやすいヒール側のミスヒットに強い設計にすることで、飛距離のバラつきを抑えています
T300のヘッド下部には前作から40%も増量した高比重のタングステンを内蔵。航空宇宙分野で採用されている特殊技術を用いて精密に配置することで、打ち出し角、ボールスピード、ミスへの強さに対して最適なバランスを実現しているのだそうです
ロフト:#5 23°/#6 26°/#7 29°/#8 33°/#9 38°/PW 43°
ロフトは7番で29°と、現在のアベレージ向けモデルとしては標準的な設定になっています。ボールの打ち出し角とミスへの強さ、そして飛距離とのバランスを考えた結果でしょう
シャフトは、振り心地を番手間で極力変えないようにとタイトリストが専用に設計した「NS PRO 880 AMC」のほか、先端から中間がしなる素直な挙動を見せる「NS PRO 105T」、独自に設計した軽量のカーボンシャフト「3D055」をラインアップしています。
一般的な男性であればスチールの105Tがよいと思います。
専用設計となる「NS PRO 880 AMC」
第一印象は、比較的大きめのヘッドサイズでやさしそうだなといった感じ。けれども、構えると適度なシャープさがあり、鈍重な雰囲気がありません。このへんはさすがタイトリストですね。
いつものように、ドライバーで40m/s程度のヘッドスピードを意識して試打をスタート。まずびっくりしたのがボールの上がりやすさです。やや立ち気味のロフト設定ではあるのですが、このヘッドスピード帯でもボールをしっかりと高く打ち出してくれます。
高さがこれだけ出やすいのであれば、ある程度の飛距離を追求してもグリーンでボールを止められるでしょう。飛距離を追求した設計でスピンを減らしてしまうと、パワーのない方はグリーンで止めることが難しくなるのですが、それを高さでしっかりと補っているのがこのモデル。このあたりからも、飛距離だけでないバランスのよさを感じます。
はじき感のあるソリッドな打感。余計な振動は少なめなので、芯で打つと気持ちいいです! 芯を外すとちょっと硬めの感触がありますが、フェースのどこでヒットしたかの情報源として必要な要素かなと思います。それでも飛距離が落ちにくいのがこのアイアンのよいところでしょう
球質は直進性の高い弾道で、曲がりは少ないですね。インテンショナルに曲げようとしても、40m/s程度だとほとんど曲がりませんでした。
ミスに対する強さはかなりのもの。ヘッドの左右はもちろん、上下に打点を外しても、しっかりとボールに高さを出してくれるので、安定したキャリーが見込めます。
ヘッドスピードを43m/s程度に高めてみると、弾道はさらに高くなり、グリーンを上から攻めることができます。クラシカルなロフト設定のアイアンとほぼ同じぐらいの高さを出すことができました。
操作性はヘッドスピードが高まっても変わらず、極端にやってどうにか少し曲がるぐらい。ヘッドスピードに関係なく、直進性の高い弾道が期待できます。球の高さを自分で出しにくく、ロングアイアン何本かの距離が変わらないようなゴルファーによい結果をもたらしてくれそうな仕上がりになっています。
フェース下部までがっつりと彫り込んだポケットキャビティ構造に、ポリマーコアを使用したマックスインパクト2.0の効果によって、高弾道かつ直進性の高い弾道を実現させています
7番の弾道データ。ロフトがやや立っているにもかかわらず、高さと飛距離をしっかり両立しています。操作性を必要としないゴルファーであれば、かなり高い評価になると思いますよ!
一新されたT300は、アスリートゴルファーが好むフィーリングを最低限確保しつつ、ミスへの強さとやさしさ、そして飛距離をバランスよく追求したモデルといった印象を持ちました。
今回一緒にモデルチェンジしたT100とT100Sは、操作性を重視しつつ、安定性と飛距離のバランスを変えた兄弟モデル。T200は、飛距離を重視つつ、操作性よりも直進性を強化したモデルでした。
ゴルファーは腕前が同じぐらいでも、アイアンに何を求め、重視するのかが違います。それが自身ではっきりしているゴルファーにとって今回のTシリーズ(2021年モデル)は、とてもわかりやすく頼もしいものになるでしょう。
反対に、どんなモデルが自分に最適なのかはっきりとしていないゴルファーは、タイトリストのフィッティングを受けて診断してもらうことをおすすめします。
現代のクラブはどれも高性能です。ですが、よい結果を得るには、自分が求める性能を持ったクラブを見極め、手にすることが重要になります。アイアンに求められる性能をモデルごとにわかりやすく、シリーズ化した今回のTシリーズは、モデルごとはもちろん、完成されたアイアンシリーズであると思います。
写真:野村知也