オグさんです! 今回はヤマハの「RMX(リミックス)」ブランドのニューモデル「VD40 アイアン」を試打させていただきましたので、じっくりとレポートしたいと思います!
こちら、なかなかの意欲作ですよっ!
ヤマハ「RMX VD40 アイアン」
ヤマハは、エンジョイ派のゴルファーのための「インプレス」、アスリートやアクティブなゴルファーのための「RMX(リミックス)」と、2つのブランドを使い分けています。今回モデルチェンジしたのはRMXのほうで、かなりチャレンジングな試みがされています。
今回のモデルチェンジで、ネーミングが「RMX VD(リミックス ブイディー)」になりました。「向き」や「直進」の意味を持つ「Vector」と方向を意味する「Direction」、それぞれの頭文字から取ったサブネーム「VD」が追加され、その通りに直進安定性を特に強化したシリーズになっています。
VD40アイアンは、そんなRMX VDシリーズを象徴するようなモデル。「世界一やさしいアイアンを作りたい」という思いのもと、ネックとトウに大胆に重量配分し、アイアンでは破格の慣性モーメント4,000g・cm2を実現。ヤマハによれば、退屈するほどグリーンを外さないアイアンに仕上がっているのだとか!
さっそく実物を見ていきましょう!
見て驚くのが、この大きさと形状! 重量配分のために張り出たヒールが、大きさをさらに際立たせます。トゥ側の張り出しも大きく、まるで斧のようです
VD40 アイアン・#5
VD40 アイアン・#7
VD40 アイアン・#9バックフェースから見る形状とは裏腹に、構えてみるとちゃんとアイアンの顔をしています。サイズは大きめですが、拍子抜けするぐらい普通のアイアンです。グースは大きめで、つかまりはよさそうですね
この角度から見ると、ネックの張り出しが見えますね。フェースには高強度ステンレス鋼である「AM355P」という素材を使い、ボディ一体の精密鋳造で作られています
3つの面を持つソールには、ダフりに強く跳ね過ぎないような工夫がされています。こう見ると、とても幅が広く見えますが、実際に幅が広いのはトウ側のみで、ヒール側は狭くなっています。ヒールウェートの張り出し部分の摩擦を軽減しているのかもしれません
ロフト:#5 24°/#6 27°/#7 30°/#8 34°/#9 39°/PW 44°
シャフトはVD40アイアンに合わせて設計された三菱ケミカル「Diamana YR」をメインに、日本シャフト「NS PRO 850GH neo(R)」と「NS PRO 950GH neo(S)」をラインアップ。
パワーに自信がない方は、楽にヘッドスピードが稼げるカーボンシャフトがおすすめです。それなりに振れる方なら、ヘッドのコンセプト的にもマッチしてねじれにくいスチールシャフトがよいでしょう。
ビュンとヘッドを走らせてくれる専用設計のカーボンシャフト「Diamana YR」
正直、最初に見た時はびっくりしましたが、構えてみると意外と普通。ヘッドサイズが大きくグースネックの度合いも強めなので、いかにもつかまりそう。見た目から感じるやさしさは最大級です。
ロフト設定は7番で30°、長さはカーボンで37.25インチと、一般的なアベレージアイアンの設定。飛距離を追求するのではなく、あくまでミスへの強さと直進安定性を高め、結果を求める仕様になっています。このへんがインプレスではなく、RMXブランドで発売される理由なのかなと思いますね。
ドライバーで40m/s程度のヘッドスピードを意識して試打をスタート。何球か打っての感想は「芯を外す前提で設計されたクラブ」といった感じでした。結構大きめに芯を外してもボールの初速や挙動にあまり差がなく、安定して一定のエリアに運べます。
打点が安定しないゴルファーにはとても強い武器になるでしょう。
ソリッドではじき感のある爽快な打感。バックフェースに配置されたリブのおかげで、芯を外しても嫌な振動が起きにくくなっており、どこで打ってもいい感触が味わえます
ヘッドスピードを43m/s程度まで高めても、直進性の高さとミスへの強さは変わらず。打ち出した方向に直進性の高い打球がドーンと飛び出していきます。打ち出し方向の管理だけできれば、ヤマハのキャッチコピーの通り、「退屈するぐらいグリーンを外さない」ショットが期待できます。
直進性が高くミスに強いこういったアイアンはいくつかありましたが、それらの中でもVD40は機能的に最高峰と言ってよいと思います。
半面、操作性は皆無。ゴルファーが何かしようとしても、巨大な慣性モーメントにかき消されてしまいます。
結果を求めるエンジョイゴルファーには最高の武器であることは間違いありませんが、常に何か操作をしたがる私にはあまりに退屈なアイアンでした……(笑)。
デザイン上目を引くヒール側の突起ですが、構えてみると裏側に隠れるので全く気になりません
バックフェースは、もうこれ以上行けない!というところまで深く削られたフルキャビティ構造。Rの文字の上に見える縦に入ったリブが剛性を高め、芯を外しても嫌な振動を抑える効果を発揮します
あまりに曲がらないのでヒール側、トゥ側、センターとどのくらい弾道に差が出るのか計測してみました。
結果は下記のデータの通り。どこで打ってもしっかりと高さが出て、飛距離はほとんど変わりませんでした。いやー本当に退屈ですよこのアイアン!
それぞれトゥ側、センター、ヒール側で打点をチェックしながら弾道データを計測。どれだけ差が出るか調べてみました
トゥ側で打ったデータです。狙った方向に飛び出した軽いドロー。ただのナイスショットです(笑)。高さも十分で、スピン量もちょっと多いかなといった程度。ワンピン横にナイスオンの弾道です
ほぼ芯で打ったデータです。非常に高い弾道で、ちょっと開いたインパクトだった分、距離は出ていませんが、飛距離ロスは最低限。ナイスショットですね
ヒール側で打ったデータ。こちらもちょっと開いたインパクトだったのですが、芯で打ったデータと差がほとんどありません。スライス回転であるにもかかわらず、芯で打ったのと比べて2ヤード飛んでいないだけ。安定感ハンパない!!
VD40アイアンは、とにかく曲げたくないゴルファーのためのモデルです。これだけ直進性が高いと、打ち出し方向さえ管理できれば左右のOBはまずなくなるでしょう。
また縦の距離感もブレにくいので、打点が安定せず同じ番手の距離が安定しないなんて方にとってもおすすめしたいアイアンです。
ライバルモデルは、強いていえばピン「G425」ですが、G425はここまで突き抜けた設計ではなく多少の操作性を持ち合わせているので、VD40のミスへの強さと直進性の高さにかなうモデルは、今のところないといってよいでしょう。
こういう、一部の性能に特化したチャレンジングなアイアンは個人的にとても興味はありますが、普段マッスルバックを愛用している私としては、“アイアン”とは思えませんでした。VD40の3番くらいが単品で発売されたら、アイアン型UTとして欲しいです!
写真:野村知也
ゴルフショップ店長、クラフトマン、クラブフィッターそして雑誌の編集・執筆業も行う、歌って踊れるゴルフライター。好きなクラブはパター、左利き/右打ち。愛称は「オグさん」。