「マシュマロクッショニング」と形容される独特なクッショニングのランニングシューズで知られるHOKA(ホカ)は、その履き心地のよさからランナー以外からの支持も多く集めることに成功している。いっぽうで、新たな走り心地も提案しており、その代表作がより速く走りたいランナーのために開発された「MACH 5(マッハ 5)」だ。HOKAの従来のラインアップとは異なる走行感で、従来獲得できなかった層のランナーが同ブランドに注目するキッカケとなっているという。
HOKA「マッハ 5」(品番:1127893)の「Mountain Spring/Puffin's Bill」
HOKAの「マッハ 5」は、「RESPONSIVE CUSHION(反応の速いクッション)」と「ENERGETIC RIDE(エネルギッシュなライド感)」をコンセプトに掲げたコレクション「FLY」に属するランニングシューズ。
「マッハ 5」の特徴の1つが、「PROFLY+」と呼ばれる2層構造のミッドソール。上層は柔軟かつ軽量で弾性の高い素材を用いることで、「クリフトン」や「ボンダイ」といったプロダクトにはない推進力を発揮する。より速く走りたいというランナーにはピッタリなスペックを採用しているわけだ。
アッパーには、通気性とフィット感を高次元で確保したエンジニアードジャガードメッシュを用いることで、ペースの速い長時間ランでも快適性をキープし続けてくれるという。アウトソールは、硬いソリッドラバーを使用することなく、ミッドソール下部と一体化した「ラバライズドEVAアウトソール」を用いることで、軽量性と舗装路における高いグリップ性を両立している。
以上のように「マッハ 5」は、より速く走るためのスペックを結集させて作られたのだ。
ミッドソールには、「PROFLY+」と呼ばれる2層構造を採用。上層には柔軟かつ軽量で弾性の高い素材を用いることで、「クリフトン」や「ボンダイ」といったプロダクトにはない推進力を発揮する
アッパーには、通気性とフィット感を高次元で確保したエンジニアードジャガードメッシュを採用。長時間のランでも快適性をキープする
アウトソールには、ミッドソール下部と一体化した「ラバライズドEVAアウトソール」を採用。舗装路における高いグリップ性と軽さを両立させている
ヒール部分のスワローテイル形状が、スムーズな着地やクッション性、バネのある蹴り出しを実現
「マッハ 5」を実際に履いて走ってみた!
HOKAのシューズと言えば、何と言ってもフワフワとした「マシュマロクッショニング」が大きな特徴で、その独特な走り心地でシェアを伸ばしてきた。しかしながら最近では、あらゆるタイプのスペックのシューズもラインアップしており、2022年1月に本連載でも紹介した「カワナ」は、硬度の高いミッドソールを採用し、安定感と反発性を高次元で両立。ダッシュを繰り返すような動きや、ジムでのトレーニングなど、ランニング以外のシーンにも対応していた。
今回トライした「マッハ 5」は、「FLY」のコレクションにラインアップされており、より速く走りたいランナーをターゲットとしているという。ちなみに、同ブランドのベストセラー「クリフトン」は、「GLIDE」と呼ばれるコレクションに属し、こちらは「SIGNATURE CUSHION(同ブランドらしいクッション、すなわちマシュマロクッショニング)」と「SMOOTH RIDE(滑らかなライド感)」をコンセプトに掲げている。
まず手に持った状態で、「クリフトン 8」あたりと比較して軽いことを感じる。足を入れてみると、その軽さはさらに顕著となり、走り始めるとある程度ミッドソールの沈み込みを感じつつ、前方への反発を強く感じる。この感覚は、「クリフトン」や「ボンダイ」にはなかったものだ。反対に、従来のHOKAのランニングシューズで感じられるメタロッカー構造による転がる感覚は少ない。6分/kmで走り始めたが、弾性の高い「PROFLY+」のミッドソール構造により、ペースがグングンと上がる。この弾性を強く感じる走行感は、「カーボンX」や「リンコン」といった同社の速めのペースで走れるほかのシューズとも大きく異なる。転がるというよりも跳ねる感覚が強いのだ。最終的に4分30秒/kmほどのペースで走り終えたが、4分/kmを切るペースで走るような上級ランナーにも十分に対応してくれると思った。
以上のように「マッハ 5」は、従来のHOKAのランニングシューズとは異なった、跳ねるような推進力をフィーチャーした1足で、「速めのペースでインターバルトレーニングを行いたい」「自分の脚力で走る感覚は大切にしたい」といった中級以上のランナーに最適な1足に仕上がっていると思う。走行感は「クリフトン」や「ボンダイ」とはかなり異なるが、足にやさしいという部分はしっかりと残しているので、従来からのHOKA愛用者が履き替えても違和感はないだろう。HOKAの「マッハ 5」は、ランニングというスポーツがより好きさせてくれるうえ、次のステップへと進もうとするランナーに最適な1足である。
ランニングギアの雑誌・ウェブメディア「Runners Pulse」の編集長。「Running Style」などの他媒体にも寄稿する。「楽しく走る!」をモットーにほぼ毎日走るファンランナー。フルマラソンのベストタイムは3時間50分50秒。