オグさんです。今回は「ステルス2 HD」シリーズ全体に関しての試打レビューをお送りします。
ドライバーを除く、「ステルス2 HD」シリーズ
皆さんは、理想のクラブセッティングについて考えたとき、クラブをまったく持っていない状態であったら、どのクラブを最優先に考えるでしょうか? おそらく多くのゴルファーが、真っ先にドライバーを思い浮かべるのではないでしょうか。ドライバーは打っていて楽しいクラブですし、アマチュアゴルファーにとっては、安定したティーショットが手に入ればスコアに如実に直結するクラブです。実際、買い替えの需要で多いのはドライバーで、毎年ニューモデルが出ると、多くのゴルファーがドライバーを買い替えています。
昨今のクラブは、ドライバーからアイアンまで、同じ特性により統一したシリーズが増えています。同一シリーズのクラブで統一すると、ミスの傾向も揃いやすく、スコアメイクしやすくなるメリットがありますし、何より、ドライバーで気に入ったモデルが見つかれば、フェアウェイウッド(以下、FW)やユーティリティー(以下、UT)でも同じような特性のクラブが用意されていますから、購入を検討する際に迷うことがなくなります。
実際にそういった声がメーカーにも多数届いているらしく、テーラーメイドの「ステルス2」シリーズでは3種あるドライバーに合わせて、FW、UT、アイアン(「ステルス2プラスは」UTまで)をそれぞれ用意しています。
そこで今回は「ステルス2HD」シリーズのFWと、レスキュー(UT)、アイアンのレビューをお届けします。
「ステルス2HD」は、ツアープロが求めるような強弾道やミスへの強さを実現するテクノロジーを使い、アマチュアにもやさしく使えるように設計したシリーズ。「HD」とは「ハイドロー」を意味し、どれもが楽に上がってつかまるクラブに仕上げられています。ドライバーのレビューはすでに掲載済みですので、ぜひそちらもご覧ください。
「HD」の名にふさわしく、高弾道とつかまりを重視したFW。同社の他シリーズのFWよりも投影面積が大きく、視覚的にもやさしさを感じさせるモデルです。
デザインは、「ステルス2」を冠するほかのシリーズとほぼ同じ。精かんでカッコイイ!
●ヘッド素材 / フェース素材
ステンレススチール [450SS]+ 3Dカーボンクラウン
/ステンレススチール [450SS]
●ロフト角(°):#3 16/#5 19/#7 23
シリーズのスタンダードモデル「ステルス2 FW」と比較すると、ロフト設定が各番手で1°ずつ多く設定され、高さが出やすい工夫が施されています。ミスへの強さと安定した結果を優先した設計ですね。
FWとしては大きめの投影面積で、安心感がありますね。ヘッド後方が下がったシャローバック形状で、いかにもボールが上がりやすそうです
シャフトはドライバーと共通の「TENSEI RED TM50」というモデルを標準装備。クセのない素直な挙動で、幅広いゴルファーに対応したモデルです
お借りしたクラブは、Sフレックスの標準シャフトを装着した3番16°。ポンと地面に置くと、大きめの投影面積が緊張感を緩和してくれます。ヘッド形状は、ヒールに適度なボリュームがあり、つかまりそうな印象を与えてくれます。
ドライバーでヘッドスピード38m/sぐらいを意識して打ってみると、明らかに「ステルス2 FW」より上がってつかまります。通常の3Wを打つと上がり切らずに右へスライスしてしまうようなゴルファーでも、ストレートからフェードぐらいに収まると思います。
ストレート弾道を意識して打つとまっすぐ飛び出し、そこから強めのドローボールになる感じですね。ミスへの強さはなかなかのもの。高さが出るぶん、芯を大きく外してもそれなりに上がってくれるので、高い安定感を持っています。
ヘッドスピードを高めていくと、つかまり性能が高まっていく印象。左のミスを嫌がる人には少し使いづらいと感じるかもしれませんが、右へのミスは確実に減らすことができるはずです。
クラブがボールを安定してつかまえてくれるので、右へのミスへの不安がなく、気持ちよく振り切れます。キャリーも出しやすいので、ヘッドスピードがあまり高くない人のほうがやさしさを実感しやすいクラブです
左が「HD」で、右がスタンダードの「ステルス2」。「HD」のほうがシャローフェースになっていますね。ボールの上がりやすさが、こういったところにも現れています
テーラーメイドは伝統的に、UTを「レスキュー」と呼びます。“お助けクラブ”というニュアンスを強く感じるネーミングですが、「ステルス2 HD レスキュー」は、まさに名前どおりの仕上がり。ほかの「HD」シリーズと同様、高さが出しやすくつかまりやすい仕様です。
FW同様、こちらのデザインもシリーズ共通の精かんなもの。一見するとプロモデルのようですね
●ヘッド素材 / フェース素材
ステンレススチール [450SS] + カーボンクラウン / ステンレススチール [450SS]
●ロフト角(°):#3 20/#4 23/#5 27/#6 31
スタンダードの「ステルス2レスキュー」と比べると、同じ番手でロフトが1°増え、ライ角も1°アップライト。これらはすべて、ボールのつかまりと高さを出すための設定です。
スタンダードに比べてやや奥行きのあるヘッド形状をしているのは、より深い重心を追求した結果です。上がりやすさとミスへの強さを高めています
お借りしたクラブはフレックスSの4番23°。UTとしてはヘッドの奥行きが大きく、FWとまではいきませんが、いかにもミスに強くてボールが上がりそうな形状です。
こちらも、ドライバーで38m/s程度で試打を開始。打ってみると、予想以上に高くつかまった弾道が打てます。つかまると言っても、始めから左に飛び出す感じで、フックのような球筋にはなりませんでした。右方向には打ち出しにくく、直進性の高い弾道が打てました。
ミスへの強さは、FW同様こちらもかなり高い。振り遅れたショットでちょっと右へ飛び出してもスライスする傾向はなく、そこからまっすぐか、ちょっとドローする弾道になりました。打球の高さは文句なし。もう少しヘッドスピードを落としても十分高さは出せるので、ヘッドスピードが低めで、ロングアイアンの番手別飛距離があまり変わらない……といったゴルファーには強力な武器になると思います。
ヘッドスピードを高めても、弾道はほぼ変わらず。まっすぐからやや左に飛び出し、そのまままっすぐから軽いドロー、といった感じの球を安定して打たせてくれます。
“ハイドロー”を冠するにふさわしいつかまり性能を持っています。打点が少々ずれても高さをしっかり出してくれるので、安定感を求めるなら間違いない1本です
2023 年初頭に「ステルス2」シリーズと同時に発表されたアイアンなのですが、2022年に「ステルス」シリーズと同時に発表された「ステルス アイアン」が継続販売のため、これと合わせるため、ネーミングは“2”がつかない「ステルスHD アイアン」です。
「HD」の名にふさわしく、「楽に上がってつかまる」を重視した、オートマチックに打てる中空アイアンです。
中空構造を採用し、ややUTっぽさのあるフォルム。性能を追求するための形状です
●ヘッド素材 / フェース素材
#5〜#8:ステンレススチール [450SS] (鋳造)
#9〜SW:ステンレススチール [431SS] (鋳造)
●ロフト角(°):#5 23.5/#6 26.5/#7 30/#8 34/#9 38.5/PW 44.5/AW 49/SW 54
番手ごとに、求められる機能に合わせて素材を変えるという、凝った設計。ロフト設定は7番で30°と、大きく立ってはいません。最大飛距離よりも、安定した飛距離を追求するために高さを優先した結果によるものでしょう。
通常のアイアンよりもトゥ側を低く設定することで、低重心を追求した設計。厚みのあるボディで深重心にすることで、打ち出し角と寛容性を高めています
シャフトは、軽量のカーボンモデルとしてほかの「HD」シリーズに装着されている「TENSEI RED」を、アイアン用に設計した「TENSEI RED TM60」を用意。そのほかに、100gのスチールモデル「KBS MAX MT80 JP」も用意されています。
クラブの性質上、楽に触れる「TENSEI」がマッチしていますが、それなりに振れる人なら、安定感の高いスチールモデルのほうがミートしやすいと感じるでしょう。
「80」という数字が名前に入っていますが、実はそれよりもちょっと重い「KBS MAX MT80 JP」。実際の重さよりも軽やかに振れるため、安定感を重視するならスチールがおすすめです
お借りしたクラブは、スチールシャフト装着モデル。構えてみると最初は「う〜ん……」なんて思っていましたが、打った後には印象が変わりました。アイアン型UTかと思わせる、トゥ側が低い形状で、顔にこだわるゴルファーは違和感を抱くと思います。ですが、この形状には意味があります。カタチから想像できる弾道と、実際の弾道が一致するのです。今では製造技術が高まって余剰重量を多く生み出せるようになったため、よくも悪くも、形状と性能が一致しないヘッドが多いのが現状です。
ですが、このアイアンは見た目どおり!
打った後に改めて見ると、余計な不安を抱きにくい、非常によい形状だと思います。
肝心の性能はというと、まさにオートマチックといった感じの仕上がりで、高弾道のドローボールを安定して打たせてくれます。ロフトをあまり立たせていないこともあり、ヘッドスピードが高くなくてもボールは楽に上がってくれますね。
ミスへの寛容性も非常に高い。ソール幅が厚いためダフリには強く、重心が低いため、少々のトップでも高さが出てくれます。つかまりもよいため、右へのミスもかなり軽減してくれます。
これらの印象は、ヘッドスピードを高めてもほとんど変わらず。高さと飛距離がヘッドスピードに応じて高まっていく感じです。
「ICT」と呼ばれる独自の技術が搭載されているため、いやな振動もなく、打っていて気持ちいい打感があります。お助けアイアンとしては、かなり完成されたモデルだと思います!
大きな飛距離を追求しなかったため、安定感の高さを磨くことができたのでしょう。いわゆるお助けアイアンとして見れば、完成度が非常に高いと思います
普通のアイアン(上)との比較写真。トゥが低い独特のフォルムですが、これが安定した高い打ち出し角と弾道を生んでくれるのです
7番アイアンのデータです。意外にもスピンはしっかりと入っているので、グリーンで止まらないことはないでしょう。取材日は極寒でしたので、実際はもう少し飛ぶと思います
「ステルス2 HD」シリーズの、ドライバー以外のモデルをまとめてご紹介しましたが、これらは「ステルス2 HDドライバー」でよい結果が出たのであれば、買って間違いはないでしょう。
もちろん、単品モデルとしても優秀ですので、つかまりがよいモデル、高さが出しやすいモデルをお探しならぜひ試打してみてください。
シリーズとしてのライバルは、キャロウェイ「パラダイムX」シリーズ、ピン「G430 SFT」シリーズといったところでしょうか。つかまり具合やミスへの寛容性など、性能には微妙に差がありますが、どれもつかまり性能を重視したシリーズです。右へのミスにお悩みの人は、どれもよい結果に導いてくれると思います。
個人的に、「ステルスHDアイアン」が気に入りました。普段は操作性の高いモデルを使っていますが、形状と性能が一致したオートマチックなモデルは、プレーをシンプルにしてくれそうな気がします。自分のクラブでプレーできない状況なら、こういったクラブでプレーしたいと思います。
写真:野村知也
ゴルフショップ店長、クラフトマン、クラブフィッターそして雑誌の編集・執筆業も行う、歌って踊れるゴルフライター。好きなクラブはパター、左利き/右打ち。愛称は「オグさん」。