2020年、ナイキがランナーの「怪我ゼロ」を目指して開発した「ナイキ インフィニティラン」は、その設計思想どおりに世界中のランナーから高い評価を得ることに成功。同社のランニングシューズコレクションにおいて重要な地位を占めることになった。
そんな人気モデルが大幅にリニューアル。前作までの面影をほとんど残さない、まさにフルモデルチェンジで、足の保護性はもちろん、衝撃吸収性、推進力など、トータルバランスにすぐれたシューズへとアップデートされているという。そんな「ナイキ インフィニティラン 4」の走行性能の高さを検証した。
ナイキ「ナイキ インフィニティラン 4 SE」(税込18,700円)
ナイキが目指したものとは何か。
それは、怪我のせいで休む必要がなくなること。怪我を恐れず好きなだけ記録に挑戦できること。そして、すべてのランナーが目標に向かってスタートラインに立てる日だ。
怪我は本当に避けられないのか? その疑問をきっかけに、ナイキがランナーの怪我を減らす可能性に着目して2020年にリリースしたのが、「ナイキ リアクト インフィニティラン」である。柔軟性、反発性、軽量性、耐久性を高いレベルで兼ね備えた「ナイキ リアクト」をミッドソールに用い、そのボリュームを前作の「エピック リアクト」よりも24%増やすことで、ランナーが求めるやわらかなクッション性を実現。さらに、ミッドソール幅を拡大し、その上端に合成樹脂製のスタビリティーパーツを配したことで、着地時の安定性と、過度に足が内側に倒れ込むオーバープロネーションの抑制にも成功。こうした怪我を防止するためのスペックを結集したことで、同モデルはワールドワイドでポピュラーな存在となった。
あれから3年が経過し、同シリーズの第4弾として「ナイキ インフィニティラン 4」が今夏登場。前作までは初代モデルを継承したスペックを継承していたが、今作では大幅なリニューアルを敢行している。
ミッドソールには新開発の「ナイキ リアクトX」フォームを使用。「ナイキ リアクト」フォームと比較してエネルギーリターンが13%向上しており、疲れにくく、弾むようなストライドを持続する。 最高レベルのフィッティングを誇る「フライニット」と「ナイキ リアクトX」フォームが合体することで、しっかりとしたアッパーサポートと通気性を両立させている。
従来の「ナイキ リアクト」フォームと比較して、エネルギーリターンが13%向上した新開発の「ナイキ リアクトX」フォームをミッドソールに使用
アッパーには、最高レベルのフィッティングを誇る「フライニット」を採用。足とシューズが一体化するような履き心地を実現している
さらに、走行性能だけでなく地球環境にも配慮しており、使用している「ナイキ リアクトX」フォームは、従来の「ナイキ リアクト」フォームと比べてミッドソールの二酸化炭素排出量を43%以上削減しているという。
アウトソールには耐摩耗性にすぐれたマテリアルを使用しており、凹凸のあるパターンはアスファルトやコンクリートといった舗装路だけでなく、土や芝といったオフロードでも高いグリップ性を発揮してくれる
「ナイキ インフィニティラン 4 SE」を実際に履いて走ってみた!
「ナイキ インフィニティラン」のシリーズに関しては、初代モデルを気に入り、2色揃えていたが、特に着地安定性のよさと、ゆりかごのようなロッカー構造を用いたソールユニットによる着地から蹴り出しまでの自然なムーブメントが印象的だった。
第3弾モデルまでは、初代スペックのほとんどの部分を継承していたが、今作はまったく異なるモデルへと生まれ変わっている。外観でまず気づくのは、ミッドソール上端の合成樹脂製のスタビリティーパーツがなくなっていること。その代わりに、ミッドソールを上方へと大きく巻き上げている。
足を入れてみると、伸縮性にすぐれたニットアッパーはフィット感が高いと改めて感じる。ナイキ公式サイトでは、ハーフサイズアップをすすめてきたが、筆者はこれまでどおりのサイズでも窮屈感はなかった。
サイズ27cmで322gという重さは、現在のランニングシューズ市場では重めの部類に入るが、フィット感のよさからか、個人的にはそこまで重いとは思わなかった。
実際に走り始めると、初代モデルの着地時のカチッとグラつかない安定性とは若干異なる着地感だが、安定感は十分に保たれていることがわかった。いっぽうで、初代モデルにおいて感じられた着地から蹴り出しまでのロッカー感はないものの、新たに採用されたミッドソールの「ナイキ リアクトX」は「ナイキ リアクト」よりも明らかに反発性が高く、ペースアップしやすいフォームだと感じられた。
6分45秒/kmほどで走り始めたが、この高反発フォームの採用もあって、スムーズにペースアップ。5分30秒/kmで日課の6kmランを走り終えたが、以前の同シリーズよりも速いペースに対応するのは明らか。それもあって、より幅広い層、タイプのランナーにマッチする1足に仕上がっていると思う。
以上のように、「ナイキ インフィニティラン 4」は、従来モデルからデザインやスペックを大きく変更した。実際に履くまでは「このシリーズのよさを失っていないか……」と心配していたが、走り終わったあと、翌日も疲労感が少なく、足の保護性に関してはしっかりとキープしていたし、推進力に関してはかなり向上しているので、中級以上のランナーも満足できる仕上がりだと思った。アウトソールも耐久性がかなり高そうなので、走行距離が長いランナーにはうれしいポイントだ。
いっぽうで、公式サイトでもハーフサイズアップを推奨しているように、幅広のランナーが従来サイズを選ぶと窮屈感があるかもしれない。先述のように筆者はサイズアップしなかったが、周囲ではハーフサイズ上げたランナーも少なくない。このシューズに関しては、リアル店舗で足を入れてから購入したほうがいいだろう。