HOKAのラインアップにおいて、速めのぺースで走るのに適したプロダクトとして高い評価を得てきた「MACH(マッハ)」シリーズは現在、第5弾「マッハ5」が展開されている。
そんななか、新たなバリエーションとして、高い推進力を実現する「Pebaxプレート」を搭載した「Mach X(マッハ エックス)」が追加リリース。高い反発性とクッション性を兼ね備えることで、さまざまなペースに対応するという本モデルは、これまで以上にスピード感のある走りを可能にし、本命レースのために最高の準備が欠かせないランナーにピッタリな1足に仕上がっているという。
HOKA「マッハ X(MACH X)」の「ホワイト / ブルー グラス」。公式サイト価格は30,800円(税込)。カラバリは全3色で展開
HOKAと言えば、「クリフトン」や「ボンダイ」といったクッション性を重視したプロダクトの名前が真っ先にあがるかもしれないが、最近では速めのペースで走るのに対応した「マッハ」シリーズも人気上昇中だ。
このコレクションのニューモデルとして今シーズン登場した「マッハ X」は、2層構造のミッドソールの上層に従来のレースモデル「CARBON X3(カーボン エックス3)」のミッドソールフォームよりも34%高い反発力を持つ「PEBAフォーム」を採用することにより、高い反発性とクッション性を両立。あらゆるペースに対応し、従来よりもスピーディーな走りを実現している。それに加え、ミッドソールに適度な剛性を備えた合成樹脂「Pebax」のプレートを内蔵することで、これまでリリースされた「マッハ」シリーズよりも高い推進力をランナーに提供してくれる。
アッパーには、高レベルの通気性とフィット感を確保するため、部位によって織り方を変えているエンジニアードジャガードメッシュを採用。長時間の走行でも快適な履き心地をキープしてくれる。
さらに、アッパー部分はリサイクルポリエステルを84%、リサイクルナイロンを16%使用するなど、機能性追求だけでなく、地球環境にも配慮している点にも注目したい。
アッパーには軽量で通気性の高いエンジニアードジャガードメッシュを採用
反発性にすぐれたミッドソール素材に加え、適度な剛性を備えた合成樹脂「Pebax」のプレートを内蔵することで、これまでリリースされた「マッハ」シリーズよりも高い推進力をランナーに提供
「PEBA」フォームとEVAフォームで「Pebaxプレート」を挟み込む構造で、着地のクッション性と蹴り出しの推進力を高めている
アウトソールには「DURABRATIONラバー」を使用することで、従来よりも耐久性が向上
「マッハ X」を実際に履いて走ってみた!
これまでに30足を超えるHOKAのシューズを履いてきたが、その多くが同ブランドの標榜するマシュマロクッショニング、すなわちフワフワとした独自のクッション性を体感できるプロダクトであった。いっぽうで、2023年2月に紹介した「マッハ 5」のように、衝撃吸収よりも、速めのペースで走るための反発性を重視したシューズも用意されており、こちらのタイプもポピュラーになりつつある。実際に走る前は、今回の「マッハ X」も同様の走行感だと推測していたが、いかに。
まず手にしてみると、「マッハ5」よりも若干重く感じられたが、公式データでは266g(サイズ28cm)なので、一般的なランニングシューズと比較すると軽いほうである。
足を入れてみると、エンジニアードジャガードメッシュのアッパーはフィット感がよい。どちらかいうと足長は長めのラスト(木型)だと思ったが、適度な捨て寸でまったく問題ない。
走り始めてみると、ミッドソール上層に採用された反発力を持つ「PEBA」フォームのやわらかさと、足裏を押し返してくる反発性を感じられる。やわらかいミッドソールのランニングシューズは着地安定性に問題があることも多いが、このシューズの場合は下層にEVAフォームを用い、「Pebax」のプレートを内蔵した「PROFLY X構造」を用いることで、着地から蹴り出しまでほとんどグラつきを感じない。衝撃吸収性は「ボンダイ」や「クリフトン」といったモデルのほうが上だが、蹴り出しの際の反発力は圧倒的にこちらが勝る。
いっぽうで、転がる感覚は「ボンダイ」や「クリフトン」のほうが体感でき、足裏で反発を感じるのは「マッハ5」のほうが強い。「マッハ X」はいい意味でこれらモデルの中間の走行感で、従来の「マッハ」シリーズに適度なクッション感をプラスしており、調子のよい日にはスムーズにペースアップできる一足に仕上がっていた。自分の脚力では5分/kmよりも速いペースだと、「クリフトン」では少し辛いものがあったが、このシューズなら無理なく走れた。
以上のように、「マッハ X」は衝撃吸収性と反発性を絶妙なさじ加減でミックスした一足であり、「HOKA独自のクッション性に加えてもう少し反発性が欲しい……」「従来の『マッハ』シリーズでは上級者向け過ぎる」といったランナーにマッチしたプロダクトである。
個人的にも「今までのHOKAのよいところに新たな魅力をプラスしたいいシューズ」だと思った。価格は30,800円と、懐にゆとりのあるランナーでないと購入できないプライスゾーンだが、すでに260kmをこのシューズで走行したランナーいわく「従来のHOKAのプロダクトと比較して、ミッドソールもアウトソールも耐久性が高いと思う」と語っていたので、中級レベル以上の「よいギアのためなら金に糸目を付けぬ!」といったランナーにはぜひともトライしてほしいプロダクトである。