オグさんです。今回は、キャロウェイ「パラダイム Ai スモーク」(以下、「Ai スモーク」)シリーズのドライバー4モデルを、比較しながらの試打レポートをお送りします。
シリーズの中核モデル「パラダイム Ai スモーク MAX ドライバー」
「Ai スモーク」シリーズは、前作「パラダイム」に続くキャロウェイの主力ブランドとして発表されました。前作のブランド名を継承していることからもわかるとおり、コンセプトは大きく変わってはいません。つまり、前作からの“正常進化”といった具合なのですが、その進化の大きさに驚かされました。
近年のキャロウェイのクラブは、ロボットテストのデータをAI(人工知能)に入力し、そのシミュレーションや分析の結果を基に設計されています。今作ではそこからさらに進化を遂げ、世界中のゴルファーから集めた25万ものリアルなスイングデータをAIに入力。ミスの傾向はもちろん、スイング軌道やインパクトロフトなどのデータも活用し、設計されています。
こうして生まれたのが今作のメインテクノロジーである「Ai スマートフェース」です。インパクト時に無数のたわみを発生させ、打ち出し角やスピン量を自動で補正してくれるという画期的なフェースで、スイング軌道や打点の違いによる飛距離ロスを抑えてくれるというすぐれもの。
「Ai スモーク」シリーズにはドライバーは4モデルあり、それぞれのターゲットゴルファーの“生”のデータを基に設計されています。各モデルとも、専用設計の「Ai スマートフェース」を搭載しています。
「Ai スマートフェース」の各打点による飛距離アップを表した図。フェースのどこで打っても従来モデルをしのぐ飛距離が出るとキャロウェイは主張します
AIがシミュレーションして作り上げる「Ai スマートフェース」は、フェース裏の肉厚が非常に複雑。写真は「Ai スモークMAX ドライバー」のフェースですが、モデルごとに形状が異なっています
前作のメインテクノロジーだった「360°カーボンシャーシ」。今作では、さらに軽量化して進化したものが搭載されています
「Ai スモーク」シリーズのドライバー4モデルは、それぞれ
「パラダイム Ai スモーク MAX」
「パラダイム Ai スモーク MAX D」
「パラダイム Ai スモーク MAX FAST」
「パラダイム Ai スモーク トリプルダイヤモンド」
というネーミング。以下で、それぞれの特徴を簡単に説明します。
・「パラダイム Ai スモーク MAX」
シリーズのスタンダードモデルで、最も幅広いゴルファーに向けて設計されています。シリーズで唯一可変ウェイト「ペリメーターウェイティング」を搭載しており、スタンダードポジションではニュートラルに近い、ほのかにつかまる設定。そこから最大19ヤードの幅で調整可能というすぐれたアジャスト能力を持っています。
・「パラダイム Ai スモーク MAX D」
「D」は、ドローバイアスを示し、つかまり性能を高めて右へのミスを軽減するモデルです。スライスやプッシュに悩む多くのゴルファーの打点エリアを重点的に補強してフェース設計されています。
・「パラダイム Ai スモーク MAX FAST」
「MAX D」をベースに、ヘッドやシャフト、グリップを軽量化したモデル。ただ軽くしただけでなく、軽量化した状態に合わせて専用設計されたフェースを搭載。重いクラブが振り切れないゴルファーでも、最大限の飛距離が出せることを狙いとしています。
・「パラダイム Ai スモーク トリプルダイヤモンド」
ツアープロや上級者など、ある程度ボールをとらえることができるゴルファーに合わせたモデル。つかまり性能を抑え、操作性を適度に持たせています。
どんなゴルファーでも扱いやすいよう、極端な特性は持っていません。その分、可変ウェイトによるアジャスト機能を持たせることで、幅広いゴルファーにフィットします。打点のミスに非常に強く、曲がりも少ないので安定して飛ばせます。
前作は青みが強かったカーボン部分ですが、今作はグレーに近いカラー。落ち着いたデザインです
カーボンクラウンのカラーもブルーからブラックに近いグレーに変更。フェース周りの金属部分の形状も、スリムな形状に変更されています
「MAX」用に専用設計された「Ai スマートフェース」を搭載。シャローバックな形状は前作と同様です
可変ウェイト「ペリメーターウェイティング」は、「MAX」専用のギミック。前作ではヘッド後方にフェース面と平行に搭載されていましたが、今作ではソール面に沿って搭載されます
シャフトラインアップは、純正モデルとして「TENSEI 50 for Callaway」を用意。そのほか、カスタムモデルとして、グラファイトデザインの「TOUR AD VF-5(S)」、フジクラの「SPEEDER NX BLACK 50(S)」、三菱ケミカルの「TENSEI Pro Blue1K 50(S)」が用意されています。
特にシャフトにこだわりがないのであれば、クセの少ない純正の「TENSEI」がよいでしょう。適度なつかまりとしっかり感が欲しいなら「SPEEDER NX BLACK」、左を怖がらずにしっかり振っていきたいなら「VF」、しっかりした感触が欲しいけれど右へのミスも抑えたいなら「TENSE Pro Blue 1K」がおすすめです。
純正シャフト「TENSEI 50 for Callaway」。純正シャフトらしいクセのない挙動で、ほかのカスタムモデルと同じフレックスでも、大きめにしなるタイミングの取りやすい仕上がりです
構えた印象は、前作と比べてちょっとすっきりしたかな? といった感じ。形状はほとんど変わっていませんが、フェース周りの処理など、細かい部分がリファインされていて、より構えやすくなりました。
お借りしたクラブは9度で、純正「TENSEI」のSフレックス装着個体。ヘッドスピード38m/sで振ってみると、ライナー性の中弾道がオートマチックに打てます。
前作と明らかに違うのが、芯を外したときのボールの飛び方。上下左右のどこかにに少々ズレても、芯で打ったときとの弾道の差が小さくなりましたね。ボール初速が落ちづらく、スピン量の変化も少なかったです。
スピン量も適度な感じで、安定して飛距離が得やすい直進性の高い弾道が打てます。その半面、ほんの少しですが高さが出にくくなった印象。余計なスピンが入りにくくなったという点が、ここにつながっているのでしょう。安定して飛ばしたいなら、ロフトは10.5度がおすすめです。
打感は、ややはじき感があって“飛んだ気”にさせる感触。乾いた打音は打っていて爽快です
今作「Aiスモーク」に装着されているグリップはバックラインを強調したラムキンの「キャリブレート」というモデル。キャロウェイの弾道調整機能はシャフトの向きが変わらないので、バックライン入りのグリップを入れられるメリットがあります。このグリップはバックラインを感じやすく握りやすいのですが、やや細身で、手の大きいゴルファーはちょっと違和感を覚えるかもしれません
ヘッドスピードを高めていくと、中弾道が中高弾道になるくらいで、ミスへの強さや直進性の高さは変わりません。ヘッドスピード43m/sで打っていてやっと飛距離の効率がよくなってくる印象で、それ以下のゴルファーであれば、やはりロフトは多めがおすすめです。私でしたら10.5度を選びます。
弾道調整機能を使ってロフトを2度増やして打ってみましたが、こちらのほうが飛んでいました。ロフトを増やしてもスピン量はさほど増えませんでした
8割くらいで打った弾道のデータです。ややトゥ寄りのヒットでしたがスピンはあまり増えず、軽いドロー系の弾道で収まっています。慣性モーメントを極端に大きくせずともこの小さい曲がり幅に収める性能は、素直にすごいですね!
スライスや右へのミスが多いゴルファーのデータを解析して作られた専用フェースを持つこの「MAX D」。そういうゴルファーに多いヒール打点でもしっかりと距離が出せるように設計されています。
ソール後方に交換可能なウェイトがひとつ搭載されているだけで、大きなギミックはありません。シンプルな仕上がりです
「MAX」と比べてちょっとだけ投影面積が大きくなっています。こちらも前作と比べると、フェース周りの処理や、カラーリングなどが洗練されていますね
フェース形状は「MAX」とよく似ていますが、性能は大きく異なります。シャローバックの具合も、「MAX D」は後方がより低く仕上げられています
シャフトラインアップは「MAX」と同じで、純正の「TENSEI 50 for Callaway」と「TOUR AD VF」「SPEEDER NX BLACK」、そして「TENSEI Pro Blue 1K」が用意されています。
構えた印象は、安心感があるのにすっきり! といった感じ。投影面積も大きく、適度につかまりそうな印象があるのですが、鈍重な感じはなく、構えやすいヘッドです。
お借りしたスペックは、ロフト9度で純正「TENSEI」のフレックスS。上記「MAX」と同じスペックです。
ヘッドスピード38m/sを意識して振ってみると、こちらも安定したライナー性の弾道が打てます。「MAX」よりはちょっと上がるかなといった感じですが、基本は中弾道ですね。
「MAX」との最も大きな違いは、つかまり性能。極端に大きくつかまるといった感じではなく、目標からちょっとだけ左に、安定して打ち出してくれる味付けですね。「MAX」ではちょっと右へスライスしていく弾道も、「MAX D」ではスライスせず直線的に飛んでいきます。
もうひとつ「MAX」との違いは、ヒール寄りの打点に強いこと。結構ヒール側でヒットしても飛距離ロスが少なく、スライスの量がかなり軽減されます。
打感や振り心地において「MAX」との差はありません。どちらもやさしいですが、打点によってボールの飛び方が変わります
ヘッドスピードを高めていくと、シャフトの影響なのか、ちょっとつかまり性能が高まる印象。「MAX」と同じシャフトですが、「MAX」はほぼニュートラルにつかまるのであまり感じませんでしたが、つかまり性能が高められた「MAX D」では、よりつかまる方向に働くように感じました。
弾道の高さは、ちょっと高くなる程度で、急に上がりやすくなるといったことはありません。このあたりはシャフトとロフトをしっかり合わせれば、より安定したティーショットが期待できそう。スライス系のミスに悩むゴルファーにはもちろんですが、ヒールヒットが多いゴルファーにもおすすめできるモデルです。
かなりヒール側で打ったとしても、飛距離が落ちにくいのは大きなメリットです
ヒールヒット気味のデータです。スピンが増えすぎず、軽いドローで距離にもしっかりつながっています
「MAX D」のヘッドをベースに、専用のフェースとシャフト、グリップを装着した軽量モデル。重量に合わせたチューニングが施されており、ミスへの寛容性はもちろん、低めのヘッドスピードでも最大限の飛距離が得られるように設計されています。
ぱっと見は「MAX D」とほぼ同じ。相違点は「MAX FAST」のロゴと、ネックの弾頭調整機能の有無です。「MAX FAST」は、軽量化と重心位置の最適化のため、弾道調整機能は搭載されていません
ヘッド形状も「MAX D」と変わりません
フェースは、「MAX FAST」専用に設計された「Ai スマートフェース」を搭載。こちらのフェースも、ヘッドスピードが控えめなゴルファーの生のデータを基に設計されています
シャフトは、「MAX FAST」に合わせて設計された「TENSEI 40for Callaway」1種のみ。接着ネックで軽量モデルということもあり、カスタムシャフトは用意されていません。
このシャフトの特性は、軽量でありながら適度に芯のあるシャキッとした振り心地で、ミートしやすい仕上がり。「MAX FAST」がフィットするゴルファーであれば大きな不満は持たないはず。バランスのよいシャフトです。
「MAX FAST」と非常に相性のよい「TENSEI 40 for Callaway」。つぶれすぎない挙動がミート率を高めてくれます
構えた印象は「MAX D」と同じです。ライ角や長さは微妙に異なるのですが、構えた印象に特に違いや違和感はありませんでした。お借りしたスペックは、9度のSフレックス。ヘッドスピード35m/sを意識して打ってみると、ほかのモデルと同じライナー性の中弾道。ややヘッドスピードを落として打ったこともあり、より低めの弾道でした。
つかまりは「MAX D」よりもやや強く感じられ、強めのドロー回転がオートマチックにかかります。つかまった弾道は高さが出にくいので、「MAX FAST」もロフトは大きめがよいですね。ミスへの寛容性は、軽量モデルだから低くなっている、なんてことはまったくなく、非常に高いものがあります。
ヘッドスピードを40m/sぐらいまで高めるとスピン量がやや増えていき、ボール初速のロスもちょっと増えてしまう印象がありました。「MAX FAST」で40m/s振れるなら、「MAX D」でも38m/s程度は出せると思いますので、どちらも試してよい結果が得られるほうを選ばれるのがよいでしょう。
「MAX FAST」は、低ヘッドスピード帯で効率よく飛ばすクラブとして設計されているということを強く感じました。
シャフトの特性と軽量化のおかげで、小さなパワーで鋭く振り切れます
ちょっと速めのヘッドスピードで打ったデータです。スピンはあまり増えていませんが、ボール初速が低めで飛距離につながりませんでした。ちなみにヘッドスピード38m/sぐらいで打っても同じぐらい飛びました
トリプルダイヤモンドは「◆◆◆」と表記され、ツアープロや上級者が好む、左へのミスを抑えた操作性の高いクラブです。こういうモデルは芯を外すと飛距離ロスや曲がりが大きくなりがちですが、本モデルは芯を外しても予想外のミスにはなりにくく、飛距離ロスを抑えています。「キャロウェイ セレクテッドストア」および「キャロウェイオンラインストア」のみでの販売です。
ソール前方と後方に脱着可能なウェイトを搭載。前後を入れ替えることで特性が変わります
ヘッドシェイプは丸みを帯びた三角形状をしていますが、構えてみると違和感はほとんどありません
4モデルの中で最もディープなフェース。もちろん専用設計の「Ai スマートフェース」を搭載しています
「◆◆◆」で「トリプルダイヤモンド」と読みます。マークが小さいこともありますが、今作のグレーのカーボン模様は個体ごとにパターンが異なるため、個体によっては模様に溶け込んでしまい、ちょっと見えづらくなるかもしれません
構えた印象は、しっかり振り切れそう! といった感じです。ヘッドサイズは450ccで、ほかのモデル(3モデルとも460cc)と比べると体積の差はほとんどないですが、ディープフェースに仕上げてあることもあり、投影面積がひと回り小さく、シャープな印象を与えてくれます。
お借りしたスペックは、9度の純正シャフト、フレックスS。ヘッドスピード38m/sを意識して打ってみると、見事なライナー性の中弾道。ほかのモデルと違うところは、より低スピンでドロップが早く、思ったより距離につながりませんでした。これくらいのヘッドスピードで「トリプルダイヤモンド」を使うなら、12度くらいのロフトが欲しいですね。ちなみに10.5度のモデルで弾道調整機能を駆使すると、12.5度までロフトを増やすことができます。
ヘッドスピードを高めて43m/sぐらいで打ってみても弾道はあまり高くならず、飛距離を明らかにロスしている感じ。9度を使うなら、45m/sぐらいのヘッドスピードかつアッパーブロー軌道で打つ技術が必要でしょう。
ミスへの寛容性は、非常に高く、こういったアスリート向けモデルの中では5本の指に入ると思います。つかまり性能は控えめですが、ボールをコントロールできる技術をそれなりに持っているゴルファーなら、狙った方向へ打ち出すことはそこまで難しくないと思います。
安定した低スピンと、このカテゴリーにしては破格の打点のミスの強さを持つ、曲がらないアスリートモデルです。
ウェイトを入れ替えることで、さらなる低スピンヘッドになります。個人的には10.5度のヘッドのウェイトを入れ替えて打ってみたいですね。高い打ち出しさえ確保できれば、かなりの飛距離が期待できます
つかまえきれずややフェード気味になったデータです。いわゆる“こすり球”にもかかわらず、スピンが増えていないところがポイント。曲がりも少なく、安心して振っていける性能を持っています
「パラダイム Ai スモーク」シリーズは、進化したAIの設計技術によってミスへの寛容性を高めることで、平均飛距離を高めつつ、振り心地も低下させないという、非常に大きな進化を見せてくれました。ライバルメーカーは慣性モーメントを高めることでミスへの寛容性を高めてきていますが、キャロウェイはまったく異なるアプローチでミスへの寛容性を高めています。この違いをどう考えるかですが、ゴルファーの考え方やスイングタイプによって好みは分かれると思います。私個人は、振り心地を犠牲にしないキャロウェイが好みです。
改めて4モデルをまとめると、
「パラダイム Ai スモーク MAX」
・扱いやすい適度なつかまりと可変ウェイトによるアジャスト能力
・前作よりもミスへの寛容性が高まり、飛距離ロスが軽減
・打点が安定しない、ミスがまんべんなく出てしまうゴルファーにおすすめ
・ライバルモデルは、テーラーメイド「Qi10」、ブリヂストン「B1ST」など
「パラダイム Ai スモーク MAX D」
・適度なつかまりだが、つかまりすぎず直進性の高い弾道がオートマチックに打てる
・前作よりもミスへの寛容性が高まり、特にヒール側の飛距離ロスや曲がりが減った
・右へのミスが多いゴルファー、ヒールヒットが多いゴルファーに合う
・ライバルモデルは、テーラーメイド「Qi10 MAX」、ブリヂストン「B2HT」、ピン「G430 SFT」など
「パラダイム Ai スモーク MAX FAST」
・低ヘッドスピードで最大限の飛距離とミスへの寛容性を追求したモデル
・前作よりも40m/s以下の低めのヘッドスピード帯に特化した印象
・280g以上のドライバーが重くて振れないと感じるゴルファーに合う
・ライバルモデルは、ピン「G430 MAX HL」、テーラーメイド「ステルスグローレ」、ダンロップ「ゼクシオ13」など
「パラダイム Ai スモーク トリプルダイヤモンド」
・操作性や強弾道を維持しながら、ミスへの寛容性を高めたモデル
・前作よりミスへの寛容性が高くなり、オフセンターヒット時での飛距離ロスが軽減。曲がり幅もかなり減少した
・ある程度操作ができ、ミスへの寛容性も欲しいゴルファー向け
・ライバルモデルは、テーラーメイド「Qi10 LS」、ブリヂストン「B1 LS」、ダンロップ「スリクソン ZX7」など
ミスへの寛容性を高めたドライバーはたくさんありますが、慣性モーメントを高めず振り心地への影響を最小限に抑えてきた「Ai スモーク」は、非常に面白い存在です。もちろん慣性モーメントを高めたモデルが合うゴルファーもいますから、どちらが評価されるかは個人的にはとても興味があります。振り心地を重要視するなら「Ai スモーク」シリーズは外せませんよ!
写真:野村知也