オグさんです。今回は、キャロウェイ「パラダイム Aiスモーク」シリーズのアイアン3モデルの比較試打レビューをお届けします。
左から「Ai スモーク HL」、「Ai スモーク MAX FAST」、「Ai スモーク」
「Ai スモーク」は、前作の「パラダイム」に続くキャロウェイの主力ブランド。同社の近年のメインテクノロジーである“AIを活用した設計”をさらに進化させたシリーズです。
最も進化したのが、フェースです。従来はロボットテストのデータを基にAIがフェースを設計していたのに対し、今作では、25万人分にもおよぶリアルゴルファーのデータを活用。これにより精度が向上し、オフセンターヒットにさらに強い「Aiスマートフェース」が完成しました。
「Aiスマートフェース」は、インパクト時に無数のたわみを発生させ、打ち出し角やスピン量を自動で補正してくれるという画期的なフェース。さらに、スイング軌道や打点の違いによる飛距離ロスを抑えてくれるというすぐれものです。
「Aiスマートフェース」の説明イラスト(※キャロウェイゴルフHPより)。インパクト時に発生する無数のたわみがエネルギーロスを防ぎ、打ち出し角や、スピン量を自動で補正してくれます
「Aiスモーク」シリーズに、アイアンは3種類用意されています。
「パラダイム Ai スモーク アイアン」
打点のミスへの強さ、飛距離、安定性をバランスよく備えた優等生的モデル
「パラダイム Ai スモーク HL アイアン」
打点のミスへの強さに加え、ダフりにも強く高弾道が打てる
「パラダイム Ai スモーク MAX FAST アイアン」
大型ヘッドを採用し、楽に飛ばせる軽量お助けモデル
それでは以下、各モデルの試打レビューをお届けします。
「パラダイム Ai スモーク アイアン」は、幅広いゴルファーに向けたモデル。中空構造を採用し、ボディ自体でも打点のミスへの強さを追求しています。そこに「AIスマートフェース」を組み合わせることで、少々芯を外しても飛距離ロスや、曲がりの少ない高い安定性を実現。飛距離性能も高く、現在のゴルファーのアイアンに対するニーズが多く詰まったアイアンです。
メッキ部分とサテン部分を使い分けた、凝ったデザイン。ミスに強い中空モデルながら、比較的スマートな形状に仕上がっています
ブレードには厚みを持たせつつ、適度なシャープさも持ち合わせています
ソール幅も極端に厚くはなく、すっきりとした仕上がり
ロフト構成は7番で28度。安定性だけでなく、飛距離も追求した結果、一般的なアベレージモデルと比べると、少し立てた設定です。
シャフトラインアップは、純正シャフトとして設計された50g 台のカーボン「TENSEI 50 for Callaway」を始め、70g台のスチール「ZELOS 7」、そして90g台のスチール「N.S.PRO 950GH neo」の3モデル。
パワーに自信がない、楽にスイングしたいなら「TENSEI」。パワーはないけど、より正確性を求めるなら「ZELOS」。しっかりと振っていきたいなら「N.S.PRO 950GH neo」がおすすめです。
90g台と軽量ながら、ある程度の強振も受け止めてくれる「N.S.PRO 950GH neo」。幅広いゴルファーに愛用されているモデルです
構えた印象は、スッキリしていて構えやすいです! 大きすぎず小さすぎない適度なサイズを持ちながらネック周りがスマートで、とてもすっきりとした顔ですね。ブレードの厚みもちょうどよく、美しい形状に仕上がっています。
お借りしたクラブは、「N.S.PRO 950GH neo」のフレックスSを装着した個体で、番手は7番です。ドライバーでのヘッドスピード38m/s程度を意識して打ってみると、中弾道で直進性の高い弾道が飛び出します。適度なつかまり性能を持っており、ナチュラルなドローボールが自然と打てますね。
このクラブの売りでもある打点のミスへの強さは、特にすばらしいものがあります! 上下左右に打点がズレても弾道が変わりづらく、飛距離ロスも少なめ。特に、ヒール寄りのミスヒットに対する強さを感じました。
今回のモデルは、25万人ものリアルなゴルファーの打点データを基に開発されているのですが、試打によってヒールヒットへの強さを感じ、妙に納得してしまいました。私もフィッティングで多くのお客様のスイングを見させていただいておりますが、ヒールでボールを打つゴルファーは多いですから。
操作性に関しては、ほとんどないと言えます。無理やり曲げようとしても、クラブがオートマチックに補正してくれるので、どうにか軽く曲がってくれる程度です。
ヘッド内部に衝撃吸収材が搭載されていることもあり、ソリッドな感触ではありますが、不快な振動がないクリアな打感を味わえます
ヘッドスピードを高めていくと、打ち出し角が少し上がり、飛距離が伸びていきます。ヘッドスピードが高まると曲がり幅が大きくなりがちなのですが、軽いドローのままでした。
スピン量もヘッドスピードに合わせて増え、長い番手でもしっかりグリーンをとらえられそうです。曲がりのコントロールはほとんどできませんが、狙う性能はしっかりと持っている、そんなアイアンに仕上がっています。
ヒール側の強さは個人的に最も評価したい部分。芯で打ったと勘違いするぐらい、ロスが少なかったです
7番でフルスイングしたデータです。筆者の5番アイアンぐらいの飛距離で、6番アイアンぐらいのスピン量が出ており、これなら安心してグリーンを直接狙っていけます
「HL」は、「高弾道」という意味の「high launch」の頭文字から来ており、「Ai スモーク
アイアン」と比べ、よりやさしさを追求したモデル。ワイドソールでダフりのミスにも強く、低重心設計でボールが楽に上がるように設計されています。もちろん「AIスマートフェース」を搭載しており、打点のミスにも強いです。
「Aiスモーク アイアン」とは、若干デザインが異なります。ボディ構造も、「Ai スモーク アイアン」が中空構造なのに対し、「HL」はキャビティ構造です
ヘッド形状は「Aiスモーク アイアン」と似ていますが、グースの度合いがやや大きく、ブレードも厚く設計されています
ソールはかなり幅広く、ダフりのミスに強そうです
ロフト構成は7番で30度と、「Aiスモーク アイアン」と比べて2度寝かせた設定。これは、飛距離よりも安定して飛ばすことを優先しているためです。
シャフトラインアップは、「Aiスモーク」と同じ3モデルをラインアップ。50g台のカーボン「TENSEI 50 for Callaway」、70g台のスチール「ZELOS 7」、90g台のスチール「「N.S.PRO 950GH neo」。選び方も「Aiスモーク」と同じですが、個人的におすすめしたいのは「ZELOS」。球の高さを出しやすく、ヘッドの性能と好相性です。
構えると、やさしさがにじみ出ているけど、これ見よがしじゃないという印象。グースネックと厚みがあるブレードで安心感を演出、スッキリした輪郭で、必要以上にぼてっとはしていません。
お借りしたのは、「ZELOS 7」装着の7番。こちらも、ヘッドスピード38m/sを意識して試打スタート。1発打ってみて「Aiスモーク」と明らかに違うと感じたのが打ち出し角。「Aiスモーク」と比較すると、1番手以上分の高さが出ますね。これだけ上がるならロングアイアンも楽に打てそうです。
ミスへの強さは、「Aiスモーク」同様にすばらしい! 曲がりも少なく、言葉を選ばずに表現すると、“雑に打っても”安定した球が打てます。とりあえずフェースのどこかで打てれば、何とかなります。
ヘッドスピードを高めていくと、「Aiスモーク」ほど飛距離は伸びず、高さが増していく印象です。ヘッドスピード40m/s以上あるゴルファーなら、よほどボールが上がらない人以外は「Aiスモーク」のほうがよいですね。
結論として、「HL」はヘッドスピードがそこまで速くなく、高さが出ない悩みを持つゴルファーにピッタリです。アイアンが苦手なゴルファーにもよいですね!
ロフトなりの飛距離と、ロフト以上の高さで飛んでいます。スピン量も申し分ないので、結構シビアなグリーンでも止められそうです。とはいえ、ヘッドスピードが速いゴルファーが使うと上がりすぎてしまうので、あくまでやさしくプレーするための高弾道モデルと言えます
こちらは、シリーズ共通のミスへの強さを持ちながら、軽量化によって小さなパワーで最大限の飛距離を追求したモデル。3モデルの中で最もヘッドサイズが大きく、最もオートマチックに飛ばせる性能を与えられています。
キャビティ構造は「HL」と共通。デザインもぱっと見はほぼ同じですが、モデル名の記載位置が異なっています
ヘッドサイズは、「HL」よりわずかに大きく、グース度合いも大きいです
ソール幅は「HL」よりわずかに狭いですが、幅広に設計されています
ロフト構成は7番で26度と、3モデル中最も立った設定。飛距離を重視しているのがロフトに表れていますね。
シャフトは、3種類ですが、ほかの「Aiスモーク」シリーズのラインアップとは異なっています。
「MAX FAST」用に設計された40gのカーボン「SPEEDER NX 40 for Callaway」と、70g台のスチール「ZELOS 7」、そして80g台のスチール「N.S.PRO 850GH neo」です。とにかく小さなパワーで飛ばしたいなら「SPEEDER」、適度な重さを感じたいなら「ZELOS」、飛距離を追求するために軽量シャフトを使いたいなら「850GH neo」がおすすめです。
構えた印象は、飛びそう! ロフトが立っているため、5番アイアンぐらいに見えます。ですが、ヘッドサイズもグースも大きいため、難しそうな印象は受けません。
お借りしたのは「SPEEDER」を装着した7番。こちらは、ドライバーでのヘッドスピード35m/sぐらいを意識して振ってみました。飛んでいく球は、中弾道で低スピンのいかにも飛んでいそうな飛び様。直進性が高く、飛び出した方向に糸を引くように飛んでいきます。
ミスへの強さは、この「MAX FAST」も文句なし。軽量モデルにありがちな、フェース下部の打点でもボールを拾ってくれ、飛距離ロスもかなり軽減されています。
ヘッドスピードを高めると、フェースに当たりさえすれば安定した弾道が打てますが、軽さが災いして、トップ系の薄い当たりが増えてしまいました。軽いクラブでもスイートエリア付近でとらえる技術があるゴルファーであれば、シリーズ最大の飛距離性能を堪能できますが、ミート率に不安があり、トップ系のミスが多い場合は「Aiスモーク」か「HL」がおすすめです。
3モデル中、直進性が最も高く、ミスにも強い「MAX FAST」。飛距離性能も高いですが、あくまで通常のモデルを重く感じてしまうゴルファーに向けたモデルです
「パラダイム Aiスモーク」シリーズのアイアンは、どのモデルも今までにないやさしさを搭載したアイアンに仕上がっています。従来の重心位置によるミスへの寛容性に加え、フェースでもミスを軽減する技術を搭載し、ミスの幅をグッと狭められます。
3モデルそれぞれの、おすすめのゴルファーやライバルモデルは下記のとおり。
「パラダイム Ai スモーク アイアン」
ミスへの強さ、飛距離、直進性、どれも妥協したくない欲張りゴルファーへ。ライバルモデルはテーラーメイド「Qiアイアン」。
「パラダイム Ai スモーク HL アイアン」
高さが出にくい、もしくは飛距離はそれなりでよいからとにかく安定性を重視する向きに。ライバルモデルはピン「G430 アイアン」やブリヂストン「222CB+ アイアン」。
「パラダイム Ai スモーク MAX FAST アイアン」
パワーはあまりないが、アイアンにも飛距離を求めるゴルファー向け。ライバルモデルは、ヤマハ「ドライブスター アイアン」やプロギア「egg アイアン」。
今回の「AIスモーク」シリーズを打っていて、これからはアイアンに限らずほかのクラブにおいても、ヘッドだけでなくフェースの構造でもミスを軽減したり、余計なスピンを減らしたりする技術が発達してくるのかなと感じました。ゴルフクラブにはまだまだ進化できる点がたくさんあると感じさせてくれる、キャロウェイの新作アイアンの試打でした。
写真:野村知也