オグさんです。今回はボールのインプレッションです。ツアーでの使用率No.1を誇るタイトリストの「PRO V1」シリーズに、「― PRO V1x」(プロ V1 レフトダッシュ、以下レフトダッシュ)が追加され、従来の「PRO V1」「PRO V1x」と合わせて計3モデルがラインアップされることになりました。世界中のゴルファーから絶大なる信頼を得る同シリーズを、新顔の「レフトダッシュ」を含めて改めて試打していきたいと思います。
3種類に増えた「PRO V1」シリーズを、コースで打ち比べました
「PRO V1」シリーズは2000年に登場し、デビュー当初から現在に至るまで、世界中のゴルフツアーで圧倒的な使用率を記録しているボールです。飛距離性能に加え、ショートゲームにおけるコントロール性能がその人気の理由です。
タイトリストは、自社製品のツアープロ使用率を非常に重要視しています。なぜなら、1打に生活をかけて戦っているツアープロの多くが使うボールであれば、それはベストな製品である、と考えているからです。これはクラブでも同様です。ベストな製品であればその性能はアマチュアも享受でき、よいショットや好スコアにつなげてくれると考えているのです。
「PRO V1」シリーズの2024年モデルは、ツアープロからのフィードバックを中心に細かな調整が加えられたほか、「レフトダッシュ」という新モデルが追加されました。使用選手のほとんどからは、「現在の性能には満足しているので、あまり変えないでほしい」という声が多かったそうです。ですので、基本性能は変えず、強いて言えばここを……という部分だけをブラッシュアップしたボールです。
「レフトダッシュ」は元々、ツアープロの細かな要望に応えるためにツアーのオプションとして存在していたボールです。しかし、一定数のアマチュアにもその性能が効果を発揮すると判断され、このたび販売されることになったわけです。
では、3モデルのボールをそれぞれ紹介していきます。
世界中で最も多く使用されているボールで、ほぼすべてのプレイヤーに対応するトータルパフォーマンスを有しています。飛距離の欲しい長い番手のクラブでは中弾道でスピンを抑え、グリーンを狙うクラブではソフトな打感と高いスピン性能により、すぐれたボールコントロール性能を発揮します。
黒地にオレンジのラインのパッケージ。ボールの装飾はシンプルで、黒いタイトリストロゴに、黒いナンバーがプリントされています
3ピース構造で、中心部が新開発の「ハイグラディエントコア」。これが、距離の出るクラブの余計なスピンを軽減します ※画像はタイトリストHPより
<2024年シーズンに使用する主な選手>
スコッティ・シェフラー、ウェブ・シンプソン
ヴィクトル・ホブラン、トニー・フィナウ
マックス・ホマ、コーリー・コナーズ
ブライアン・ハーマン、キャメロン・ヤング
アダム・スコット、チャン・キム
ジェシカ・コルダ
川村昌弘、藤田寛之、小鯛竜也、永野竜太郎
大槻智春、鍋谷太一、細野勇策、勝俣陵
小田孔明、前田光士郎、鈴木晃祐
穴井詩、申ジエ、セキユウティン
※プロの使用ボールは変わることがあります(以下同)
「PRO V1x」は、高弾道で飛距離を追求しながら、スコアリングショットもおろそかにしないゴルファーに向けたボールです。弾道がやや高く、飛距離が欲しい番手では十分な低スピン性能ではありますが、「PRO V1」と比較するとやや多めの設計です。芯のあるしっかりした打感で、グリーンを狙う番手では、シリーズの中で最もスピンがかかります。
シルバーに赤いラインのパッケージ。ボールには、黒いタイトリストロゴに赤いナンバーがプリントされています
3ピース構造の「PRO V1」に対し、4ピース構造の「PRO V1x」。高弾道、高スピンの弾道を可能にします ※画像はタイトリストHPより
<2024年シーズンに使用する主な選手>
ジャスティン・トーマス、ジョーダン・スピース
マシュー・フィッツパトリック、トム・キム
ウィンダム・クラーク、パトリック・カントレー
ウィル・ザラトリス
ジャスティン・ローズ、ジュビック・パグンサン
リディア・コ、リリア・ヴ
今平周吾、小平智、阿久津未来也、貞方章男
岩田寛、大西魁斗、片山晋呉
渋野日向子、鈴木愛、菊地絵理香
笠りつ子、永井花奈、森田遥
「レフトダッシュ」は、ツアープロの中でもスピンが少ないボールのほうが結果につながりやすい選手に向けて開発されたボールです。「PRO V1」シリーズのトータルパフォーマンスを持ちながら、しっかりした打感と、「PRO V1」と「PRO V1x」の中間の弾道高さを持ち、シリーズ中、スピンが最も少ない仕様です。
パッケージはシルバー1色。ボールのプリントは「PRO V1x」と同じですが、ボール名の「PRO V1x」の左側に名前の由来となっている「―」が追加されています
左側に「ー」で、レフトダッシュ
「PRO V1x」と同じ4ピース構造。内部の内柔外剛の差を大きくすることでスピンを低減しています ※画像はタイトリストHPより
<2024年シーズンに使用する主な選手>
ルーク・ドナルド、ショーン・オヘア
JB・クルーガー
幡地隆寛
ここからは、3つのボールを、クラブおよびシチュエーション別に打ってきたレビューをお届けします。
同じティーイングエリアから、連続して打ち、その差をチェック!
「PRO V1」はソフトなフィーリングとロフトなりのライナー性弾道で、いかにもツアープロが好みそうな印象。操作性も高く、インテンショナルショットも打ちやすかったです。
「PRO V1x」は、本来のスピン性能が高いので「PRO V1」よりも操作性が高そうな気がしますが、意外にも直進性が高く、高弾道で飛ばしやすかったです。「レフトダッシュ」は「PRO V1x」と似ていますが、より直進性が高いと感じました。
ドライバーショットにおける筆者の体感チャート
本来は、「PRO V1x」より「レフトダッシュ」のほうが弾道が低い設計ですが、私の体感ではそこまでの差は感じられませんでした。長いクラブの曲がりを少なくしたいなら「PRO V1x」か「レフトダッシュ」がよいでしょう。
グリーンまで130ヤードぐらいの距離からテスト。どのボールもしっかりとグリーンで止まります
3モデルのどれも、多くのツアープロから信頼されているだけあり、非常に高い基本性能を持っていますが、違いを感じたのが打ち出し角と操作性でした。ドライバー同様、操作しやすいのは「PRO V1」。打ち出し角は低めですが、ボールをコントロールしやすいです。曲げやすさもそうですが、ソフトなフィーリングも操作しやすく感じさせる要因だと思います。
「レフトダッシュ」は、「PRO V1」と対照的な印象。最初から打ち出し角が高く、直線的に飛んでいきます。それでも操作は十分できますが、曲がり幅が「PRO V1」よりは少ない。「PRO V1x」はその中間といった感じです。個人的に、アイアンショットのフィーリングやそこで求める性能は、圧倒的に「PRO V1」が好みですね。
アイアンショットにおける筆者の体感チャート
フェースにのっている時間が長く感じる「PRO V1」は、操作もしやすく扱いやすかったです。「レフトダッシュ」は、ほどよい直進性を感じさせ、インテンショナルショットをミスしてもその度合いを抑えてくれるやさしさを感じました。どのボールも、グリーンをキャッチするスピン量は文句なしです
グリーン周りの30ヤード付近で違いをチェックしました
アプローチショットでも、スピン性能に不満はまったくありません。3モデルどれもしっかりとボールをとらえれば、きちっとスピンが入ってくれます。違いは、ボールの飛び方にありました。
「PRO V1」は、フェースにのっている時間が長く感じられ、低めに飛び出し、キュキュッとスピンがかかる印象。
「PRO V1x」は、カチッとした打感と、イメージが揃う高い打ち出し角で、スピンに加えて降下角度で止まる印象。
「レフトダッシュ」は、「PRO V1x」と似たフィーリングですが、ボールの打ち出し角がもう1段階高くなる印象です。自分がイメージする飛び方と近いモデルを選ぶと、アプローチショットの距離感が揃ってきます。
アプローチショットにおける筆者の体感チャート
アプローチショットは個人的に重視しているということもあり、ボールの違いを最も強く感じました。自分自身のイメージするアプローチの弾道に近かったのは、「レフトダッシュ」。アプローチが苦手なので、高さでキャリーが出てくれるボールは大きなミスがしにくく、私にはとても扱いやすかったです。アプローチでさまざまなテクニックを用いるなら、「PRO V1」が扱いやすいと感じるでしょう。
改めて「PRO V1」シリーズをコースで試打しましたが、やはり基本性能の高さを感じますね。ロングゲームでもショートゲームでも、どのクラブに対してもしっかり応えてくれるトータルパフォーマンスがすばらしいです。
3つのモデルの違いを最も感じたのは、アプローチです。フィーリングや飛び方のイメージに最近かったのもあり、自分で使用するなら「レフトダッシュ」を選びます。高い技術を持つゴルファーほどタイトリストを好む理由が、身に染みた試打でした。
写真:野村知也
取材協力:ユニオンエースゴルフクラブ