オグさんです。今回はキャロウェイの「X FORGEDアイアン」の試打レビューをお届けします。
「X FORGEDアイアン」
「X FORGED アイアン」は、キャロウェイから2007年に登場したアイアンです。「FORGED」の名のとおり鍛造製法を用いたモデルで、中・上級者に高い人気を誇ります。
同社にはほかに「APEX」というアイアンブランドが存在し、こちらも鍛造モデルをアピールしていますが、メインの販売エリアが異なります。「X FORGED」は主にアジア向け、「APEX」はワールドワイドで展開されます。
また「APEX」には、どちらかと言えば、性能を第一に考えて異素材を組み合わせる複合モデルが多いのですが、「X FORGED」はフィーリングを重視した純粋な軟鉄鍛造モデルが多いという違いもあります。
今作の「X FORGED アイアン」は、日本のスタッフが本国に相当数のリクエストをして設計された、日本の意向が色濃く反映されたモデルです。フィーリングの作りやすいS20Cというやわらかめの軟鉄のみを使用し、ソールや形状にもこだわっているそうです。
ヘッド構造は、軟鉄のみを使用した鍛造製法。いわゆる“1枚モノ”です。バックフェースはハーフキャビティ形状で、芯付近の裏側を肉厚にすることで、芯でとらえたときはソフトかつ振動の少ない“これぞ軟鉄!”といった打感を味わえます。
ソールには「トライレベル・ソールデザイン」を採用。リーディングエッジとトレーリングエッジ両方を面取りした形状で、非常にヌケよく仕上がっています。
また、従来のモデルよりヘッドを軽く仕上げてあり、扱いやすさだけでなくスペックの調整もしやすいアイアンです。
構造もデザインもシンプルで、長く使えそう
X FORGED・#5
X FORGED・#7
X FORGED・#9
長い番手から短い番手まで、一貫性のある美しい形状です。トップブレードは、シャープではありますが直線的で堅ろうな雰囲気が出ており、頼りなさは感じません。オフセットも少なめで、バランスの取れた顔に仕上がっています。
1枚モノだけあり、溝やトゥ側から見たシルエットは至ってシンプル
ロフト角は7番で33度と、現代のアイアンでは大きめの設定。適度な飛距離と寛容性を持たせ、操作性やフィーリングを優先しているのでしょう。
シャフトは、100g台で手元調子の「MODUS3 TOUR105」と、110g台で中調子の「Dynamic Gold MID115」のスチール2モデルをラインアップ。「MODUS」は軽めながら張りの強いシャキッとしたシャフトで、対する「DG MID」は適度にゆったりしなる特性です。スイングテンポが早めのゴルファーは「MODUS」、ゆっくりなら「DG MID」がおすすめです。
DGシリーズでは珍しい中調子のモデル。DG特有のゆったりとしたしなりは健在です
お借りしたのは「DG MID」装着クラブ。ドライバーでのヘッドスピード38m/s程度を意識して試打を開始しました。
アドレスしてみると、非常に構えやすい! シャープで小ぶりですが、華奢な感じがありません。多少の打点ズレも受け止めてくれそうな、堅ろうさのある形状で安心して構えられます。
ロフトが多いだけあり、このくらいのヘッドスピードでも問題なく高さが出てくれます。飛距離はそれなりで、やはり飛びを求めたアイアンではないことがわかります。その代わり、ドローやフェードの打ち分け、高さのコントロールなどは気持ちよくできます。
つかまりはニュートラル。打点のミスにはまずまず強いのですが、中空やポケットキャビティには及びません。その代わり、予想外の飛びすぎやインテンショナルの球筋がまっすぐ抜けてしまうことはありません。打った後に弾道が予測でき、その予測が外れない、とても扱いやすいアイアンです。
「X FORGED」のよさをひと言で表すと、扱いやすさでしょうか。余計なことをせず、プレイヤーが予期せぬ弾道がほとんど出ません
ヘッドスピードを高めていくとさらに高さが出て、スピンが高まっていきます。操作性やミスへの寛容性に変化はなく、ヘッドスピードが速いゴルファーでも安心して打っていけますね。
特徴のひとつであるソールはヌケがよいですね! マット上でも感じられる突っかかりのなさは、ラフなどはもちろん、ベアグラウンドなどボールの下に隙間がないライでも効果を発揮しそうです。
打感はさすが1枚モノ! 芯で打ったときのソフトな感触は何度でも味わいたくなります
#7のデータですが、後で確認したらエラーによりスピン量が読めていませんでした。飛距離は十分ですね。高さも十分で、数値には表れていませんが、しっかりと止まる弾道でした
「X FORGEDアイアン」には兄弟モデルがもう2つあります。それが「X FORGED STAR」と「X FORGED STAR+」です。今回は「X FORGED STAR」もお借りできたので、そちらのレビューもお送りします。
構造は、「X FORGED アイアン」と同じ軟鉄鍛造の1枚モノ。ヘッドサイズを大きくし、キャビティ部分を広げることで、よりミスに強い低重心化を図っています。ややロフトを立てた設定で、飛距離とミスへの強さのバランスを取ったモデルです。
ちなみに「X FORGED STAR+」は、本モデルよりもフェースサイズとロフト角がさらに大きく設計された、シリーズ中最もやさしいアイアン。キャロウェイ公式オンラインストア並びに「CALLAWAY EXCLUSIVE」取扱店舗のみで販売されます。
デザインは「X FORGED アイアン」とほぼ同じ。「X FORGED STAR」は、キャビティ部分がやや広くなっています
X FORGED STAR・#7。ヘッドシェイプは「X FORGED アイアン」とよく似ていますが、トップブレードが厚く、サイズはひと回り大きいです
サイズは大きいですが、外周部の縁取りに面取りがされていて、大きさの割に小ぶりに見える工夫が施されています
ロフト設定は7番で29度と、「X FORGED アイアン」より1番手分立っています。高さを確保するために、重心は低く設計されています。
シャフトラインアップは、100g台の手元調子「MODUS3 TOUR105」と、90g台の中調子「N.S. PRO 950GH neo」。シャキッとした「MODUS」と、適度なしなりとしなやかさを持つ「950GH neo」の選び方は、楽に振りたいなら「950GH neo」、強くしっかり振りたいなら「MODUS」です。
アスリートモデルとしては軽量な「MODUS3 TOUR 105」。芯のあるシャキッとしたしなりで、強振しても潰れすぎない、歯応えのあるシャフトです
構えてみると、大きいのに大きくない! という印象を受けました。ある程度サイズのあるヘッドですが、フェースの外周を面取りしているおかげで大きく見えません。
形状は「X FORGED」とほぼ同じですが、ブレードが厚めで、より安心感を与えてくれます。
打った感想は、「X FORGED」に比べてひと回りマイルドな操作性で、ミスへの寛容性が高まっている印象。ロフトが立っている分距離も出るので、短い番手で飛距離が出るアイアンをやさしいと感じるゴルファーにはこちらがおすすめです。
「X FORGED」比でボールは少し低くなりますが、それでもスピンは適度に入っているので、ほとんどのグリーンで止まる球を打てるでしょう。ミスへの寛容性も高まり、こちらのほうがやさしいと感じるゴルファーは多いでしょう。「X FORGED」に比べて飛距離が伸びているのに、スピン量が確保されているところがこのアイアンのすごいところです。
こちらも#7のデータです。「X FORGED」と比べると1番手以上飛びます
「X FORGED」と「X FORGED STAR」は、現代では少なくなった1枚モノの軟鉄鍛造アイアンで、両者の性格をきっちり分け、ともに扱いやすいアイアンに仕上がっていました。
「X FORGED」は、上級者が求める打感や操作性、打点ミスへの強さなど、すべてを持ち合わせています。
いっぽうの「X FORGED STAR」は、操作性をマイルドにする代わりに、飛距離とさらなる打点ミスへの強さが付加されています。
どちらも、好みはあるにせよ、どんなゴルファーが手にとっても難しいという評価にはつながらないでしょう。そのくらいバランスがよいですね。ライバルモデルは、「X FORGED」がブリヂストンの「221CB」。「X FORGED STAR」がスリクソンの「ZX5」。
「X FORGED」シリーズは、海外メーカーが日本のゴルファーの好みに刺さるよう作ったアイアンです。機会があったらぜひ打ってみてください。
写真:野村知也