オグさんです。今回は、ブリヂストンの「245MAXアイアン」の試打レビューをお届けします。
「245MAXアイアン」
2024年5月現在、ブリヂストンゴルフのアイアンラインアップは4種類。今回紹介する「245MAX」のほか、上達思考の強い初心者からツアープロまで、幅広いゴルファーをカバーする「221CB」、「221CB」をベースに飛距離や直進性、ミスへの寛容性を高めた「222CB+」、そして中空構造でやさしさを追求しながら、狙う性能とのバランスを取った「233HF」をラインアップしています。
「245MAX」は、ほかの3種とはまた異なる角度で性能を追求しています。極端な言い方をすれば、「ミスへの強さへ極振りアイアン」です。大型のヘッドにポケットキャビティ構造を採用。バックフェースの低く深い位置にタングステンウェイトを搭載し、フェース裏にカーボンプレートを貼ることで、反発力の高い極薄フェースを実現させています。
さらに、ブリヂストンゴルフ独自の技術「サスペンションコア」を搭載。フェース裏を支えるようにバーを設置することで、フェース面の反発エリアを広げる効果があります。性能だけでなく、フィーリング面にもしっかり気を配り、ポケット部分に衝撃吸収ラバーを内蔵。これにより、ソフトな打感を生み出しています。
メーカーみずから「MAXやさしい」と胸を張る力作は、どんな仕上がりなのでしょうか?
高性能な印象を与えるため、バックフェース下部のタングステンウェイトとカーボンプレートを、あえて見せるようにデザインされています
245MAX・#7
245MAX・#9
ヘッドは非常に大きく、抜群の安心感がありますね。グースネックの度合いも強く、ブレードも厚めですが、ヘッドはアスリートモデルをそのまま大きくしたような、端正な形をしています。
フェース下部の2本の溝は白くペイントされ、構えやすさを演出。ソール幅は広く、トゥ側から見ると、深く低い重心に設計されていることがよくわかります
ロフト設定は7番27度と、かなり立っています。長さは7番で37.5インチと長め。長さを伸ばしたため下の番手が増えており、9番のすぐ下、通常のPWに相当するクラブが「P1」、その下にもう1本「P2」という番手が追加されています。
純正シャフトは、約50gのカーボンモデル「VANQUISH BSi for MAX」と70g台のスチールモデル「N.S.PRO 750GH neo」の2モデルを用意。
超軽量ながら適度なしっかり感を持つ「VANQUISH」に対し、スチールとしては非常に軽く、ボールの上がりやすい「750GH neo」、といった違いがあります。
どちらも楽に振り切れますが、飛距離を重視したいなら「VANQUISH」、方向性に重きを置くなら「750GH neo」がおすすめです。
最新の軽量スチールシャフト「N.S.PRO 750GH neo」。スチールならではのしっかり感と、タイミングの取りやすい粘るしなりが特徴です
構えてみた印象は、“やさしそうなイケメン”です。ヘッドは大きく、ブレードも厚い。そしてグースもしっかりついており、いかにもやさしそうな雰囲気があります。それでいて、アスリートモデルっぽい端正な形。長さもほかのモデルより1番手分長いので、アドレス時のヘッドの大きさが気にならず、自然と構えられます。
お借りしたクラブは「750GH neo」のSフレックス装着個体。ドライバーでのヘッドスピード35m/sぐらいをイメージして試打スタート。このくらいのヘッドスピードでこのロフト設定だと高さが出るか心配でしたが、打球は十分上がり、直進性も高いです。
特筆すべき点は、ミスへの強さ。ヘッドが大きいこともあってフェース面が広く、上下左右に打点が大きくズレてもボールが曲がりません。打ち出し角やボール初速が若干落ちる打点位置もありますが、とにかく安定して目標方向にボールを飛ばしてくれます。
つかまりに関しては、ほんの少しだけつかまる感じの味付けで、ちょっと意外でした。もう少しつかまるかと想像していたのですが、直進性の高さを生かすべく、あえて抑えてあるのでしょう。
はじき感の強いソリッドな打感は、いかにも飛びそうな印象。振動吸収ラバーのおかげで余計な振動が少なく、不快な感触はありません
ヘッドスピードを高めていくと、ボールの高さがさらに増し、飛距離が一気に伸びていきます。適度に抑えたつかまりやミスへの強さは相変わらずで、狙った方向にオートマチックに飛んでいきます。
ちなみに、筆者のドライバーでヘッドスピード43m/s程度で振ると、シャフトが負けてしまうのか、ややつかまりすぎてしまう傾向が顔を出しますね。このくらいのヘッドスピードでこのアイアンを使うなら、リシャフトしないとヘッドの性能が生きないでしょう。
つまり、本モデルはヘッドスピード40m/s以下のゴルファーが使用すると、飛距離性能や直進性の高さ、打点ミスへの強さが生きてきます。
非常に深いポケットキャビティ構造を採用。バックフェースに見える3本のネジで止まったプレートは比重の重いタングステン製で、見た目以上に重心が深く低いです
7番を打ったデータです。高い直進性で飛距離もしっかり出ました。高さやスピンもある程度あって、よほど硬くなければグリーンをキャッチできる弾道が打てています
「245MAX」アイアンは、現代のゴルファーが考える「やさしい」をすべて詰め込んだ高性能アイアンでした。ヘッドスピードがそれほどなくても、楽に上がって飛距離を稼げ、打点のミスに強く、直進性が高い。
ヘッドスピード35m/s前後のゴルファーが使うと、ヘッドの持つ性能の恩恵を最大限に享受できそうです。40m/sぐらいまでのゴルファーでも十分やさしいと感じられると思いますが、それ以上のゴルファーが使うと飛びすぎて、結果にはつながらなそうですね。
ライバルモデルは、ピンの「G730」、テーラーメイドの「Qiアイアン」、ヤマハの「ドライブスター」といったところです。高い飛距離性能を持っていますが、かなり軽量に仕上げられているので、力があるけど速く振れないようなゴルファーは、もう少し重くてロフトの立ったモデルのほうがよい結果が得られると思います。
軽さは武器ではありますが、自分の体力や体重に対して軽すぎると、あまりよい結果にはつながりません。そういった意味では、長いクラブを苦手としない女性ゴルファーにもよいアイアンだと思います。飛んで曲がらない。そんなアイアンが欲しいなら「245MAX」アイアンは要チェックですよ。
写真:野村知也