各ブランドより厚底レーシングシューズがリリースされるようになり、今となっては「厚底レーシングシューズのパイオニアは?」という問いに対して正しく答えられないランナーも少なくない。正解は、2017年にリリースされた「ナイキ ヴェイパーフライ4%」。当時の男子マラソン世界記録保持者であるエリウド・キプチョゲ(ケニア)らが着用して好記録をマークしたことで急速に普及し、「ヴェイパーフライ」シリーズは同カテゴリーの代名詞かつリーディングモデルとなり、現在にいたる。
そんなナイキの厚底レーシングシューズの最新作である「ナイキ ズームX ヴェイパーフライ ネクスト% 4」(以下、「ナイキ ヴェイパーフライ 4」)を実際に履いて走り込み、その走行性能の高さを検証した。
ナイキ「ナイキ ヴェイパーフライ 4」。公式サイト価格は29,700円(税込)
今春ナイキからリリースされた「ナイキ ヴェイパーフライ 4」は、いろいろな意味で注目された一足である。その要因は、主に以下の3つ。
【1】厚底レーシングシューズのパイオニアであるナイキの最新作であること
【2】発売以前に着用したランナーが好成績を収めたこと
【3】前作のターゲットが「幅広い層のランナー」と広範囲だったのに対し、先行で着用していたランナーや海外のレビューでは「上級ランナーに対象を絞ったのでは!?」という声が多く寄せられていたこと
前作からすべてのパーツを変更したフルモデルチェンジにより登場したこのモデルは、アッパーにあえて伸縮を抑えたエンジニアードメッシュを採用。足にカチッとフィットする感覚を提供してくれる。ミッドソールにはナイキで最も反発力の高い「ナイキズームXフォーム」をかかとからつま先まで採用することで、さらにスピードアップ。ミッドソールのボリュームを前作よりもわずかに削減することで、これまで以上にすぐれたエネルギーリターンを追求し、弾むような疾走感をランナーに提供してくれる。そしてナイキ伝統のワッフルパターンを現代風にアレンジしたアウトソールは、あらゆるサーフェスで高いグリップ性能を発揮する。
アッパーにはあえて伸縮性を抑えたエンジニアードメッシュを使用。アッパーと足が一体化するような高いフィット感を誇る
ミッドソールにはフルレングスで反発力の高い「ナイキズームXフォーム」を採用。前作よりもヒール部分を細くするなど、軽量化も考慮している
アウトソール前足部はナイキ伝統のワッフルパターンを現代風にアレンジ。中足部には比類なき推進力と安定性を提供する「Flyplate」が視認できる
これまでに「ヴェイパーフライ」シリーズは、初代モデルからすべて足を通してきた。厳密にはサブ4ランナーの自分はターゲットではないが、大臀筋などを鍛えることで、レースで履いた際は、その比類なき推進力をはじめとしたベネフィットが得られた。前作の「ナイキ ヴェイパーフライ 3」では、サブ4.5やサブ5のランナーにも履きこなしやすいスペックとなっていたが、今回リリースされた「ナイキ ヴェイパーフライ 4」は、5度ほど走ってみて、エリートのためのシューズに原点回帰したように感じた。
5回のテスト走行でわかった本作の魅力とは?
まず足を入れるとそのフィット感のよさと軽さに驚く。メンズサイズ25.5cmでわずか169gという超軽量性を実現しているのだ。立っている状態では、正直言うとこれまでの同シリーズよりも反発性は感じられない。その分、ヒール部分の安定性は感じられた。実際に走り始めると、以前よりもミッドソールの沈み込みは少ないが、反発性は感じられ、ペースアップすると「タン、タン、タン」と小気味よくストライドを重ねられる。前作までよりも明らかに接地感は硬くなって、ナイキ以外のブランドを含めた従来の厚底レーシングシューズとは若干走り心地が異なり、足裏の接地感が強く感じられる。
徐々にペースを上げていったが、自分のようなサブ4ランナーがkm/4分30秒ほどのペースで走っても無理がない。そして走る前に感じた安定性の高さは走行時でもキープしており、一部の厚底レーシングシューズで感じられた着地時の不安定さはない。着地から蹴りだしまでの一連の動きはとてもスムーズで、これには新形状のフルレングスのカーボンファイバー製プレートである「Flyplate」が大きく貢献している。通常よりも速いペースで走ったが、ラン直後や翌日の疲労感が少ないところは、歴代モデルを継承していると思った。
「ナイキ ヴェイパーフライ 4」は、モデルチェンジによりターゲットは上級ランナー方向に狭まった気がするが、5回履いてみて自分のようにサブ4ランナーでも、大臀筋や大腿筋といった筋肉を鍛えることで、履きこなせると思った。いっぽうで、サブ3やサブ2.5といった本格ランナーからは今回のモデルチェンジは概ね歓迎されているようで、日本のみならず、世界中の大会でこのシューズを履いたアスリートが好成績を収めている。
そして、注目したいのがそのプライス。希望小売価格は税込みで29,700円と、前作よりもかなり安くなっている点だ。シリアスランナーはシューズの消耗がかなり早いので、今回のプライスダウンは大いによろこばれている。ちなみにモデル名だが、シューズ箱には英文で「ZOOM X VAPORFLY NEXT% 4」と表示されるが、日本国内のナイキ公式ショッピングサイトでは「ナイキ ヴェイパーフライ 4」の表記でコミュニケーションされている。