ジャパンディスプレイ(JDI)は1日、同社の戦略発表会「JDI Future Trip 〜First 100 Days〜」を開催。従来のスマートフォン向けパネル等を手がける中小型液晶パネルをBtoCの部品メーカーとしての立場から、一般にコンシューマーに販売する“最終製品ビジネス”であるBtoCに参入。2019年の発売を目指したコンセプトモデル群を発表した。
JDI常務執行役員CMOの伊藤嘉明氏が、BtoCへの参入を発表
特にコンシューマーを意識したコンセプトモデルとして登場するのがヘッドアップディスプレイ「HUD搭載スマートヘルメット」、コンセプト名は“スパルタ”。伊藤CTOが「自分が欲しいものを作ったんじゃないかと言われる」と語る、バイク乗りに向けたヘルメット型の新デバイスだ。
「HUD搭載スマートヘルメット」の“スパルタ”
ヘルメット部については安全基準を取得する予定
「HUD搭載スマートヘルメット」の投射システムはヘルメット頭頂部に組み込まれており、右目にあるHUD部の反射板に投射して表示する仕組み。パネルは車載ヘッドアップディスプレイで採用実績のある低温ポリシリコン液晶で、視線の移動を押さえつつ、HUDユニットで、速度やGPS、ルート情報、着信、メールなどの情報を確認できるシステムを目指す。
商品化にあたっては必要となる、バイク用ヘルメットとしての安全基準や、情報送り出すデバイス、通信・接続方法については現時点では検討中の段階。またヘルメットではなく、要望によっては後付けでHUD部のみを発売するアフターパーツとして展開も検討中だ。展示はコンセプト先行という形だが、JDIの持つ反射型液晶デバイスで実現できる未来像を示した形。ただし、2019年中に製品化するという目標を定めて上での出展となっている。
同デバイスの利用シーンにはバイクを始めとしたモータースポーツ、伊藤氏が好きだという“サバゲー”を始め、ウィンタースポーツ、eスポーツへの応用も考えているという。
走行情報などをHUD搭載に表示可能
壇上でデモンストレーションの行われた用途提案が“サバゲー”
フィールドマップなど、サバゲーで必要な情報をHUDに表示
JDIが出展していたもうひとつのヘルメット型デバイスが、透明ディスプレイを使ったヘルメット。フォーミュラカーレース「スーパーフォーミュラ」に参戦するチーム「DANDELION RACING」(ダンディライアン レーシング)と連携、2018年7月にドライバーヘルメットに「高透過 透明カラーディスプレイ」を装着した走行実験を富士スピードウェイで実施したことが紹介された。
走行実験に用いられたディスプレイはJDIの独自技術でカラーフィルターと偏光板を取り除いて透過率80%を実現した透明カラーディスプレイ。ドライバーヘルメットのシールドに重ねて装着、走行中に確認が必要な温度、燃費などの車両情報を透明ディスプレイ確認できるようにした。モータースポーツではエンジンマッピングやラップタイム管理で頻繁に視点移動を行っており、視線移動の少ない透明ディスプレイはドライバーの負担軽減につながるという。
DANDELION RACINGの村岡潔監督と野尻選手も登場
透明ディスプレイにラップタイム等の表示が可能
続いて登場したのは、コンセプト名「おくれ鏡」と名付けられた、コンセルジュ機能付きミラーだ。通常時は鏡だが、ディスプレイにも変化するJDIのコア技術を適応して作られる技術。「おくれ鏡」の機能はカメラを内蔵して映像を数秒遅れで表示するもので、通常の鏡では確認しづらい、着物の帯のような後ろ姿のスタイルをチェックできる。音声操作によりカメラで写真撮影もでき、スケジュール確認なども可能だ。
BtoB向けに展開される「おくれ鏡」
遅れて鏡が映るので着物の帯も確認できる
音声操作で内蔵カメラを使った写真撮影も可能
「おくれ鏡」はBtoBに向けた製品だが、同技術を搭載したコンシューマー向け製品と呼べるのがIoTフルハイトドア「FULL HEIGHT MILAOS(フルハイトミラオス)」だ。
IoT対応のフルハイトドア「FULL HEIGHT MILAOS(フルハイトミラオス)」
室内ドアの専業メーカーである神谷コーポテーション湘南株式会社と協業で製品化され、2019年度の一般販売が予定されている。「ドアの前は動線が開けていて、鏡の置き場に最適」(伊藤CTO)という理由でドアとして製品化された。「FULL HEIGHT MILAOSには音声操作で鏡の一部がディスプレイとなり、天気やスケジュール表示にも対応。背面は最高級の本牛革を使用し、高級ドアとしてのデザイン性も確保している。今後、IoT家電の連携やAI搭載といった機能を追加し、2019年の発売を予定しているとのことだ。
もうひとつの製品がNHKメディアテクノロジーとの共同開発が行われている、裸眼3Dを実現するライトフィールドディスプレイ、コンセプト名は「LF-MIC」だ。
JDIは以前から17型の8Kディスプレイでライトフィールドディスプレイを開発、裸眼3D動画の上映を可能としてきたが、新たに登場した「LF-MIC」は5.5型の小型端末サイズ。デバイスの販売だけでなく、アニメキャラクターのアイドルをダウンロードして追加できる構成で、定額課金だけでなく、キャラクターデータの販売といった新たなBtoCビジネスも想定している。
5.5型の画面内に立体のアニメキャラクターを召喚できる「LF-MIC」
音声操作にも対応予定
元になったモデルはNHKメディアテクノロジーと共同開発している17型モデル
ソニー、東芝、日立、パナソニック、エプソン、三洋電機といった日本を代表する家電メーカーのディスプレイ部門が結集して誕生し設立6年を迎えたジャパンディスプレイ。スマートフォン用のディスプレイ以外にも車載や業務用を多数手がけているだけに、モノだけでなく“コト”を生み出す製品をみずから送り出すことで技術を改めて印象づけることにもつながっていくだろう。