本企画「Daddy’s Sneaker」は、30〜40歳代のパパにとって本当に使えるスニーカーを模索する連載企画。ここで言う同世代の平均的なパパたちとは、以下のように定義づけています。
・平日はスーツ姿で出勤。休日は全身ファストブランドで無難な感じにまとめがち
・休日のお出かけは、家族や子供を連れて公園や地元のショッピングモールへ
・自由に使える1か月分のお小遣いは3〜5万円
そんなパパたちがスニーカー選びで押さえておくべきは以下の3点です。
・生活圏内でも浮かないデザイン
・公園でも子供と走り回れる機能性
・地方でも買えて、価格は20,000円まで
以上の条件から導き出されるのは、「トレンドを超越したスタンダード」。履けば思わずテンションが上がり、とはいえ浮くことはない。ひと言で表すなら、“地に足のついたスニーカー”。ここでは、そのオススメモデルと、その履きこなし方を紹介します。
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1990年代後半から2000年代初頭のストリートファッションシーンにおいて、爆発的人気を誇った「グラビス」。今回はその数あるラインアップの中から、大人の足元にふさわしい1足を紹介!
本連載もついに記念すべき10回目! 第1回では30〜40歳代のパパたちにとって、青春時代の象徴でもあった「エア マックス」を取り上げたので、今回もパパ世代には懐かしい、あのブランドを紹介します。そう、「gravis(グラビス)」です。
同ブランドの代表作と言えば、「RIVAL(ライバル)」や「TARMAC(ターマック)」などが頭に浮かぶでしょうが、今回ピックアップするのは、当時は存在しなかった新定番モデル「ODJICK(オジェック)」。その履き心地はもちろん、ブランドの歴史やデザインにも触れながら、どんなスタイルに合うのか?といった視点を踏まえつつ、“なぜ買いなのか!?”を検証してみました。さらに今回は、バリエーションとして、より大人なレザータイプも一緒に紹介します。
「オジェック」を紹介する前に、まずグラビスというブランド自体について軽くおさらい。
スノーボードのトップブランド、バートンが、スノーボードのアフターライディングシューズをコンセプトに1998年に創設した同ブランド。最大の特徴である「イージーオン・オフ」をかかげた画期的なシューズは、稀代のインフルエンサーである藤原ヒロシ氏を筆頭としたファッション業界人らに見出され、1990年代後半から2000年代初頭のストリートファッションシーンで人気が爆発しました。その後の2016年にはアーカイブを礎に、さらなる高みを目指してリブランディング。今また再び、スニーカーシーンにおいて存在感を強めています。
そんなグラビスならではの履きやすさや脱ぎやすさに特化したギミックを、存分に味わえるのが「オジェック」です。デザインモチーフは見てのとおり、ラフに履ける革靴として人気のコインローファー。本作はその特徴的なデザインを落とし込み、機能性を現代的にアップデートさせたモデルに仕上がっています。ではここからは、実物の写真をご覧いただきつつ、細部を掘り下げていきましょう。
グラビス「オジェック」の「ブラック/ブラック」
グラビス「オジェック」の「レザー/ブラック」
「オジェック」の最大の魅力は、やはりその大人っぽいルックスにほかなりません。黒1色でまとめられたやわらかなスエードアッパーがシックな雰囲気を醸し出しながら、甲部分にはさりげなくブラックリフレクターが顔をのぞかせます。一見クラシカルなのに、テクニカルな一面も隠し持つ。そうそう、こういうのが男心をくすぐるのです。
スエード特有の表情豊かな質感も捨てがたいのですが、もう少しシックなほうがお好みという人には、レザータイプもオススメです。基本デザイン&スペックは変わりませんが、こちらは上質なイタリアンレザーを採用。足当たりが非常にやわらかく、ラグジュアリーな光沢感が加わることでよりスタイリッシュな印象を与えます。
もちろん本モデルの魅力は見た目だけにあらず。耐摩耗性にすぐれる素材「クラウドライト」を原料とした防滑性の高い「オリーブソール」パターンのアウトソールを装備し、ローファーの見た目ながら履き心地は完全にスニーカーのそれ!
ではここで、両モデルに共通する高い機能性にもフォーカスしていきましょう。
シンプルなローファーという形状の中で最大のポイントは、直接足に触れるため、履き心地に直結するインソール。「C9Lv2」と呼ばれるそれは、軽量かつクッション性、安定感、耐久性にすぐれる低反発ウレタンフォーム素材を使用しています。さらには抗菌防臭性まで完備しているので、春夏シーズンに素足で合わせた場合に気になる不快感はゼロ。また、アッパーの履き口や甲部分のライニング内側にはクッション材が入っているので、動作時に起きる靴の中での足ズレも防いでくれます。
クッション性、安定感、耐久性を備える低反発ウレタンフォーム素材を使用したインソール。踏み込むとフカフカとやわらか
素足での着用時、特に不快感を感じやすいのが履き口部分。ライニングにクッション材を仕込むことでこれを見事にクリア
唯一ブランドを主張する部分であるヒールサイドのロゴは、往年のカラーリング。こういう部分もパパ世代には刺さります
グラビスでは過去にも、夭逝(ようせい)した天才プロスケーター、ディラン・リーダーのシグネチャーモデルとして、ローファーやレザードレスシューズをモチーフとしたスケートシューズを作っていました。それらは知る人ぞ知る名作として、今でも復活を望む声が多いのですが、最新機能でアップデートされている分、こちらのほうがより普段履きに適していると言えます。ちなみに気になるプライスは、9,900円(税込)。10,000円以内(レザータイプは税込11,000円)とは実にうれしい限り! ではこの辺りで、実際に着用したスタイルサンプルといきましょう。
もうすっかり真冬。そのため今回は、防寒性とちょっと大人っぽさを意識してチャンピオンのフーディーと、アナクロノームのロングコートをレイヤード。ボトムスにはユニクロの「スキニーフィットチノ2WAYストレッチ」を合わせ、キャップでストリート感を加えてみました。足首からチラリとのぞくソックスは、あえてのホワイト。これに「オジェック」を合わせてみると……!?
グラビス「オジェック」の「ブラック/ブラック」を着用
グラビス「オジェック」の「レザー/ブラック」を着用
白ソックスのアクセント効果でロングコートの重厚感が中和され、全体はシックでありながらも軽やか。このシューズを履くだけで、いつもの着こなしが大人のストリートミックスへと変わります。
革靴アッパー×スニーカーソールというモデルは、実はいろんなブランドからリリースされています。とはいえ、ソールに合わせるためか丸みを帯びたフォルムのものが大半で、大人の足元にはtoo much。いっぽう本モデルは、甲部分が低く設計されているためか、すっきりスタイリッシュ。控えめに配されたロゴ以外、余計なデザイン要素がないのも好印象です。これならパパの定番お出かけファッションである、ジャケットスタイルに合わせても違和感ナシ。“地に足のついたスニーカー”の新定番に認定です!
というわけで、今回はグラビス「オジェック」をピックアップしました。
新型コロナウイルス禍にあって、仕事のリモートワーク化も進み、ますますオン/オフの境界線がなくなりつつある昨今。世の不況に合わせて出費も抑えたいという中で、そのどちらにも対応してくれる本モデルは、パパたちにとって頼れる味方! これを履いて、青春時代をストリートで過ごしたあの頃を思い出しつつ、普段よりちょっとだけオシャレを楽しんでみてはどうでしょうか?
メンズファッション誌を中心に、ファッションやアイドル、ホビーなどの記事を執筆するライター/編集者。プライベートでは漫画、アニメ、特撮、オカルト、ストリート&駄カルチャー全般を愛する本厄41歳。