新傑作ウォッチで令和を刻む

「シチズン プロマスター」新作ダイバーズは、ベーシックだから欲しい&実用的だから使いたい!

個性的なデザインの時計は魅力的ですが、「買うなら、まずはベーシックなデザインのものを」と考える人は多いでしょう。今回の「新傑作ウォッチで令和を刻む」では、そうしたコンサバ志向の時計好きにぜひ注目していただきたい新作ダイバーズを取り上げます。

「シチズン プロマスター メカニカル ダイバー200m」。写真左は黒文字盤×ウレタンベルト採用タイプ「NB6021-17E」。公式サイト価格は96,800円(税込)。写真右は青文字盤×ブレスレット採用の「NB6021-68L」。公式サイト価格は121,000円(税込)

「シチズン プロマスター メカニカル ダイバー200m」。写真左は黒文字盤×ウレタンベルト採用タイプ「NB6021-17E」。公式サイト価格は96,800円(税込)。写真右は青文字盤×ブレスレット採用の「NB6021-68L」。公式サイト価格は121,000円(税込)

その新作ダイバーズというのが、シチズン時計が2022年8月19日に「シチズン プロマスター(CITIZEN PROMASTER)」からリリースした「メカニカル ダイバー200m(MECHANICAL DIVER 200m)」というモデル。ダイバーズとしてきわめてベーシックな、何のてらいもないデザインながら、メルセデス針や極太のインデックスの採用で控えめに個性を見せる、多くの時計好きにとって好感の持てる姿に仕上がっています。

しかも、この新作には、45年前に発売された「チャレンジダイバー」というルーツモデルが存在。これに関する大変興味深くユニークなエピソードについて触れたあと、オーセンティックでありながらもデザインと性能において現代的にアップデートが図られた、本作「メカニカル ダイバー200m」の魅力を紐解いていきたいと思います。

海に長期間さらされながらも動き続けた「ルーツモデル」の真価

「シチズン プロマスター」の誕生は1989年ですが、シチズンではその以前からさまざまなスポーツウォッチを展開してきました。

ダイバーズの分野においてはまず、1959年に発売された国産初の完全防水時計「パラウォーター」があげられます。ダイバーズとうたわれはしなかったものの、ガラス縁や裏ブタ、胴の喰い付き部分、リューズ部分に、それぞれOリング(オーリング。リング形状のゴム製パッキンのこと)を仕込むことで、完全防水(現在では「完全」という表現はできませんが、当時は可能でした)を実現し、その後のシチズンダイバーズの原型となりました。

その「パラウォーター」の誕生から18年後の1977年にリリースされたのが、先述した「チャレンジダイバー」でした。ちなみに、これに先立つ1973年には、シチズン初の本格クロノグラフ「クロノグラフ チャレンジタイマー」、通称「ツノクロノ」が発売されていますが、いずれにも「チャンレジ」の文言が冠せられているのは、「現状に甘んずることなく、より良いものを」との、シチズンの社風に根差すチャレンジ精神の表明であると考えてよいでしょう。

●「ツノクロノ」の詳細はこちら!
シチズンの名作「ツノクロノ」が再降臨! コズミックな70年代デザインがカッコよ過ぎ

「チャレンジダイバー」には、1977年以前にもデザインを異にするバリエーションが存在したようですが、1977年に発売されたタイプは、品番が「DV-C82(4-820789)」。搭載ムーブメントは、自動巻きキャリバー「8210」で、防水性能は150m、そしてケース径41mm(設計値)のステンレススチールケースにクリスタルガラス風防というスペックを備えたものでした。ちなみに、明確ではないのですが、文字盤カラーはブラックのみの展開でした。

オーストラリアの海岸で発見された「DV-C82」の実物。発見時には、すでにオリジナルのものではないバンドに付け替えられていたうえに、発見者によりフェイス部分のフジツボは取り除かれた状態で「シチズンミュージアム」に保管されています

オーストラリアの海岸で発見された「DV-C82」の実物。発見時には、すでにオリジナルのものではないバンドに付け替えられていたうえに、発見者によりフェイス部分のフジツボは取り除かれた状態で「シチズンミュージアム」に保管されています

ちなみに、この「DV-C82」には大変に興味深いエピソードがあります。それは1983年、オーストラリア東岸、シドニー近郊の「ロングリーフビーチ(Long Reef Beach)」で、その個体が発見されたというもの。全体がフジツボに覆われていたことから、海中に長期間沈んでいて、それが浜に打ち上がって発見されるにいたったと推測されます。しかも驚くべきは、浸水がないうえに、波の揺れによってゼンマイが巻き上げられていたのか、しっかりと動作していたというのです! これすなわち、シチズンの防水技術の確かさを物語る逸話と言えましょう。

この個体は、現在、東京・西東京市のシチズン時計本社に併設されている「シチズンミュージアム」に保管されています。残念なことに、現状では、同ミュージアムは特別な場合を除いて一般向けには公開されていないのですが、機会があればぜひとも、このモニュメンタルな「チャレンジダイバー」を実見したいものです。

元祖モデルの無骨さに、洗練さを加えてモダナイズ!

さて、本題に戻りましょう。

「シチズン プロマスター」は、過酷な環境下で耐える信頼性と各種アクティブ機能を兼ね備えたプロフェッショナルスポーツウォッチのブランドです。コレクションは、「MARINE」、「LAND」、「SKY」の3カテゴリーに分けられており、今回ご紹介する「メカニカル ダイバー200m」は、もちろん「MARINE」に含まれる最新作です。

「メカニカル ダイバー200m NB6021-17E」は、「チャレンジダイバー DV-C82」でも展開された黒文字盤×黒ベゼルタイプ。格子パターンのウレタンベルトとの相性も上々です

「メカニカル ダイバー200m NB6021-17E」は、「チャレンジダイバー DV-C82」でも展開された黒文字盤×黒ベゼルタイプ。格子パターンのウレタンベルトとの相性も上々です

このモデルは、先に述べた伝説的な名品「チャンレンジダイバー DV-C82」のデザインなどを継承しています。

たとえば、径41mm(設計値)のケースサイズを始め、古典的なメルセデス針(ベンツ針とも言う。時針に見られる円形の飾りが「メルセデスベンツ」のブランドマークに似ていることから、こう呼ばれる)、ロリポップ秒針(棒付きキャンディーのようなドットが付いた秒針)、極太のバーインデックス(棒字)、3時位置の日付表示窓、逆回転ベゼル上の残潜水時間表示における太いフォント、リューズガード(リューズを保護するため、その上下に設けられた突起)のない仕様、そして自動巻き式……と、「復刻」と呼んでも違和感のないレベルで、元祖のエッセンスを継いでいるのです。

そのいっぽうで、現代的な使用にかなうように、細部ではアップデートが図られています。

まず、文字盤をじっくりと見ますと、元祖モデルに比して分針と秒針がわずかに長いことがわかります。また、インデックスや日付表示窓の縁取りがやや細くなっており、これにより「チャレンジダイバー」由来の無骨さとともに、洗練さもあわせ持つ表情に仕上がっているのです。

また、旧・新いずれも12時位置のプリントは「CITIZEN AUTOMATIC」と共通で、フォントも互いに近いものなのに対し、6時位置では「21 JEWELS WATER RESISTANT 150M」が「DIVER’S 200m TITANIUM」に変更されています。すなわち、肝心の防水性能は150mから200mに向上しているわけです。しかも、この200m防水は、「ISO(国際標準化機構)」による「ISO 6425 ダイバーズウォッチ」の規定に準拠した、信頼性の高い仕様なのです。

ケース素材は、ステンレススチールから、「デュラテクト チタンカーバイト」が施された「スーパーチタニウム」へと進化しています。「デュラテクト」は、金属表面の硬度を高めるとともに、素材の輝きを長期間保つことも可能にしたシチズン独自の技術で、「スーパーチタニウム」は、その「デュラテクト」が施されたチタニウムのこと。ステンレスの約5倍以上の硬さを誇るうえ、耐傷性や耐摩耗性、耐腐食性、強度にすぐれた、肌にやさしい素材です。また「チタンカーバイト」は、一般的にも使用される技術ですが、シチズン独自の「デュラテクト チタンカーバイト」は、チタニウムの色調を生かしたシルバー色と、ビッカース硬度(素材表面の硬さを表す尺度)1000Hv以上のすこぶる高い耐傷性を特徴とするコーティング技術です。

増大するデジタル環境に応える高耐磁性も兼備!

青文字盤×青ベゼルの「メカニカル ダイバー200m NB6021-68L」では、ケースと同素材の「スーパーチタニウム(デュラテクト チタンカーバイト)」のブレスレットが標準装着されています

青文字盤×青ベゼルの「メカニカル ダイバー200m NB6021-68L」では、ケースと同素材の「スーパーチタニウム(デュラテクト チタンカーバイト)」のブレスレットが標準装着されています

本モデルが搭載するキャリバーは「9051」。これは、振動数が28,800回/時で、石数(金属が摩耗しやすい部分に取り付けられる人造ルビーなどの鉱物の数)が24石、パワーリザーブが約42時間です。

いっぽう、「チャレンジダイバー DV-C82」が搭載するキャリバー「8210」では、振動数やパワーリザーブは明確ではないものの、6時位置の「21 JEWELS」が示すとおり、石数は21石でした。また、「8210」に比して、「9051」のほうが薄型設計なのでしょう、旧・新ともにケース径が同寸ながら、ケース厚はオリジナルモデルから1mmほど薄い12.3mm(設計値)で設計されており、装着感がより快適なものにアップデートされています。

とはいえ、キャリバー「9051」で最も注目すべきは、耐磁性能が強化されている点でしょう。すなわち、機械式ムーブメントの心臓部である脱進調速機のヒゲゼンマイ、およびその周辺パーツに、磁気を帯びにくい素材が採用されたことで、磁気を発する機器に1cmまで近づけても性能が維持できるレベル「第2種耐磁(16,000A/m 日本工業規格「JISB7024」に規定された保証水準)をクリアした仕様です。昨今、スマホなどのデジタル機器の普及で、それらから発される磁気にさらされる環境が増大しており、それゆえ、これまで以上に時計の耐磁性能が重視されるようになってきました。一見してクラシカルな「メカニカル ダイバー200m」ではありますが、こうした現在の時計に求められる性能がしっかり備わっている点も高く評価したいのです。

「チャレンジダイバー」由来の風防形状が、本モデルをよりクラシカルな表情に見せています

「チャレンジダイバー」由来の風防形状が、本モデルをよりクラシカルな表情に見せています

風防も着目したい点。「チャレンジダイバー」のそれは、クリスタルガラス(鉛などの特定成分を多く含有させることで透明度や光沢度を高めたガラス)製でしたが、本モデルでは硬度、耐傷性、耐熱性、透過度がすこぶる高いサファイアガラス(高純度アルミナを巨大結晶へ成長させて作られる高品質ガラス。サファイアクリスタルなどとも言う)製が採用されています。

しかし、上面がフラットで、サイド(ベゼルに沿った風防外周部)に立体的カットが加えられ、また、裏面(文字盤の対向面)が球面という風防形状は、旧・新の両モデルで共通です。そして「メカニカル ダイバー200m」においては、この素材&形状が相まって、美しい輝きと透明感、そして高い視認性の両立が実現しているのです。

メルセデス針×極太インデックスの採用で、暗所においても視認性は上々です

メルセデス針×極太インデックスの採用で、暗所においても視認性は上々です

ナイトダイビングではもちろん、日中でも海上に比して暗い海中では、夜光仕様は大変重要な機能です。「メカニカル ダイバー200m」では、存在感あるメルセデス針や極太インデックスなどに蓄光塗料を塗布したことで、そうした暗所においても確かな視認性を提供。しかも、元祖モデルと同様のグリーン発色とあって、発光時にもヴィンテージな雰囲気を醸し出します。

シンプル&ベーシックながら確かな存在で手元を主張!

裏ブタには「CITIZEN」ロゴとともに、「MAGNETIC RESISTANT 16000A/m」などの文言が刻印されています

裏ブタには「CITIZEN」ロゴとともに、「MAGNETIC RESISTANT 16000A/m」などの文言が刻印されています

ケースバックには、チタニウム製であることや「デュラテクト」、サファイアガラス、200m防水、16,000A/m耐磁、日本製ムーブメントといった本モデルを特徴付ける各要素を示す記載が刻まれています。なお、上の写真は、黒文字盤タイプの「NB6021-17E」を撮影したもの。したがって、表面に格子状の小紋がかたどられたウレタンバンドが標準装備されています。

ケース径41mmゆえ、腕の太さによらず、多くの人の腕にマッチしてラギッドな手元に

ケース径41mmゆえ、腕の太さによらず、多くの人の腕にマッチしてラギッドな手元に

大き過ぎず&小さ過ぎずのケース41mmとあって、太腕にも細腕にも秀逸マッチ。ダイバーズゆえにスポーティーなたたずまいではあるのものの、リューズガードがないデザインだからか過剰さはなく、したがって手元をシンプルな印象に見せてくれます。夏の休日など、アクティブなシーン&スタイルに合うのは当然として、これならビジネスにも違和感なく使えそう。ちなみに、写真上はウレタンストラップ付き「NB6021-17E」の装着例ですが、ブレスレット付きの「NB6021-68L」ならスーツに合わせてみるのもありでしょう。

【まとめ】 見た目「普通」でもストーリー性と実用性を兼備!

シチズンは、2022年夏以降も果敢に新作を次々と投入していきますが、そうしたなかから今回、この「シチズン プロマスター メカニカル ダイバー200m」を取り上げたのは、何よりもデザインがごくベーシックだから。このことは本稿冒頭でも述べましたが、一見「普通」の印象の、奇をてらわぬ姿をした時計は概して人気が高く、購入に際して「間違いのない」選択肢として多くの時計好きに歓迎される傾向があり、これは、この新作ダイバーズも例外ではないと考えました。それでいて、元祖モデルにまつわるエピソードにより、ストーリー性をまとっていることが、この時計を特別に魅力的なものに押し上げていると思うのです。

さらに言えば、現在、ダイバーズに求められる性能がしっかり備わっている点も注目ポイントです。ベーシックだが、ほかのダイバーズのデザインとはひと味違う個性も控えめに見せながら、実用にかなった機能を兼備する。このあんばいがちょうどよい! これこそが「シチズン プロマスター メカニカル ダイバー200m」の個性であると断じましょう! 

●写真/篠田麦也(篠田写真事務所)

【SPEC】
「シチズン プロマスター メカニカル ダイバー200m」
●品番:「NB6021-17E」(黒文字盤)、「NB6021-68L」(青文字盤)
●駆動方式:自動巻き(手巻き付き)
●ムーブメント:Cal.9051
●精度:平均日差−10秒〜+20秒
●駆動時間:約42時間持続(最大巻き上げ時)
●耐磁性能:第2種耐磁
●防水性能:200m(ISO規格準拠潜水用防水)
●ガラス材質:サファイアガラス
●ケース材質:スーパーチタニウム(デュラテクト チタンカーバイト)
●ケースサイズ:41.0(径)×12.3(厚さ)mm
●バンド材質:ウレタン=「NB6021-17E」、スーパーチタニウム(デュラテクト チタンカーバイト)=「NB6021-68L」
●発売日:2022年8月

山田純貴

山田純貴

東京生まれ。幼少期からの雑誌好きが高じ、雑誌編集者としてキャリアをスタート。以後は編集&ライターとしてウェブや月刊誌にて、主に時計、靴、鞄、革小物などのオトコがコダワリを持てるアイテムに関する情報発信に勤しむ。

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