本企画「Daddy’s Sneaker」は、30〜40歳代のパパにとって本当に使えるスニーカーを模索する連載企画。ここで言う同世代の平均的なパパたちとは、以下のように定義づけています。
・平日はスーツ姿で出勤。休日は全身ファストブランドで無難な感じにまとめがち
・休日のお出かけは、家族や子供を連れて公園や地元のショッピングモールへ
・自由に使える1か月分のお小遣いは3〜5万円
そんなパパたちがスニーカー選びで押さえておくべきは以下の3点です。
・生活圏内でも浮かないデザイン
・公園でも子供と走り回れる機能性
・地方でも買えて、価格は20,000円台前半まで
以上の条件から導き出されるのは、「トレンドを超越したスタンダード」。履けば思わずテンションが上がり、とはいえ浮くことはない。ひと言で表すなら、“地に足のついたスニーカー”。ここでは、そのオススメモデルと、その履きこなし方を紹介します。
オンは、近年のランニング人気から注目を集めているスイス・チューリッヒ生まれのパフォーマンスブランドです。今回は同社ラインアップの中から、春の行楽シーズンにもピッタリなモデルを紹介!
マスクはまだ何となく手放すことができずとも、在りし日の日常が戻りつつあるのを感じる今日この頃。気温とともに行楽気分も高まり、「この春は、どこかに行きたいなぁ」なんて結論に至るのも当然。では、そんなときにちょうどよいスニーカーとは?
まず必要なのが「軽快さ」。やはり足取りは軽やかに、なんなら子供とスキップできちゃうくらいが理想。そこに紐付くのが「クッション性」。寒さで億劫になり、外出を避けていたツケで弱った足腰をサポートしてくれるとうれしい限り。そのうえで、忘れてはならないのが「デザイン性」。ただ、先述の2つを備えるからって、スポーティーすぎると普段の格好に合わせづらい。あと、可能なら周囲との被りは避けたいーー。
そこで推したいのが、本連載初登場のOn(オン)の1足です。今回の主役は、発売から継続的な人気を得ているという「Cloudaway(クラウドアウェイ)」。このシューズの特徴に触れながら、どんなスタイルに似合うのか?を考えつつ、“なぜ買いなのか!?”を検証してみました。
まずその前に、ブランドについて軽く説明を。オンは、2010年にスイスのチューリッヒで創設されたパフォーマンスブランドです。元トップトライアスリートが開発したランニングシューズのソフトな着地感と爆発的な蹴り出しが「雲の上の走り」と称されて、ファンを獲得。今では世界60か国以上で展開され、日本国内でも2022年春に、世界で2店舗目となる直営の旗艦店「On Tokyo(オン トーキョー)」が渋谷キャットストリートにオープンして話題になりました。
そして今回紹介する「クラウドアウェイ」のデビューは2021年。同社のアイコンモデルの名跡でもある「クラウド」の名を冠した1足です。オンと言えば、ランニングシューズがよく知られていますが、本作「クラウドアウェイ」はすぐれた耐久性を有し、街歩きから軽めのハイキングにまで対応。デイリー使いはもちろん、旅のパートナーとしても最適な機能を武器に、パパ世代のライフスタイルに寄り添うモデルと言えます。それでは早速、実物写真をご覧いただきつつ、その魅力を掘り下げていくとしましょう。
オンの「クラウドアウェイ」の「ブラック/ロック」。メーカー希望小売価格は16,830円(税込)
まずは全体像から見ていきましょう。今回は1stデリバリーカラーの中から、クールで都会的な印象を与える「ブラック/ロック」を選びました。先述のように、同社の名を聞いてランニングシューズを想起する人は多く、軽快かつスポーティーなデザインを特徴と考える人が多いのも確か。そこから考えると、この「テック(高機能素材を用い、近未来的なデザイン)」なスタイルは意外です。逆に言えば、周囲と被る可能性も少なく、さりげなく個性を演出できるとも言えます。ここからは、シューズの細部にフォーカスしていきましょう。
【写真上】アイステイには、スイスエンジニアリングの文字と赤字に白十字のスイス国旗が付いています。これぞ、スイスで設計されているうえに、最先端の技術を駆使して作られたプロダクトであるという証明 【写真中央、下】伸縮性のあるゴム素材のシューレースをトグルで留めることで、フィット感を調整するシステムを採用。脱ぎ履きも楽チンです
テックな印象を与えるアッパーは、3種類の素材で構成されています。シュータン部分には、通気性が高く、密着した甲部分を包むようにサポートするメッシュを、シューレースの通るアイステイと周囲をぐるりと囲むサイド部分にはビーガンスエードを、そしてベース部分には耐久性と伸縮性を備えたネオプレン調の素材を採用。さらに、アクセントとしてモカシンステッチが施されています。質感の異なる素材の組み合わせとステッチワークが、ハイテクとクラフトという相反する要素をまとめ上げており、ほかにはないルックスに仕上がっています。
そして、デイリーで使えるカジュアルな雰囲気がありながら、リサイクル素材を90%採用し、環境負荷にも考慮されている点もお忘れなく。さらにもうひとつ忘れてはならないのが、同社の定番モデル「Cloud(クラウド)」のスピードレーシングシステムから着想を得たというトグルシステムを採用している点。伸縮性のあるゴム素材のシューレースをトグルで留めることによって、素早くフィット感の調整が可能に。これもコンフォータブルな履き心地を生み出すのに欠かせない重要なディテールです。
【写真上】“雲の上の走り”を生み出すのが、「クラウドテックソール」と呼ばれる独自のソール形状 【写真下】ブランド生誕の地であるスイスの「エンガディン渓谷」の3Dマップを刻んだアウトソール。こういうちょっとした遊び心がモノ好きゴコロをくすぐります
続いては、履き心地の要(かなめ)となるソールについて触れたいと思います。
同社の代名詞「雲の上の走り」を生み出すのが、「クラウドテックソール」と呼ばれる独自のソール形状。この前後左右に分割されたソールが高いクッション性を生み出し、さらに内蔵された「スピードボード」という独自の足形プレートが蹴り出し時に高い反発性を発揮します。しかも、片足282gと非常に軽量。これなら、子どもと一緒に公園を走り回るのだって苦ではないかと。
また、本モデルの特徴として、ヒール部分もあげられます。通常は補強のために入っているヒールカップを排し、やわらかく設計されているため、コンパクトに折り畳み可能。バッグにも収納しやすく旅先に連れていくのにも最適です。どこに行ってもランニングの習慣は欠かしたくないという人にも打ってつけ。アウトソールに刻まれているのは、ブランド生誕の地であるスイスの「エンガディン渓谷」の3Dマップ。こういうちょっとしたディテールの遊び心がモノ好きゴコロをくすぐります。では、そろそろ実際に着用したスタイルサンプルをご覧いただくとしましょうか。
着用するのは、オンの「クラウドアウェイ」の「ブラック/ロック」
【スタイルサンプル着用品】
・ボトムス:フラグスタッフのカーゴパンツ
・アウター:イビツのコーチジャケット
・インナー:ヘルスニット ブラックレーベルのカットソー
・ニットキャップ:イビツ
気候はすっかり春めいてきたし、風さえ吹いていなければさほど寒くない、というワケで、結構薄着です。また、オンのブランドイメージがアクティブかつクリーンなので、あえて男臭く無骨なアイテムでストリートテイストにまとめてみました。ここに「クラウドアウェイ」を合わせてみると……!?
オンの「クラウドアウェイ」を着用
せっかくのアッパーデザインを見せないのはもったいないので、今回はボトムスの裾をアジャスタで留めて着用してみました。無骨なミリタリーパンツには、レザーシューズやローテクスニーカーを合わせてすっきり大人っぽく見せるのが常道とされていますが、軽快なテックスニーカーとも好相性。よくよく考えれば、1990〜2000年代前半にはミリタリーパンツ×ハイテクスニーカーのマッチングが定番だったのもあり、納得です。パパ世代らしいテックなスタイルが楽しめそうです。
さて、この流れでいつものごとく、サイズ選びにも言及しておきましょう。本作はシュータンとライニングが一体化したソックライナー型なので、サイズ選びを誤ると正しくパフォーマンスを発揮できない可能性も……。ということで試着はマスト。今回着用したのはUS9.5。甲高やや幅広の足型を持つ筆者は普段、他メーカーではUS9.0を選ぶのですが、こちらで正解でした。普通の足型でUS9を選んでいる方なら、そのままでよろしいかと。大きすぎるとフィット調整で絞ったあとのシューレースに余裕ができてしまい、あまり見た目がカッコよくありません。ご注意あれ。で、今回のオマケは履き方について。
あくまで個々の判断で!
本モデルの特徴のひとつとして、「ヒールカップに芯材が入っていないため、折り畳んでコンパクトに持ち運べる」と先述しました。要するに、ヒール部分を潰してサンダル履きすることも可能というワケです。これなら子供を抱っこしたままでも脱ぎ履きがしやすく、出張や旅行などの旅先では、宿周辺のコンビニにちょっと買い出しに行く、室内でスリッパ代わりに履くなど、活躍の場を広げてくれます。とはいえ、公式に推奨されている履き方ではないため(習慣的にヒールを潰して履いていると、その部分が擦れて折れ跡が残る可能性も)、あくまで個々の判断で楽しんでいただけると幸いです。
オン「クラウドアウェイ」
というわけで、今回はオンの「クラウドアウェイ」をピックアップしました。
本稿の冒頭でも触れたように、どちらかと言えば、これまでパフォーマンス寄りのイメージが持たれがちだったオンですが、この2、3年で状況は大きく変わっています。事実、筆者が最近仕事で「アトモス」と「ミタスニーカーズ」という日本を代表するスニーカーショップのディレクターお二人に話を伺った際、最注目ブランドのひとつとして名前が上がっていたのもオン。となれば、さらなる躍進も間違いなし。しかも「クラウドアウェイ」のようなライフスタイルカテゴリーのモデルは、まだ履いている人も少ないので確実に狙い目です! この春、新たなパートナーをお探しなら、ぜひお試しあれ。
●撮影協力:オン
メンズファッション誌を中心に、ファッションやアイドル、ホビーなどの記事を執筆するライター/編集者。プライベートでは漫画、アニメ、特撮、オカルト、ストリート&駄カルチャー全般を愛する41歳。