本企画「Daddy's Sneaker」は、30〜40歳代のパパにとって本当に使えるスニーカーを模索する連載企画。ここで言う同世代の平均的なパパたちとは、以下のように定義づけています。
・平日はスーツ姿で出勤。休日は全身ファストブランドで無難な感じにまとめがち
・休日のお出かけは、家族や子どもを連れて公園や地元のショッピングモールへ
・自由に使える1か月分のお小遣いは3〜5万円
そんなパパたちがスニーカー選びで押さえておくべきは以下の3点です。
・生活圏内でも浮かないデザイン
・公園でも子どもと走り回れる機能性
・地方でも買えて、価格は20,000円台前半まで
以上の条件から導き出されるのは、「トレンドを超越したスタンダード」。履けば思わずテンションが上がり、とはいえ浮くことはない。ひと言で表すなら、“地に足のついたスニーカー”。ここでは、そのおすすめモデルと、その履きこなし方を紹介します。
日本を代表するスポーツメーカーとして知られるアシックスから誕生した、スポーツライフスタイルブランドがアシックス スポーツスタイル。その数あるラインアップの中から、抜群のクッショニングと大人の装いにもハマるデザインが魅力のスケートボーディングラインの1足を紹介!
さて、前回は「我々日本人の足に合ったスニーカー」をテーマに、「アシックス スポーツスタイル」の「GEL-SONOMA 15-50(ゲルソノマ15-50)」を紹介しましたが、ご覧いただけましたか?
同記事では、12,100円(税込)のお手ごろプライスながら、日本人の足に最適な履き心地と機能性を備えつつ、“テック感”という今旬のキーワードと、パパ世代にもファンの多いアウトドアテイストも同時に獲得しており、さらには周囲のパパと被る心配もない「一石五鳥のシューズ」と結論づけました。
その際に改めて感じたのが、日本が誇るスポーツブランドの実力の高さ。そこで今回は、同じくアシックス スポーツスタイルのラインアップの中から、以前より気になっていたスケートボーディングラインのモデルに注目しました。その名も「GEL-VICKKA PRO(ゲルビッカー プロ)」。その履き心地はもちろん、歴史やデザインにも触れながら、「どんなスタイルに合うのか?」といった視点を踏まえつつ、「なぜ買いなのか!?」を検証してみました。
アシックスのスケートボーディングラインに属するモデルの多くは、ベースとなるモデルが存在します。本作で言えば、1980年代に発売されたトレーニングタイプシューズ「VICKKA(ビッカー)」がそう。同モデルはシンプルなデザインと用途を限定しない汎用性の高さもあってか、多くのアレンジモデルを生み出しました。若干ややこしいのですが、トレーニング時の複雑な動きに対する安定性を高めるために設計された当時のソールを再現した「GEL-VICKKA TRS(ゲルビッカー TRS)」もそのひとつで、そこからさらにスケートボード仕様にアップデートして誕生したのが「ゲルビッカー プロ」です。それではさっそく、実物写真をご覧いただきつつ、その魅力を掘り下げていくとしましょう。
アシックス スポーツスタイルの「ゲルビッカー プロ」(ピーコート/ブラック)。メーカー希望小売価格は11,000円(税込)
と言っても、そもそもスケートボーディングラインの存在自体を知らなかった人も多いことでしょう。その理由が、スケートボードシーンでの周知&普及を優先するため、ファッションメディアでの露出が抑えられていたから。さらに販路もスケートショップかアシックスの直営店に限定されていたのも理由のひとつです。こうして人知れずスケーターの間では人気になっていたわけです。
今回は、落ち着いた色味で合わせやすそうな「ピーコート/ブラック」を選んでみました。過去には鮮やかなカラーも存在したようですが、現在はほかに「ブラック/ホワイト」と「ホワイト/クリーム」という汎用性の高い計3色のカラバリが販売中。ワントーン配色のアッパーに黒一色のソールの組み合わせです。
ちなみに、「ピーコート」は元々英国海軍(ロイヤルネイビー)が艦上用の軍服として着用していた紺色のアウターですが、ネイビーカラーの本モデルのカラー名を、「ネイビー」→「ロイヤルネイビー」→「ピーコート」と連想してカラー名を名付けるなど洒落が効いています。
ではここからは、シューズの細部にフォーカスしていきましょう。
【写真上】アッパーは甲部分が低く設計されており、スッキリしたロープロファイルなフォルムが特徴。パンチ穴が通気性とアクセントを兼ねています 【写真下】ヒール部分をやや高めに設計して内側に凹凸を作ることで、しっかりとかかとがホールドされて履き心地よし! ちなみにシュータンには、「SKATEBORDING」の文字が描かれてます。
まずはアッパーから。
素材は耐久性が高く、履き込むほどに足になじんでいくスエード。前足部は、切り替えのないワンピース構造を採用することで、ライディング中の激しい動きによる損壊リスクを軽減しています。さらに、アッパーサイドに配された「アシックスストライプ」がスポーティーな味わいをもたらし、シュータンからトゥまでを低く設計したロープロファイルなフォルムが都会的でモダンな印象を与えます。これは同時に、アディダス「SAMBA(サンバ)」に代表される、昨今のデザイントレンドとも言えます。
またスケシューらしく、シュータンやトゥ付近など足周りに薄くパッドを封入し、シューズ内部で足が動かないよう工夫が施されているのもポイント。履き心地の面で言えば、通常よりもやや高めに設計されたヒールタブと内側の凹凸に注目です。かかと部分がしっかり収まってホールドされることで、しっかりとしたフィット感が得られます。
【写真上】ヒール部分には、アシックス独自のクッション技術「ゲル」テクノロジーを採用。すぐれた履き心地を提供します 【写真中央】フラットに設計されたアウトソール。刻まれたパターンにより、スケートデッキに貼られたグリップテープをしっかりとつかむ感覚が得られます 【写真下】インソールは、スケートボードでの動作を分析し、内側と外側の硬度を変えてパンチングの穴を設けることで、内重心をうながす仕様に(通常、インソールは軽く接着されています)
続いて、履き心地を左右するソールユニットも見ていきましょう。背面に回るとヒールタブ部には「GEL(ゲル)」の文字が描かれています。「オーリー」など、スケートデッキごとジャンプするトリックをした際に重要なのが、着地時のクッショニング。その点、アシックス独自のクッション技術「ゲル」テクノロジーを内蔵したソールは、すぐれた履き心地を提供します。また、アウトソールに刻まれたパターンもポイントです。スケートデッキの表面に貼られたグリップテープをしっかりとつかむようにデザインされています。筆者は試しに自転車に乗ってみましたが、ペダルもがっちりと噛んでくれてイイ感じでした。
さらに隠れた注目ポイントと言えるのがインソールです。通常は軽く接着されていますが、今回は撮影のために取り外してみました。そこで気づいたのが、足の内側と外側で硬さを変えて設計されているという点。スケートボードでのライディングにおける動作分析から得られた研究結果をフィードバックし、さらにパンチングの穴を設けることで内重心をうながし、ボード上での安定感を高める仕様に仕上げているそう。実際に数日間履き続けてみましたが、ソールは薄いのにクッション性は十分。やりすぎずさりげなくサポートしてくれる程度のバランス感も良好です。
着用するのは、アシックス スポーツスタイルの「ゲルビッカー プロ」(ピーコート/ブラック)
【スタイルサンプル着用品】
・ボトムス:エトスのナイロンパンツ
・アウター:エトスのナイロンブルゾン
・インナー:ヘインズのTシャツ
・キャップ:ニューエラのキャップ
今回は、スケートボーディングラインの雰囲気に合わせて、上下ともにハリのあるナイロン素材のウェアでアクティブなスタイルを作ってみました。上半身は鮮やかなサンライトイエローに爽やかなホワイトを重ね、対する下半身は落ち着きのあるネイビーのワントーンでまとめることで、上下の対比を際立たせつつ脚長効果も狙ってみました(笑)。では、ここに「ゲルビッカー プロ」(ピーコート/ブラック)を合わせてみると……!?
アシックス スポーツスタイルの「ゲルビッカー プロ」(ピーコート/ブラック)を着用
ボトムスは普段はいているものに比べると、やや太めのストレートシルエット。シューズがロープロファイルなフォルムなので、裾で隠れすぎてしまわないよう、着丈はくるぶし位置に設定してみたら、これがビンゴ! 太めのボトムス×ボリューミーなスニーカーという組み合わせも悪くはありませんが、大人っぽさという点では、こちらに軍配が上がります。もちろん細身のボトムスでも相性抜群。ショートパンツで合わせる際は、ソックスをくるぶし上のアンクル丈にするとバランスが取りやすくなります。主張しすぎず、されど存在感は欲しいが悪目立ちは避けたい。そんなパパ世代のわがままを叶えてくれる強い味方になってくれるはず。
ここでちょっとした小ネタをご紹介。シュータンをめくってシューズ内部をのぞいてみましょう。シューズ本体とシュータンをつなぐようにエラスティックバンドが搭載されているのがわかります。これが激しい運動下でもシュータンがズレることなく、ストレスを感じさせない工夫。シューレースを外しても元々のフォルムがスマートなので、野暮ったさはありません。
【写真上】内側をのぞくと、シューズ本体とシュータンをつなぐエラスティックバンドの存在に気づくはず。激しい運動でもシュータンがズレず、着用時のストレスもありません 【写真下】シューレースを取り外した様子。元々がスッキリしたフォルムということもあってか違和感はナシ。これはこれでカッコいいと思えます
ということで、ブランド側が推奨している履き方ではありませんがスリッポンのように履くことも可能。ただし、長期間この履き方をしているとエラスティックバンドが伸びてしまう恐れもありますし、大きめのサイズを選んでいる場合は、歩くたびにパカパカして若干の歩きづらさを感じるかも。あくまで“可能”という話なので、自己責任でお試しあれ。
実際に履いてみるとこんな感じ。スリッポンのように履くことも可能ですが、長期間この履き方をしているとエラスティックバンドが伸びてしまう恐れもありますし、サイズが大きめだと歩くたびにパカパカして若干の歩きづらさを感じるかも
そして小ネタがもうひとつ。本モデルはスケシューということで、ライディング中にシューレースが切れてしまうことも配慮し、別色の替えシューレースが付属します。実際に替えてみた様子がこちら。深みのあるネイビーにシューレースのホワイトが絶好の挿し色に。全体のシックなトーンに爽やかさが加わり、また違ったよさが出ていますね。ボトムスとのバランスによって使い分けるのも乙です。
替え用のシューレース(ホワイト)を装着した図。シックな配色にアクセントを加えることで、カジュアルな雰囲気に仕上がります
最後に、恒例のサイズ選びについても言及しておきましょう。
今回着用したのはUS9 1/2。甲高やや幅広の足型を持つ筆者は、普段他メーカーではUS9.0を選ぶ場合が多いのですが、本モデルはハーフサイズ上げても若干トゥに余裕があるけどジャストに近いフィッティング。厚手のソックスをはく場合は、甲部分が密着してかなりピッタリでした。アッパーのスエード素材が伸びたり、履き続けることでインソールが沈んだりすることを考慮したとしても、通常よりハーフサイズ上げるのはアリかと。実際にスケートボードでの使用も視野に入れている人は、実際に試着してからの購入を強くおすすめします。
というわけで、今回はアシックス スポーツスタイルの「ゲルビッカー プロ」をピックアップしました
本連載ではこれまでにも、コンバース スケートボーディングの「CS MOCCASINS SK OX(CS モカシン SK OX)」や、ナイキ SBの「ZOOM BLAZER LOW PRO GT(ズーム ブレーザー ロー プロ GT)」など、各社のスケートボーディングラインのモデルを紹介してきましたが、どのモデルにも共通するのがフィット性とクッション性の追求により生み出された抜群の履き心地です。
それで言えば、今回紹介した「ゲルビッカー プロ」は、我々日本人の足を知り尽くしたアシックスが設計しているため、より最適な履き心地が味わえます。また、実際のスタイルサンプルをご覧いただければわかるように、シンプルでロープロファイルなフォルムにより、どんな着こなしにもマッチする高い汎用性も兼備。そして最後はプライスでダメ押し。税別なら“福沢諭吉1枚”でもこと足りてしまう驚きの11,000円(税込)! これで、履き心地、合わせやすさ、プライスの三拍子揃い踏みです。サイズ欠けも出てきているので、気になったら即購入をおすすめします!
メンズファッション誌を中心に、ファッションやアイドル、ホビーなどの記事を執筆するライター/編集者。プライベートでは漫画、アニメ、特撮、オカルト、ストリート&駄カルチャー全般を愛する41歳。