新傑作ウォッチで令和を刻む

カシオ「エディフィス」が車や工具を愛する人たちに捧げた入魂の「ソスペンシオーネ」最新作

クルマ好きが高じ、みずからリペアやカスタマイズを手掛けているマニアは少なくないでしょう。さらに、そうした作業で必須となる自動車用整備工具に深い知識とこだわりを持つ人々もいらっしゃるはず。

今回の「新傑作ウォッチで令和を刻む」では、そんなクルマ&工具好きに向けて開発された異色の多機能ウォッチを紹介します。

自動車用整備工具がデザインモチーフの何ともユニークな「カシオ エディフィス ソスペンシオーネ ECB-2000YTP-1AJF」。公式サイト価格は35,200円(税込)

自動車用整備工具がデザインモチーフの何ともユニークな「カシオ エディフィス ソスペンシオーネ ECB-2000YTP-1AJF」。公式サイト価格は35,200円(税込)

カシオ計算機が「スピード&インテリジェンス」をコンセプトとし、2000年から展開している「カシオ エディフィス(CASIO EDIFICE)」は、モータースポーツと親和性のあるダイナミックでアクティブなデザインと、先進テクノロジーによる高機能を結合させた時計で構成されるブランドです。そのラインアップは高精度計時、ラップタイム計測、ワールドタイムといったスポーツドライビングに結び付きの強い機能を搭載するソーラークロノグラフが主軸です。

そんな「エディフィス」は2022年8月12日、同ブランドで初採用となるカーボンファイバー樹脂ケースのアナログ/デジタル表示モデル「エディフィス ソスペンシオーネ(EDIFICE SOSPENSIONE) ECB-2000」を発売しました。「SOSPENSIONE」とはイタリア語でサスペンションのことで、同モデルは「腕に着けるモータースポーツマシン」をモットーに、ラグ(※1)にフォーミュラカーのダブルウィッシュボーン式サスペンション(※2)から着想を得たデザインを取り入れるなど、レーシングカーモチーフのメカニカルな姿を特徴としたモデルです。

今回、ここに取り上げる「エディフィス ソスペンシオーネ ECB-2000YTP-1AJF」(以下、「ソスペンシオーネ ECB-2000YTP」)は、同シリーズの最新作として2023年6月に登場。いちばんの特徴は、デザインにレースメカニックらが愛用する整備工具のエッセンスを取り入れて、プロフェッショナルな工具の精密感、ソリッド感、堅牢性を大胆に表現した点にあります。

以下、詳しく紹介していきましょう。

※1:バンドを取り付けるためのケース張り出し部
※2:上下1対のアームでタイヤを支持する懸架装置。ほとんどのレーシングカー、および多くのスポーツカーに採用されている

メタルスケールやビス、ローレットをデザインモチーフに

「ソスペンシオーネ ECB-2000YTP」は、前述の「エディフィス ソスペンシオーネ ECB-2000」をベースモデルとしており、ソーラー充電システム「タフソーラー」、世界38都市対応ワールドタイム、1/100秒ストップウォッチ、それらの機能を拡張させるモバイルリンク機能、アラーム&タイマー、ダブルLEDライト「スーパーイルミネーター」、10気圧防水といった各機能において、両者はまったく同じです。

文字板を見比べれば、アナログ&デジタルの各インダイヤルも共通の配置だとわかります。

2022年8月12日に発売され、現行で展開されている元祖「エディフィス ソスペンシオーネ ECB-2000」の2型。写真左は、ステンレススチールベゼル&ブレス採用の「ECB-2000YD-1AJF」で、公式サイト価格は33,000円(税込)。写真右は、カーボン柄ステンレススチールベゼルが印象的な樹脂バンド採用タイプ「ECB-2000YPB-1AJF」で、公式サイト価格は36,300円(税込)。いずれも、ケース素材はカーボンファイバー樹脂製です

2022年8月12日に発売され、現行で展開されている元祖「エディフィス ソスペンシオーネ ECB-2000」の2型。写真左は、ステンレススチールベゼル&ブレス採用の「ECB-2000YD-1AJF」で、公式サイト価格は33,000円(税込)。写真右は、カーボン柄ステンレススチールベゼルが印象的な樹脂バンド採用タイプ「ECB-2000YPB-1AJF」で、公式サイト価格は36,300円(税込)。いずれも、ケース素材はカーボンファイバー樹脂製です

つまり、「ソスペンシオーネ ECB-2000YTP」は元祖「エディフィス ソスペンシオーネ ECB-2000」のデザイン違いということです。この点を踏まえたうえで、工具のモチーフがどのようにデザインに取り込まれているのかを見てみましょう。

まず目に付くのは、メタルスケールを彷彿とさせるデザインのベゼルトップです。このツートンカラーのベゼルは、ステンレスチールにブラックIP処理(※3)を施したうえで、研磨処理でトップ面のコーティング層を剥離させる仕上げ分けをなすことで、金属工具の無垢な質感を演出。そこに測定ゲージをイメージした分表示の目盛りを刻むことで、「直尺」(※4)や「曲尺」(※5)を想起させるデザインに仕上げているのです。

また、ベゼルトップの左右4か所には、ベゼルの固定をイメージしたビス(vise)の装飾も。ビスとは、ボルトやナットなどを除いたネジ(screw)の総称であり、「皿」とか「頭(あたま)」とも呼ばれるネジ頭に、ドライバーブレードの先端が挿し込める溝穴を持つ固着具の一種。「ソスペンシオーネ ECB-2000YTP」では、ネジ頭の溝穴が一文字の「すりわり」(一般的には「マイナス」と呼ばれる)のビスのデザインを、ベゼルの飾りとして取り入れています。

ベゼルは、金属工具の無垢な質感と測定ゲージで、メタルスケールを演出。さらにアクセントとして、ビス風の装飾が加わっています。また、ベゼルおよびプッシュボタンの両側面を飾る綾目ローレットも、工具を想起させるディテールです

ベゼルは、金属工具の無垢な質感と測定ゲージで、メタルスケールを演出。さらにアクセントとして、ビス風の装飾が加わっています。また、ベゼルおよびプッシュボタンの両側面を飾る綾目ローレットも、工具を想起させるディテールです

そして、ベゼルサイドに緻密なローレットが刻まれているのも特徴で、これは10時位置と4時位置のプッシュボタンのサイドにも採用されています。

ちなみに、「ローレット」とは、滑り止めのために金属表面に施す細かい凹凸状の加工のこと。その切削パターンはさまざまですが、本モデルでは最もグリップ性が高いとされる綾目(あやめ)を採用しています。溝が90度に交差して刻まれたことで形成される各マス目が、それぞれの中心部に向かって凸形をなし、まるで微細な複数のピラミッドが整然と並んでいるかのような切削パターンの綾目ローレットは、自動車用整備工具の延長棒エクステンションバー(※6)などに見られます。

なお、「ケースがカーボンファイバー樹脂製」「内部をくり抜いたかのような素通しデザインのラグでダブルウィッシュボーン式サスペンションを暗喩」「レーシングカーの計器類を彷彿させるインダイヤルを配置した、インパネのような文字板」といった「エディフィス ソスペンシオーネ ECB-2000」を特徴付けている“お約束的”な素材使いとディテールは、本モデルにおいても健在です。

※3:IP=Ion Plating/イオン化した金属を被加工物に蒸着させる表面処理のこと
※4:ちょくじゃく。金属製の真っすぐな定規のこと。「ちょくしゃく」とも言う
※5:かねじゃく。直角に折れ曲がったL字形の金属製定規。「きょくしゃく」「まがりしゃく」などとも言う
※6:ラチェットやソケットを補助する工具の一種

巧みな文字板レイアウトで多彩な機能を使いやすく

ここまでで、「ソスペンシオーネ ECB-2000YTP」において、自動車用整備工具ならびにモータースポーツのエッセンスがどのようにデザインに取り入れられているのかがご理解いただけたかと思います。

ここからは簡単ではありますが、文字板などを見ながら、主な搭載機能について触れておきましょう。

複雑な構成のアナデジ文字板はブラックが主体のカラーリングで、そこにホワイトの時分針&インデックスを配置。モノトーンながら、このハイコントラストにより、高い視認性が確保されています

複雑な構成のアナデジ文字板はブラックが主体のカラーリングで、そこにホワイトの時分針&インデックスを配置。モノトーンながら、このハイコントラストにより、高い視認性が確保されています

まず、センターは時刻を示す「時」「分」の2針構成で、「秒」は6時位置に配置された平行六辺形のデジタル部にて、数字で示されます(写真上では36秒を表示)。

また、このデジタル部の上段ではアラーム、時報、ストップウォッチモード、サマータイム時などを文字や記号で表示。デジタル部の左側にプリントされている「Bluetooth」「SAPPHIRE」「WR10BAR」の文言は、本モデルが「Bluetooth通信によるモバイルリンク機能搭載」「サファイアガラス風防採用」「10気圧防水」であることを表明しています。なお、フェイスにシャープでモダンな印象をもたらすストライプ模様を背景にした12時位置では、ブランドマーク&ブランドロゴとともに「TOUGH SOLAR」の文字が配され、動力源がカシオ独自のソーラー充電システム「タフソーラー」であることが強調されています。

同じく平行六辺形をなす3時位置のデジタル部では、上段にて曜日と日付を表示(写真上では日曜・30日を示す「Su30」が点灯しています)。12時間表示を設定すると、この左側に午後(P.M.)を示す「P」が現れます(午前では、この部分は非表示で、イニシャル「A」は示されない)。なお、このデジタル部下段では、スマホとの接続によって時刻合わせに成功していると「RCVD」の文字が点灯します。

9時位置には、アナログ表示のインダイヤルがレイアウトされていて、アラーム/タイマーの残り時間をカウントダウン表示することで(写真上では、小針が残り10分を告げる「10」を指している)、時間管理にひと役買っています。加えて、小針が「H」「M」「L」のいずれかを示すことでバッテリー残量を、「Bluetooth」マークを指すことでスマホ接続中であることも確認できるのです。

ちなみに、4つのプッシュボタンについては、2時位置のものが「スーパーイルミネーター」点灯用であり、4時位置のものは各設定画面表示中に操作することで、設定が変更可能。8時位置はモード切り替え用で、10時位置のものは時刻モード表示中に押すことで画面表示の切り替えができます。なお、文字板のXパーツ上に、これら4つのプッシュボタンそれぞれの役割を示す「LIGHT」「START」「MODE」「RESET」の文字が記載されているので、迷うことなくこれらの操作ができるはずです。

ところで「ソスペンシオーネ ECB-2000YTP」には、世界38都市に対応するワールドタイム機能やラップ・スプリット付きの1/100秒ストップウォッチなどが標準装備されているわけですが、モバイルリンク機能を活用してアプリ「CASIO WATCHES」と連携させると、時刻自動修正や簡単時計設定などが機能するほか、ワールドタイムが約300都市対応となり、ストップウォッチのラップタイム計測値が1/1000秒単位でスマートフォンに表示されます。また、前周差や最速タイムもひと目で確認できるようになります。また、日時と位置をアプリの地図上で表す「タイム&プレイス」や携帯電話探索も可能になるなど、さまざまな機能拡張が図れるのもうれしいポイントです。

「ネオブライト」と「スーパーイルミネーター」で夜間の視認も確保

文字板側と同様、ケースバックからもメカニカルな雰囲気が感じられます

文字板側と同様、ケースバックからもメカニカルな雰囲気が感じられます

時計の裏側を見てみましょう。

このケースバックも元祖「エディフィス ソスペンシオーネ ECB-2000」と基本デザインは同じ。ビス留めされた(ベゼルの飾りビスとは違い、こちらは実際に裏ブタをケースに固定する役を果たしている)4か所の張り出し部が印象的な裏ブタは、古きよき時代のレーシングカーなどに搭載されていたレトロな計器類を思わせます。

この裏ブタでは「EDIFICE」のロゴマーク、および「EDIFICE」&「CASIO」のブランドネームを中心に、さまざまな文言が刻印されていますが、その外周をよく見ますと、文字板のXパーツと同様、ここにも4つのプッシュボタンそれぞれの役割を示す「LIGHT」「SEARCH/START」「MODE/CONNECT」「ADJUST/RESET」の文言が記されています。

なお、バンドにはブラックの樹脂製を採用。これもまた、このモデルにふさわしいスポーティーな印象です。

時分針に蓄光性夜光塗料「ネオブライト」を採用

時分針に蓄光性夜光塗料「ネオブライト」を採用

2時位置のプッシュボタンを押すと、フルオートダブルLEDライト「スーパーイルミネーター」が点灯します(画像は「ECB-2000YPB-1AJF」)

2時位置のプッシュボタンを押すと、フルオートダブルLEDライト「スーパーイルミネーター」が点灯します(画像は「ECB-2000YPB-1AJF」)

夜間などにおける暗所での視認性は、「ネオブライト」と「スーパーイルミネーター」の併載による、いわば2段構えの仕様です。前者は短時間で光を吸収し、長時間にわたって光り続ける、カシオ独自の蓄光性夜光塗料。これが時分針に塗布されたことで、暗所でもおよその時間をとらえられます。

いっぽうのフルオートダブルLEDライト「スーパーイルミネーター」も、カシオ独自の技術によるもの。2時位置のプッシュボタンを押すと、文字板用、液晶ディスプレイ用の2種類のLEDライトが1.5秒間、ないし3秒間、高輝度で点灯します。これにより、暗所での視認性が飛躍的に向上。たとえ漆黒の環境下であっても、時間などの各種データを確実に読み取ることができるのです。

ワークなどのアクティブ系カジュアルにジャストマッチ

多彩な機能を搭載しつつ、整備工具の雰囲気や質感を取り入れるなどし、見た目のクオリティーにも徹底してこだわった「ソスペンシオーネ ECB-2000YTP」。腕に装着した際の見栄えが、とても気になりますよね? ということで、試着してみました。

メタルスケールの質感を再現したベゼルの風合いが、手元にワイルド感をもたらします

メタルスケールの質感を再現したベゼルの風合いが、手元にワイルド感をもたらします

ケースサイズは幅47.8mmとあって大きく、こうして装着してみると、そのたたずまいには堂々たるものがあります。また、アナデジ式の複雑顔はシャープでモダンなのですが、そのいっぽう、整備工具をモチーフにした各ディテールによってもたらされる“ツール感”が、時計全体の印象にある種の温もりをもたらしてもいます。

なかでも、研磨による剥離仕上げでメタルスケールの少々粗さのある風合いを巧みに再現したベゼルの存在は誠に効果的で、これはもう、ほかの時計にはない、このモデルならではの味わいと感じました。

ワークはもちろん、アウトドアやミリタリー、ストリートといったアクティブ系のカジュアルにはジャストマッチ! あるいはビッグシルエットなどのリラックススタイルに合わせても、よくマッチすることでしょう。

【まとめ】 工具仲間に加えたくなるツールライクな多機能時計

上述のとおり、この「ソスペンシオーネ ECB-2000YTP」はさまざまなカジュアルと相性のよい、コーディネートの守備範囲が広い時計です。ドレッシーさはないのでスーツの手元には厳しそうですが、ジャケパンなどのビジネスカジュアルなら違和感がないため、多彩な機能を駆使してビジネスシーンでも大いに活用したいところです。

とは言え、とりわけおすすめしたい先はワーク系の人たちです。想像するに、作業服の手元にこれほどよく似合う多機能ウォッチはそうそうないのでは。もちろん、クルマをこよなく愛し、そのリペアやカスタマイズを楽しんでいるカーマニアにもイチオシ! 愛用している整備工具の仲間として、ぜひともこの時計を加えてください。

●写真/篠田麦也(篠田写真事務所)

【SPEC】
「カシオ エディフィス ソスペンシオーネ ECB-2000YTP-1AJF」
●駆動方式:クォーツ
●電源:ソーラー充電システム「タフソーラー」
●防水性能:10気圧
●ケース材質:カーボンファイバー樹脂
●ベゼル材質:ステンレススチール
●ガラス:サファイアガラス(内面反射防止コーティング)
●バンド材質:樹脂
●ケースサイズ:51(縦)×47.8(横)×11.3(厚さ)mm
●質量:73g
●時計機能:ワールドタイム(世界38都市、サマータイム自動設定機能、UTC時刻表示、ホームタイムの都市入れ替え機能)、ストップウォッチ(1/100秒:1時間未満、1秒:1時間以上、24時間計、ラップ・スプリットタイム)、アラーム、タイマー、フルオートカレンダー、12/24時間制表示切り替え機能、ダブルLEDライト「スーパーイルミネーター」、「ネオブライト」など
●モバイルリンク機能:Bluetooth通信による機能連動
●対応アプリ:「CASIO WATCHES」
●アプリ連携機能:自動時刻修正、簡単時計設定、ワールドタイム約300都市、ストップウォッチデータ転送、タイム&プレイス、携帯電話探索など

山田純貴

山田純貴

東京生まれ。幼少期からの雑誌好きが高じ、雑誌編集者としてキャリアをスタート。以後は編集&ライターとしてウェブや月刊誌にて、主に時計、靴、鞄、革小物などのオトコがコダワリを持てるアイテムに関する情報発信に勤しむ。

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