新傑作ウォッチで令和を刻む

最強の実用的パイロットウォッチ!? オン/オフで使える「シチズン プロマスター」の新作をレビュー

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

連載第45回/シチズン時計「シチズン プロマスター メカニカルGMT」

今年(2024年)、誕生35周年を迎えた「シチズン プロマスター」は、「LAND」「MARINE」「SKY」の3シリーズでプロフェッショナルスポーツウォッチを展開するブランドです。今回は「SKY」シリーズから2024年1月25日に発売された、同ブランドの機械式では初のGMT機能を備えたパイロットウォッチ「メカニカルGMT」をご紹介します。

シチズン時計「シチズン プロマスター メカニカルGMT」は2モデルの展開。左のブラック文字板モデル「NB6046-59E」の公式サイト価格は、132,000円(税込)。右のオールグレーモデル「NB6045-51H」の公式サイト価格は、137,500円(税込)

シチズン時計「シチズン プロマスター メカニカルGMT」は2モデルの展開。左のブラック文字板モデル「NB6046-59E」の公式サイト価格は、132,000円(税込)。右のオールグレーモデル「NB6045-51H」の公式サイト価格は、137,500円(税込)

ちなみに今回が第45回となる本連載ですが、実はパイロットウォッチを取り上げるのは初めて。ということで「メカニカルGMT」の紹介に先立ち、簡単ながらパイロットウォッチについて解説しましょう。

時計愛好家やミリタリー好きを虜にするパイロットウォッチとは?

パイロットウォッチは、別称が「アビエーションウォッチ」。「Aviation」(エイビエーションとも呼ばれる)は英語で「航空」「航空機」「航空学」「航空産業」の意味です。その始まりはブラジル人の飛行冒険家、アルベルト・サントス=デュモン氏の依頼を受けたフランス・カルティエが製作し、1907年に同氏に納品したと言われる「レクタンギュラー(角形)」モデルと、これをベースに同ブランドが1911年に市販した「サントス=デュモン」でした。

また、時計史のエポックメイキングとしては、「アワーアングルウォッチ」の存在も忘れてはならないでしょう。こちらは、1927年に人類史上で初めて大西洋単独横断無着陸飛行を成功させた米国人チャールズ・オーガスタス・リンドバーグ氏が自身の飛行経験を基に、経度が計算できる航空用計器を考案し、1932年にスイス時計の名門ロンジンとの共同開発で製作したモデルです。

では、「パイロットウォッチの定義は?」となると、実は明確なものはなく、強いて言えば「パイロットの操縦をサポートするための機能と耐久性を備えたプロ向け時計。または、それに準ずる機能とデザインを持つスポーツカジュアル系の時計」ということになるでしょうか。「航空機に装備された機器が何らかのトラブルで使用できない状態に陥った際、それらの一部を代替できる時計」と理解してもよいかもしれません。

パイロットウォッチであることの具体的な条件としては、「高精度」であるのはもちろん、「(急激な気圧の変化に対応する)高気密性」「耐重力性」「耐衝撃性」「耐磁性」のすべて、あるいはいずれかの機能を備え、文字板や針、インデックスにおいては視認性にすぐれ、夜間航行も想定した夜光塗料や、フライトグローブ装着時の操作に対応する大ぶりのリューズなども備えた時計、といったところ。モデルによってはストップウォッチやワールドタイム機能(※1)も併載するモデルや、航空計算尺を備えたタイプも数多く存在します。

※1:時差が異なる2つの地域の時刻を同時表示する機構のこと

関連記事
「シチズン プロマスター」新作ダイバーズはベーシックだけど実用的!
「シチズン プロマスター」新作ダイバーズはベーシックだけど実用的!
「まずはベーシックなデザインのものを」と考えるコンサバ志向の時計好きは注目すべき新作ダイバーズ「シチズン プロマスター メカニカル ダイバー200m」を紹介!
2022/09/29 17:00

グローバル時代の要請を受けて搭載されたGMT機能

以上を踏まえたうえで、これより本題の自動巻き式パイロットウォッチ「メカニカルGMT」について述べていきます。まず、このモデルのいちばんの注目点は、モデル名が示すとおり、GMT機能を搭載している点にあります。パイロットウォッチにはワールドタイム機能を搭載するモデルがあることは先述しましたが、本モデルもそれは同様で、しかも、その機構がGMT式であるわけです。

ブラック×シルバーのコンビネーションモデル「NB6046-59E」では、GMT針のレッドが鮮烈に映えて印象的です

ブラック×シルバーのコンビネーションモデル「NB6046-59E」では、GMT針のレッドが鮮烈に映えて印象的です

GMT機能とは、専用のGMT針(24時間針とも呼ばれる)が24時間目盛りを指し示すことで、第2時刻を表示する機能のこと。ビジネスのグローバル化が進むにつれて必要不可欠な機能のひとつとして、近年、多くの時計に備えられています。「メカニカルGMT」もこうした需要を受けてなのか、この機能が併載されています。

ワールドタイムとともに、現代の多くの時計が備えている機能として耐磁性能があげられます。これは電磁波の帯電により、極端な進みなどのトラブルを起こす可能性のあるムーブメントを耐磁素材で構成する、あるいは覆うことで得られる性能のこと。近年、PCやスマホなどの普及により、それらが発する電磁波にさらされる機会が増えたことから、その重要性が再認識されていますが、実はさまざまな電子機器が備わるコックピット内では電磁波の影響を多く受けるため、パイロットウォッチの多くには元来、この機能が備わっています。そして、これは本モデルも例外ではなく、信頼の2種耐磁(※2)が採用されているのです。

※2:日本産業規格=JIS により、磁気に1cmまで近づけてもほとんどの場合に性能を維持できるレベルの耐磁性能のこと

繊細さと無骨さが絶妙バランスで融合した秀逸デザイン

ベゼルトップのアールが、この時計の表情を洗練させています。写真はオールグレーモデルの「NB6045-51H」

ベゼルトップのアールが、この時計の表情を洗練させています。写真はオールグレーモデルの「NB6045-51H」

フェイスはインダイヤルなどがない、スッキリとした印象で、そこに光の当たり加減で諧調を繊細に移ろわせるサンレイ仕上げ(※3)の文字板がエレガンスな雰囲気を醸し出しています。そのいっぽうで時分針は極太であり、GMT針も存在感十分。アラビアン&バーインデックスも大ぶり表示など、パイロットウォッチらしく高い視認性が確保され、かつラギッドなたたずまいを主張しています。

次にベゼルを見ると、GMT針が指し示すことで第2時刻を読み取れる24時間表示が記載されたトップ面に、航空機の機体のような丸みが施されていることがわかります。このアールづけされたベゼルはパイロットウォッチでありながらも無骨になりすぎぬよう、いかつい表情を緩和させる役割を果たしています。また、その側面には綾目のローレットが刻まれていますが、実はこれは滑り止めではなく、ベゼル2か所(3時位置と8時位置)のリューズに呼応したデザイン。ちなみに、リューズはグローブ装着時でも操作しやすい大ぶりなサイズ感です。

ケースとブレスレットを連結し、着用時のブレを防ぐ役も担う弓カンにも注目を。航空機の翼断面から着想を得た面取りが施されており、ここにも航空機由来のデザインがさりげなく取り入れられているのです。

※3:陽光仕上げ。太陽光のように中心から放射状に施された筋目仕上げのこと

航空計算尺で乗除演算や単位換算が簡単に!

「メカニカルGMT」には、航空計算尺もしっかりと搭載されております。航空計算尺とは、掛け算(乗法)や割り算(除法)ができ、そこから航法計算(時間、速度、距離、上昇高度、上昇率、燃料消費率、飛行可能時間、重量など)や単位の換算が簡単に行える機構のこと。手動で回転目盛りを固定目盛りに合わせることで、それらの数値が算出できる、いわゆる回転計算尺が伝統的で、本モデルもそれにならっています。ただ、その回転目盛りがベゼルに刻まれているモデルが少なくないなか、本モデルでは、回転&固定目盛りをサンレイ文字板とベゼルの間に設けたことで、スッキリとした顔立ちにデザインされているのです。

見返しリングの目盛り(回転式)と、そのすぐ内側の目盛り(固定式)が航空計算尺です。写真は「NB6045-51H」

見返しリングの目盛り(回転式)と、そのすぐ内側の目盛り(固定式)が航空計算尺です。写真は「NB6045-51H」

回転目盛りは見返しリングに記され、その内側に固定目盛りが設けられています。また、その見返しリングは、8時位置にあるリューズを操作することで回転させることができる仕組みです。ただ、目盛りの都合上、算出された数値は基本的にアバウトであり、したがって「これくらい」という計算に向いているものと承知してください。なお、固定目盛りのさらに内側に記されているのは、「時」「分」「秒」に対応する目盛りです。

では、以下では航空計算尺を用いた演算の簡単な例題を紹介しましょう。なお、以下は、シチズン オフィシャルサイト「時計の操作」の項で紹介されている「一般的な計算」(https://citizen.jp/support-jp/manual/exterior/06.html)から抜粋・再構成した内容となります。

掛け算のしかた 出典:シチズン オフィシャルサイト

掛け算のしかた 出典:シチズン オフィシャルサイト

掛け算や割り算では、固定目盛りの「10」が基準値。ということで、まず、掛け算の方法です。たとえば「20×15」を求めたい場合、上図のように、回転目盛り「20」をその基準値の「10」に合わせます。すると、固定目盛り「15」に対応する回転目盛りの数字は「30」となりますので、これを位取りして、「300」が正解とわかります。

割り算のしかた 出典:シチズン オフィシャルサイト

割り算のしかた 出典:シチズン オフィシャルサイト

割り算では、たとえば「250÷20」を求める場合、上図のとおり、回転目盛りの「25」を固定目盛り「20」に合わせます。すると、固定目盛りにある基準値「10」に対応する回転目盛りが「12.5」となりますので、位取りして正解が「12.5」だと確認できます。

距離換算のしかた 出典:シチズン オフィシャルサイト

距離換算のしかた 出典:シチズン オフィシャルサイト

航空計算尺上には数字以外に、複数のアルファベットが併記されていますが、これらを使うことで「距離の換算」「容量の換算」「重量の換算」もできます。そのうちの「距離」では「KM.(キロメートル)」「STAT.(マイル)」「NAUT.(海里)」の換算が可能で、たとえば、10マイルをキロメートル、および海里に換算する場合(上図)、回転目盛りの「10」を固定目盛りの「STAT.」の▲に合わせます。すると、固定目盛りの「KM.」の▲が回転目盛りの「16」を指すので、それを位取りして1.6kmを求めます。同様に「NAUT.」の▲は86.6を指しているので、0.866海里だということがわかるのです。

これは「距離の換算」ですが、同様に「容量の換算」では「LITERS(リッター)」「IMP.GAL.(英国ガロン)」「U.S.GAL.(米国ガロン)」が、また「重量の換算」では「KG.(キログラム)」と「LBS.(ポンド)」の目盛りを使って換算が可能。さらに「FUEL LBS.(フュエルポンド)」や「OIL LBS.(オイルポンド)」の目盛りを利用することで「容量」と「重量」同士を換算することもできます。

パイロットウォッチに必須不可欠な夜光仕様も怠りなく装備

夜間航行では、ときに漆黒の環境下での飛行を余儀なくされますが、そうした状況ではコックピット内に設置された計器類やスイッチ類の視認が困難に。そこで、パイロットの有視界を妨げずに、それらを読み取れる程度の最小の明るさを得るべく、多くの場合、個々の計器類にナビゲーションライトとして小型照明が仕込まれています。

しかし、航空史の黎明期から成長初期においては、そうした機器類には小型照明ではなく、ラジウムなどの放射性物質を含んだ自発光性塗料が用いられていました。そして、このことは時計でも同様であり、とりわけパイロットウォッチでは、そうした夜光塗料の導入は必要不可欠な仕様だったのです。

時分針のみならず、GMT針も夜光仕様。なので、夜間でも2つの時刻が確認できます

時分針のみならず、GMT針も夜光仕様。なので、夜間でも2つの時刻が確認できます

とはいえ、現在ではほとんどの時計において、そうした危険な物質を含有せず、身体や環境に安全な蓄光性の塗料が多用されています。そして当然のことながら、「メカニカルGMT」にも時分針、GMT針、インデックスに蓄光性塗料が使われており、夜間はそれらがクッキリと鮮やかに発光して、速やかに時刻を確認できます。

ところで、本モデルを裏返すと、ケースバックの中央にフライトヘルメットの刻印が見えます。これは、フライト中の安全性を確保し、かつパイロットに安心感をもたらす重要な装備品であるヘルメットのイラストを刻むことで、「メカニカルGMT」が信頼できるツールであることを表現したもの。航空機ファンにとっては、うれしい装飾でもあります。

フライトヘルメットの刻印は、「SKY」シリーズのモデルにふさわしい装飾です。写真は「NB6045-51H」

フライトヘルメットの刻印は、「SKY」シリーズのモデルにふさわしい装飾です。写真は「NB6045-51H」

ちなみに、フライトヘルメットとはどのようなものかと言えば、それは主に軍用航空機のパイロットが着用する特殊ヘルメットのことを指します。急激な気圧変動による人体へのリスク、および被弾時や緊急脱出時の頭部外傷のリスクを軽減するとともに、酸素マスクとの互換性を有し、さらには機外との交信に不可欠な無線マイクを内蔵した仕様です。

男らしい手元に仕上がるパイロットウォッチらしいサイズ感

では、試着してみましょう。「メカニカルGMT」には、グレーベゼル×シルバーカラーケースのコンビネーションが上品カジュアルなブラック文字板の「NB6046-59E」と、文字板、ベゼル、ケース、ブレスレットと、いずれもがグレーカラーのシックな「NB6045-51H」の2モデルがラインアップされていますが、ここでは前者を腕に装着してみました。

「NB6046-59E」では、GMT針の際立つレッドカラーがスタイルのおしゃれな差し色に

「NB6046-59E」では、GMT針の際立つレッドカラーがスタイルのおしゃれな差し色に

装着すると、この時計が思っていた以上に大ぶりであるとわかりました。スペックを確認すると、ケース幅は44.5mm。これは概してラージサイズのパイロットウォッチとしては特別大きいわけではないのですが、細い腕の人は少々持て余すボリュームかもしれません。

「NB6046-59E」はブラック×ホワイト&グレーのハイコントラストなカラーコンビネーションにより、キリッとメリハリのある表情が若々しく新鮮。しかも、腕に装着すると、その文字板のブラックにGMT針の鮮烈レッドが浮き立って見えます。この針の存在感はコーディネートにおいて効果的な差し色になるでしょう。

いっぽう、オールグレーモデルの「NB6045-51H」はツウ好みの渋めなたたずまいで、GMT針の存在感もグッと控えめ。「NB6046-59E」がどちらかと言うとカジュアル向きであるのに対し、こちらはビジネスシーンにも違和感がなく、スーツに合わせても悪目立ちすることはなさそうです。

【まとめ】 パイロットウォッチ入門モデルとして狙い目です!

視認性や操作性にすぐれ、大ぶりケースの中にGMT機能を併載する高精度ムーブメントを搭載。20気圧防水の気密性や第2種耐磁が備わり、航空計算尺もしっかり導入……と、この「シチズン プロマスター メカニカルGMT」は、確かにパイロットウォッチであることのさまざまな実用条件を備えたモデルであることが理解できました。

したがって当然のことながら、航空機の操縦や運航において十分に活用できますが、スッキリとしたフェイスやアール付けされたベゼル、ヘアライン仕上げ×ミラー仕上げのコンビネーションなどを取り入れたことで、パイロットウォッチらしい無骨さを持ちながらも品のよさが添加されており、ビジネススタイルや今時のカジュアルとも相性がよく、日常の使用にふさわしい姿に結実しています。これが本モデルのいちばんの個性と言えるのではないでしょうか。

すなわち、パイロットウォッチとしての魅力をしっかり実感しながら、オン/オフ問わずに高い頻度でデイリー使いできるわけで、GMT機能併載の自動巻きでありながらも、2モデルともに13万円台であることも考えれば、これはもう、費用対効果の高いパイロットウォッチであることは確か。ゆえに時計ツウにとって魅力的であることは言わずもがなで、自分にとっての最初のパイロットウォッチを検討しているビギナーにも、狙うにふさわしいモデルだと思います。

●写真/篠田麦也(篠田写真事務所)

【SPEC】
シチズン時計「シチズン プロマスター メカニカルGMT」

●品番:「NB6046-59E」(ブラック文字板タイプ)、「NB6045-51H」(グレー文字板タイプ)
●駆動方式:自動巻き式(手巻き付き)
●キャリバー:「9054」
●機械式駆動時間:約50時間
●表示機能:時・分、秒、日付、GMT針による第二時間表示
●防水性能:20気圧
●ケース材質:ステンレススチール
●ガラス材質:サファイアガラス(無反射コーティング)
●ケース径:44.5mm
●ケース厚:12.7mm
●そのほかの機能:航空計算尺、2種耐磁、夜光(針、インデックス)など
●バンド材質:ステンレススチール

山田純貴
Writer
山田純貴
1980年代より、編集プロダクションの社員として某通販大手のカタログ編集にたずさわり、後に会員制月刊誌の編集主任を務める。1992年に同業者と共同で編集プロダクションを立ち上げ、主に時計、靴、鞄、革小物などモノ情報関連のさまざまな雑誌、ムック、単行本、機関紙などの企画・編集・取材・執筆を手がけた。1998年に独立し、フリーランスとなって現在に至る。
記事一覧へ
金原望弥(編集部)
Editor
金原望弥(編集部)
大学卒業後、出版社にて月刊誌の編集に従事。その後、カカクコムに入社し、ファッションメディア「TASCLAP」を経て、「価格.comマガジン」へ。腕時計やアウトドアを担当するZ世代エディターです。
記事一覧へ
記事で紹介した製品・サービスなどの詳細をチェック
本ページはAmazonアソシエイトプログラムによる収益を得ています
関連記事
SPECIAL
腕時計・アクセサリーのその他のカテゴリー
ページトップへ戻る
×