新傑作ウォッチで令和を刻む

ビンテージ時計の入門に「オリエントバンビーノ」の新作が最適解であるワケ

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実用的でおしゃれなベーシックモデルで構成される「オリエント」は、上位ブランド「オリエントスター」とともに世界70か国以上で愛され続けている、日本のウォッチブランドです。

第47回となる連載「新傑作ウォッチで令和を刻む」では、国内外に多くのファンを擁する、その人気ブランドから、去る2024年6月27日にリリースされた「オリエントバンビーノ 38」初の小秒針付きモデルを取り上げます。

「オリエント クラシックコレクション オリエントバンビーノ 38(小秒針付き)」は公式オンラインストア限定2モデルを含む、全5モデルで展開中。写真はレギュラー展開の3モデル。左から、ブラック文字板「RN-AP0101B」、アイボリー文字板「RN-AP0105Y」、シルバー文字板「RN-AP0104S」。公式サイト価格は各45,100円(税込)

「オリエント クラシックコレクション オリエントバンビーノ 38(小秒針付き)」は公式オンラインストア限定2モデルを含む、全5モデルで展開中。写真はレギュラー展開の3モデル。左から、ブラック文字板「RN-AP0101B」、アイボリー文字板「RN-AP0105Y」、シルバー文字板「RN-AP0104S」。公式サイト価格は各45,100円(税込)

世界70か国以上で愛され続ける「オリエント」

「オリエント」は1950年7月13日、東京・日野市で設立された多摩計器が同年に発売した最初の製品である手巻きモデル「ニューオリエント」に端を発する歴史あるブランドです。ちなみに翌年4月のオリエント時計への社名変更とともに、「ニューオリエント」と同じムーブメントを搭載するモデル「オリエントスター」を発表。これが兄弟ブランド「オリエントスター」の誕生となりました。

その後、オリエント時計は国内ではもとより、それ以上に米国やカナダ、ブラジルなど海外での展開に注力。この姿勢は、それまでにも協力関係にあったセイコーエプソンの子会社となった2009年を経て、同社に統合された2017年以降も変わることがありませんでした。「オリエント」は「世界70か国以上で愛され続けている」と上述しましたが、これは70年以上にもわたって海外市場の開拓にたゆまず努めてきたがゆえの賜物と言えるでしょう。

「オリエントバンビーノ」には“クラシック”のエッセンスが凝縮されている!

「オリエントバンビーノ」は、同ブランドの伝統的な技術やデザインが生かされたモデル群からなる「クラシック」コレクションにカテゴライズされています。このシリーズは、主に以下の点で全モデルが通底しています。

・機械式
・クラシカルなデザイン
・ボンベ文字板
・ボックス型風防
・細身のラグが配された繊細なケース形状

なお、ボンベ文字板とボックス型風防についての解説は後述します。

「オリエントバンビーノ」シリーズのシンプル&オーセンティック路線にのっとりつつ、さらにクラシックを深化させた「オリエントバンビーノ 38(小秒針付き)」。写真はブラック文字板タイプの「RN-AP0101B」

「オリエントバンビーノ」シリーズのシンプル&オーセンティック路線にのっとりつつ、さらにクラシックを深化させた「オリエントバンビーノ 38(小秒針付き)」。写真はブラック文字板タイプの「RN-AP0101B」

「オリエント」の多くのモデルがそうであるように、「オリエントバンビーノ」シリーズは国内に先んじて海外でデビューしており、それは2012年に登場した「ER2400」系の5モデルでした。今回、販売元のエプソン販売に確認したところ、この発売からほどなく、海外の販売店や「オリエント」のファンらにより、これら5モデルに「バンビーノ」の名が付されたらしいのです。そう、現在でこそ、「バンビーノ」は公式のシリーズ名&モデル名となっていますが、実は、当初はニックネームだったのです!

「バンビーノ」はイタリア語で「男の子」「少年」を意味する名詞ですが、エプソン販売にうかがったところ、おそらくは「着用しやすいサイズ感」や「過度な装飾のないシンプルで愛着の持てるルックス」から、このニックネームが付けられたと推察しているのだとか。ということで、「オリエントバンビーノ」は海外でラブリーな“少年”のように愛されてきたわけですが、それが日本にお目見えしたのは2017年9月。幅40.5mmのケースにオリジナルの自動巻きキャリバー「F6T22」を収めたセミスケルトン&シースルーバックの三針式「NR-AG000」系5モデルでの日本デビューでした。

古い計器のようなルックスが「バンビーノ 38 小秒針」の魅力

そんな「オリエントバンビーノ」のうちの、ケース幅38.4mmモデルの総称が「オリエントバンビーノ 38」です。ケース幅40.5mmと同42mmで展開(レディースモデルを除く)されていた「オリエントバンビーノ」でしたが、時計のトレンドが小型志向であることを受け、2022年5月、自動巻きキャリバー「F6724」搭載三針式の「RA-AC030」系4モデルで海外市場デビュー。国内では同年10月、同じムーブメントを搭載する「RN-AC0M0」系の公式オンラインストア限定3モデルが、その最初となりました。

小秒針にマット塗装文字板、ローマンインデックス、2レーンの分目盛りが相まって、フェイスは昔の計器類のよう。ことにアイボリー文字板の「RN-AP0105Y」(写真)は、経年で変色したビンテージウォッチを思わせます

小秒針にマット塗装文字板、ローマンインデックス、2レーンの分目盛りが相まって、フェイスは昔の計器類のよう。ことにアイボリー文字板の「RN-AP0105Y」(写真)は、経年で変色したビンテージウォッチを思わせます

そしてこのたび、「オリエントバンビーノ」各モデルに共通の特徴(前述)はそのままに、「オリエントバンビーノ 38」で初となる小秒針付きインダイヤルを備えて登場したのが、本稿の“お題”である「RN-AP010」系モデル(以下、本稿では「バンビーノ 38 小秒針」と記載)であるわけです。

しかも、「バンビーノ 38 小秒針」の5モデルは、いずれもが既存の「オリエントバンビーノ 38」以上にクラシックな仕上がり。機械式腕時計の発展期だった20世紀前半の製品に多く見られる小ぶりのケースサイズ&小秒針が、この味わいあるたたずまいに大きく寄与しているのは言わずもがなで、さらには放射状の筋目が施された文字板のマット塗装、その外周に配置された2レーン(分刻みと20秒刻み)の分目盛り、書体がローマ数字の浮き文字インデックス、オニオン型リューズなどが、この時計をさらに古美調に見せているのです。

「オリエントバンビーノ」のボンベ文字板×ボックス型風防の秀逸コンビにも注目を!

では、ここで「オリエントバンビーノ」各モデルに共通する特徴であり、「バンビーノ 38 小秒針」にも採用されているボンベ文字板とボックス型風防を解説したいと思います。ともに、古い時代の腕時計に多く見られるデザインです。

まず、ボンベ文字板の「ボンベ」とは何かと言えば、これはフランス語で「膨らんでいる」を意味する「bombé(ボンベイ)」に由来しています。ここから察せられるとおり、ボンベ文字板は平面ではなく、周辺部が落ち込んだ曲面形状なのです。また、その周辺部に沿うようにして針先が曲げられている場合が多く、「バンビーノ 38 小秒針」でも分針の先端が、そのように成型されています。

小ぶりのケースサイズにボンベ文字板&ボックス型風防の組み合わせが絶妙バランスの「バンビーノ 38 小秒針」。加えて「RN-AP0104S」(写真)では、シルバー文字板にブルー針が映えてエレガントです

小ぶりのケースサイズにボンベ文字板&ボックス型風防の組み合わせが絶妙バランスの「バンビーノ 38 小秒針」。加えて「RN-AP0104S」(写真)では、シルバー文字板にブルー針が映えてエレガントです

ちなみに、本モデルの時分針は、多くの「オリエントバンビーノ」に採用されてきたドーフィン針です。この由来はフランス語で王太子妃を意味する「dauphine(ドフィーヌ)」の名を冠した、フランス・パリの中心部シテ島にある広場と推察されます。1607年に設けられ、やがて周辺に多くの金銀細工師や宝石商が集まったという、このドフィーヌ広場は西に向かって鋭く尖った二等辺三角形をなしており、この形状に似ていることからドーフィン針と呼ばれることになったようです。

いっぽう、ボックス型風防とは、縁が立ち上がった形状のガラス風防のこと。サファイアクリスタルが普及しておらず、無機ガラス(ミネラルガラス)を球面に成型するのが難しかった1960年代までは、ドーム型やボックス型はプラスチック製が普通だったのですが、技術面の問題が克服された現在、この「バンビーノ 38 小秒針」でも無機ガラス製のボックス型が採用されています。

ドーム状のケースバックはクセになる着け心地!

ケースバックからキャリバー「F6222」の動作が見えます。バンドの表素材はクロコ風型押しの本革製

ケースバックからキャリバー「F6222」の動作が見えます。バンドの表素材はクロコ風型押しの本革製

小型化にともなう意匠バランスの見直しにより、ケース厚は12mmに抑えられており、また、ボンベ文字板やボックス型風防に呼応するかのように、ケースバックもほどよいドーム形状に。ロレックスの初期自動巻きに見られる通称「バブルバック」を思わせる、このケースバックは手首への当たりがやさしく、その心地よい装着感はクセになるほどです。

加えて、時計好きにうれしいスケルトン仕様。独自開発の自社製自動巻きキャリバー「F6222」の脱進調速機(時計の心臓部!)の小刻みの動作や、ローターのクルクルと軽快に回る様子が見る者の目を楽しませます。ちなみに、この「F6222」は今回が初採用ではなく、すでに2017年9月にリリースされた小秒針付き「RN-AP000」系5モデルにてお目見えを果たしています。

「バンビーノ 38 小秒針」は、手元からキリッとスタイルを引き締める男前ウォッチ!

では、ここで試着といきましょう。今回はクラシカルでドレッシーなモデルということから、スーツスタイルの手元に合わせてみました。選んだのはレギュラー展開3モデルのうち、最も若々しく爽やかなフェイスのシルバー文字板モデル「RN-AP0104S」で、これに時分針&小秒針とマッチングカラーとなるネイビージャケット&ブルーシャツを合わせたコーディネートです。

ビンテージ風から“年寄りくささ”を一掃したデザインがとても好ましいです。写真は「RN-AP0104S」

ビンテージ風から“年寄りくささ”を一掃したデザインがとても好ましいです。写真は「RN-AP0104S」

上の写真をご覧ください。とても上品で端正な手元の出来上がりです。こうして見ますと、クラシックでありながらも洗練さも兼ね備えた、なかなかに秀逸なデザインであることが改めて認識できました。ことにシンプルフェイスではあるものの、ボンベ文字板やボックス型風防が光の角度ごとに立体感を移ろわせていく様には味があって、見飽きません。

ケースバックに丸みが施されているからでしょうか、肌に張り付くというよりも、自然と手首に添う感触で、なかなかに快適。また、コンパクトなケース幅38.4mmは腕の太さに寄らず、どんな人の手元にもバランスよく合いそうです。

こうしたビジネスの装いと相性がいいのは言わずもがなで、カジュアルにおいてもきれいめと違和感なくマッチするはずです。いっぽう、スポーツやアウトドア、ミリタリーなどのアクティブスタイルとはあまり合いそうになく、休日使いではスタイル&シーンをある程度選ぶかなとの印象を持ちました。

このシブさがカッコイイ! オンラインストア限定にも注目を

「バンビーノ 38 小秒針」には、上記で紹介したレギュラー展開3モデルに加え、オリエント公式オンラインストア限定で買える2モデルも存在。ということで、以下でそれらについても少し触れておきましょう。なお、サイズやスペック、基本デザイン、価格などはレギュラーモデルと同じです。

写真左がグリーン文字板の「RN-AP0102E」、右がライトブルー文字板の「RN-AP0103L」。公式サイト価格は各45,100円(税込)

写真左がグリーン文字板の「RN-AP0102E」、右がライトブルー文字板の「RN-AP0103L」。公式サイト価格は各45,100円(税込)

レギュラー3モデルはそれぞれブラック、シルバー、アイボリーとごく一般的な文字板カラーが採用されていますが、公式オンラインストア限定モデルはグリーン、ライトブルーという個性的なカラーリングです。実を言えば20世紀前半の時計ではグリーン文字板は珍しく、ブルー文字板も多くはありませんでした。しかし、昨今は両カラーともに人気が高いため、限定ながら「バンビーノ 38 小秒針」のラインアップに加えられたものと思われます。

とはいえ、そこは“新しい古さ”を追求する「オリエントバンビーノ」ですので、両カラーともに発色は超シブめで、これにマット塗装も相まって、まるで経年で退色したかのような仕上がりです。レギュラー3色も魅力的ですが、さらにカラーにこだわりを持ちたければ、これらの限定モデルも狙い目でしょう。

「バンビーノ 38 小秒針」はビンテージスタイルの魅力を知る最初の一本に

ビンテージライクな時計は、どちらかと言うと一部の通が好むものとの印象があるのですが、時計のトレンドが小型化に向かうとともに、クラシックデザインが見直されるようになったのも事実です。ただ、スポーツ系などに親しんできた人にとって、それらと対照的な古美調の時計は、興味はあっても手を出しにくいかもしれません。しかしながら、「バンビーノ 38 小秒針」は、価格は手ごろで、しかし20世紀前半の製品に顕著に見られる多彩なエッセンスがしっかり堪能できるので、ビンテージスタイルの入門編としておすすめです。

【SPEC】
「オリエント クラシックコレクション オリエントバンビーノ 38(小秒針付き)」

●品番:「RN-AP0101B」(ブラック文字板タイプ)、「RN-AP0105Y」(アイボリー文字板タイプ)、「RN-AP0104S」(シルバー文字板タイプ)「RN-AP0102E」(公式オンラインストア限定グリーン文字板タイプ)、「RN-AP0103L」(公式オンラインストア限定ライトブルー文字板タイプ)
●駆動方式:自動巻き(手巻き付き、秒針停止装置付き)
●ムーブメント:キャリバー「F6222」(自社製)
●パワーリザーブ:40時間以上
●防水性能:日常生活用強化防水(3気圧)
●耐磁性能:1種
●日付表示機能:3時位置に表示窓あり
●夜光塗布:なし
●ケース・ベゼル材質:ステンレススチール
●ガラス:無機ガラス
●ケース幅:38.4mm
●ケース厚:12.0mm
●バンド表材質:成牛革(ワニ革調型押し加工)
●バンド幅:20mm

●写真/篠田麦也(篠田写真事務所)

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山田純貴
Writer
山田純貴
1980年代より、編集プロダクションの社員として某通販大手のカタログ編集にたずさわり、後に会員制月刊誌の編集主任を務める。1992年に同業者と共同で編集プロダクションを立ち上げ、主に時計、靴、鞄、革小物などモノ情報関連のさまざまな雑誌、ムック、単行本、機関紙などの企画・編集・取材・執筆を手がけた。1998年に独立し、フリーランスとなって現在に至る。
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金原望弥(編集部)
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金原望弥(編集部)
大学卒業後、出版社にて月刊誌の編集に従事。その後、カカクコムに入社し、ファッションメディア「TASCLAP」を経て、「価格.comマガジン」へ。腕時計やアウトドアを担当するZ世代エディターです。
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