デジタルとアナログの両表示を備えたコンビネーションウォッチは「デジアナ」、あるいは「アナデジ」などと呼ばれていますが、このタイプの国産初は? と言えば、それはシチズンが1978年11月に発売した「シチズン クオーツ デジアナ」なる時計でした。これは大変な話題となってヒット。以後、さまざまな追随製品が登場し、デジアナは私たちに身近な存在となっていくのですが、ここからわかるように、「シチズン クオーツ デジアナ」は‟元祖デジアナ”とも称すべき時計史のエポックメイキングであり、シチズンはデジアナウォッチの生みの親と解せます。
シチズン「プロマスター LAND エコ・ドライブ コンビネーションウオッチ」のオリーブカラー・モデル「JV1005-02W」。バンドは耐摩耗性などにすぐれる「コーデュラ」製です。公式サイト価格は126,500円(税込)
今回、取り上げるのは、そんなデジアナの先駆たるシチズンが、2024年10月10日にシチズン「プロマスター LAND」からリリースする「エコ・ドライブ コンビネーションウオッチ」です。これは、デジアナ御本家の同社が視認性に徹底的にこだわり、昼夜問わずの見やすさを追求した、今最も注目すべきデジアナウォッチなのです。
過酷な自然環境にも耐える機能性・耐久性・信頼性を持つシチズンのプロフェッショナルスポーツウォッチブランド「プロマスター」は、誕生35周年を迎えました。そんな節目となる2024年に新たに開発された「Cal.U822」を搭載するのが、今回の「エコ・ドライブ コンビネーションウオッチ」。「プロマスター」のラインアップは「MARINE」「SKY」「LAND」の3シリーズですが、このモデルはそのうち、地上環境で活躍する冒険家のためのフィールドウォッチ・コレクション「LAND」にカテゴライズされる最新作です。
なお、「エコ・ドライブ コンビネーションウオッチ」にはレギュラー展開3モデルと、ブランド誕生35周年記念限定1モデルの計4モデルが存在しますが、ここではレギュラーモデルのうち、文字板とファブリックバンドにオリーブカラーが取り入れられた、ちょっとミリタリーなモデル「JV1005-02W」をメインに取り上げます(ほかの3モデルも、本稿後半で紹介)。
多機能を備えた複雑顔ですが、太い針&インデックスの採用などで視認性は上々
外観でまず気になったのが、ステンレスの随所に施された綾目模様のローレット加工(金属表面に細かい溝を刻む加工技術の一種)です。これにヘアライン仕上げが調和して、タフなギア感が醸されています。とはいえ、ベゼルやケースに適度な丸みがつけられているためか、過剰な無骨さは回避され、モダンで洗練された姿です。
時分針、およびインデックスのフォントは明瞭、かつ極太で、これにマット仕上げの文字板が相まって、クイック&スムーズに時間が読み取れます。また、その文字板を囲む見返し部分はインナーリングになっていて、8時位置のリューズを操作して、これを回転させることで方位計測が行えます。
「エコ・ドライブ コンビネーションウオッチ」の名のとおり、本モデルは、シチズン独自の技術「エコ・ドライブ」により、わずかな光も電気に換え、余剰分は二次電池に蓄えることで、それを動力源に動き続けるデジアナウォッチです。そして、これによる充電残量は8時位置にあるインダイヤルで確認できるほか、ボタン操作で「現在」「直近24時間の1時間ごと」「直近7日間の1日ごと」の各発電量の履歴をデジタル表示部に表示する「ライトレベル インディケーター」を併載。これも注目すべき、本モデルの特徴的機能でしょう。
登載されている各機能の多くは2時、3時、4時の各プッシュボタンで直感的に操作が可能です
また、本作にはアウトドアやビジネスシーンなどで頼りになる多彩な機能が搭載されています。たとえば4時位置のモード切り替え用インダイヤルを見ると、「SET(モード設定)」「CAL(カレンダー)」「WTM(ワールドタイマー)」「CHR(クロノグラフ)」「TMR(タイマー)」「ALM(アラーム)」の記載が確認できます。「CHR(クロノグラフ)」の作動時は、4時位置のインダイヤルが「分」を、8時位置の充電量表示用インダイヤルが「時」を、センター秒針が「秒」の各経過時間を示す役を担います。
本作で最も注目したい点は、「シチズン プロマスター」で初導入された「MIP液晶」(MIPはMemory In Pixelの略)のデジタル表示部であると言えるでしょう。というのも、この解像度の高い液晶にアップデートが図られたことで、デジタル表示部がより高精細になって、屋外にいても時刻や日付の読み取りがさらに快適になったからです。
一般的な液晶ディスプレイ(LCD)では、画像を表示するために絶えず電流を流し続けなければならず、したがって、その分の電気を消費することになります。この点では、「プロマスター」が採用してきた「セグメント液晶」(電卓や体温計、キッチンタイマーなどでもおなじみですね)も例外ではありません。とはいえ、基本的に7つ、ないし8つの画が個々に点灯したり、消えたりすることで数字やアルファベットなどを示すというシンプルな液晶とあって、表現力は低いものの、電力消費は低く抑えられます。
「MIP液晶」にQRコードを表示し、それをスマホで読み取ることで「Cal.U822」の使用説明書が閲覧できます。写真は「JV1005-02W」と同型の「JV1007-07E」
では、「MIP液晶」とは何かと言うと、それは「画面を構成する画素(Pixel)の中にメモリ効果を持たせた液晶の一種」ということになるかと思います。この液晶には反射型液晶ディスプレイの性質が備わっていて、表示が変わる瞬間は電力を要するものの、待受画像では太陽光や環境光などを光源にして表示し続けるため、消費電力を大幅に抑えられます。しかも、直射日光の当たる場所でもクリアな可視性を発揮し、それどころか光が強ければ強いほど画面が鮮明になるという、すぐれた屋外視認性も特徴です。
さらには、簡素な表現に留まる「セグメント液晶」に比し、「MIP液晶」はそれをはるかに凌ぐ表現力を持つため、より複雑で精細な表示も可能に。ということで、本モデルでは、この特性を生かしてQRコードを表示(写真上参照)させて、そこから使用説明書に誘導するという工夫が凝らされています。そのため、たとえば外出先であっても、このコードをスマホに読み込ませることで確認したい機能の使い方が確認できるという寸法です。
本モデルは、夜間の視認性にも抜かりありません。デジタル表示部にLED照明を導入しつつ、アナログ表示部に短時間で光を吸収し、明るさが長時間持続する夜光を採用。しかも時分針やインデックスにはブルーの塗料が施され、「CITIZEN」「Eco-Drive」の各ロゴやブランドマーク、「WR 200」(200m防水)の記載、各インダイヤル、分目盛り、インナーリングなどにはグリーンの塗料が施されています。これら計2色の塗料が鮮やかに発光することで、暗闇でもフェイスに美しさと華やぎを付与。加えて、針やインデックスでは夜光面を広く確保するなどし、暗所でも高い視認性を提供します。
ブルー×グリーンの2色の夜光により、複雑顔ながらも、暗所での高視認性がしっかり確保
「JV1005-02W」には、ミリタリーカラーとも言えるオリーブの文字板とマッチングカラーのファブリックバンドが標準装備されています。しかも、その生地はアメリカ・インビスタ社の「コーデュラ」製。摩耗・擦り切れ・引き裂きにすぐれ、軍用品や本格アウトドア製品などにも多用されるポリエステル系強撚糸で作られたこのバンドは、使い勝手がよく、かつ末永く使用可能です。
オリーブカラー×太番手糸の「コーデュラ」製バンドが、本モデルのミリタリー感をいっそう高めています
先述したとおり、シチズン「プロマスター エコ・ドライブ コンビネーションウオッチ」には「JV1005-02W」に加え、レギュラーで展開されている2モデルと数量限定モデルがあり(すべて2024年10月10日発売)、それぞれに異なる個性で「プロマスター」のファンを魅了します。ということで、簡単ではありますがそれら3モデルについても触れておきましょう。
バイオマスウレタン「ベネビオール」製バンドを標準装備するバイカラーモデル「JV1007-07E」。公式サイト価格は126,500円(税込)
レギュラーモデル「JV1007-07E」は、グレーカラー×ステンレスカラーの、いわゆるパンダカラータイプ。文字板やベゼルとマッチングカラーのバンドは「ベネビオール」製で、これは三菱ケミカルが開発した植物由来のウレタンを原料とするもの。この素材を取り入れたことで、耐久性と環境配慮の両立が図られたバンドに仕上がっています。
「JV1006-51L」では、ブレスレットを採用。ブルー×ブラック×グレー×ステンレスカラーの4カラー使いが、何ともバランス絶妙な男前モデルです。公式サイト価格は137,500円(税込)
「JV1006-51L」もレギュラー展開モデルです。ディープブルーの文字板がグレーベゼルとブラックインナーリングでくっきりと縁どられたフェイスは若々しく清潔感ある印象で、そこにステンレスブレスレットが組み合わされて、ビジネススタイルに取り入れやすくなっています。
文字板&ベゼルのカモフラ柄が印象的な、35周年記念限定モデル「JV1008-63E」は、ケースバックに35周年限定ロゴの刻印あり。ポリエステル製の替えバンド(これもカモフラ!)も付属しています。公式サイト価格は154,000円(税込)
ブランド誕生35周年記念限定モデルの第3弾である「JV1008-63E」(世界限定5,900本)は、ジャングルをデザインテーマに掲げ、ブラックやモノトーンを基調に、文字板とベゼルにカモフラージュ柄(迷彩柄)を取り入れて、荒々しい自然界で生きるタフネスを表現した精悍なモデル。ことにカモフラ好きやミリタリーファッション党におすすめです。
では、ここで試着です。「エコ・ドライブ コンビネーションウオッチ」はビジカジを含む、さまざまなカジュアルコーデに合うモデルだと思うのですが、「JV1005-02W」について言えばミリタリーを意識したカラーリングであると解し、あえてラフなジャケットスタイルの袖元と合わせてみました。
秋冬のアウトドアアクティビティのスタイルにはもちろん、さまざまな街着とも相性よくマッチしそうです
ケース幅43.9mmはやや大ぶりながらもサイズ感のあんばいは上々で、細めの手首にもバランスよくマッチ。「コーデュラ」製バンドのフィット感も快適です。また、「LAND」モデルらしく、たたずまいにはタフでラギッドな味わいがあって、しかしチープさはなく、大人の腕元にふさわしいツール感あふれる時計に仕上がっています。
フェイスは複雑ながらも、デザインが実によく考えられたものなのでしょう、レイアウトにメリハリがあって視認性は抜群です。しかも、MIP液晶は陽光の差し込む窓辺にいても読み取りが容易ですし、夜間や暗い室内にあってはその複雑顔を美しく光らせて、使う者の心を奪うのです。
時計購入時の選択基準はさまざまあるでしょうが、読み取りやすさについてはさほど重視されていないのが実情です。とはいえ、たとえ意識せずとも、私たちは視認性良好な製品を選んでいるはずで、「JV1005-02W」のような複雑フェイスの多機能モデルであれば、なおさらのことでしょう。
厳しい自然環境下にあってはもちろん、日常生活においても昼夜を問わず、時刻や日付、そのほか各種データを瞬時に知りたいシーンは多々あるもの。そんなときに“チラ見”であっても誤読せず、確実に読み取ることができるよう配慮された「JV1005-02W」は、実は時計本来の目的にかなった、いわば王道的な製品であるかもしれません。すなわち、私たちに「見やすさ」の重要性を再認識させてくれる時計。それが「JV1005-02W」だという感想を抱きました。
写真/篠田麦也(篠田写真事務所)
【SPEC】
シチズン「プロマスター LAND エコ・ドライブ コンビネーションウオッチ」
●商品番号:JV1005-02W
●駆動方式:光発電エコ・ドライブ
●キャリバー:U822
●動力持続時間:光発電約3年(パワーセーブ作動時)
●防水性能:20気圧
●耐磁性能:1種耐磁時計
●ケース材質:ステンレス
●ケース表面処理:メッキ(グレー色)
●風防素材:サファイアガラス(無反射コーティング)
●文字板素材:一部再生素材
●ケースサイズ:径43.9mm×厚さ14.0mm
●バンド素材:ポリエステル(コーデュラナイロン)
●バンド幅:22.0mm
●機能:充電量表示、充電警告、過充電防止、パワーセーブ、ライトレベル インジケーター、デイ&デイト表示、パーペチュアルカレンダー、24時間表示、12/24時間表示切り替え、ワールドタイム(43時差)、協定世界時(UTC)表示、ローカルタイム、時差設定、サマータイム、アラーム、タイマー(最大99分59秒)、1/100秒クロノグラフ(40時間計)、衝撃検知、簡易方位計付き回転リング、LED照明、夜光(針+インデックス)