シチズンの基幹テクノロジーであるチタニウム(チタン)技術は、1970年に同社が発売した世界初のチタン製腕時計「X-8 クロノメーター」を端緒としています。つまり、2025年はチタン技術55周年ということになるわけです。そんな折の2025年3月6日、シチズン「アテッサ」から、スーパーチタニウムのケースにブランド初採用となるセラミックス素材のべゼルを組み合わせたモデル「ACT Line エコ・ドライブGPS衛星電波時計 CC4104-53E」が発売され、もっか注目されています。
オクタゴンベゼルを取り入れつつ、各所に施したワイルドな質感で「アテッサ」らしい力強い機能美を表した「ACT Line エコ・ドライブGPS衛星電波時計 CC4104-53E」
セラミックス×スーパーチタニウムという意外性あるコンビネーションに加え、ベゼルがオクタゴン(八角形)である点も、このモデルのユニークなポイント。「アテッサ」はラウンドケースのイメージが強いですが、本作ではケースはラウンド型ながら、存在感たっぷりの太いブラックベゼルが八角形であるため、オクタゴンウォッチとの印象を与えるのです。ということで、今回は素材においても、デザインにおいても個性的な、この話題作について検証していきます。
「アテッサ」は、ビジネスマンをサポートする最先端技術を搭載するチタンウォッチのブランド。なかでも「ACT Line」は「スーツスタイルとカジュアルの両方で使える、力強く軽快なデザイン」のモデルのコレクションです。
「エコ・ドライブGPS電波時計」の最上位ムーブメントである「F950」を搭載している点は、「アテッサ」のフラッグシップモデルとされるサファイアベゼル×ブラックチタンの「CC4055-65E」と同様。「CC4055-65E」がラウンドモデルであるのに対し、本作はオクタゴンシェイプを強調するデザインを取り入れていることが特徴です。
ベゼルの8つのコーナーを頂点に、そこに稜線を合わせて面取りが施されたケース形状は誠に秀逸。さらに、そこからバンドへと流れていくリズム感も優美な、実に完成度の高いデザインです
そのケース、およびバンドの素材はスーパーチタニウム。これはシチズン独自の技術による表面硬化技術の「デュラテクト」が施されたチタンで、軽く、肌にやさしいうえ、ステンレスの5倍以上の硬さによって時計を擦り傷や小傷から守ってくれるハイテク素材です。ちなみに、本作では「デュラテクト」のうち、白銀に似た色味に仕上がる「デュラテクトチタンカーバイド」なる技術が採用されています。
また、今回、ブランドで初めての導入となったセラミックスも非常に硬い素材で、その耐傷性がスーパーチタニウムと同等、ないしはそれ以上というのですから驚きます。したがって、本作においてはベゼルもケースもバンドも傷を気にすることなく、いつまでも美しい姿のまま使い続けられるわけです。
ところで、本作は「ソリッド感」をテーマに開発されたモデルなのだとか。「solid」は英語で「固体の」「密で硬い」などを意味します。本モデルではセラミックスやスーパーチタニウムの超硬性から導かれる「solid」のイメージを基に、各所に硬質感、重厚感、精悍さ、力強さといった個性を表現するためのさまざまな工夫が凝らされています。
たとえば、このモデルの最大の特徴であるオクタゴンベゼルではトップ面にあえて粗いヘアライン仕上げを施すことで、その存在感と無骨さがさらに強調されています。こうした粗いヘアラインはチタンでは表現しにくいとのことで、これを表現するために、ベゼル素材にセラミックスを選んだことが窺えます。
また、文字板には採掘されたチタンの原石をイメージするザラッとした質感を再現。それを取り囲む見返しリングにも粗いメタリックの質感が付与されています。さらに、そのリングの切り欠きに食い込むかのように配置されたインデックスや、それらを指し示す時分針、各インダイヤルのメタルリングも太いものを採用することで、力強い表情を作り出し、オクタゴンベゼルとの調和を図っています。
粗目地のヘアライン仕上げを施したオクタゴンベゼル、チタン原石の風合いを再現した文字板、粗いメタリックの質感を持たせた見返しなどが絶妙バランスで相まって、精悍で力強い表情を醸しています
操作部まわりのデザインにも怠りはありません。同じキャリバーを搭載する「CC4055-65E」のプッシュボタンが伝統的な円筒型なのに対し、本作ではベゼルのオクタゴンシェイプに呼応した独特の形状に変更されています。これにともない、リューズガードにも同様の面取りが施されています。そして、これらの存在もまた、本モデルの精悍さをさらに高めていることは言うまでもないでしょう。
リューズガードやプッシュボタンの直線主体の面取りも、この時計のソリッド感を高めるのにひと役買っています
前述したとおり、本作には「アテッサ」の傑作ムーブメント「F950」が採用されています。シチズン独自の光発電技術であるエコ・ドライブによって動作するこの高性能モジュールは、ワールドタイムやダブルダイレクトフライトなど多彩な機能を搭載し、オン/オフ問わず、さまざまなライフシーンでユーザーをサポートしてくれるのです。
また、衝撃や磁気によって発生する針のずれを防ぐ、シチズン独自の先端技術パーフェックスが採用されているのもうれしいポイントと言えましょう。
文字板の各表示は、「アテッサ」が誇る傑作クォーツムーブメント「F950」に備わる各機能に対応したものです
時分針に夜光塗料を採用。漆黒の環境下にいても、容易に現在時刻が読み取れます
中留めボタンを押すと、バンド長が3段階(最大約7mm)で簡単に微調整できるフィットアジャスターを採用
ところで、「アテッサ」のオクタゴンベゼルモデルは本作のほかに、実は日付表示付き三針モデルの「ACT Line エコ・ドライブ電波時計 CB3044-55E」(2025年3月6日発売)があります。ベゼルはセラミックス製ではないものの、基本デザインは「CC4104-53E」と同じ。インダイヤルやプッシュボタンのないプレーンなフェイスだからでしょうか、オクタゴンベゼルなどから醸し出される力強いソリッド感がさらに際立っています。
キャリバー「H128」を搭載する三針モデルの「ACT Line エコ・ドライブ電波時計 CB3044-55E」。10気圧防水。耐磁1種。スーパーチタニウムケース&バンド。ケース幅39mm
大変シンプルな見た目に反して、実はエコ・ドライブをはじめ、日中米欧電波受信、パーペチュアルカレンダー、ワールドタイムなど「アテッサ」だからこその多彩で実用的な機能を満載しています。それでいて手に届きやすい価格とあって、気軽に使えるデイリー時計を探している方や、エントリーウォッチの購入をご検討中の時計ビギナーにも、“ちょうどいい”モデルです。
では、試着です。今回はメインで取り上げている「CC4104-53E」に加え、三針モデル「CB3044-55E」もあわせて着用することにします。両モデルともに、爽やかなネイビースーツ&ブルーシャツの手元に合わせてみました。
「CC4104-53E」はケース径44mm。細い腕では少々持て余し気味に見えるかもしれませんが、このサイズ感に無骨なオクタゴンベゼルが相まって、手元での存在感十分以上という印象です。文字板は複雑な構成ながら、ブラックを背景に太い時分針やインデックス、インダイヤルの各金属リングが明瞭に浮き上がって、視認性は上々。ヘアライン仕上げのベゼルやケースでは要所に施されたミラー仕上げが鮮やかにきらめいて、手元にエレガンスを添えてくれます。
スポーティーで無骨な印象の「CC4104-53E」ですが、エッジの立ったケースデザインや要所で輝くミラー仕上げなどにより、洗練さや豪華さも感じさせます
いっぽう、「CB3044-55E」はケース径39mmと、グッとコンパクト。これなら細腕にも無理なくマッチすることでしょう。しかも、オクタゴンベゼルやラフな質感の文字板などから醸し出されたソリッド感と無骨さは「CC4104-53E」と同様で、しかも、ほどよいサイズ感やシンプルなフェイスによってドレス感もしっかりあり、大人の手元に品よく溶け込んでいる印象です。
こちらは三針モデルの「CB3044-55E」。ほどよいサイズ感ゆえ、こうしたスーツの手元とも相性は絶妙です
なお、上記で紹介した「CC4104-53E」と「CB3044-55E」にはオールブラックのバージョンも存在しています。搭載機能や基本デザインなどはもちろん「CC4104-53E」、ないし「CB3044-55E」と同じ。しかし、ケースなどのスーパーチタニウムはシチズン独自の表面硬化技術の「デュラテクトDLC」により、さらにラギッドな味わいの漆黒に仕上がっているのです。「アテッサはやっぱりブラックがいい」というファンにおすすめしたい2モデルです。
「ACT Line」のうち、「ブラックチタン シリーズ」にカテゴライズされる2モデル(ともに発売は2025年3月6日)。写真左が「エコ・ドライブGPS衛星電波時計 CC4104-53E」と同型のブラックモデル「CC4105-69E」。写真右が三針式「エコ・ドライブ電波時計 CB3044-55E」と同型のブラックモデル「CB3045-61E」
この数年、時計のトレンドとしてオクタゴンモデルが静かなブームになっています。元来は“ツウ”が好むマニアックなタイプだったのですが、時計により個性を求める傾向が強まって人気が高まっています。
このトレンドを受けてのことかは定かではありませんが、ラウンドモデルを主流としてきた「アテッサ」も、ついにオクタゴンモデルを投入。しかも、セラミックス×スーパーチタニウムという異素材を組み合わせて、各所にソリッド感を高めるための工夫も凝らし、他社製のオクタゴンウォッチとはひと味も、ふた味も異なります。個性たっぷりのモデルに結実しているのが、いかにも「アテッサ」らしいのです。加えて、傷に強いうえに実用的な機能も満載となれば、これはもうデイリーでガシガシ使いたくなること請け合い。これぞ買って損なし、使って後悔なしの傑作オクタゴンウォッチと言えましょう!
【SPEC】
シチズン「アテッサ ACT Line エコ・ドライブGPS衛星電波時計 CC4104-53E」
●動力:光発電エコ・ドライブ
●キャリバー:F950
●パワーリザーブ:光発電約5年 ※パワーセーブ作動時
●電波受信:GPS衛星電波受信
●防水性能:10気圧
●耐磁性能:耐磁1種
●アレルギーレベル:耐メタルアレルギー
●ケース素材&表面処理:スーパーチタニウム、デュラテクトチタンカーバイド(シルバー色)
●ベゼル素材:セラミックス(ブラック色)
●ガラス素材&仕上げ:サファイアガラス、クラリティ・コーティング
●搭載機能:充電量表示、充電警告、充電禁止温度検出、過充電防止、過放電検出、パワーセーブ、ライトレベル インディケーター、衛星電波受信、位置情報取得、デイ&デイト表示、パーペチュアルカレンダー、ワールドタイム(39時差)、デュアルタイム、ホーム/ローカルタイム切り替え、サマータイム、ダブルダイレクトフライト、アラーム、1/20秒クロノグラフ(24時間計)、パーフェックス(JIS1種耐磁、衝撃検知機能、針自動補正機能)、夜光(針)
●バンド素材:スーパーチタニウム
●バックルタイプ:三ツ折れプッシュ式、フィットアジャスター
●ケース径:44.0mm
●ケース厚:13.7mm
●総重量:116g
写真/坂下丈洋(BYTHEWAYPHOTOGRAPHY)