新傑作ウォッチで令和を刻む
第3回/セイコー「セイコー プレザージュ プレステージライン シャープエッジドシリーズ」

魔除け柄が文字盤に!? 「セイコー プレザージュ」麻の葉文様モデルを徹底レビュー

大きく変化しつつある現代社会にあって、時代を刻み続ける時計には、私たちを魅力する普遍的な魅力が備わっています。そして、それは令和時代にあっても変わることがありません。

令和を刻む数々の新作時計から、「これぞ傑作!」と讃えたいモデルを厳選して紹介する本連載。第3回では、「セイコー プレザージュ」から、麻の葉文様を「タリスマン(護符)」として文字盤に採用したユニークなモデルを取り上げます。

2020年9月のリリース以来、大好評を博しているセイコーの「セイコー プレザージュ プレステージライン シャープエッジドシリーズ」は、文字盤カラーが異なる全4色で展開中。上の写真左から「SARX080」「SARX077」「SARX075」。ほかに常緑樹色の「SARX079」(下の写真)もラインアップされています。公式サイト価格は、各11万円(税込)

2020年9月のリリース以来、大好評を博しているセイコーの「セイコー プレザージュ プレステージライン シャープエッジドシリーズ」は、文字盤カラーが異なる全4色で展開中。上の写真左から「SARX080」「SARX077」「SARX075」。ほかに常緑樹色の「SARX079」(下の写真)もラインアップされています。公式サイト価格は、各11万円(税込)

和の伝統美を洗練化し、腕時計に昇華したジャパンメイドモデル

セイコーは、海外でもその名が広く知られる、日本を代表する時計メーカー。1881年、服部金太郎氏が東京・銀座で開いた時計輸入・販売の「服部時計店」をルーツとし、1892年にかけ時計の製造を開始してメーカーとしての1歩を踏み出しました。そして、1913年に国産初の腕時計を開発し、1969年に世界で最初の市販クオーツ腕時計をリリースするなど、多くのエポックメイキングを築いてきたほか、国際的スポーツイベントのスポーツ計時を担うことができる数少ない時計メーカーとしても有名です。

ところで、セイコーは現在、さまざまなオリジナルブランドを擁していますが、そのひとつである「セイコー プレザージュ」は、自社開発の機械式ムーブメントを搭載し、国内にて製造された腕時計のブランドとして2011年から展開されています。

今回紹介するのは、その「セイコー プレザージュ」から、2020年9月にリリースされた「シャープエッジドシリーズ(Sharp Edged Series)」です。これは、古来伝えられてきた和の美を現代の感性にマッチさせるべく洗練化させて、腕時計に昇華した新デザインコンセプトのコレクションで、1型4色で展開されています。

耐傷性を高める独自技術「ダイヤシールド」を採用

男の手元に気品と風格を添えるシャープシルエットのたたずまい

男の手元に気品と風格を添えるシャープシルエットのたたずまい

それでは、このモデルの特徴を探ってみましょう。

写真をご覧のとおり、シンプルな3針モデルです。しかも、針は新たに開発されており、先端に向かってカーブを描く形状を採用しています。そのうえで、各所に工夫が凝らされており、それらが絶妙なバランスでこのモデルを形作っている、実に秀逸なデザインであることがわかります。

エッジをきかせた平面を中心に構成された切れ味鋭いシルエットは、まさに「シャープエッジドシリーズ」の名が示すとおりで、これによってもたらされる凜とした姿には品格さえ感じられます。しかも、麻の葉文様の文字盤(詳細は後述)には清潔感とともに、さりげない色気もあって、紳士の手元にふさわしい、美しい表情を見せています。

鏡面仕上げ×ヘアラインのコンビが交響するエレガンス

鏡面仕上げ×ヘアラインのコンビが交響するエレガンス

さらに、ステンレススチール製のケースやブレスレットの仕上げに着目しますと、美しい鏡面(ポリッシュド)仕上げと、非常に繊細なヘアライン仕上げのコンビネーションが採用されていて、このコントラストが本品の姿に優美さと立体感を与えていることがわかるでしょう。

また、そこにセイコーが独自に開発した表面加工技術「ダイヤシールド」が施されている点も注目ポイント。一般的なIP(イオンプレーティング)メッキと同様、金属の表面を硬化させることでステンレスの約3倍の表面硬度を実現したこの特殊コーティング技術が、ケースやブレスレットの表面を傷から守り、末永く、この時計本来の美しさをキープします。

江戸時代、吉祥祈願として麻の葉文様が大流行

文字盤は、“和”をイメージさせる麻の葉文様&カラーリング

文字盤は、“和”をイメージさせる麻の葉文様&カラーリング

ところで、本モデルの1番の特徴と言えば、それはやはり、文字盤全面に施された麻の葉文様です。厚さ0.4mmの金属板にわずかな高低差をつけて表現した和様の小紋柄が、移ろう光を反射しながら、深く、繊細に表情を変化させていく様は誠に美しく、思わず見とれてしまうほどです。

加えて、この柄に合わせて採用された文字盤カラーもまた、和をイメージさせます。ラインアップは全4色で、「藍鉄(あいてつ)」をはじめ、「白練(しろねり)」「煤竹(すすたけ)」、そして「常盤(ときわ)」と、いずれも日本伝統のシックなカラーなのです。

「藍鉄」は、藍色がかった鉄色を表現したもの。江戸時代、江戸前の色として広く愛好された藍色ですが、かすかに緑を含む濃い青色の藍鉄色も、その時代で大変好まれた小粋な渋色です。

「白練」は、練絹(ねりぎぬ)のような繊細な光沢を持つ白色。元来、白練とは生絹(きぎぬ)の黄みを消し去る技法をさし、これによってもたらされる白練色は、古代から神聖さを象徴するカラーとして用いられてきました。

「煤竹」は、囲炉裏(いろり)や竈(かまど)の煙にいぶされて、すすけて古色を帯びた竹のような暗い茶褐色です。室町時代に登場し、江戸時代には通好みとして小袖や羽織、帯などに多用されたのです。

そして「常盤」は、松や杉などの常緑樹の葉のような、ほのかに茶色を帯びた濃い緑色のことで、「常磐」とも書きます。常緑樹の葉が季節によらず緑であることから、長寿と繁栄の願いが込められたカラーとされ、江戸時代には「吉祥(きちじょう/めでたい兆しの意)」として好まれました。

ここで、文字盤の麻の葉文様に話を戻しましょう。というのも、上記の各カラーのみならず、この柄にも縁起が込められているからです。

麻の葉文様は、正六角形を基礎にした幾何学文様で、形が麻の葉に似ていることからこう呼ばれます。古くは平安時代、仏教における尊像の衣服や曼荼羅(まんだら)の背景を飾る図柄として現れ、江戸時代になると着物の流行柄として大変な人気を博しました。そのきっかけは、歌舞伎役者の女形として活躍した岩井半四郎が「八百屋お七」の演目にて、この柄の衣装を着用したことだったとか。

また、麻の葉は4か月で4mにもなるほど成長が早く、真っ直ぐにグングン成長することから、 死亡率の高かった当時、人々は「元気に育ってほしい」との願いを込め、この柄を産着に取り入れたのです。

そもそも三角形は、魔除けや厄除けとして古墳の壁画や埋葬品に描かれました。あるいは、亡骸の額に白い三角布を着けるのも、死者の極楽浄土を願う遺族の心を表しているのです。したがって、複数の三角形で構成される麻の葉文様には、さらに強い魔除けの力があるとされ、乳幼児の成長祈願のみならず、健康や長寿、安全、出世、吉縁、財運などを祈願する「タリスマン(護符)」として利用されてきたのです。

オン/オフをカバーする高汎用性デザイン

時計好きならずとも、うれしいシースルーバック仕様

時計好きならずとも、うれしいシースルーバック仕様

ここでムーブメントにも目を向けてみましょう。

本モデルに搭載されているのは、セイコーが独自に開発した自動巻きキャリバー「6R35」。高精度であるのはもちろんのこと、約70時間のパワーリザーブを有しているので、たとえば週末に着用せずとも、翌月曜にそのまま使用が可能です。

また、シースルーバック仕様の採用により、テンプやローター(回転錘)の動作を目の当たりにできるのもうれしいポイント。眺めているだけで心が落ち着いてくるという、そんなリラクゼーション効果も体感できるでしょう。

ビジネス顔モデルながら、休日スタイルの手元にも秀逸マッチ

ビジネス顔モデルながら、休日スタイルの手元にも秀逸マッチ

シンプルで端正な「シャープエッジドシリーズ」は、スーツやジャケットスタイルとの相性が絶妙です。それでいて、渋めながら小粋なカラーリングの麻の葉文様の文字盤が醸し出す控えめな色気により、上の写真のようなきれいめなカジュアルにも品よくマッチし、手元からスタイルを格上げしてくれるのです。

【まとめ】時を刻む道具×手元の装飾×身に着ける「タリスマン」の3役に!

古今東西を問わず、人類には自身や身近な人々の幸福を願うべく、「タリスマン」を身に付ける習慣がありました。たとえば、古代・中世のヨーロッパでは、神や権力者のレリーフが描かれたコインを身に着けて、その不可思議な力を授かろうとしましたし、また、ジュエリーなどの装飾品にしても、元来が「タリスマン」としての役割があったのです。

そしてそれは、「シャープエッジドシリーズ」にも当てはまると思うのです。すなわち、時を知らせる機械にして、手元を彩る装飾という時計本来の役割に加え、日本に古来伝わる麻の葉文様とカラーリングが文字盤に取り入れられたことで、奇しくも「タリスマン」としての役も付与されたからです。

「僕の時計の文字盤、見て。実は、この柄と色はね……」などと、デートの際、パートナーにちょっと蘊蓄(うんちく)を講釈すると、占いやお守りが好きな人であればきっと興味を持って話を聞いてくれるはず。そんなコミュニケーションのきっかけになることも、このモデルが人気を博している理由なのかもしれません。

●写真/篠田麦也(篠田写真事務所)

【SPEC】
●駆動方式:自動巻き
●キャリバー番号:「6R35」
●パワーリザーブ:約70時間
●防水性能:10気圧
●ケース材質:ステンレススチール(「SARX080」のみピンクゴールド色メッキ仕上げ)
●バンド素材:ステンレススチール(「SARX080」のみホースレザー製バンド)
●表面加工:ダイヤシールド(「SARX080」以外)
●ガラス:無反射コーティングサファイアガラス
●ケースサイズ:39.3(外径)×11.1(厚さ)mm
●重量:約155g(「SARX080」は約83g)

山田純貴

山田純貴

東京生まれ。幼少期からの雑誌好きが高じ、雑誌編集者としてキャリアをスタート。以後は編集&ライターとしてウェブや月刊誌にて、主に時計、靴、鞄、革小物などのオトコがコダワリを持てるアイテムに関する情報発信に勤しむ。

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