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ふるさと納税やクラウドファンディングなど、選択肢が増えた

7年間で約1.5倍に増額! 日本で寄付が伸びている背景に新型寄付の存在あり

「寄付」という言葉に皆さんはどんなイメージを持っていますか?
日本には長らく寄付の文化がないと言われてきましたが、「ふるさと納税」など、新しい形の寄付の登場で盛り上がりを見せているようです。最新の寄付事情を調べてみました。

おなじみの募金も、寄付の一種

おなじみの募金も、寄付の一種

いまだ、アメリカとは大きな差はあるものの……

まず、日本人の寄付額から見てみましょう。
寄付文化の普及に取り組むNPO法人、日本ファンドレイジング協会によると、日本人の個人寄付総額は7756億円(2016年)だそうです。いっぽう、アメリカの個人の寄付総額は30兆6664億円。約40倍もの差がついています。もちろん日米の経済規模の差を考慮する必要がありますが、名目GDPに占める寄付の割合を比較しても、日本の0.14%に対して、アメリカは1.44%とおよそ10倍の差があります。

※出典 日本ファンドレイジング協会調査研究(寄付白書) http://jfra.jp/research

それでも、日本人の寄付は徐々に増えている

ただし、状況は変わりつつあります。実は、7756億円という金額は、過去の寄付額と比較するとかなり増加した数字なのです。たとえば、2009年の寄付総額は5455億円。2010年は4874億円ですので、比べてみると2016年の7756億円という数字が、いかに増えているかわかると思います。

寄付額が大きく増加した要因は、2011年の東日本大震災です。被災地を支援したいと、寄付が注目され、2011年の個人寄付額は一気に1兆182億円と例年の2倍に伸びました。それ以後は、6931億円(2012年)といったん落ち着いたものの、7409年(2014年)、7756億円(2016年)と継続して上昇傾向にあります。

日本人の寄付はここ数年増加傾向に

日本人の寄付はここ数年増加傾向に

身近なことから世界の問題解決まで、寄付先はさまざま

ところで、皆さんは「寄付」にどれくらい種類があるかご存じでしょうか?

「赤い羽根共同募金」や、コンビニのレジ横に置いてある募金箱。これら「街かど募金」も、小銭や少額のお金を「募金」というシステムで集める、古くからあるタイプの寄付です。こういったものなら「募金したことがある」という人も多いと思います。

それ以外にも、たとえば地域のお祭りやイベントなどへの寄付もありますし、数年前に話題になった「タイガーマスク運動」(児童養護施設にランドセルなどが贈られ、社会現象に)も寄付の一種と言っていいでしょう。ほかにも、紛争地域の子どもを支援する団体や、「国境なき医師団」など世界レベルの社会貢献活動をしている団体など、寄付の対象は多岐にわたります。

税金が控除されるケースもある

実は寄付の対象によっては、税金が控除されるケースがあり、これも日本の寄付額増加の要因になっています。「寄付金控除」という仕組みで、確定申告することで所得金額から控除されます(2000円以上の寄付をした場合で、確定申告の際にその証明書が必要ですが、年末などに送付されてくるケースがほとんどです)。

寄付金控除が使える主な寄付先は下記のとおりです。

・国、地方公共団体
・公益社団法人(シルバー人材センター 等)
・公益財団法人(日本ユニセフ協会 等)
・政治活動に関する政党や政治資金団体など(自民党 など)
・認定NPO法人(社会から必要とされていることを証明する基準をクリアしたNPO。内閣府HPに一覧あり https://www.npo-homepage.go.jp/about/houjin-info/shokatsunintei-meibo
・特定公益増進法人(自動車安全運転センター、日本赤十字社、私立学校など)

このうち、政党や政治資金団体に対する寄付金、認定NPO法人や公益社団法人などに対する寄付については、「寄付金控除(所得控除)」か、「寄付金特別控除(税額控除)」のうち、どちらか有利なほうを選ぶことができます。

「寄付金控除(所得控除)」とは、簡単に言うと税額を計算する前の所得から、寄付金分の控除が適用される仕組みです。配偶者控除などと一緒に引かれるイメージを持つといいでしょう。

所得控除

所得控除 = 当該年中に支出した寄付金の額 ※1 − 2000円

※1 当該年の総所得金額などの40%が限度額。

いっぽうの「寄付金特別控除(税額控除)」は、税額から直接控除が適用される仕組みです。

税額控除

税額控除 = {(寄付金額 ※1 − 2000円)× 30〜40%※2}※3

※1 当該年の総所得金額などの40%が限度額。
※2 政党等寄付金特別控除額は30% その他の場合は40%
※3 所得税額の25%が限度額。

詳細な計算はかなり複雑になるためここでは省きますが、よほど高額の寄付をした場合や、もともとの所得が高額な場合を除き、「寄付金特別控除(税額控除)」を選んだほうが有利になるということを覚えておくといいでしょう。

(※「一般財団法人 国民政治協会」のサイトで、税額控除と所得控除の比較ができます。目安としてご活用ください。http://kifu.kokuseikyo.or.jp/kifu_kojin_taxcut.aspx

寄付を受け付けている団体のホームページには、寄付金控除について記載されていることがほとんどです。寄付先として気になる団体があれば必ずチェックするようにしましょう。

4つの”新しい寄付”に注目

寄付金控除に加えて、寄付の新しい形が生まれ、寄付の手段が多様化してきたことも、日本の寄付を増やす要因になっています。ここでは代表的な4つを紹介していきます。

【新しい寄付 1】
返礼品と税制メリットで人気の「ふるさと納税」

近年盛り上がりを見せているのが「ふるさと納税」です。「納税」という言葉がついていますが、実際は、応援したい自治体に寄付ができる制度で、寄付金控除の対象のひとつです。2018年は296万人がこの制度を利用し、すっかりおなじみとなっています。

寄付先は、自分の意思で自由に選ぶことができ、自治体によっては「教育費」「地域振興費」など、使い道を選ぶことも可能です。生まれ育った地域への恩返し、天災で大きな被害を受けた地域へ復興支援の寄付など、さまざまな活動の支援につながっていきます。

ふるさと納税を利用する人が増えた背景には、寄付に対する返礼品の充実ぶりもあります。ふるさと納税と言えば返礼品と言われるほどで、寄付額数千円から数万円の範囲で返礼品を選び、主に地域の特産品を受け取ることができ、人気を呼んでいます。

また、税制メリットも人気の要因です。自治体に寄付した金額から、自己負担額の2000円を除いた金額が控除されます。ふるさと納税は地方公共団体への寄付なので、前述のとおり「寄付金控除(所得控除)」の対象になります。ほかの寄付金控除とも併用ができ、「ふるさと納税+ほかの寄付」の寄付額の合算で控除が計算されます。この合計が、「当該年の総所得金額等の40%」内であれば控除の対象となりますので、よほどのことがないかぎり「寄付のしすぎで控除されないのでは?」との不安を持つ必要はないでしょう。

人気、知名度とも高いふるさと納税ですが、気になる動きもあります。自治体間の返礼品競争が過熱し、地域とまったく関係のない金券、ギフトカード、家電製品などが用意されるなど過度な返礼品が問題視されるようになりました。自治体に是正をうながす動きも出てきています。

この制度が地方を活性化する一助となっているのは間違いなく、今後も寄付の選択肢となりうるのか、動向が気になるところです。

【新しい寄付 2】
クラウドファンディングで集める寄付

寄付金の控除制度を使った新たなスタイルに「寄付型クラウドファンディング」があります。

通常のクラウドファンディングは応援したいベンチャー企業やアーティストを金銭で支援すると、商品やサービスなど、何らかのリターンを得られる仕組みです。若い人を中心に注目度の高いクラウドファンディングの仕組みを活用し、「寄付型クラウドファンディング」を募ることで、これまで接点のなかった人が寄付に興味を持つきっかけとなりつつあるようです。

「寄付型クラウドファンディング」は金銭により支援する仕組みは同じですが、あくまでも寄付。リターンを目的としておらず、純粋に応援することを目的とします。すべてのものが対象になるわけではありませんが、認定NPO法人や学校法人など寄付の対象によっては寄付金控除が行えるところもあります。ほとんどのクラウドファンディングのサイトには寄付金控除の対象かどうか記載されているので、活動内容とあわせてチェックしてみるといいでしょう。

【新しい寄付 3】
「遺贈寄付」で死んだあとのお金の使われ方を決める

人生100年時代と言われますが、自分の死後に残ったお金がどうなってしまうのか気になる人もいるでしょう。そこで、遺言で「これに使ってほしい」と自分の意思を残す「遺贈寄付」が注目されています。

遺贈寄付は遺言で自分の遺産を寄付することです。「家族には十分な遺産があるので、一部を社会に役立てたい」というケースだったり、「独身で法定相続人がいない」というケースだったりと動機はさまざま。後者の場合、そのままにしてしまうと遺産は最終的に国庫に入ることになりますが、一部は引き取り手がない遺産として自治体が保管することになり、コストが発生します。無駄なコストをなくし、財産に自分の意思を反映できるのが遺贈寄付のメリットです。また、遺贈寄付という言葉から大仰な印象を受けがちですが、寄付する金額の大小は問われません。

遺贈寄付は、自分の遺産の使い道を決められる仕組み

遺贈寄付は、自分の遺産の使い道を決められる仕組み

遺贈寄付のパターンは3つあります。

ひとつめは「遺言による遺贈寄付」です。
遺言書を作成しておき、寄付先など意思を示しておくことで、「死亡した個人が寄付者になる」パターンです。寄付先にあらかじめ伝えておくかは寄付する人の考え方によります。

寄付先が法人の場合、相続税が課税されません(ただし寄付先に法人税はかかります)。
寄付先が個人の場合は相続税の対象となりますが、相続税法第12条第1項「宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う者で政令で定めるものが相続または遺贈により取得した財産で当該公益を目的とする事業の用に供することが確実なもの」に対しては相続税が非課税となります。

わかりにくいですが、要するに寄付先の個人が社会福祉、学校運営、その他公益事業に関わる事業者であれば非課税となります。

2つめは「相続財産の遺贈寄付」です。
配偶者や子どもなど相続人にあらかじめ伝えておく、またはエンディングノートなどに記しておくことで、「相続人が寄付者となる」パターンです。国、地方公共団体、認定NPO法人など税制優遇の対象団体であれば、相続税が非課税になります。さらに寄付金控除も適用できます。

3つめは「信託による遺贈寄付」です。
信託の仕組みを使い、財産を民間非営利団体に寄付すること、つまり「信託契約した受託者が寄付する」パターンです。具体的には、信託銀行、生命保険会社に申し込み、当該人が亡くなったあとに遺贈寄付が行われます。

自分の人生の集大成として、遺贈寄付で社会に「恩返し」をしようとする人たちが増えています。亡くなったあとのお金がどう使われるかわからないままでいるよりも、自分の望んだ形で遺産を使ってもらうことは、意義のある選択と言えそうです。

【新しい寄付 4】
現金不要でできる「ポイントでの寄付」

お金に余裕はないけど寄付がしたい、あるいは、景品や航空チケットに交換できない中途半端なポイントがあるという人は、クレジットカードのポイントや共通ポイントでの寄付を考えてみてはいかがでしょうか?

下記の表のように、カードにより、難病の子どもたちを支える団体、地球環境を保護する団体、自然動物や野鳥を保護する団体などさまざまな対象に寄付することができます。何ポイント寄付できるのか、どこに寄付できるかはポイント運営会社、クレジットカード会社によります。まずは各サイトのポイント交換・利用ページで確認してみましょう。

ポイントで寄付できる仕組みが広がりつつあります

ポイントで寄付できる仕組みが広がりつつあります

毎日の生活で少なからずクレジットカードの出番はあるものです。寄付ができるタイプのクレジットカードを選んで普段使いにすれば、特に意識することなくこつこつと寄付できるポイントがたまっていきます。

お金に自分の意思を乗せる人が増えた

寄付金控除の充実や、寄付制度の広がりを通じ、日本でも寄付が少しずつ身近な存在になってきました。今回の記事の執筆をとおして、寄付による社会貢献や「お金に自分の意思を乗せる」ことの意義も広がってきているように感じます。

寄付を行うには、まず寄付先を見つけることが第一です。あなたが応援したいと思える活動があれば、ホームページなどで寄付の可否を確認してみましょう。また、直接寄付の使い道を問い合わせてみるのもいいでしょう。何に使われているのか、どんな活動を目的としているのか教えてくれるはずです。寄付による控除が受けられるかどうかも変わってきますので、こちらもぜひご確認ください。

これまでは、自分のためにお金を使うことが当たり前でした。しかし自分の手を離れたあとも、お金が「生きた使われ方をされる」と想像してみるとことで、寄付に対するイメージも変わってきます。寄付によってお金を使うことの新しい価値を見つけられるかもしれません。

※本記事は、執筆者個人の見解です。

西村有樹

西村有樹

オフィスクイック代表。1990年より編集・ライターとして出版業界に携わる。リクルート、小学館、講談社ほか多数の出版社の各媒体にて、主に企業取材、企業人インタビューを手がける。1999年の金融ビッグバンを機に金融・保険を自身の専門分野として確立。ユーザーの視点からの、わかりやすい記事を多数執筆。

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