シニア割引をフル活用して、おトクに旅を楽しみましょう!
新型コロナの感染再拡大がやや気になる状況ですが、各種報道などによると旅行需要は徐々に回復傾向にあると伝えられています。読者の皆さんの中にも、夏から秋の旅行シーズンを控え「遠出を楽しみたい」と考えている人がいらっしゃるのではないでしょうか?
そこで今回は、「旅の交通手段が断然おトクになるシニア割引」に注目。一定の年齢以上の人が使える、おサイフにやさしい国内での移動手段を「空・陸・海」の企業ごとにまとめて一挙にご紹介します。ご自身の旅行手段としてはもちろん、ご家族への情報提供などに活用してください!(最終更新日:2022年7月18日)
※記載している料金例は記事執筆時点のものです。ご利用の際は公式サイトなどで最新の料金をご確認ください。
「シニア割引(またはシニア割/シルバー割引など)」とは、サービスを提供する事業者が、一定の年齢以上の人を対象とした割引サービスのことを指します。企業や団体によって内容や対象年齢はさまざまですが、公共交通機関や映画館、テーマパーク、観光施設など、幅広いジャンルで導入されています。
その多くは60歳以上、または65歳以上が対象年齢ですが、なかには50歳以上から使えるものもあり、活用しない手はありません。この記事では、旅行の出費で多くの割合を占める、交通機関でのシニア割引を中心に情報をまとめます。
シニア割引は各社によって対象年齢がさまざま。ご自身が対象になっていることを見落としている可能性もあるかも?
まずは「空」から。航空会社各社はシニア割引を導入しています。対象年齢65歳以上という会社が多く、年齢を証明する公的書類が必要となる場合も。また、「当日に空席がある場合に利用可能」などの条件が設けられることもあり、利用には少しの注意と手間が必要です。しかし、その割引率は魅力的。急に思い立って飛行機を使う場合の時などにぜひ検討してみましょう。
ANA(全日空)には「スマートシニア空割(そらわり)」というシニア割引があります。65歳以上のANAマイレージクラブ会員が対象で、搭乗日当日の午前0時から予約が可能です。また、搭乗日当日に、出発空港でプレミアムクラスに空席がある場合は、追加料金を支払ってアップグレードもできます。
ANAのシニア割引は65歳以上のANAマイレージクラブ会員が対象(写真は高松空港)
本記事公開後から2022年10月29日搭乗分までのスマートシニア空割の運賃は、「8,600円〜2万3,500円」で設定されています。東京−大阪間なら、通常2万6,400円(ANA FLEXDの通常時)のところ1万400円(通常時)に。同様に、東京−札幌間なら、通常3万9,200円(ANA FLEXDの通常時)のところ1万7,600円(通常時)と、なかなかの割引率となっています。
スマートシニア空割は、ANAのサイトや予約・案内センターで予約・購入が可能です。利用するには「ANAマイレージクラブカード」または「ANAカード(クレジットカード)」が必要ですが、公式サイトによると、搭乗当日に空港カウンターでANAマイレージクラブに入会できないとのことなので、いつでも使えるようにあらかじめ用意しておくといいでしょう。
なお、スマートシニア空割の初回利用時に、公的書類で生年月日の確認が必要です。2回目以降も公的書類の提示が求められることがあるそうなので、基本的にはつねに携帯しておいたほうが安心です。
JAL(日本航空)のシニア割引は「当日シニア割引」です。その名のとおり、搭乗日当日に出発空港で空席がある場合に、満65歳以上の人が利用できます。もし搭乗便に「クラスJ」「ファーストクラス」に空席があれば、追加料金を支払うことで変更することもできます。
JALのシニア割引は空港で空席がある際に利用可能(写真は宮古島)
当日シニア割引の運賃ですが、2022年7月1日〜8月31日搭乗分は「9,200円〜2万1,400円」、同9月1日〜10月29日搭乗分は「8,150円〜1万6,100円」で設定されています。たとえば、東京−大阪間なら普通運賃3万350円のところ、1万700円になります(2022年7月22日金曜日出発の場合)。
当日シニア割引を利用したい場合は、JALのサイトや空港の電光掲示板で空席状況を確認のうえ、空港の「自動チェックイン・発券機」やJALグループ国内線カウンター(市内・空港)で購入します。
チケットの購入・搭乗時に、満年齢が65歳以上であることを証明する公的書類、JALカード(クレジットカード)、JMB.G.G.WAONカード(55歳以上の人が持てるJALのマイレージカード)、シルバーパス(新規発行停止中)のいずれかが必要です。
ANA、JAL以外の航空会社にもシニア割引があります。各社、運行路線が限定されますが、もし旅程と合うようならぜひ検討してみてください。
北海道が拠点の「AIR DO」には、満65歳以上が対象の「DOシニア65」があります。搭乗日当日に予約・購入した場合に割引が適用されますが、事前に、「My AIRDO」会員に登録のうえ、生年月日の確認が済んでいることが条件です。会員登録は搭乗日当日に空港カウンターでも可能ですが、その際、年齢が確認できる公的書類が必要です。
東京−札幌間の場合、普通運賃3万2,240円に対して、DOシニア65なら1万6,940円になります(いずれも2022年7月14日に出発の場合)。
羽田空港を中心に日本各地へ路線を広げている「スカイマーク」。シニア割引の「シニアメイト1」は、搭乗時に満60歳以上であることが利用条件。搭乗予定日の前日朝7時から搭乗日当日まで予約が可能です。空港の自動チェックイン機が利用できますが、その際、年齢が確認できる公的書類が必要です。
東京−札幌間の場合、普通運賃3万3,740円に対して、シニアメイト1なら1万8,440円になります(2022年7月22日金曜日出発の場合)。
2022年8月に就航20周年を迎える「ソラシドエア」。シニア割引は満65歳以上が対象の「65歳からのシニア割」があります。ソラシドエアが指定する日から搭乗当日まで予約が可能。購入時および搭乗手続き時に年齢を証明できる公的書類が必要です。
運賃は、東京−宮崎間の場合、普通運賃3万9,200〜4万3,500円に対して、65歳からのシニア割なら1万5,300〜1万8,300円です(いずれも2022年7月搭乗分。月内の時期によって異なる)。
“黒い機体”がトレ−ドマ−クの「スタ−フライヤ−」にも、やはり満65歳以上が対象のシニア割引があります。予約・発売開始日から搭乗日当日まで受付可能です。購入および搭乗手続き時に、満65歳以上であることがわかる公的書類やほかの航空会社のシルバー会員証を提示する必要があります。
運賃は、東京−北九州間の場合、普通運賃4万800円〜4万2,900円に対して、1万6,100〜1万9,800円。東京−福岡間の場合も同じく、普通運賃4万800円〜4万2,900円に対して、スタ−シニアなら1万6,100円〜1万9,800円となります(いずれも時期によって変動)。
シニア割引を使えば北海道や九州などへの空の旅もおトクになります(写真は札幌市・幌見峠のラベンダ−畑)
鉄道も旅の移動の定番です。JRはグル−プ全体や各社とも、シニア割引を実施しています。割引率がかなり高いサ−ビスもあるので、ぜひチェックしてみてください。
JR各社(6社)が共通で提供しているのが「ジパング倶楽部」です。JR東日本では「JR東日本ジパング俱楽部」、JR西日本では「JR西日本ジパング俱楽部」と表記されますが、特典の内容は変わりません。
ジパング倶楽部に入会すると、全国のJR(新幹線を含む)の鉄道を片道・往復・連続で201km以上利用する場合、年間20回まで各種切符の運賃が「20%割引」、もしくは「30%割引」になります。入会初年度の1〜3回目は「20%割引」、4回目以降20回目までが「30%割引」で、会員を更新すると、2年目以降は1回目から20回目まで「30%割引」で利用できます(席種や切符の種類などで一部対象外ものもあります)。このほか、JRホテルグル−プのホテルを優待料金で利用できる特典もあります。
対象となるのは個人会員なら男性満65歳以上、女性満60歳以上、夫婦会員の場合はどちらかが満65歳以上の夫婦です。年会費は個人会員1人3,840円、夫婦会員は2人で6,410円です。
入会するには、JR各社のジパング俱楽部に入会申込書を取り寄せ、申し込む必要があります。ジパング倶楽部の割引切符はJRの主な駅および旅行センターなどの窓口で販売していますが、その際は乗車日に有効な会員手帳(会員証一体型)が必要です。
ジパング倶楽部では特急料金も割引対象(写真は青森−秋田間を走る観光特急「リゾートしらかみ」)
JR東日本とJR北海道は合同で「大人の休日俱楽部」というシニア割引を提供しています。
このサ−ビスは年齢により2つに分かれており、「男性満50〜64歳/女性満50〜59歳」を対象とする「大人の休日俱楽部ミドル」(年会費2,624円・初年度無料)と、「男性満65歳以上/女性満60歳以上」を対象とする「大人の休日俱楽部ジパング」(年会費4,364円・個人/7,458円・夫婦会員)です。それぞれ、会員証を兼ねたSuica機能付きのクレジットカ−ドが発行されます。
大人の休日俱楽部ミドルはJR東日本・北海道の切符が「何回でも5%割引」、大人の休日俱楽部ジパングは「何回でも30%割引」となります(いずれも片道・往復・連続で201キロ以上利用の場合で、「大人の休日倶楽部カ−ド」で支払った場合)。
大人の休日俱楽部ジパングの場合は、日本全国のJR線の切符が1〜3回目までの乗車が「20%割引」、4〜20回目までの乗車が「30%割引」となる特典もつきます。そのほか、会員限定でJR東日本やJR北海道のフリーエリアが乗り放題の切符「大人の休日俱楽部パス」なども販売されています。
大人の休日俱楽部はインタ−ネットもしくは郵送・店頭で申し込みます。割引・会員限定切符は、JR東日本の主な駅に設置されている指定席券売機、インターネットJR券申し込みサービス「えきねっと」で取り扱っています。
JR東日本・北海道の「大人の休日倶楽部」は割引率の高さが魅力(写真は秋田新幹線「こまち」)
JR東海の「50+ フィフティプラス」は50歳以上が対象の割引サ−ビスです。入会費・年会費が無料で、東海道新幹線を利用するおトクな会員向けツア−など、さまざまな割安旅行プランが提供されています。旅行の同行者に年齢制限がないのもうれしいポイントです。メルマガを登録すると、限定のおトクなプラン情報も届きます。
インタ−ネットから入会すると、会員専用ホ−ムペ−ジで旅行商品を購入できるようになります。また、会員限定の定期的なメルマガ、不定期のダイレクトメ−ルでも旅行商品の販売情報が届きます。
「おとなび」は、JR西日本の満50歳以上の人向けのサ−ビスです。「J−WESTネット会員」に登録すると、無料で会員になれます。
JR西日本全線の新幹線・特急列車が3日間または5日間乗り放題になる「西日本グリ−ンきっぷ」や、山陽新幹線や特急券の利用が、7日前までのネット予約でおトクになる「おとなびWEB早得」などが利用できます。
JR四国の「四国エンジョイクラブ」は、男性満60歳以上、女性満55歳以上が対象。入会金は無料、年会費は1,500円です(JR四国ジパング俱楽部会員は無料)。
JR四国線内またはJR四国線と土佐くろしお鉄道線を、「通算して片道71q以上の鉄道を往復利用する場合」で、「往復とも1列車51q以上の特急券を同時に購入する場合」に30%割引になります。
JR九州「ハロ−!自由時間クラブ」は60歳以上の人が対象で、入会金・年会費は無料。JR九州の列車が3日間乗り放題になる会員限定切符「ハロ−!自由時間ネットパス」や、ハロ−!自由時間クラブ会員かつJR九州ジパング俱楽部会員限定で、JR九州線の運賃・料金がいつでも何回でも30%割引になる「自由時間割引」を提供しています。
2人の年齢を合わせて88歳以上の夫婦が対象のサ−ビス。JR全線(のぞみ、みずほなど、一部列車は除く)のグリ−ン車や普通車が自由に乗り降りできるフリーパスです。夫婦のうちどちらか、または両方が70歳以上の場合は、割引率が上がる「シルバー用」を利用できます。
5日間利用券は一般用8万4,330円、シルバー用は7万9,330円。ほかにも、7日間用、12日間用も用意されています。
フルム−ン夫婦グリ−ンパスは、例年9月から翌年5月までが発売期間で、利用期間は10月〜翌年6月まで。2022年分はまだ発売が発表されていませんが、例年8月に発売が発表されているので興味のある人は気にかけておきましょう。「切符うりば」のある駅やその駅周辺の主な旅行会社の支社・営業所で購入することができます。
フルム−ン夫婦グリ−ンパスを利用する際は年齢を証明できる公的証明書が必要。シルバー用に関しては購入時にも公的証明書が必要です。
JR各社のシニア割引は対象年齢が比較的低いのが特徴(写真は京都・八坂の塔)
飛行機や電車の旅もいいですが、波に揺られてのんびり移動する船旅も悪くありません。そんな船旅にもシニア割引はいくつかあり、乗船料がおトクになります。ここでは、代表的な2社のサ−ビスを紹介します。
商船三井フェリーは、茨城・大洗と北海道・苫小牧を結ぶフェリー「さんふらわあ」を運行しています。夕方便お場合、19時前後に出発し、翌日13〜14時ごろに到着します(このほか、深夜便もあり)。
同フェリーには満60歳以上の人が使える「プラチナ割引」があり、本人の運賃の5%、乗用車運賃の5%が割引になります(一部、適用外の期間があります)。利用の際は、乗船手続き時に年齢を確認できる公的証明書が必要です。予約は、インターネット、もしくは電話で可能。インターネットの場合、乗船者情報入力画面で年齢を入力し「プラチナ割引対象」にチェックを入れることで対象になります。
「さんふらわあ」には夕方便と深夜便があり、それぞれ船内設備や運賃が異なります(写真は大洗港停泊中の「さんふらわあ」)
阪九フェリーは北九州と大阪・神戸を10時間程度で運行するフェリー会社です。使用している船舶がクルージング船並みに豪華なのが特徴です。
阪九フェリーには満60歳以上が利用できる「シルバー割引」があり、旅客、乗用車、バイク、トラックの料金が20%割引されます。年末年始やお盆などの繁忙期には割引が適用されないのでご注意ください。購入時に、公的証明書の提示が必須です。
豪華設備が人気の阪九フェリー。シニア割引でおトクに乗船しましょう(写真は神戸港に入る阪九フェリー)
最後は、バスやタクシー会社のシニア割引2例をご紹介します。
全国225路線の高速バスを運行する「WILLER EXPRESS」。同社には「シニア割引運賃」があり、55歳以上の人は一律で100円が割引されます。インターネットで予約時に、「シニア」から人数を選ぶと、シニア割引運賃が適用されます。
また、同社では不定期で55歳以上の人限定の特別キャンペ−ンが行われることもあります。
京都・滋賀を中心にタクシー事業を展開する「MKタクシーで」は、65歳以上の人を対象に「MKグランシニアTACPO(タクポ)」を提供しています。TACPOは、ポイント機能とプリペイド機能の付いた同社独自のカードのことで、通常のTACPOは、乗車運賃の1%相当のポイントが貯まります。
MKグランシニアTACPOの場合、京都のMKタクシーなら運賃の3%、滋賀のMKタクシーなら運賃の2%のポイント還元があります。ほかにも、3万円利用ごとに500ポイント還元、空港定額タクシー・貸切タクシー利用で10%ポイント還元などの特典もあり、同社タクシーをよく使う人にはおトクです。貯まったポイントは同社タクシーに乗車時の運賃などに使えます。
MKグランシニアTACPOを利用したい場合は、郵送もしくはWEBで申し込みが可能。入会費・年会費は無料です。
現在提供されている、旅の移動で使えるシニア割引を列挙してきましたが、皆さんの印象はいかがでしょうか? 筆者個人としては予想していた以上に種類が多く、かなり“使える”印象を受けました。
皆さんは、シニア割引を使ってどこに出かけますか?
事前に会員登録が必要だったり、利用時に公的書類を見せたりなど、少々手間はかかりますが、うまく使いこなせれば、旅の移動がかなりおトクになりそうなものも多くあります。記事を参考に“おトクな旅”を目指してみてはいかがでしょうか?
フリーランスの編集・ライター。資産運用、ビジネス、クレジットカード、副業、医療・介護などのジャンルで取材・執筆。企業の女性活用に関する記事も多数。 著書に「決定版 1万円からはじめるFX超入門」など。