借りる
コツは「貸す側」の視点に立ってみること

賃貸を安く借りる交渉術をプロが公開。「人口減」も借り手の追い風に

「家を借りるってお金がかかる……」

そう思ったことがある人、多いはずです。
「家賃」「敷金・礼金」「仲介手数料」。ちまたにあふれる食費や光熱費の節約術と同じように、これら「賃貸のコスト」を節約する術はないでしょうか……。

実は、"交渉の余地"がけっこうある

今回お話をうかがったのは、各種メディアで「賃貸・部屋探し」ガイドとして活躍する加藤哲哉さんです。加藤さんによると、家賃、敷金・礼金、仲介手数料はあくまでも”定価”。

「賃貸住宅の契約は、貸主(大家さん)と借主(入居者)の合意のもとで成り立ちます。すなわち人対人の交渉によって安くすることだって可能なんです」(加藤さん)

さっそく、詳しく聞いていきます。

【教えてくれた人】All About「賃貸・部屋探し」ガイド 加藤哲哉(かとう・てつや)さん。住宅情報誌会社に16年間勤務後、独立。現在は不動産・情報サイトのエグゼクティブアドバイザーも務める。業界内の豊富なネットワークと、実務を通じて手にした情報をフル活用し、「借りる人」と「貸す人」。そしてその間をとりもつ「不動産会社」がハッピーになる社会を目指す賃貸のスペシャリスト

【内容】
家賃
・家賃交渉は借り手の権利
・大家さんとの”交渉の余地”とは?
・家賃交渉のタイミングは?
・「フリーレント」は大家さんの焦り
敷金・礼金
・実は法的根拠がない「敷金・礼金」
・敷金と礼金。交渉で優先すべきは?
・敷金の返金トラブルには国のガイドラインを
仲介手数料
・直接借りれば手数料はかからない!?
・URはやはりお得だった
変わりゆく賃貸。定額制のサブスク賃貸も登場!

賃貸のコストが本当に下がればうれしいもの。値段の決まり方を知って、交渉のチャンスを見つけましょう

賃貸のコストが本当に下がればうれしいもの。値段の決まり方を知って、交渉のチャンスを見つけましょう

家賃

家賃交渉は借り手の権利

まず家賃について。そもそも、「家賃の値下げ交渉なんてしていいの?」と疑問に感じる人がほとんどだと思います。

「家賃の値下げ交渉は、建物の賃貸借について定めた借地借家法で『借賃増減請求権』として認められています。簡単に言うと、

・土地、建物に対する税金などの負担の増減
・価格の上昇や下落
・周辺の同じような物件の家賃と比較して差がある

このような場合には、大家・入居者の両者ともいつでも家賃の増減を請求できるというものです。法的に認められているわけですから、”交渉の余地あり”と思えば、トライする価値は十分あります」(加藤さん)

大家さんとの”交渉の余地”とは?

どういった場合に”交渉の余地あり”と判断できるのでしょうか? 加藤さんは、新規に物件を探すケースの場合は、目星をつけた物件と、間取りや設備などが似ている周辺の物件の家賃相場を、ネットで比較することが基本になると話します。

「賃貸物件の賃料は、周辺の同じような物件の家賃相場から算出して決めるのが一般的です。借りたい物件の家賃が周辺相場より高いなら、それを材料に値下げ交渉しやすいと言えます」(加藤さん)

入居中で、次の更新時に交渉する場合も同じ。周辺の同じような物件の家賃相場に変化がないかをチェックします。

「もうひとつ見落としがちなのですが、同じ建物内の他の部屋との間に家賃の差がないかも必ずチェックしましょう。築年数が古くなり、借り手が決まりづらくなると、大家さんは当然家賃の値下げを考えます。自分が気が付かないうちに、同じ間取りの部屋の家賃が安くなっていたりするケースがあります。こうした状況なら、『それならうちも安くして』と交渉できますよね。また、同じ建物内に複数の空室が出てきていたりするケースも、”交渉の余地あり”と判断できる材料と言えるでしょう。ただし必ず安くなるわけでなく個別の状況で結果が変わる点はお忘れなく」(加藤さん)

周辺地域の似たような物件の家賃相場や、自分が住んでいる建物の他の部屋の家賃などが、大家さんとの交渉のカードに

周辺地域の似たような物件の家賃相場や、自分が住んでいる建物の他の部屋の家賃などが、大家さんとの交渉のカードに

家賃交渉のタイミングは?

交渉のタイミングは2回。「新たに賃貸物件を探すとき」と、「契約を更新するとき」がいいと言います。

「入居中の場合でも、法的にはいつでも家賃交渉はできますが、現実的には更新のタイミングが交渉のチャンスと言えます」(加藤さん)

一般に、賃貸需要は1〜3月に集中すると言われてきました。しかし加藤さんによると、昔と比べ、その集中度合いは下がっているとのこと。したがって、交渉の時期はさほど気にしなくてもいいそうです。ただし、いざ交渉を行う際には、契約や更新することを前提に話をもちかけることが成功のポイントになります。いわゆる“ひやかし”ではだめということですね。

「たとえば、『家賃を3,000円安くしてくれたら借ります(または更新します)』と、具体的にもちかけるのがポイントです」(加藤さん)

▼家賃交渉を成功に導く3つのポイント
・借りたい部屋の周辺の相場と乖離がないかチェック
・すでに住んでいる部屋の場合は、同じ建物内の家賃と乖離がないか調べる
・「この条件なら借りる」と希望をはっきりさせる

「フリーレント」は大家さんの焦り……

部屋を探すとき、時々見かけるのが「フリーレント」という文字。入居から一定期間、家賃が“タダ”になるという物件です。

「フリーレントは、物件の競争力を上げて、より借りてもらいやすくするために大家さんが打つ施策です。家賃の無料期間は、入居から2週間〜1か月程度が一般的ですね」(加藤さん)

不動産情報サイトでは、賃貸物件を絞り込む条件のひとつにフリーレントが盛り込まれているケースも多く、該当する物件も見つけやすくなっているそうです。

「新築のフリーレント物件も珍しくありません。新築の場合、部屋数すべてが空室という状態からのスタートなので、大家さんとしてもできるだけ早く満室状態を作りたいと思っています。そこでフリーレントを打ち出して借りてもらいやすくするわけです。これはつまり『大家さんが焦っている』状態と言っても過言ではありません。つまり、そこにも交渉の余地があるわけです。たとえば、新築のフリーレントの物件で、かつ空室が複数あるような状態なら、交渉により家賃無料期間を1か月から2か月に延ばしてもらえるなどの可能性もありますよ」(加藤さん)

ただし、フリーレント期間が過ぎれば普通に家賃は発生します。目先の安さに目を奪われ、収入に見合わない家賃の物件を選ぶとのちに苦しい生活を強いられることになるのでご注意を。

「フリーレント」は早く部屋を埋めたい大家さんの心情の表れかもしれません。借り手としてそこに交渉の余地が

「フリーレント」は早く部屋を埋めたい大家さんの心情の表れかもしれません。借り手としてそこに交渉の余地が

敷金・礼金

実は法的根拠がない「敷金・礼金」

次に敷金・礼金について。どちらも新規契約の際、初期費用としてかかるケースがほとんどです。支払うのは当たり前と考えがちですが、どうもそうとは言い切れないようです。

「実は、入居時に敷金・礼金を支払うことは、法律で決まっているわけではありません。ですから、必ず払わなければならないものではなく、礼金自体が存在しない地域もあります。あくまで賃貸特有の“慣習”のひとつです」(加藤さん)

筆者が住む首都圏では、家賃をベースに「敷金1〜2か月、礼金1〜2か月」というのがなんとなくの相場と思い込んでいました。しかし近年、それにも変化が起きていると加藤さんは指摘します。

「首都圏エリアの賃貸物件の敷金・礼金は10年近く右肩下がりが続き、最近ようやく下げ止まった状況なんです。直近2019年5月のデータでは下記のとおりで、マンション、アパートともに敷金・礼金が平均で1か月を切っている状況です(※)」(加藤さん)

▼首都圏の平均敷金(単位は家賃)
マンション…0.79か月
アパート…0.54か月


▼首都圏の平均礼金(単位は家賃)
マンション…0.43か月
アパート…0.36か月

※出典:LIFULL HOME’S マーケットレポート(https://business.homes.jp/report/report_category/f01/)内、「2019年5月 賃貸マンスリーレポート」より

敷金と礼金。交渉で優先すべきは?

なぜ敷金・礼金はかつての半分にまで下がっているでしょうか?

「おそらく皆さんのご想像のとおりです。日本の人口は減っているのに、都市部の物件供給は止まっていないのです。マンション・アパートの供給過剰が顕著となり、空室率は上昇を余儀なくされている。したがって大家さんは入居者確保のため、敷金・礼金を下げざるを得ないわけです」(加藤さん)

こうした状況の中、「敷金2か月、礼金2か月」などという物件があったら、交渉の材料にできるのは言うまでもありません。

「『敷金・礼金を安くしてくれたら借りますよ』ともちかければ大家さんの心に響くはず。どちらかと言うと家賃の値下げよりも実現のハードルは低いでしょう」(加藤さん)

ちなみに敷金と礼金では、どちらを優先して安くしてもらえばいいのでしょうか。

「優先すべきは礼金です。礼金は大家さんにお礼として支払う意味合いを持つもの。それに対して敷金は入居中に何かあった場合に備えて預けておくお金で、何もなければ部屋を退去するときに入居者に返ってきます。よって礼金を安くしてもらったほうがお得と言えます」(加藤さん)

敷金の返金トラブルには国のガイドラインを

原則として退去時に戻ってくるはずの敷金ですが、昔から敷金の返還にはトラブルがつきものでした。しかし、それにも変化があるそうです。

「本来、敷金は礼金と違い『一時的に預けるもの』という性格があります。退去時に、預けた敷金は原状回復の費用を引かれて戻ってきます。以前は、この原状回復の解釈があいまいだったためにトラブルが起きがちでした。原状回復は部屋を元の状態に戻すという意味ですが、新品にして戻すという意味ではありません。そのため、原状回復費用の負担割合で貸主とトラブルが起きやすかったのです」(加藤さん)

敷金返還のトラブル増加を受け、国土交通省が原状回復に関してガイドラインを作成。明確なルールができたことから、現在は借り手不利の状況はほぼ解消されていると言います。

「原則として、壁紙の汚れや畳の日焼けなどの経年劣化や、通常の使い方をして生じた汚れや傷みを修繕する費用は貸主の負担になります。いっぽう、『壁に穴を開けた』などの故意・過失による損壊や汚損について借り手の負担です。国土交通省のガイドラインには具体的な事例が出ているので、一度目を通しておくことをおすすめします」(加藤さん)

国土交通省のHPでは、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」が全文公開されています。
出典:国土交通省 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000021.html

仲介手数料

直接借りれば手数料はかからない!?

最後は、物件を仲介してくれる不動産業者(正式には不動産仲介会社)に支払う仲介手数料です。これも新規契約の際、初期費用としてかかってきます。

「仲介手数料は『賃料の1か月分以内』と宅地建物取引業法で上限が定められています。現在の相場は家賃の0.5か月から1か月分が目安です。いずれにしても、大きな金額です」(加藤さん)

不動産仲介会社の役割は、大家さんと借り手の間に入り、賃貸の契約をまとめることです。うまくまとめられた場合に、報酬として仲介手数料を得るわけです。

「物件を仲介してもらい契約を結ぶことで仲介手数料が発生するのなら、そもそも物件を仲介してもらわなければどうでしょう? 仲介手数料なしですよね。賃貸マンションやアパートを所有する大家さんや不動産会社から直接物件を借りれば、仲介は必要ありません。当然、手数料はゼロ円で済むというわけです。不動産ポータルサイトで賃貸物件の詳細を見ると、項目の中に『取引態様』という欄があります。そこに『仲介』や『媒介』ではなく『貸主』と明記されていたら、大家さんや不動産会社が所有物件を直接入居者に貸すということを意味します。つまり仲介手数料が発生しません。ぜひチェックしてみてください」(加藤さん)

筆者が調べたところ、「取引態様」が「貸主」の物件は、不動産ポータルサイトのほか、全国の無料広告の掲示板として知られるサイト「ジモティー」でも、大家さんなどが直接物件を掲載しているケースがあり、見つけることができました。

URはやはりお得だった

礼金や仲介手数料のコストを考えると、URはかなりお得な存在です。URの正式名称は「UR賃貸住宅」と言い、独立行政法人の都市再生機構(UR都市機構)が管理している公的な賃貸住宅のこと。全国に約72万戸あり、最近ではタワーマンションやおしゃれなリノベーション物件なども含まれています。

「民間の賃貸住宅と比較したURのメリットは、入居時に必要な礼金、仲介手数料、保証人がすべて不要なこと。入居後は1年ごとに自動更新される際の更新手数料も不要となります。新規契約時の費用を抑えられ、手間も少なくて済む。かつ更新のコストも抑えられるのです」(加藤さん)

家賃が割引されるさまざまなプランを設けているのもURならではの特徴。

「親族2世帯が近くに住んでいると家賃が5年間、最大5%引きになる『近所割』や、子育て世帯の家賃が3年間お得になる『そのママ割』、35歳以下限定で家賃が3年間お得になる『U35割』などがあります。加えて、月々の家賃の支払いで『Ponta』ポイントが貯まる、耐震性にすぐれるなどの利点もあります」(加藤さん)

いいこと尽くめですが、デメリットはないのでしょうか?

「物件によっては駅からのアクセスが悪かったり、設備が古かったりすることも。また、入居の審査基準が厳しめで、人気の物件は空きが出にくいのはデメリットと言えます。しかし、コストの面で言えばそのデメリットを補ってあまりあるメリットがあると言えそうです」(加藤さん)

▼参考:記事に登場したサイト


・ジモティー
https://jmty.jp/


・UR賃貸住宅
https://www.ur-net.go.jp/chintai_portal/index.html

変わりゆく賃貸。定額制のサブスク賃貸も登場!

決まった額を払えば住む家を定期的に変えてもOKのサブスク賃貸。旅をするように暮らしたい人にはうってつけ

決まった額を払えば住む家を定期的に変えてもOKのサブスク賃貸。旅をするように暮らしたい人にはうってつけ

ここまで、既存の賃貸でいかに節約するかを教えてもらいましたが、既存の賃貸の概念を変えてしまいそうなのが「サブスクリプション」型の賃貸です。

「サブスク」と略されるサブスクリプションとは、一定期間の利用に対して代金を支払う方式です。現在サブスクがトレンドになりつつあり、さまざまな製品やサービスに取り入れられつつありますが、ついに賃貸の分野にも登場しています。

「2019年4月にサービスを開始し、話題を集めているのが、全国住み放題の定額制シェアサービス『ADDress』。光熱費込み・月額4万円からの低価格で、日本や世界に点在する空き家や遊休別荘に住めるといるものです。物件はリノベーション済みで家具・家電を完備。会員登録(有料)すれば利用でき、敷金や保証金といった初期費用はかかりません」(加藤さん)

同様のサブスク型賃貸住宅には「OYO」「Hammosurfin」「レジデンストーキョー」などがあります。

「定額制賃貸サービスは一定層のニーズがあると思います。ただ、現段階では物件数が限られるなど使い勝手が悪い部分も。今後、物件数や利用者が増えていけば利便性は高まり、よりお得になっていくはずですから、賃貸の新たな波として注目しています」(加藤さん)

▼加藤さんも注目! 最新の”サブスク賃貸”


・ADDress
https://address.love/


・OYO LIFE
https://www.oyolife.co.jp/


・Hammosurfin
https://www.hammosurfing.com/


・レジデンストーキョー
https://residencetokyo.jp/

加藤さんに教えていただいたように、賃貸のお金事情は時代によって変化しています。昔の常識や慣習にとらわれず最新の情報をウォッチして、「いい部屋を適正な価格で借りる」賃貸ライフを目指してください!

※本記事は、記事監修者及び執筆者個人の見解です。
百瀬康司

百瀬康司

フリーランスのライター。副業をはじめ、投資、貯蓄、節約などマネー企画全般を幅広く取材。ビジネスや働くママのジャンルでも取材経験が豊富。雑誌、Web、夕刊紙、書籍で執筆を行い「真に価値ある情報提供」を使命とする。

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