これまで2度にわたって100億円還元キャンペーンを行ってきたPayPay。2019年11月1日より3度目の100億円還元キャンペーンを行っています。今度の舞台はネット通販サイトの「PayPayモール」です。10月からスタートした新しいサイトのため聞き慣れない人も多いと思います。いったいどんなサイトなのでしょうか? そしてポイント還元の仕組みや利用する際の注意点は? 順を追って見ていきましょう。
100億円還元キャンペーンが話題のPayPayモール。画像はPayPayモールより
まずは、キャンペーンの舞台となるPayPayモールについて理解しておきましょう。
PayPayモールは、2019年10月17日にヤフー株式会社(以下、ヤフー)が新たにオープンしたネット通販サイトです。ヤフーにはすでに「Yahoo!ショッピング」というネット通販サイトがあります。一見、ユーザーの奪い合いになってしまいそうな印象を受けますが、PayPayモールはYahoo!ショッピングとは差別化されています。
PayPayモールもYahoo!ショッピングも、オンライン上のショッピングモールであることに変わりはありません。どちらも業者がサイトに出店する形を取っています。両者が異なるのは、出店する際の「条件」です。
PayPayモールに出店する際のルールとして、下記のとおり4つの「PayPayモール出店レギュレーション」が定められており、いずれかひとつの条件を満たさないとPayPayモールには出店できないとされています。
1. Yahoo!ショッピングベストストアアワード受賞歴があり、かつ、過去約90日間において80%以上の期間、「優良店」(※)であること。
2. Yahoo!ショッピング経由での年間流通が1.2億円(税込)以上、かつ、過去約90日間において80%以上の期間、「優良店」(※)であること。
3. 上場企業または上場グループに属する企業であること。
4. (グループを含む)企業年商 100億円以上(「家電」カテゴリのみ 500億円以上)であること。
※PayPayモール公式サイトより引用。「優良店」とは、ヤフーが指定するストアパフォーマンスに基づき、「優良店」と認定された出店者を指すそうです。
PayPayモールとは、厳選された店舗のみが出店できる「Yahoo!ショッピングの上位版」という位置付けとヤフーは説明しています。Yahoo!ショッピングは出店基準が非公開とされているため単純には比較はできませんが、確かに上記の4つのレギュレーションから、PayPayモールの出店ハードルが高く設定されていることが感じられます。
PayPayモールは高級感を感じるデザインで統一されています(画像提供:Yahoo! JAPAN)
高いハードルを超えて出店しているのはどんなショップなのでしょうか? 2019年11月13日の記事執筆時点では、家電、ファッション、食品、スポーツ用品など約600社が順次出店していく予定と発表されており、流動的な状況が続いています。実際にPayPayモールを見てみると下記のような企業が出店していることが確認できました。
・ZOZOTOWN
・スポーツゼビオ
・アスクル
・ダイソン
・ケルヒャー
・タカラトミー
・コジマ
・ヤマダ電機
・ソフマップ
・ノジマ
・ケーズデンキ
・松屋
・ロイズ
・ゴディバ
・銀座千疋屋
(順不同)
いっぽう、出店ストアの中には国の「キャッシュレス・ポイント還元事業」(以下、ポイント還元事業)の対象となる小規模店も含まれています。いずれもヤフーが定める出店レギュレーションをクリアしている「優良店」と思われます。なお、ポイント還元事業とPayPayモールとの関係性については記事の最後のパートでもう一度詳しく触れます。
ここで少し視点を変えて、出店するショップにとってPayPayモールに出店するメリットを考えてみます。まずあげられるのは消費者に「信用のおけるショップ」ということをアピールできる点でしょう。上記のように出店ハードルが高く設定されているので、PayPayモールに出店しているだけで消費者の信用を得やすくなると言えそうです。また、PayPayモール自体が高級感のあるインターフェイスとなっていますので、扱っている商品との相乗効果でメリットを感じるショップもあるはずです。さらに、今回の「100億円還元キャンペーン」のように、ヤフーが打ち出す大型のキャンペーンに相乗りできる効果も見逃せないでしょう。
いっぽうで出店メリットに応じた手数料もそれなりの額が設定されています。Yahoo!ショッピングでは出店数を増やす目的で、売り上げに応じた手数料は2013年に中止されています(eコマース革命。後述)。しかしPayPayモールではそれが復活し、売り上げの3%をPayPayモールに支払う必要があります。また、Yahoo!ショッピングで現在徴収している、売り上げの2.5%の「ポイント原資負担金」もPayPayモールで採用されています。
PayPayモールの出店ストアには有名企業も名を連ねます(画像提供:Yahoo! JAPAN)
次に消費者の側から見たPayPayモールの特徴を考えます。
Yahoo!ショッピングでは、前述のとおり2013年に「eコマース革命」と称して売り上げに応じた手数料を廃止しました。これにはYahoo!ショッピングへの出店数を増やす狙いがありました。その結果、確かに出店ストアは増えたものの、個人・法人が入り混じった状態になったと言います。しかし、PayPayモールの出店基準はそう簡単に満たせるものではありませんし、販売手数料もかかってきます。これについてヤフーは、「安心・安全なストアだけを厳選」(ヤフーのプレスリリースより抜粋)という説明をしています。
PayPayモールでは、商品到着後14日以内であれば返品ができます(ただし、故障、不具合、自己都合など状況によって条件は変わります)。注目したいのは、これがPayPayモール全体の共通ルールだということ。Yahoo!ショッピングの場合は、出店しているストアによって返品の対応が異なりますし、そのほかの大手ネット通販サイトも出品しているストアによって返品対応が変わってきます(下記参照)。その点PayPayモールの「全店共通」の返品ルールは、一店一店返品ルールを確認する手間が省け、わかりやすい設計になっています。
▼大手通販サイトの返品ルール
・Yahoo!ショッピング……各ショップが返品ルールを設定。
・楽天市場……各ショップが返品ルールを設定。
・Amazon……Amazon.co.jpが販売する商品は30日以内の返品・交換が可能。マーケットプレイスの出品者から購入した商品も、Amazon.co.jpと同等の返品ルールを設定しているところが多いものの、一部の出品者は独自の返品ルールを設定。
・ポンパレモール……各ショップが返品ルールを設定。
PayPayの名がついているとおり、PayPayモールでは電子マネーの「PayPay残高」が貯まりやすい設計になっています。普段からPayPayを使っている人にとって、オンラインでの買い物の選択肢のひとつとしてPayPayモールは魅力的な存在になりそうです。なお、PayPay残高の貯まり方については次のパートで詳しく解説します。
このパートではPayPayモールでのポイントの貯まり方を解説します。記事の冒頭で紹介した100億円還元キャンペーンや、国が行っているポイント還元事業も絡み複雑な仕組みになっています。
まず、PayPayモールのポイント還元の基本ルールとして「2種類のポイントが貯まる」ことを覚えておきましょう。貯まるのは下記の2つです。
▼Tポイント
ご存じ、カルチュア・コンビニエンス・クラブの電子マネー。全国にあるTポイント提携先やインターネットの提携先で、貯めたり、使えたりすることが可能です。
▼PayPay残高
PayPayの電子マネー。下記のとおり4種類あり、特典やキャンペーンで付与されるのは下の2つ。それぞれ有効期限や使える機能が異なり、上から下に行くに従って使い勝手の面で制限が増えます。また、PayPay残高で支払う場合に支払いに利用されるPayPay残高にも優先順位があり、こちらは逆に下から上に向かって優先的に支払いに利用されます(PayPayボーナスライトが一番早く使われ、追って、PayPayボーナス、PayPayマネーライト、PayPayマネーの順に使われます)。
▽PayPay残高の種類
・PayPayマネー……銀行口座やセブン銀行ATM、ヤフオク!・PayPayフリマの売上金を利用してPayPay残高にチャージした残高のこと。出金、ユーザー間の送金、「わりかん機能」が使用可能。
・PayPayマネーライト……Yahoo! JAPANカードや、ソフトバンク・ワイモバイルまとめて支払いを利用してPayPay残高にチャージした残高のこと。ユーザー間の送金、「わりかん機能」が使用可能。
・PayPayボーナス……特典やキャンペーン等で進呈された残高のこと。送金や「わりかん機能」は使用できません。
・PayPayボーナスライト……特典やキャンペーン等で進呈された残高のこと。送金や「わりかん機能」は使用できません。また付与された日から60日間が有効期間となっていて、それを過ぎると失効。
PayPayモールのポイント還元の特徴は、会員の属性によって還元率が加算される点にあります。まずは下記の一覧をご覧ください。
PayPayモールのポイント還元はユーザーの属性によって細かく分かれます(画像提供:Yahoo! JAPAN)
ポイント還元の各項目を説明していきます。還元名称の後ろのカッコ内の数値は(還元率 / 還元されるポイント)です。
●ストアポイント(1% / Tポイント)
PayPayモールにおける基本のポイント還元です。還元率1%ですが、出店しているストアやキャンペーンなどによって2%以上になるケースもあります。
●キャッシュレス・ポイント(消費者)還元事業(5% / PayPayボーナスライト)
2020年6月まで続く国のポイント還元事業も適用されます。ほかの大手ネット通販サイトと同じく、出店しているストアが本事業に参加していることが条件です。PayPayモールのすべてのストアにこのポイント還元が適用されるわけではありません。
●ソフトバンクスマホユーザーもしくはワイモバイルスマホユーザー「Enjoyパック」(5% / PayPayボーナスライト)
ヤフーと同じソフトバンクグループのソフトバンクやワイモバイルのスマホユーザー限定の還元。ワイモバイルのスマホユーザーはヤフー連携プランの「Enjoyパック」(月額500円 税抜き)への加入が条件です。
●Yahoo!プレミアム会員(4% / PayPayボーナスライト)
月額462円(税抜き)のヤフーの有料サービス。ヤフー関連のサービスでさまざまな特典を受けることができます。
●PayPay残高もしくはヤフーカードでの支払い(1% / PayPayボーナスライトもしくはTポイント)
PayPay残高での支払いはPayPayボーナスライトで還元。ヤフーカードでの支払いはTポイントで還元されます。
ここまでで最大16%のポイント還元を受けることが可能です。さらに、2020年1月までは冒頭で紹介した100億円還元キャンペーンによって9%の還元が上乗せされ、最大で25%のポイント還元となります。
●PayPayモールで100億円相当あげちゃうキャンペーン(9% / PayPayボーナスライト)
PayPay残高またはヤフーカードでの支払いが条件。本キャンペーンの月の付与上限はひとり10,000円相当までです。
PayPayモールで100億円相当あげちゃうキャンペーン
【開催期間】2019年11月1日 0:00〜2020年1月31日 23:59
※キャンペーンは延長の可能性あり。
※キャンペーン期間中でも付与金額が100億円相当に達した場合キャンペーンは終了。
【キャンペーン公式ページ】https://paypaymall.yahoo.co.jp/campaign/special/
PayPayモールのポイント還元はきわめて複雑ですが、商品購入画面で「どの還元が適用されているか」がわかる仕組みになっています。
下の画像は、PayPayモールで「Apple iPad 10.2インチ」(MW762J/A Retinaディスプレイ Wi-Fiモデル 32GB)を買ったと仮定した場合のポイント還元の内訳です。この出店ストアでの販売価格は記事執筆時点で41,980円(税込)でした。画像のとおり、ポイント還元事業の対象店なので5%が上乗せされ、ログインしたIDがYahoo!プレミアム会員に加入済みのため4%も上乗せと、ユーザーの属性で還元されるポイントが細かく表示されます。なお、ポイント還元は10円以下は切り捨てとなるため、この場合は41,900円に還元率をかけて計算されます。
これに加えて、ソフトバンクかワイモバイル「Enjoyプラン」のスマホユーザーであれば最大の還元率を達成
多彩なポイント還元が魅力のPayPayモールですが、ここまで調べてきて気になる点も見えてきました。それが、ほかのサイトと比べた際の販売価格の違いです。
下記は、ポイント還元のパートで例としてあげた「MW762J/A」の、ほかのサイトでの販売価格との比較です(価格は2019年11月13日時点。すべて税込)。
・Apple公式……38,280円
・価格.com最安価格……35,800円
・PayPayモール……41,980円
仮に、価格.comの最安価格よりも「お得」を狙おうとすると、下記のとおり最低でも15%の還元を受ける必要があります。ユーザーによっては、新たに「Yahoo!プレミアム会員」への加入等が必要な人もいるでしょう。
41,900円×(1−0.15)=35,615円
※PayPayモールは10円以下は切り捨てでポイント還元を計算。
もうひとつ重要なのが、PayPayモールで還元されるのは現金ではなくあくまでもポイントだということ。当然、使い勝手などで制限があります。また、PayPayモールで還元されるポイントには60日の有効期間のあるPayPayボーナスライトが多く含まれます。この点も評価を分けるかもしれません。これらを踏まえ、PayPayモールで買い物をする際は下記の3つをチェックするほうが良さそうです。
▼チェック1
欲しい商品の価格はほかのサイトとも比較。
▼チェック2
自分の属性で、PayPayモールでどれだけのポイント還元を受けられるのかをチェック。さらに、ポイント還元を受けた結果、ほかのサイトよりも安く買えるのかまで計算する。
▼チェック3
PayPayモールで還元される「PayPayボーナスライト」を、60日間の有効期間の間に使い切れるのか考える。
これらに加えて、現在行われている100億円還元キャンペーン(9%還元)や、来年6月まで続くキャッシュレス・ポイント還元事業(5%還元)の終了後、PayPayモールがどのようなポイント還元制度になるのかも、引き続きチェックが必要でしょう。
2019年11月、ソフトバンクの決算発表でPayPayの累計登録ユーザーが1900万人を突破したと伝えられました。急速なユーザー数の拡大の背景に、ポイント還元事業、そしてPayPayが行ってきた大型キャンペーンがあるのは間違いないでしょう。高いポイント還元は確かに魅力的ですが、同時に、それが本当にお得かどうか見極める目もますます必要になってきているように感じます。
※本記事は、執筆者個人または執筆者が所属する団体等の見解です。